小学生の不登校の原因と解決策|過ごし方は?勉強は?専門塾も紹介
編集部
塾選(ジュクセン)編集部
文科省の令和4年度調査によると、不登校児童は小学生では約10.5万名(59人に1人)で10年連続増加傾向となっています。特にこの2年間でおよそ4万人増えており、不登校児童は小学生全体の1.7%に及びます。 このような状況の中で実際に不登校の問題に直面し、「勉強に遅れが出てしまうのでは…」「塾に通わせるべき?」とお悩みの保護者の方も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、経験者の体験談などをもとに、小学生が不登校になってしまう原因や不登校の児童の学校に行かない時間の有意義な過ごし方などを紹介します。
不登校の定義とは?
一言で「不登校」といっても「何日学校に行かないと不登校になるの?」など、不登校の定義をパッと答えられる方は多くないかもしれません。そこで、まずはじめに文部科学省では「不登校」をどのように定義しているのかを見てみましょう。
文部科学省による「不登校の定義」
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者
(参考:文部科学省 「不登校の現状に関する認識」)
文部科学省の定義では、以下の方は不登校には当てはまりません。
✅年間の欠席日数が29日以下の生徒
✅病気や経済的な理由で学校に行くことができない生徒
【令和4年度版】小学生の不登校の現状
小学生の約60人に1人が不登校。不登校の児童数は過去最多に。
文部科学省の調査によると、令和4(2022)年度の小学生の不登校数は105,112名で過去最多となりました。
これは小学生の約60人に1人が不登校で、全国の8割の小学校で不登校児童がいる*という状況です。
*参照元:文部科学省 令和4年度調査結果 (4-3)不登校児童児童の在籍学校数(p.71)
また、過去10年間の不登校児童数の推移をみると、平成29(2017)年度あたりから徐々に増え始め、令和2(2020)年度から2年間で増加率が一気に上がっていることがわかります。
画像引用元:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」p.70
2020年度以降の増加はおそらく新型コロナウイルス感染症による影響が大きいでしょう。
しかしそれ以前からゆるく増加傾向にあることから、不登校という選択肢が社会的に認められ始めたことも増加の要因として考えられます。
また、文部科学省では、不登校児童が学校外の公的機関や民間施設で過ごしている場合や自宅でオンラインの学習活動などを行っている場合に一定の条件を満たせば、学校の出席扱いとなるという方針を定めていますが、令和元年にその在り方が見直されました*。
*参照元:文部科学省 「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日
【令和元年通知で大きく変わったポイント】
出席扱い等の要件 | |
---|---|
改正前 | 出席扱いとされるのは「不登校生徒の学校への復帰」を前提とした活動 |
令和元年の改正後 | 出席扱いとされるのは「不登校生徒の社会的な自立を目指す活動」や、「不登校生徒が自ら登校を希望したとき円滑に学校復帰できるように支援するもの」 |
参照元:「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日
(別記)義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて
これにより、たとえ学校への復帰を目的としていない活動でも、生徒の社会的自立を支援するものや登校したいと思った時に備えた学習活動などが出席扱いになる可能性が高まりました。
この制度を利用する児童は年々増加しており、2022年度は学校外の施設で9,493名、自宅でのオンライン学習で3,970名が出席扱いとなっています。
令和元(2019) | 令和2(2020) | 令和3(2021) | 令和4(2022) | |
---|---|---|---|---|
学校外の機関などで活動 | 6,212 | 6,243 | 7,237 | 9,493 |
自宅でオンライン学習 | 174 | 820 | 4,752 | 3,970 |
合計 | 6,386 | 7,063 | 11,989 | 13,463 |
参照元:文部科学省 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和元〜4年度)
このような国の制度改革もあり、不登校でもさまざまな学習体験や社会活動を行える体制が整えられてきています。
とはいえ、保護者の方にとっては「不登校は選択肢の一つである」と認識していても学校に行かないことで「勉強についていけないのではないか?」「中学受験はできるのか?」など不安になる場面もあるかもしれません。
ではなぜ不登校になってしまうのでしょうか?まずは、その原因について説明します。
小学生が不登校になる原因は?
小学生が不登校になる原因は、多くの場合一つではなく、複数の原因が絡み合っていると言われています。
ここでは、参考までに小学生の不登校の原因としてよく挙げられるものを5つ取り上げてみました。
✅親から離れることへの不安
「母子分離不安」とも呼ばれ、保護者の方と離れると感情がうまくコントロールできずに激しく泣いてしまったり、腹痛や頭痛といった症状が現れたりします。
保護者の方と一緒に登校したり授業を受けたりすることはできますが、姿が見えなくなると症状が出るため、学校で長時間過ごすことが難しく不登校になりがちです。
✅環境の変化
進学や進級時のクラス替え、担任の変更といった環境の変化に適応できず、それが強いストレスや不安となって学校に行けなくなることがあります。
特に公立小学校は児童の学力や心身の成長具合に差がある場合が多く、環境の変化が苦手な子どもは体調やメンタルを崩しやすいと考えられます。
✅いじめや人間関係
大人では気にならないような些細なトラブルや人間関係のこじれも、小学生にとっては大きな問題となります。
実際に公立小学校における不登校の主な原因は、「いじめ」が0.1%に対して「いじめを除く友人関係の問題」が6.5%となっています。
参照元:令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
✅勉強がわからない
学校では毎日5〜6時間授業があるので、勉強が苦痛になると学校に行きたくなくなります。
最近は昔中学校で学んでいた内容を小学校高学年で学ぶといった学習内容の前倒しが増えており、内容がどんどん難しくなっているのも原因の一つです。
✅学校で嫌なことがある
体育や音楽の授業、給食、学校のイベント、特定の児童・教師など、学校で嫌なことがあると強いストレスを感じて学校に行けなくなることがあります。
✅発達障害や病気の可能性
発達障害(ADHD(注意欠如・多動症)やLD(学習障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)など)は、ほかの人と同じように学校生活を過ごしたり授業に取り組んだりすることが難しく、それによって自己肯定感が著しく低下して不登校になることがあります。
また心身の病気により、学校に行くことが難しいこともあります。
【独自アンケート】我が家の不登校事情 不登校生徒の保護者・本人の声
〇 不登校になったとき不安に思っていたことランキング
第1位 | 勉強についていけなくなるのではないか | 70% |
---|---|---|
第2位 | 友達が減ってしまうのではないか | 47% |
第3位 | 親子間の関係が悪化するのではないか | 23% |
第4位 | 進学ができないのではないか | 19% |
第5位 | 受験ができなくなるのではないか | 14% |
n=43 複数回答可 調査期間:2024年2月3日~2024年2月9日 調査方法:弊社インターネット調査「不登校経験のある小中高生(保護者も含む)の経験談を募集!」
不登校経験のある小学生の保護者または生徒本人へのアンケート調査によると、回答者の70%が「勉強についていけなくなるのではないか」と学習面への不安を抱く方が多いという結果でした。
学習面以外でも保護者からは以下のようなお声がありました。
■不登校の子どもがいる保護者のリアルな声
学校に行きたくない『子供』と、学校に行かせたい『親』の間で気持ちのズレが起きて関係が悪化しそうになりました。
※弊社インターネットによるアンケート調査:不登校経験のある小中高生(保護者も含む)の経験談を募集!より引用/調査期間:2024年2月2日~2月13日
〇 子どもとの関わりで気を付けていたことランキング
第1位 | 口を出し過ぎないようにした | 76% |
---|---|---|
第2位 | ストレスを与えないコミュニケーション | 73% |
第3位 | 定期的に運動するようにした | 42% |
第4位 | 自宅でも勉強できる環境を整備した | 36% |
第5位 | その他 | 18% |
n=33 複数回答可 調査期間:2024年2月3日~2024年2月9日 調査方法:弊社インターネット調査「不登校経験のある小中高生(保護者も含む)の経験談を募集!」
不登校経験のある小学生の保護者へのアンケートによると、子どもとの関わりで気を付けていたことは「口を出し過ぎないようにした」が76%、次いで「ストレスを与えないコミュニケーション」が73%とコミュニケーションの取り方を気を付けていた方が多数でした。
〇 実際に不登校の不安を相談した先は?
第1位 | 家族や親戚 | 47% |
---|---|---|
第2位 | カウンセラー | 42% |
第3位 | 国・都道府県・市区町村の相談窓口 | 21% |
第4位 | ママ友・パパ友 | 19% |
第5位 | フリースクール | 16% |
n=43 複数回答可 調査期間:2024年2月3日~2024年2月9日 調査方法:弊社インターネット調査「不登校経験のある小中高生(保護者も含む)の経験談を募集!」
実際に不登校になったとき、「家族や親戚」に相談したという方が47%でした。次いで「カウンセラー」が42%、「国・都道府県・市区町村の相談窓口」が21%、「ママ友・パパ友」が19%と続きました。
なかには「誰にも相談ができなかった」との回答も複数寄せられました。
【独自アンケート】不登校の小学生におすすめの過ごし方
アンケート結果からも少なからず不安に感じてしまった方が多くいることが分かりました。それでは、不登校になったとき、どのように過ごすのがよいのでしょうか。
不登校になったことで負い目を感じていたり焦ったりすることもあるかもしれませんが、まずはゆっくり休むことを意識しましょう。
不登校は、子どもの心と体が疲れ切ってエネルギーがなくなっているサインです。
このとき一番必要なのは、安心できる居場所で休んでエネルギーを回復させること。親子で話す時間や一緒に過ごす時間を増やして、たっぷり愛情を注いであげましょう。
ただし、保護者の方も無理は禁物です。適度に一人の時間を設けたり、スクールカウンセラーや相談できる人に話を聞いてもらったりして、ストレスをためないようにしてください。
ここでは、不登校の小学生におすすめの家での過ごし方をいくつか紹介していきます。
✅子どもの好きなことをして過ごす
不登校になってすぐの時期は、しっかり休んで心と体のエネルギーを取り戻すことが大切です。
例えば、私たち大人は残業続きで身も心もボロボロなときに10連休ができたら、どのように過ごすでしょうか?きっと最初は、好きなだけ寝たりスマホやゲームを見たりしてのんびり過ごすと思います。
それと同じで、子どもにも好きなことだけしてゆっくり休む時間が必要なのです。
ただし、スマホやゲームはやりすぎて生活リズムを崩す恐れもあるので、親子間で最低限のルールを決めておくといいでしょう。
≪ルールの例≫
- 使用していい時間は◯時〜◯□時(または◯時間)まで
- 食事は家族で一緒に取る(この時間はやらない)
✅決まった家事をこなす
少しエネルギーが回復してきたなと感じたら、簡単な家の仕事を一つ任せてみるのもいいでしょう。
ごみ捨てやお風呂掃除、洗濯物を干す係など、何か一つでも仕事があると、子どもに「責任感」や役割を果たした「達成感」が生まれます。また、家族から「ありがとう」と感謝されることで、子どもの自信を育むこともできます。
なお、家事を任せるなら毎日決まった時間にやるものがおすすめです。
家にいるときは時間の感覚がなくなってだらだら過ごしがちになるので、1日のルーティンができると自然と生活リズムも整えられます。
✅勉強をして過ごす
子どもが自分から「何かしたい」と思えるほど元気になってきたら、少しずつ勉強する時間を増やしてみてもいいでしょう。
≪勉強して過ごすことの例≫
- 興味のある分野の本や漫画を読む
- 学校の教材やプリントに取り組む
- オンラインツールを使って自主学習する
- 通信教材で勉強する
- オンライン家庭教師を利用する
- フリースクールで勉強する
- 塾で勉強する
例えば、ゲームつながりでプログラミングを学んでみたり、テレビで面白いと思った歴史について本を読んでみたりすることも、立派な勉強です。
また、「学校の勉強ができるようになりたい」と思っている場合は、塾や家庭教師を利用してしっかり学力を身につけるのがいいでしょう。
学校の進度に追いつければ、学校に復帰するハードルが下がるだけでなく、自分の学力に自信がついて将来のことも前向きに考えられるようになります。
〇やって良かった!不登校時の過ごし方ランキング
不登校経験のある生徒の保護者、または本人に「やって良かったと思う不登校の過ごし方」についてアンケート調査を実施しました。こちらもぜひ参考にしてみてください。
第1位 | 生活リズムを整えた | 63% |
---|---|---|
第2位 | 一緒に食事作りをした | 35% |
第3位 | 一緒に運動する習慣をつけた | 33% |
第4位 | 学習塾に通った | 21% |
第5位 | その他 | 14% |
n=43 複数回答可 調査期間:2024年2月3日~2024年2月9日 調査方法:弊社インターネット調査「不登校経験のある小中高生(保護者も含む)の経験談を募集!」
アンケート調査結果でも、まずは「生活リズムを整えた」という方が6割を超えていました。
上記以外にも、以下のような回答がありました。
■不登校の子どもがいる保護者のリアルな声
同年代の子供のいる友人に子連れで自宅に遊びに来てもらったり、一緒に出掛けたりと、同じ学校以外のお友達と触れ合う機会を設けた。
学校には入れなくても毎日一緒に学校まで歩いて行きました。
通信学習をした
また、アンケートによると不登校生徒の5人に1人が「学習塾へ通っていた」ということが分かりました。実際に塾に通うことでどのような良い変化があるのでしょうか。
【独自アンケート】不登校経験のある小学生保護者に聞いた、塾に通った良い変化
〇不登校経験のある小学生保護者に聞いた、塾に通った良い変化 ランキング
実際に不登校時に学習塾へ通っていた生徒の保護者、または本人へ「塾に通った良い変化」について回答していただきました。
第1位 | 学校と同じ進度で勉強ができるようになった | 78% |
---|---|---|
第2位 | 不登校が解消した | 67% |
第3位 | 不登校前よりも集中して勉強できるようになった | 56% |
第3位 | 新しい友達が増えて毎日が楽しくなった | 56% |
第5位 | その他 | 5% |
n=9 複数回答可 調査期間:2024年2月3日~2024年2月9日 調査方法:弊社インターネット調査「不登校経験のある小中高生(保護者も含む)の経験談を募集!」
独自アンケートによると「学校と同じ進度で勉強ができるようになった」と回答した方が78%との結果でした。
また、「不登校が解消した」が67%、「新しい友達が増えて毎日が楽しくなった」が56%となり、学習塾に通うことによって学習面だけではないメリットがあることが分かりました。
不登校の小学生におすすめ塾
以下の記事では、塾選が厳選した「不登校の小学生におすすめの塾」を詳しく説明しています。不登校の生徒におすすめな代表的な塾としては、キズキ共育塾やLITALICOがありますが、それ以外にも全国には沢山の塾があります。「午前中から通える」など、塾ごとのおすすめポイントも併せて紹介していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
今回は、小学生の不登校の原因や家でのおすすめの過ごし方、学校以外の勉強の選択肢などについて解説してきました。
小学生の不登校にはさまざまな原因がありますが、本人が自覚していないケースも多く、根本的な解決はなかなか難しいです。しかし自覚がない漠然とした不安だからこそ、学校外でのびのびと過ごすなかで自然と解決して復学できることもあります。
不登校でも学びたい意欲が強い場合は、個別指導塾などを積極的に利用しましょう。最近は不登校児童生徒への対応実績がある塾も増えているので、ぜひ調べてみてください。
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執筆者プロフィール
塾選(ジュクセン)編集部です。実際に学習塾の運営経験がある者や大手メディアの編集経験がある者などで構成されています。塾選びにお悩みの保護者や学生の方に向けて有益な情報をお届けします。