【2025年最新版】神奈川の中学受験はこう変わった!志望校・傾向・準備の“今”を徹底解説
神奈川の中学受験は、この数年で大きく様変わりしています。「安全志向」の高まりから、難関校一点集中から、特色ある教育を掲げる中堅校へと受験者が分散しています。また「考える力」を重視し、リーズナブルな教育費で質の高い教育を受けられる公立中高一貫校も人気です。
本記事では、神奈川県の中学受験について、最新の動きや近年のトレンドを、中学受験に詳しい西村先生に徹底的に解説してもらいました。
変化① 多様化する神奈川の志望校選び
かつては難関校への一本志向が強かった中学受験ですが、神奈川では近年、志望校選びが多様化しています。その背景には、安定した進学先を提供する大学附属校の人気の高まりや、独自のカリキュラムで子どもの興味・関心を伸ばせる学校の存在があります。
ここでは、神奈川の中学受験において注目されている新たな志望校の傾向や、個性豊かな学校の特徴について紹介します。
国際教育に強いミッション系の伝統校が人気
神奈川には横浜港の開港以来、宣教師の影響で設立されたミッション系の伝統校が数多く存在します。これらの学校では英語教育や異文化理解を重視した国際教育に力を入れており、グローバルな視野を育てたいと考える家庭から高い支持を集めています。
ミッション系の学校の中では、女子校は「フェリス女学院中学校・高等学校」や「横浜雙葉中学高等学校」などが、男子校では「栄光学園中学高等学校」「聖光学院中学校高等学校」などが人気校として挙げられます。
大学附属校の人気が加速
大学附属校の人気上昇も神奈川のトレンドの一つです。安定した進学先が確保できる点に加え、保護者や生徒から人気のある国際教育・ICT教育・サイエンス教育の3本柱にも力を入れている点が選ばれる理由といえます。
神奈川大学附属中・高等学校
2025年春の入試で県内最多の受験者数を誇ったのは、神奈川大学付属です。探究学習やICT教育、グローバル教育、STEAM教育に力を入れており、大学付属校のため希望すればそのまま大学に進学できる点も魅力です。
面倒見の良さと手厚い指導で選ばれる進学校に注目
神奈川の学校は、授業だけでなく大学受験まで手厚くサポートしてくれる傾向があります。これは予備校や塾が周囲に少ない土地柄も影響しており、生徒の自主性を重んじる放任主義の学校が多い東京都と比較すると、学校内で完結する教育に力を入れている学校が多いのが特徴です。面倒見の良さで特に注目されているのは「聖光学院中学校高等学校」です。
聖光学院中学校高等学校
聖光学院は、神奈川の男子校御三家の中でも注目度の高い進学校です。大学進学までのサポートが手厚い学校の代表格として知られています。
個々の苦手克服や志望大学別の対策などの支援体制が整っており、東京大学への合格実績も全国トップクラスです。
近くに予備校や塾が少ないこともあり、大学受験まで学校が丸ごと面倒を見る体制が整っています。
個性的な教育で注目される学校も登場
偏差値だけでは選ばれない学校の注目度も年々高まっています。独自のカリキュラムや教育コンセプトを掲げ、子ども自身の興味・関心に寄り添った学校選びが進んでいます。
逗子開成中学校・高等学校
逗子開成は、中堅〜上位校として人気が上昇している男子校です。一般的な教育に加えて、海とのつながりの中で人間教育を学ぶ「海洋教育」を実施しているのが特徴。ヨット製作や海洋生物研究など、自然に向き合いながら学べるユニークなカリキュラムが魅力です。
自分たちでヨットを作って実際に海で走らせるような教育をしている学校は珍しく、これから人気が高まると予想されます。
変化② 入試傾向は「知識」から「思考力・表現力」重視へ
中学入試は、これまでの「詰め込み型」「知識をたくさん覚えるだけ」の試験から、「思考力・判断力・表現力」をしっかり見る試験へと、大きく変わってきています。こうした流れは、卒業後の大学進学を見据えていると考えられます。
以下では、具体的な試験内容の変化を紹介します。
共通テストに寄せた記述・思考力重視の問題が増加
近年の中学入試では、大学入学共通テストに近い形式の問題が増えています。
具体的には、文章や図表・グラフなどから情報を読み取り、それをもとに自分の考えを述べたり、最適な選択肢を選んだりする「情報処理・読解型」の出題が主流になりつつあります。知識を丸暗記していれば解ける問題は少なくなってきており、代わりに「思考力」「判断力」「表現力」といった複数の能力を組み合わせて解く問題が増加傾向です。
こうした傾向は、大学進学を見据えた中高一貫校が、12歳の時点で将来の伸びしろを見ようとしている姿勢の表れともいえます。
試験問題が長文化、限られた時間で対応が必要に
思考力を重視する入試において、もう一つ見逃せないのが「問題の長文化」です。
特に国語はもちろんのこと、算数でも2枚半にわたり問題文が続いている場合もあり、読解力が必要な問題が増えてきています。また、理科・社会といった科目でも、グラフや図表を交えた複雑な出題が増加傾向です。
それに対し、試験時間はこれまでとほとんど変化がなく、情報量が多く、問題を解くための考察力も必要なため、限られた時間内での読解力と判断力がより一層求められます。
新しい入試問題のスタイルに対応するには、知識の蓄積だけでなく、日頃から情報を素早く理解し処理するトレーニングが欠かせません。
地元の知識を生かす出題も
神奈川の中学入試では、地元の知識を活かせる問題が出題される場合があります。
例えば、社会の地理分野では、横浜市内の学校で横浜周辺の地図や地形図をもとに、問題が作成されるケースもあります。地域に関する問題は、県外から受験する生徒よりも、地元を日頃からよく観察し、関心を持っている生徒が有利になるといえるでしょう。
変化③ 入試日程のずれによる併願戦略への影響
神奈川の私立中学入試は東京と同様、2月1日から本格的な受験が始まります。しかし2026年の入試は「サンデーショック」により、例年とは異なる併願戦略が必要です。
サンデーショックとは、2月1日が日曜日にあたる年に、宗教的な理由からミッション系の学校(フェリス女学院・横浜雙葉・横浜共立学園など)が入試日を2月2日以降にずらすことで、受験生に大きな影響を与えることです。入試日程の変更は他校の受験日程との重複や受験者数の増減を引き起こし、全体の併願プランに影響を与える可能性があります。
ただし、例年2月1日に集中していた学校が別日に移動するため、併願できる学校が多くなるというプラスの変化もあります。特にミッション系の学校が多い神奈川では、受験日が例年と大きく異なるため、事前の情報収集と戦略的な併願計画がより一層大切になるでしょう。
変化④ 塾・教材・学習環境も多様化
近年、神奈川の中学受験を取り巻く学習環境は、目に見えて多様化しています。これまでは大手進学塾に通うのが定番とされてきましたが、最近ではオンライン教材や個別指導などの選択肢が増え、それぞれの子どもに合った学び方を重視するご家庭が増えてきました。
ここでは、最近の塾選びの傾向や、ニーズが高まっているオンライン学習の広がりについて紹介します。
塾選びは"ブランド"から"子どもとの相性"重視に
これまで中学受験では、大手進学塾への通塾が定番とされていましたが、近年は志望校の多様化や受験スタイルの変化により、個別指導塾や地域密着型の塾を選ぶ家庭も目立つようになってきました。
特に重視されているのが「子どもとの相性」や「講師との信頼関係」です。単に「成績が上がるかどうか」ではなく「安心して通い続けられるか」「自分らしく学べる環境か」といった視点で塾を選ぶ家庭が増えています。
共働き家庭や遠方在住向けに「オンライン学習」拡大
共働きの家庭や、都心部から離れた地域にお住まいのご家庭を中心に、オンライン学習を取り入れる動きが加速しています。
早稲田アカデミーや四谷大塚などの大手塾でもオンライン授業を本格的に導入しており、通塾が難しい環境でも、質の高い授業を自宅で受けられる仕組みが整っています。
通学時間を省ける分、家庭での時間にゆとりが持てるのも大きな魅力です。オンライン学習を活用することで、遠方にある都心の中学受験にも挑戦しやすくなっています。
変化⑤ 家庭の関わり方も"情報収集型"から"伴走型"へ
これまでの中学受験では、保護者が中心となって情報を集め、子どもに指示を出すスタイルが一般的でした。しかし最近では、子どもと一緒に目標を立て、計画を確認しながら進める「伴走型」の関わり方へと変化しています。
ここでは、家庭内での役割の見直しや、情報があふれる時代だからこそ気をつけたい点について紹介します。
「ママだけが抱え込む」時代は終わりつつある
ひと昔前の中学受験では、母親が塾の送迎から勉強の進捗管理、学校選びまで一手に担う家庭が多く見られました。しかし、共働き家庭の増加やライフスタイルの多様化により、父親も積極的に関わるケースが増えています。
最近では、両親や兄弟姉妹も一緒にリビングで勉強したり、志望校説明会に夫婦で参加したりと、家族で協力しながら子どもを支える家庭も珍しくありません。
母親一人が責任を抱え込むのではなく、家族みんなで受験期を支えることが、子どもにとっても安心できる環境につながります。
SNSやYouTubeでの"情報疲れ"に注意
今やSNSやYouTubeなどを通じて、中学受験に関する情報が簡単に手に入る時代です。体験談や塾選びのコツ、学習の工夫など、リアルで役立つ情報が多く発信されており、手軽に参考にできるようになりました。
一方で、情報があふれすぎて「このやり方で本当に合っているのだろうか」と不安になり、情報疲れに陥るケースも増えています。成功例ばかりが目に入ると、焦りや自信喪失につながる可能性もあるでしょう。
大切なのは、「わが子にとって必要な情報かどうか」を見極める視点です。もし情報に振り回されそうなときは、あえて距離を置いて、子ども自身や家庭のペースを見直すことも大切です。
神奈川の中学受験、これからどうなる?
今後の中学受験では、これまで「安全圏」とされていた中学校でも、受験倍率が高まる傾向が見られます。
以前は「合格の可能性が高い」と考えられていた学校にも、受験生が集まり、難易度が上がっています。その結果、志望校を一段階下げて出願する動きが広がっています。こうした傾向は、単なる偏差値の上下にとどまらず、各校の難易度の全体的な上昇を示しているといえるでしょう。
少子化が進んでいる一方、都市部では子どもの数が大きく減っているわけではありません。海外から教育のために移住してくる家庭もあり、子どもの数が増加傾向の地域もあります。
こうした変化により、神奈川の中学受験は今後もしばらく受験者数の減少が見込まれにくく、むしろ受験生の層がより多様化し、競争が一層激しくなると予想されます。
変わる中学受験、変わらない大切なこと
神奈川の中学受験は、近年その姿を大きく変えています。志望校選びにおける多様化や、入試で問われる力の変化、さらには家庭の関わり方や併願戦略に至るまで、これまでの常識が通用しなくなりつつあります。
しかし、どれほど環境や制度が変化しても、中学受験において大切なことは変わりません。それは「子どもが自分らしく学び、成長できる環境を見つけること」です。
情報があふれる今だからこそ、周囲に流されず、子どもの個性や家庭の価値観に合った選択をすることが、受験を成功させるために大切といえるでしょう。