中高生の保護者の約15%が検討している塾の掛け持ちの実態とは?
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編集部
塾選ジャーナル編集部
「周りで塾を掛け持ちしている子もいるようだけど、うちの子も必要なのか」「どんなときに塾の掛け持ちを検討したらいいのだろう」と悩む中学・高校生の保護者の方も多いのではないでしょうか。近年、複数の塾に通う「塾の掛け持ち(併塾)」と呼ばれる学習スタイルが注目されています。
今回は、中高生の保護者200名に塾の掛け持ちについて調査を行いました。塾の掛け持ちを決断した理由や本音をご紹介します。
塾の掛け持ち、検討した割合と実施した割合
塾に通っているのに成績がなかなか上がらない場合、他の塾にも通わせることを検討される方も多いことでしょう。実際に、どのくらいの保護者が塾の掛け持ちを検討し、実行に移しているのでしょうか。
塾の掛け持ちを検討したことがある方の割合は?
アンケート調査の結果、塾の掛け持ちを「検討したことがある」と回答した中高生の保護者の割合は、全体の約15%でした。次に、中学生の保護者、高校生の保護者のそれぞれ何%が塾の掛け持ちを検討したことがあるのかを調べてみると、以下の通りでした。
高校生の保護者の方が、塾の掛け持ちを検討する割合がやや多い傾向にあります。これは、高校受験よりも大学受験のほうが、より進路の選択肢が広がり、学習内容が高度になるため、塾の掛け持ちによる学習効果への期待が高まるからだと考えられます。
「検討したことがある」と答えた方の中で実際に掛け持ちをした方の割合は?
では、塾の掛け持ちを「検討したことがある」と回答した保護者のうち、どのくらいの方が実行に移しているのでしょうか?
アンケートによると、塾の掛け持ちを検討後、実際に掛け持ちを行った方は中学生の保護者では33%、高校生の保護者では53%でした。このことから検討後に塾の掛け持ちをはじめた方の割合も、高校生の保護者の方が高いことがわかります。
大学入試の一般選抜では不得意を克服し、志望校合格に必要な学力を効率的に身につけることが重要になるため塾の苦手克服のために掛け持ちをはじめる。学校推薦型選抜や総合型選抜においては、小論文や志望理由書に特化した指導を受けるために塾の掛け持ちを実行に移すというケースも多いようです。
塾を掛け持ちする主な理由
実際に子どもに塾を掛け持ちさせている保護者にその理由を聞いてみました。その結果、大きく以下の3つに分けられました。
1.苦手を克服したい
《アンケートで集まったコメント》
・得意な科目は伸びているけれど、苦手な科目はなかなか克服できない
・集団塾のペースについていくのが精一杯で、理解できていないまま進んでしまうことも
苦手科目に特化した塾に追加で通うことで、学習時間を増やすだけでなく、特定の科目の指導に強い塾を選べば、苦手を徹底的に克服することが期待できます。
2.集団塾と個別指導塾など、塾の特性を利用したい
《アンケートで集まったコメント》
・集団塾だと周りから刺激を受けることができるが、子どもの性格的に質問がしにくい。個別だと自分のペースでわからないところも聞きやすい
・集団塾で全般的に学習力をつけ、個別指導塾で苦手分野や得意分野を伸ばしたい
それぞれの塾の特性を活かしたいという理由で掛け持ちをするケースも多いようです。
例えば集団塾では、周りの生徒と切磋琢磨することで学習意欲を高めることができます。一方で個別指導塾では、一人ひとりの理解度に合わせて丁寧に指導してもらえます。このように、複数の塾を組み合わせることで、より効果的に学習を進める環境を作ることができます。
3.様々な学習方法を経験したい
《アンケートで集まったコメント》
・数学や英語など、専門性の高い塾にも通わせたい
・従来型の塾だけではなくオンライン塾も試してみたい
最近では、学習ニーズの多様化にあわせて様々な塾で独自の勉強方法が登場しています。複数の塾を経験することによって、その子にあった学習方法を見つけやすくなり、子どもの学習意欲を高めることにつながる可能性があります。
塾の掛け持ち、主流は集団塾×個別指導塾
塾を掛け持ちする際に、どのような塾の組み合わせが多いのでしょうか?アンケートの結果、最も多かったのは「集団塾」と「個別指導塾」の組み合わせでした。
集団塾のメリット
・活気ある授業:周りの生徒と切磋琢磨することで、学習意欲の向上に繋がる。
・効率的な学習:決められたカリキュラムに沿って授業が進むため、短期間で幅広い範囲を学習できる。
・費用が比較的安い:個別指導塾に比べて、授業料が安い傾向がある。
個別指導塾のメリット
・弱点克服:個別に合わせた指導を受けられるため、苦手な科目を克服しやすい。
・学習内容の定着:わからない点をその場で質問でき、すぐに説明してもらえる。
・細やかな指導:定期面談などで、学習計画の相談や進路指導を受けられる。
このように、集団塾と個別指導塾ではそれぞれに異なるメリットがあります。2つの塾を掛け持ちすることで、それぞれのメリットを活かし、相乗効果で学習効果を高めることができるといえそうです。
体験談からわかった塾の掛け持ちの効果
では、実際に塾の掛け持ちをしている方はどのような効果を感じているのでしょうか。保護者の声から、期待していたこと以外にも、実際に掛け持ちをしてみるまではわからなかった様々な効果があったことがわかりました。こうした体験談とともに、保護者が感じている塾の掛け持ちの効果を4つご紹介します。
1.成績が上がる
《アンケートで集まったコメント》
・弱点克服:併塾のおかげで、数学の点数が伸びました 集団では理解が難しかったところを個別指導で教えてもらうことで克服できました
・得意科目の強化:模試で偏差値60以上をキープできるようになりました
・学習習慣の定着:学ぶ時間が増えるため、学習が習慣化しました
2.効率よく学べる
《アンケートで集まったコメント》
・時間的効率:学校で習う前に塾で予習することで学習に遅れが生じなくなった
・理解度に応じた学習:得意、不得意にあわせて効率よく学ぶことができていると思う
・集中力向上:効率的に集中して学習できた 異なる学習環境で集中力を磨けた
3.友達が増える
《アンケートで集まったコメント》
・交流の機会増加:集団塾なので友達も増えて刺激を受けるようになった
4.その他
《アンケートで集まったコメント》
・モチベーション向上:学習のモチベーションが続くようになった
・学習方法の多様化:塾ごとに教え方に違いがあり、学習に偏りがなくなった 様々な学習方法を身につけられた
・メリハリ:自宅でのオンライン学習と教室を両立することで、メリハリがつきました
体験談からわかった塾を掛け持ちする際の課題
塾の掛け持ちを検討したが実行に至らなかった人も多いように、掛け持ちにはいくつかの課題も存在します。保護者の声を基に、掛け持ちの課題を解説します。
経済的負担
「経済的な負担が大きい」「月謝が倍かかるようになった」「月謝が家計に影響した」など、塾の掛け持ちは、家庭の経済状況によっては大きな負担となる可能性があります。各家庭で生活費とのバランスを考え、無理のない範囲で検討する必要があるようです。
送迎の問題
「送り迎えが大変になった」「親の送り迎えの負担が大きい」というように、仕事や家事などで忙しい保護者にとって、塾の送迎時間を確保することは簡単なことではありません。子どもの塾の時間に合わせて親のスケジュールを調整する必要があるため、負担に感じることもあるようです。
スケジュール調整の難易度
「塾に行く日数が増えることでスケジュールの調整が面倒になった」「やることが多くなり、子どもの負担にならないか心配」など、学校生活に加え、複数の塾の時間割を調整し、通塾スケジュールを管理することは意外と複雑で手間がかかります。また、子どもにとっても時間的、精神的な負担が大きくなる可能性があるため、スケジュール管理をしっかりしないと睡眠時間や自由時間が削られストレスにつながってしまうことも考えられます。
塾の掛け持ちには親のフォローが欠かせない
今回の調査では、塾の掛け持ちを成功させるために、保護者が子どもの学習面や生活面に対して積極的に気を配っているという声も寄せられました。子どもが塾を掛け持ちすることになった場合、どのようなフォローが必要か解説します。
スケジュール管理
《アンケートで集まったコメント》
・部活も入っていて時間的な制限があったので、卒部してから掛け持ちができるようにした
・自分の時間をとれるように、毎日ではなく、適度な頻度で通えるように心がけた
部活や学校行事も加味して、無理のないスケジュールを立てる必要があります。また、学習時間と自由時間のバランスを意識することで子どもの負担にならないよう、定期的にスケジュールを見直し、調整することも大切です。
健康管理
《アンケートで集まったコメント》
・塾の終わりが遅くなるので、ご飯を食べてから通わせていた
・睡眠時間が減ったので、健康管理に気を配った
塾の掛け持ちは子どもの体力面、精神面にも影響を与える可能性があります。睡眠時間や食事、休息する時間をしっかりと確保し、健康管理に気を配りましょう。
メンタルケア
《アンケートで集まったコメント》
・疲れがたまってしまわないかというところを心配していました
・3か月に一度は先生と連絡をとり状況を確認。ほったらかしにはせず、様子を把握していました
学習の進捗状況や服での様子を把握し、悩みや不安を聞き、適切なアドバイスや励ますなど、子どもとのコミュニケーションをとることで子どもの精神的な負担を軽減するよう努めましょう。
まとめ
塾の掛け持ちは、成績向上や学習習慣の定着など、様々な効果が期待できます。しかしながら、塾の掛け持ちはすべての中高生にとって最適な選択肢とは限りません。子どもにとっては精神的な負担にならないか、親にとっては経済的負担やスケジュール調整の負担などが重荷にならないかを事前に検討しておくことが必要です。塾の掛け持ちをする場合には、親子でよく話しあった上で判断しましょう。
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アンケート調査概要
調査対象:中高生の子どもを持つ保護者(有効回答数200名)
調査時期:2025年1月
調査機関:自社調査
調査方法:インターネットを使用した任意回答
調査レポート名:「中高生の塾の掛け持ち」についての調査
※掲載しているグラフや内容を引用する場合は「塾選調べ:「中高生の塾の掛け持ち」についての調査」と明記し、『塾選』(https://bestjuku.com)へのリンク設置をお願いします。
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