親たちの中学受験体験記Vol.3 勉強嫌いな娘を父がリード。大切なのは“行きたい気持ち”


編集部
塾選ジャーナル編集部
中学受験の主役はもちろん子どもですが、その保護者にも受験を決意した日から結果発表までの期間、さまざまな思いや葛藤があります。受験を終えた保護者にインタビューを行い、保護者の視点から中学受験のリアルをご紹介します。
【保護者プロフィール】
お名前 | 沢本 和弥(仮名) |
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お住まい | 広島県福山市 |
年齢 | 38歳 |
職業 | 会社員 |
性格 | 真面目で真っすぐ。家族を引っ張るリーダーシップがある。 |
家族構成 | 妻、長女(中学2年生)、次女(中学1年生) |
【中学受験を行った子どものプロフィール】
子どもの名前 | 沢本 芽依(仮名) |
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性別 | 女子 |
現在通っている学校名 | 如水館中学校 |
現在の学年 | 中学1年生 |
受験時にしていた習い事 | なし |
得意科目 | なし |
苦手科目 | 国語 |
性格 | 明るくマイペース。頑固な一面もあるが素直で、自分の意見をハッキリと言うタイプ。 |
偏差値 | 学習開始時期の偏差値45/受験時期の偏差値55(日能研 全国公開模擬試験) |
年子の姉との関係性を考え、妹の中学受験を決意
―まずはじめに、中学受験を意識したきっかけを聞かせてください。
うちは2人姉妹なのですが、次女の方が勉強嫌いで。この子はこのまま公立中学校に進学して高校受験と大学受験を乗り越えられるのだろうかと考えたことが、中学受験を意識したきっかけです。中学受験をして高校と大学はエスカレーター式で進学できる方が、親も本人も気が楽かなと思ったんです。
ーご長女様は中学受験されなかったんですか?
長女は自分で計画を立てて勉強を頑張れるタイプだったので、公立中学への進学を決めていました。長女と次女は年子なんですが、全然タイプが違うんです。小学校の頃は同じ学校に通っていたのですが、同じ学校だとお互いに意識する場面も多かったのか、揉めていることが多かったですね。
ー例えばどんなことで揉めていたのでしょうか。
学校でばったり会った時の態度について家に帰ってから揉めたり、お互いの友だちの目が気になるといってケンカになったり。そんな姿を見ていると、中学生という多感な時期を同じ学校で過ごすことは、娘たちにとってしんどいことなのかもしれない、と考えるようになりました。それならば進学先を別にするのもひとつの手だなと。
―なるほど。中学受験を決めた背景には、さまざまな理由があったんですね。
そうですね。どうすれば子どもたちが2人とも楽しく中学校生活を送れるのか家族で考えて、次女の中学受験を決めました。
―志望校はどのようにして絞られていったのでしょうか?
家から1時間くらいで通学できる距離の学校がいいなと考えていました。そうするとある程度校数が絞られたので、その中で偏差値や学校の雰囲気を見ながら決めていきました。ドライブがてら、娘を連れて学校やその周辺を見に行ったこともありましたね。
大学付属の中学校に行けるといいなという気持ちはあったのですが、調べているうちに次女の学力的に難しいことがわかって。生活が受験勉強一色になるのも避けたかったので、大学付属に限定せずに志望校選びを進めました。
ーそうなんですね。学校説明会には何校参加しましたか?
「如水館中学校」と「盈進学園」の2校です。「如水館中学校」は山の中にある学校で、「盈進学園」は街中にある学校。立地が対照的だったので悩みましたが、最終的にどちらの学校が次女に合いそうか家族で話して「如水館中学校」への進学を目指すことにしました。
―学校説明会に参加した娘さんの反応はいかがでしたか?
私立の学校って、公立の学校に比べると校舎がきれいだったり、設備が整っていたりしますよね。制服もかわいいので、学校説明会に参加した次女は目を輝かせていました。あの時感じたであろう「この学校に行きたい」という気持ちは、勉強を頑張るモチベーションにつながったと思います。
合格を目指し、足りない部分を補うための勉強プロセスを考えた
―通塾は小学4年生からということですが、塾に行き始めたのは受験を見越して?
はい。ただ、受験のために成績を上げたいというよりも、勉強する習慣をつけさせたいという気持ちの方が強かったですね。塾に行く前は、学校の宿題をちゃんとしているかどうかも怪しかったんです。なので、まずは勉強に対する姿勢を整えることから始めようという気持ちで、塾に通うことを決めました。
―通う塾はどのようにして決めたのでしょうか?
いくつかの塾の体験授業に参加して、その中から娘が自分に合うと感じた塾に通うことにしました。もちろん進学実績も検討材料の一つではありましたが、本人が通いたいと思える塾が一番いいと思ったんです。
次女は、自分の意見をハッキリと言うタイプ。塾選びの際も「この塾のここがいやだ」「この先生とは合わなそう」などいろいろ言っていましたが、最終的に「この塾なら通えそう」という塾が見つかってホッとしました。
ー娘さんが選んだのはどんな塾だったのですか?
個別指導の塾でした。通い始めてすぐは得意教科がなくて、本当にイチから中学受験に向けて勉強を始める状態でしたね。個別指導で良かったと感じたのは、1人1人の勉強の進み具合に合わせて苦手分野を重点的に鍛えてくれたことです。
科目ごとに受験対策をしてくれたり、模擬試験の問題をたくさん解かせてくれたり、中学受験のためのサポートが充実していたのでとても心強かったです。
―塾に通いはじめてから、塾以外での勉強時間も増えましたか?
小学3年生までは家での勉強時間は1日30分でしたが、通塾を始めた小学4年生からは1日60分に増えました。塾に通い始めて勉強するポイントがわかるようになったので、家でも頑張ろうと決めたんです。勉強に集中しやすい空間を作るために、机とベッドだけを置いた子ども部屋も用意しました。
姉妹でその部屋を使っていたのでケンカすることもありましたが、次女が勉強しているのを見て長女も勉強をはじめたり、その逆もあったりで、良い影響を与えあっている時も多かったですね。
―受験のための勉強計画は、お父さんが主体となって決めていったのですか?
はい、基本的には私が娘と話し合って決めました。スケジュールを考えるときに大切にしたのは、小学4年生から受験までの期間を勉強漬けにはしたくない、ということ。友だちと遊んだり、クラブ活動をしたり、そういった子どもらしい時間もちゃんと持って欲しかったので、そこは意識して塾や家での勉強計画を立てるようにしていました。
「なんで私だけ」「もうやめたい」スランプの娘と向き合う日々
―中学受験前の時期を振り返って、特に苦労したのはどんなことでしたか?
やはり、継続して勉強をさせることですかね。しょっちゅう娘とケンカをしましたし、父親として憎まれ役をかって出ることもありました。
―お子さんとのコミュニケーションの中で気を付けていたことなどはありましたか?
心がけていたのは、「何のためにするのか」を念頭に置いて話をすること。「いつまでに何をしないといけないのか」を具体的に伝えること。この2点です。
ただ「勉強しなさい」と言うよりも、その方が子どものやる気につながると思ったんです。娘に話すときは「あの学校に行きたいんだよね?それなら今、これを頑張るしかないよね」ということを何度も言いました。
ー論理的に説明されていたんですね。
そうですね。あとは、自分が子どもの頃に親にされて嫌だったことはしないように意識していました。子どもの頃「とにかく勉強しなさい」「偏差値の高い学校に行きなさい」と頭ごなしに言われたことは、納得感が持てなかったので。大人になった今なら「自分のためを思って言ってくれていたんだな」とわかるのですが(笑)。
受験を控えていると思うとつい口出ししたくなりますが、注意するときは理由をちゃんと説明する、するべきことをやっていないときは厳しく言う、というように気を付けていました。
―そのように論理的に説明しても、やはりお子さんを勉強に向かわせることは苦労しましたか?
中学受験って、誰もが通る道ではないですよね。特にうちの地域は中学受験をする子が少なかったので。娘にしてみたら「友だちは受験しないのに、どうして私はやらないといけないの?」という心境になることも多かったと思います。
―子どもの頃は「みんなと同じ」が大事に感じられたりもしますよね。
中学受験することは親が決めたのではなく、娘も納得した上で決めたこと。それでも「中学なんて、受験しなくたって行けるじゃん」と言われたこともありました。
もちろん、娘の言うことにも一理あるし、私自身も私立中学に行かないと絶対にダメだと思っていたわけではありません。でも、一度やると決めたことをやりぬかずに諦めてしまうのは避けたかったんです。娘に「あの学校に行きたい」と思う気持ちが少しでもあるのなら、それに向かって頑張ってほしい。努力して、自分が望んだ環境で中学時代を過ごして欲しいと思っていました。
ー中学受験合格をゴールにしていたというより、一度決めたことをやりぬいてほしいという気持ちだったんですね。
「もう勉強したくない」と頻繁に言っていた時期もあったのですが、「でもあの中学に通いたいなら、いま頑張った方がいいんじゃないの?」と返したりして。勉強したくないけど、憧れの中学校に行くにはいま頑張るしかない。くじけたり、立ち直ったりの繰り返しだったので、受験まで綱渡りをしているような毎日でした。
最後まで諦めずに頑張ったからこそ、見えた世界
―これまでのお話から、娘さんの気持ちをとても大事にされていたことが伝わってきました。結果として、無事に目指していた「如水館中学校」に合格。今はどんな中学生活を送っていますか?
テニス部に入って、恵まれた環境の中で、娘らしく学校生活を謳歌しています。入ってみて感じる私立中学の良いところは、勉強のカリキュラムを学校がしっかり組んでくれているところです。娘も今は塾に行かず、学校の勉強だけで事足りています。
伸び伸び楽しんでいるようで、スマホを没収されて親が呼び出されるなんてこともたまにありますよ。やんちゃだなと頭を抱えることもありますが、明るく元気に過ごしているので、まあ、良かったかなと。
―心中、お察しいたします(笑)。最後に、娘さんの中学受験を振り返って、親としていま何を思いますか?
結局のところ、受験で一番大切なのは“本人のやる気”だと思います。うちの場合は学校見学に連れ出して、実際に校舎を見たり制服を見たことで気持ちが盛り上がって、「この学校に行きたい」という気持ちにつながりました。
勉強嫌いの娘が受験勉強を続けられた理由は、志望校に対する強い気持ちがあったから。これからもそういう気持ちさえ持つことができれば、どんなことにでも挑戦して、乗り越えられるのではないかなと思います。「如水館中学校」は中高一貫校ではありますが、もし娘が別の高校に対して「行ってみたい」という気持ちを持つことがあれば、私はまたその道を応援したいと考えています。
取材後記
終始一貫して「行きたい学校に通うために頑張る」という、大切な目的を見失わないようお子さんに声をかけ続けた、お父さん。娘さんが、ストレスに負けずに受験を頑張り切れた裏には、「子どもらしさも大切にして欲しい」と考えられた無理のない勉強計画や、本音を表現できる心理的安全性の高いご家庭のサポートがあったからこそではないかと思いました。父・母・娘2人の女性家族の中で、孤軍奮闘するエピソードも微笑ましかったです。
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