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【2025年版】STEAM教育が注目される理由とは?親として知っておきたい最新教育トレンド

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大学受験
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塾選ジャーナル編集部

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塾選ジャーナル編集部

昨今、学校や塾、自治体など、さまざまな場面で「STEAM教育」という言葉を目にする機会が増えています。とはいえ、その意味や背景、教育の中でどのように活用されているかまで理解している方は少ないかもしれません。

STEAM教育とは、科学・技術・工学・数学(STEM)に「Arts(芸術・教養)」を加え、複数の教科を横断しながら社会課題の解決に取り組む新しい学びの形です。

本記事では、STEAM教育の意味や目的、STEMとの違い、さらには国内外の実践事例も紹介しながら、これからの日本の教育との関わりについて解説していきます。

お子さまの進学を考えている保護者の方や、最新の教育トレンドに関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

目次

STEAM教育とは?

近年注目されているSTEAM教育。なぜ今、これほどまでに注目されているのでしょうか。まずは、その定義や「STEM教育」との違いから見ていきましょう。

STEAM教育とは

STEAM教育とは、科学・技術・工学・数学といった理数分野と、芸術・デザイン分野、リベラルアーツと呼ばれる人文学・社会学分野を、横断的かつ統合的に学び深める教育です。

ただし、学ぶといっても、授業で教科書を読んで知識を身につけるわけではありません。

STEAM教育では、一つの課題を取り上げ、それを解決するためにさまざまな教科・領域の知識や考え方を駆使したり、自ら調べて新しい知識を獲得したり、総合的な学びを実践します。言い換えれば、「知る」と「創る」を循環させる学び方です。

▼ 学び方のイメージ

知ると創るを循環する学び方の図

※参照元:経済産業省 サービス政策課 教育産業室 2020年1月「GIGAスクール構想」の上で描く「未来の教室」の姿 P.6の図を加工して作成

こうした学び方は学習者が受動的ではなく、主体的に学びを開拓していくのが特徴で、学習者の創造力や論理的思考力、問題解決能力などの獲得・向上が期待されます。

STEAM教育の目的は、さまざまな分野の要素が複雑に絡み合った現代社会の課題を解決するための資質・能力を育成することです。数多くの社会課題のなかでも、特に科学・技術・工学・数学といった理数分野に関連する社会課題解決を重視しています。

STEAMの定義(Science, Technology, Engineering, Arts, Mathematics)

STEAMは、以下の領域の頭文字を組み合わせて作られた言葉です。

STEAMの定義

Science:科学
Technology:技術
Engineering:工学
Arts:芸術・リベラルアーツ
Mathematics:数学

なかでも「A」=「Arts」が指す分野は幅広く、文部科学省では「芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義(※)」しています。

※参照元:文部科学省 STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進

STEM教育との違い

STEAM教育とSTEM教育の違い

少し前までは、「STEM教育」という言葉をよく耳にしたという方も多いのではないでしょうか。「STEAM教育」との違いが気になっている方もいるかもしれません。

実は、現在注目されているSTEAM教育は、このSTEM教育をベースに進化したものです。

STEMは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)を組み合わせた言葉で、科学・技術分野の資質・能力を育成するための理数教育を指します。

その起源は1990年代のアメリカ。科学技術人材の育成や、国民の科学技術リテラシー向上を目的として始まったとされています。科学や技術に関わる各教科の知識や思考を統合しながら課題解決に取り組むことで、より多くの優秀な科学技術人材の育成を目指していたのです。

このSTEMに芸術やデザイン、リベラルアーツの視点を加え、“文系と理系を融合”した教育として発展したのがSTEAM教育です。

創造力や表現力、デザイン的思考を育むことにも重点が置かれている点が、大きな特徴と言えるでしょう。

STEAM教育が注目される理由とは

STEAM教育が注目される理由

なぜ今、STEAM教育が注目されているのでしょうか。最大の理由は、「これからの社会を生き抜く力」を子どもたちに育てるためです。

現代は、AIやIoTなどの技術革新、そして社会構造の変化によって、10年前とは比べものにならないほど複雑な時代になっています。今の子どもたちは、これまでとまったく異なる社会の中で、自ら道を切り拓いていかなければなりません。

そうした未来を生きるために必要なのは、「正解を覚える力」ではなく、「問いを立て、自分で答えを導き出す力」。STEAM教育はまさにその力を育てる、これからの時代にふさわしい新しい教育のカタチとして注目されているのです。

社会の変化とSTEAM教育の関係

社会の変化とSTEAM教育の関係

「問いをたて、自分で答えを導き出す」には、どのような能力を育む必要があるのでしょうか。まずは、「社会の変化」と「必要とされる能力」がどのようなものか見ていきましょう。

社会の変化 必要とされる能力の例
AIやIoTの進化により技術革新のスピードが加速 ・論理的思考力
・ICTリテラシー
社会問題が複雑化・多様化 ・課題発見力
・問題解決力
グローバル化の進展 ・多様な価値観をもつ人々との協働力
・コミュニケーション力
自動化・機械化 ・創造力(クリエイティビティ)
・非認知能力(柔軟性・自律性など)

これからの社会に必要とされる「問いを立て、自分で答えを導き出す力」は、表の能力を総合的に育むことで身につくもの。そこで注目されるのが、これらの力をバランスよく育成する「STEAM教育」です。

STEAM教育で身につく力とは?

STEAM教育によって、子どもにどのような能力が育まれるのか、それぞれの能力を具体的にイメージできる形で紹介します。

STEAM教育で身につく力の例
論理的思考力(プログラミング的思考) 物事を順序立てて整理し、原因と結果の関係を考えながら筋道を立てて考える力。プログラミング教育の中で育まれる、問題解決の基礎となる重要なスキルです。
ICTリテラシー パソコンやタブレット、インターネットなどの情報機器を安全かつ効果的に活用する力。これからの時代に欠かせない、情報を正しく扱い学習に生かす基盤となるスキルです。
課題発見力 何が問題なのかを見極め、まだ誰も気づいていない課題を見つけ出す力。観察力や好奇心をもとに、問いを立てる姿勢が学びやイノベーションの起点となります。
問題解決力 現実の問題に対して多角的な視点から考え、解決策を見つけ出す力。自分で情報を集め、仮説を立てて検証し、最適な方法を導く思考と行動が求められます。
協働力/コミュニケーション力 他者と円滑にコミュニケーションを取りながら、一つの目標に向かって協力する力。意見の違いを尊重し、互いの強みを活かしながら成果を生み出していきます。
創造力(クリエイティビティ) 既存の知識や経験をもとに、新しいアイデアや表現を生み出す力。自由な発想や柔軟な思考を通じて、課題に対して独自のアプローチで取り組むことができます。
非認知能力(柔軟性・自律性など) 感情のコントロールや自己管理、目標達成に向けた粘り強さなど、学力だけでは測れない人間的な力。変化する状況に適応し、自ら学び続ける姿勢を支えます。

実生活に結びついた課題に取り組むプロセスを通じて、上記のように、机上の学びでは得られない能力が育まれる点がSTEAM教育の大きな魅力。また、課題解決に向けて他者と協働する機会が多く、学習の過程そのものが非認知能力のトレーニングにもつながっています。

予測困難な未来を生き抜くために必要なスキルを育む教育として、STEAM教育は今後ますます重視されることが見込まれます。

探究学習との関わり

「STEAM教育」とは別に、「探究学習」という言葉を耳にしたことがある人も多いかもしれません。ただ、「なんとなく聞いたことはあるけど、意味まではよく分からない…」という人もいるのではないでしょうか?

「STEAM教育」と「探究学習」は、似た考え方を持つ学びです。

  特徴 違い 共通点
探究学習 生徒が自ら問いを立て、情報を集めて課題を深掘りし、答えを導く学習法。分野横断的で自由度が高い。 扱うテーマは自由で、社会・文化・環境・生活など幅広い分野から選べる。 ・主体的・対話的な学びを重視
・答えのない問いに挑戦
・実社会とつながる課題に取り組む
STEAM教育 科学・技術・工学・芸術・数学を横断的に学び、課題解決や創造に取り組む実践的な教育。 主にSTEM領域に芸術性・創造性を加えた分野に特化し、理系中心で実験・制作を伴うことが多い。

どちらも、実社会の課題を扱いながら、生徒が主体的に学び、答えのない問いに挑むスタイルが共通しています。STEAM教育が科学技術を中心とした課題を扱うのに対し、探究学習はもっと広い分野にわたって自由にテーマ設定ができるという違いがあります。

STEAM教育は「探究学習の一部」として実践することも可能。高校の「総合的な探究の時間」などでは、STEAM的な視点を取り入れたプログラムが全国的に広がっています。

探究学習について、もっと詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

探究学習とは?意味やメリット、進め方を具体例付きでわかりやすく解説探究学習とは?意味やメリット、進め方を具体例付きでわかりやすく解説

STEAM教育の導入事例

STEAM教育の導入事例

では、現在の日本の教育では、どのようにSTEAM教育が取り入れられているのか、具体的な実践例を紹介します。

学校でのSTEAM授業導入例

日本全国の学校でSTEAM教育を取り入れた授業実践もおこなわれています。参考として、いくつかの高校をピックアップして紹介します。

学校名 STEAM教育の授業内容
北海道滝川高等学校

「北海道滝川高等学校協働共創プログラム」として、地元企業である植松電機株式会社と協働して学ぶ課題解決型授業を展開。

宇宙開発プログラム「缶サット」実習や、惑星探査車にセンサー等を搭載してプログラミング制御で目的地までの自走を目指す課題解決実習などを実施。

茨城県立竜ケ崎第一高等学校・附属中学校

竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校を中心に10校が集まり、生徒や指導者が各学校30名程度参加する「MATHキャンプ」を実施。

「MATHキャンプ」では、数学・情報等を探究するゼミが9つあり、各ゼミに探究グループが2つ程度所属する形になっている。

教師・生徒の在籍校に関わらず、各教師が大学時代に専攻していた分野の指導を担当することで、教師は得意分野を活かし、生徒はより専門的な指導を受けられる環境を整えている。

兵庫県立明石北高等学校

1年・自然科学科の生徒を対象とした11種類のSTEAM 研修を展開。

地元企業や博物館、美術館、大学などと連携し、科学・技術・工学・リベラルアーツ・数学のそれぞれを実験や実習を含めた多様な研修で学ぶ体制を整えている。

数学分野として数学検定とプログラミングを必須とし、科学・技術・工学・リベラルアーツから2分野を選択して学習する。

(参照元:国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業 スーパーサイエンスハイスクール事例と成果より抜粋)

特にSSH(スーパーサイエンスハイスクール)のSTEAM教育・探究学習の実践事例は参考になるものが多いです。

地域・民間企業・自治体との連携事例

STEAM教育は、学校内にとどまらず地域や企業を巻き込んで実践できるのが特徴です。実際に多くの学校では学校外と連携しながらSTEAM教育を進めています。

また、学校単位ではなく、自治体主導でSTEAM教育に力を入れている事例もあります。

地域・民間企業・自治体名 STEAM教育の概要
さいたま市|さいたまSTEAMS教育

SSH(スーパーサイエンスハイスクール…先進的な理数教育を行う高校)に指定された市立高校での先行研究・実践を、小中学校のSTEAM教育に展開。小中学校の「総合的な学習の時間」にSTEAM教育に特化した「STEAMS TIME」を位置付け、授業として扱う。プログラミング的思考を育む時間とPBL(課題解決型学習)に取り組む時間を設定している。

大分県教育委員会|大分県STEAM教育(次世代人材育成)推進事業

各教科、特に数学と英語の探究的な学びを促進する「地域における個別最適な学び推進事業」と、総合的な探究の時間で教科横断的な学びを行う「大分県STEAM教育推進事業」を実施。

大分県教育センターにて県内の高校生を対象としたSTEAM教育プログラムなどを実施。

※1 文部科学省 教育委員会月報 さいたま市教育委員会「さいたまSTEAMS教育」の推進より抜粋
※2 大分県教育委員会 令和6年度大分県STEAM教育推進事業ホームページより抜粋

学校でのSTEAM教育が直面する課題

​STEAM教育は、創造力や問題解決力を育む教育手法として注目されていますが、学校での導入・運用にはいくつかの課題が存在します。以下に、主な課題とその背景を整理しました。​

①教育環境の整備とカリキュラムの再構築

従来の教科ごとの枠組みを超えたSTEAM教育を実施するためには、教室の設備や教材の準備だけでなく、教員が協力して新たなカリキュラムを設計する必要があります。​しかし、これまでの教育体制では、教科横断的な学びを支える仕組みが十分に整っていないため、環境の整備が大きな課題となっています。

② 評価方法の整備

STEAM教育では、創造的な思考や協働作業など、従来のテストでは測りにくい能力の育成が重視されます。​そのため、学習成果をどのように評価するかが難しく、ポートフォリオやルーブリックなど、新しい評価方法の導入とその信頼性の確保が求められています。

③教員の負担増加と研修の必要性

STEAM教育を効果的に実施するには、教員自身が複数の分野にわたる知識と指導力を持つことが求められます。​しかし、現在の教員養成課程では、特定の教科に特化した教育が中心であり、教科横断的な指導力を養う機会が限られています。​そのため、現職教員への継続的な研修やサポート体制の強化が必要です。

④ 地域格差とリソースの不均等

都市部と地方、または公立と私立の学校間で、ICT機器の整備状況や外部との連携体制に差があることが、STEAM教育の普及を妨げる要因となっています。​すべての生徒が平等に質の高いSTEAM教育を受けられるよう、地域間の格差を解消するための政策的支援が求められます。

これらの課題を克服するためには、教育現場だけでなく、行政や地域社会、産業界との連携が不可欠です。​STEAM教育の理念を実現するために、関係者全体で協力し、持続可能な教育モデルを構築していくことが重要です。

学校外でのSTEAM教育のはじめかた

学校でのSTEAM教育の導入に際しては、先述のとおり、教育環境の整備や評価方法の確立、教員の研修など多くの課題が存在します。これらの課題を解決するためには、学校だけでなく、地域社会や企業との連携が不可欠。その一環として、民間の教育機関が提供するSTEAM教育専門塾が注目されています。

これらの塾では、実践的なカリキュラムや最新の教材を活用し、子どもたちの創造力や問題解決能力を育む取り組みが行われています。STEAM教育に力を入れている専門塾をいくつかピックアップして紹介します。​

理科実験教室 アインシュタインラボ

アインシュタインラボでは、物理・化学・生物などさまざまな分野の実験を行う理科実験教室です。実験を通して楽しく理科を学び、「生きた学力」を育成することを目指しています。

対象は4歳から中学生・高校生まで。年齢に合わせてコースが設定されています。中学入試コースや高校入試コースもあり、入試によく出る分野の実験を重点的に行うことで理科の入試対策もできます。

教室は金沢文庫・本部教室と二子玉川校、自由が丘校の3教室です。入会前に無料体験授業を受けられます。

サイエンスワークショップ

サイエンスワークショップは、岐阜県先端科学技術体験センター(サイエンスワールド)で実施している科学体験ワークショップです。

学校休業日以外の平日に開催しており、ワークショップの一覧から体験したいプログラムを予約して参加できます。

ワークショップの内容は、科学工作、科学実験・観察、先端科学技術の3つに分かれています。内容に応じて対象年齢が決まっており、年齢と目的に適したワークショップを選択できます。

主な対象は小学生3〜6年生・中学生・高校生ですが、成人でも参加可能です。

STEMON

STEMON(ステモン)は、STEAM教育とプログラミング、野外活動などさまざまな体験学習ができるスクールです。全国に数多くの教室を展開しています。

年中から小学6年生を対象とし、発達段階に合わせたカリキュラムで数理分野やプログラミングについて学びます。

ものづくりを通して物理や科学、工学を学び、実際に手を動かしながら楽しく学べるカリキュラムが特徴です。小学校高学年のクラスでは、プログラミングスキルを活用してゲームやアニメーション制作、ロボット制御などのハイレベルな学習にも取り組めます。

塾選ジャーナルでは、STEAM教育を含めた探究学習を実施する塾を取材・レポートしています。以下も併せてご覧ください。

参考記事:探究学習塾最前線レポート

これからのSTEAM教育の展望

STEAM教育の展望

これからの時代を生き抜くために求められる力を育成するSTEAM教育は、今後、日本全国はもとより、世界中へと広がっていくと考えられます。

ここでは、これからの教育に求められる姿と、国内外におけるSTEAM教育の最新動向について見ていきましょう。

文科省や教育業界の最新動向

現代は、急速な技術革新や社会構造の変化が進む時代。そのなかで、STEAM教育は、創造力や問題解決能力を育む重要な教育手法として高い注目を集めています。今後、日本全国の学校現場での実践が一層広がっていくことが期待されています。

文部科学省は、令和3年に中央教育審議会が提出した答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」をもとに、個別最適な学びと協働的な学びの実現を推進しています。具体的な学校教育改革の取り組みとして、次のようなものが挙げられます。

具体的な学校教育の変化として、以下のような取り組みが挙げられます:​

  • GIGAスクール構想による一人一台端末の整備
  • ICT環境の整備を通じた個別最適な学びの実現
  • 探究的な活動や体験活動を通じた協働的な学びの促進
  • 同学年や異学年、他校の生徒との学び合い、地域や高等教育機関、企業との連携を含む学びの実現​

これらの取り組みは、2020年代を通じて実現すべき学校教育改革の一環として位置づけられており、今後、学校や地域単位での教育の変化が進んでいくと考えられます。​

また、学校教育の変化と並行して、民間の教育業界でも科学実験教室(サイエンスラボ)やプログラミングスクールなど、STEAM教育を提供する企業が増加しています。これにより、学校外でもSTEAM教育を受ける機会が広がり、子どもたちの多様な学びを支援する環境が整いつつあります。

海外における最新動向

海外における最新動向

日本国内だけでなく、海外でもSTEAM教育の重要性が高まっています。ここでは、アメリカとシンガポールの事例を紹介します。

アメリカの事例

STEM/STEAM教育の先進国であるアメリカでは、政府が「米国STEM教育戦略」を策定し、全国民が質の高いSTEM教育を受けられる社会の実現に向けて、さまざまな施策を展開しています。

日本STEM 教育学会会長の新井健一氏によると、アメリカのSTEM教育の特徴は以下のように整理されます。

  • 全米レベル・州レベルでSTEM教育の教育基準が共有され、それに基づいたカリキュラムを各学校が実践
  • 職業分類の中にソフトウェア開発者やエンジニア、アナリストといった数理・科学技術分野の職業を指す「STEM業種」があり、STEM教育と社会のつながりが構築されている
  • STEM教育の支援サイト「STEM Resources」では、NASAなどの国の機関や州政府、大学、企業などさまざまな組織が独自にSTEM教育に活用できる実践素材を提供し、STEM教育の基盤を強化している

(参照元:新井健一「STEM 教育の海外動向」日本科学教育学会第44回年会論文集(2020))

具体例として、「Art Technically」では、環境により教育機会に恵まれない幼稚園から高校生を対象に、無料のSTEAM教育を実施。​NASAとの連携イベントや、学生が国際宇宙ステーションの宇宙飛行士と対話する機会を提供するなど、実践的な学習体験を重視した活動を行っています。

(参照元:Art Technically 公式ホームページ)

シンガポールの事例

シンガポールでは、国内最大の科学館「サイエンスセンター」を中心に推進しています。サイエンスセンターでは、2014年に政府協力のもと、中学校のすべての生徒にSTEAM教育を提供するための専用組織を設立。この組織には、STEAM分野で修士号・博士号を持つスペシャリストや退職したエンジニアが所属しており、カリキュラム作成や授業のサポートを行っています。科学技術だけでなく、創造性や実践力を育むことを重視し、次世代の人材育成に力を入れています。

STEAM教育に関するよくあるFAQ

STEAM教育に関するよくあるFAQ

 

最後に、STEAM教育に関してよく寄せられる質問にまとめて回答していきます。

STEAM教育とSTEM教育の違いは?

STEM教育は、科学技術や工学、数学、プログラミングといった理数分野を教科横断的に学習する教育です。ものづくりや自然現象などの身近な科学・工学に関わる課題を主な対象とし、生徒が自ら調べたりグループで話し合ったりしながら解決を目指します。

理数分野が軸のSTEM教育に、芸術・デザイン分野や一般教養を指すArtsを取り入れたのがSTEAM教育です。基本的な学習スタイルや方針はSTEM教育を継承していますが、STEAM教育は、文理融合でデザイン的思考や創造力の育成にも力を入れています。

どんな子どもに向いている?

STEAM教育は、身の回りのものごとに対して疑問を抱くことが多い子や、実験やものづくりが好きな子に特におすすめです。

自らそうしたことに興味を持たなくても、家族や友達と実験教室やものづくりのワークショップに参加したり周りの人から働きかけたりすることでSTEAM教育に触れることができます。

STEAM教育は子どもの興味関心を引き出して学びにつなげるため、知識を覚えてドリルを解くような学習が得意でない子でも楽しく取り組みやすいです。

何歳から始められる?

STEAM教育は、主に高校の「総合的な探究の時間」での実践が想定されていますが、高校以前からでも学習に取り入れることができます。

幼児・小学生ならブロックやパズル、実験キットといった知育玩具を使って遊ぶことで創造力や空間認識能力、理数分野への興味関心を育てられますし、中学生なら総合的な学習の時間を使って探究学習に取り組むこともできるでしょう。

STEAM教育は文系・理系を分けず教科横断的にさまざまな知識や考え方を活かして学ぶことを指すので、年齢に合わせた学び方を取り入れることで何歳からでも始められます。

まとめ:これからの教育は“能動的な学び”が主役になる

今回は、STEAM教育の意味や目的に触れ、実践事例も踏まえて教育内容についても詳しく解説してきました。

教科横断的な課題解決型学習を指すSTEAM教育は、現在日本が進める「主体的・対話的で深い学び」「探究学習」「ICTを活用した学び」と関係が深く、全国各地でさまざまな取り組みがおこなわれています。

これからの学校教育には知識重視の教育からSTEAM教育をはじめとする能動的な学び重視の教育への転換が求められているため、今後STEAM教育を含む教科横断的な探究学習はさらに広がっていくでしょう。

執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部
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塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。

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