内部進学を辞退し臨んだ開智中学受験。単身赴任中の父がZOOMで母子をサポート 親たちの中学受験体験記 Vol.6


編集部
塾選ジャーナル編集部
内部進学という安定ルートを手放し、中学受験を決意した娘。父は単身赴任、母は仕事と両立しながら受験をサポート。それぞれの立場で向き合った中学受験の道のりとは――。進学先は、両校判定制度を利用して縁を結んだ開智中学校。受験を通して深まった家族の絆をたどります。
この体験記で進学した学校:開智中学校
【保護者プロフィール】
お名前 | 長谷川 巧(仮名) |
---|---|
お住まい | 埼玉県さいたま市 |
年齢 | 46歳 |
職業 | 会社員 |
性格 | 穏やかで優しい。どんな時も慌てず冷静。 |
家族構成 | 妻、長男(高校2年生)、長女(中学1年生) |
【中学受験を行った子どものプロフィール】
子どもの名前 | 長谷川 美月(仮名) |
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性別 | 女子 |
現在通っている学校名 | 開智中学校 |
現在の学年 | 中学1年生 |
苦手科目 | 理科 |
性格 | すぐに友達ができる。明るく社交的な性格。 |
偏差値 | 受験時期の偏差値55 |
受験結果 | 開智所沢中学校 合格 大宮開成中学校 合格 栄東中学校 不合格 |
内部進学を辞退し中学受験に挑戦。きっかけは娘の一言
―最初に、中学受験をすることにしたきっかけ・理由を聞かせてください。
小学校から私立校に通っていて、中学校は内部進学を予定していました。でも、娘が「中学受験をしたい」と言ったので受験をすることにしました。
小学校生活を送る中で、このまま内部進学するよりも新しい環境で過ごしてみたいと感じたようです。兄が中学受験を行っていたので、それに影響された部分もあるのかなと思います。
─小学校から私立の学校を選ばれたのは、どんな理由からですか?
一番の理由は、教育方針が明確で、親として安心感を持てたことです。
私立の学校は、それぞれの学校が独自の教育理念や運営方針を掲げている学校が多いです。そのため、入学前に明確な学校の理念・方針を知ることができることが魅力的でした。
あとは、保護者の方もうちと同じように同じように学校の方針に賛同して集まってきている方が多いこともあります。そういう環境の方が、安定していて過ごしやすいのではないかと考えたんです。
―内部進学することもできた環境で、中学受験を選択されたんですね。
新しい環境で過ごしたいという娘の気持ちを尊重し、家族で考えた結果、受験を選びました。
安定した道からあえて一歩踏み出すことは、娘にとって“挑戦する経験”になるだろうと思ったんです。そうした経験が将来の選択肢を広げたり、人としての成長につながればいいなと考えました。
―志望校はどのようにして絞っていきましたか?
娘に適した学力や偏差値の学校の説明会に参加しました。その中から、娘が希望する学校を優先して志望校の目星をつけていきました。
まず高校や大学の進学実績、学校内の環境をチェック。我が家は共働きで私が単身赴任をしていることもあり、昼食は弁当持参か給食かといった部分もポイントでした。
─説明会への参加が学校選びに役立ったのですね。
校内の雰囲気や通っている生徒の様子などを実際に見ることができるので、参加してよかったと思っています。娘も校舎や制服、先輩たちの姿を目にして、どのような学校生活を送れるのか具体的にイメージでき、受験に対するモチベーションアップにもつながったようです。
―お子さまの主体性も大切にしながら学校選びを進めていかれたのですね。お父さまからお子さまにアドバイスしたことはありますか?
「自分がやりたいことを大事にした方がいい」ということを伝えました。私が学生の頃は大学に行って就職するというのがスタンダードでしたが、今は将来の選択肢が幅広くある時代。そのため、「学生生活を通じて自分の可能性を見出せるような環境を選ぶといいよ」とアドバイスしました。
通塾スタートは小2。志望校は開智所沢、大宮開成、栄東
―通塾は小学2年生の10月から。比較的早いスタートである印象を受けました。
受験勉強に本格的に取り組み始めたのは、小学4年生からです。入塾時は中学受験を意識してというわけではありませんでした。算数について受験で苦労しそうだなと感じたので、早い段階から対策した方がいいのではないかと考えたんです。
あとは、ちょうど兄が中学受験対策のため塾に通っていたこともあります。「妹にも学ぶ場があったほうがいいのでは」と考えて、小学2年生の10月から塾に通い始めました。
小学4年生からは、塾の科目も算数だけから国算理社の4科目に増やしました。兄が受験勉強をしていたので、勉強への抵抗感はあまりなかったですね。
―受験勉強が本格化すると、お子さまに変化はありましたか?
勉強が進むにつれて、娘のキャパシティーを超えているかなと思うことはありました。
通っていた塾はSAPIXだったのですが、小学6年生になると思考を大切にしたハイレベルな学習が求められてきました。その時期、娘はまだ基礎の部分が理解できていなくて。特に苦手科目の理科・社会ではしんどい思いをしていたようでした。そんな時は、妻が土日や夜に一緒に勉強をしたり、私も家に帰ったタイミングで理科の勉強を教えたりしていました。
―勉強以外で苦労されたことはありましたか?
志望校選びですね。東京・埼玉あたりで学校を探していたのですが、数が多いので選択肢が広くて。小学6年生の春になっても、まだ志望校を絞り切ることができていませんでした。
―最終的に受験校を決めたのはいつ頃ですか?
最終的に志望校を固めたのは、願書を出すタイミングでした。
娘の希望を優先しながら家族で相談し、受験日程の組み合わせを加味して受験校選びを進めました。その結果、直前模試でA判定だった開智所沢中学校を第一志望、大宮開成中学校を第二志望、そしてチャレンジ校として直前模試でC判定だった栄東中学校となりました。
受験勉強の後期になると、受ける学校ごとに受験対策が必要となります。そのため、受験校選びについては「もっと早い段階で受ける学校を絞るべきだった…」という反省がありますね。
中学受験に焦り不安がる妻と娘に伝えた「頑張っていることは知っているよ」
―勉強のサポートは、お母さまが主導されていらっしゃったのですか?
私が仕事の関係で単身赴任をしていることもあり、日常生活のサポートは全面的に妻が頑張ってくれました。妻も仕事をしているので、送迎しやすい立地の塾を選ぶなど、できる範囲で工夫して娘の受験を支えました。
私がすぐに会える距離にいない、という物理的な制限がある中での受験だったので、家族としては大変な時期ではありました。
―そうなんですね。お父さまはお子さまのメンタル面のケアを担当されていたのでしょうか?
娘ももちろんですが、どちらかというと妻のサポートに気を配っていたかもしれません。
受験の主役は子どもと分かってはいるのですが、つい親も一喜一憂してしまうもので…。成績が上がれば喜び、雲行きが怪しくなると不安になってしまうんですよね。兄も中学受験をしていたので、その時の進み具合や成績と比べて焦りが出てしまったり。妻も精神的につらそうにしていました。
─それはお辛かったですね…。
私もZOOMを使って毎週娘と話はしていましたが、家に戻って直接顔を合わせられるのは2週に1回程度。日常のサポートを妻に任せている分、娘や妻の精神的な支えになれるように、なるべく対話する時間を多くとるよう心掛けていました。家族との時間を優先にしていましたが、物理的に離れているというやるせなさはありましたね。
―どのようなことを意識して接するようにしていましたか?
一番気を付けていたのは、母親の不安が娘に悪い影響を与えないようにすることです。そのためにも、自分はフラットでいよう、どっしり構えていよう、ということは意識していましたね。
「最終的に合格できたところに納得して行けば、それがいいんじゃないの」「途中経過では、あまり一喜一憂しないほうがいいよ」というような声掛けを、妻と娘それぞれにこまめにしていました。
─リラックスできるような声掛けを心がけていたのですね。
勉強がうまくいってないなと感じる時、思考がネガティブな方向に向いてしまっている様子の時は、できていることを一つ一つ取りあげて褒める。「頑張っていることは知っているよ」「離れているけどちゃんとわかっているよ」と伝えることを大切にしていました。
娘にも妻にも「自信を持って欲しい」「安心感を持って欲しい」と思いながらコミュニケーションをとることが多かったように思います。
両校判定制度で開智中学校へ。中学受験は親にとっても「今しかできないこと」だった
ー受験当日のお子さまの様子はいかがでしたか?
開智所沢中学校の受験日は、有給をとって私も家に帰っていました。そのため、受験会場への送り迎えにも付き添うことができたんです。
模試ではA判定をとっていましたが、やはり本番となると娘は緊張していましたね。落ち着いて普段の実力が出せれば大丈夫と思っていたので「自信を持ってやればできるよ」と伝えました。
―それはお母さまもお子さまも心強かったでしょうね。
私が一緒に行けたのは開智所沢中学校のみでした。その後に受けた学校では娘が緊張のあまり受験当日におなかが痛くなって駅のトイレから出てこられなくなったり、妻が電車の乗り継ぎに失敗してタクシーで会場に向かったりというハプニングもあったようです。そう考えると改めて、受験って本当に魔物ですよね。
─進学先である開智中学校は受験されなかったようですが…。
開智所沢中学校の出願時に「両校判定」を選択していたんです。開智所沢中学校に合格した際に、開智中学校の合格資格も得ることができました。
─なるほど。「両校判定」という制度があるのですね。
開智学園では一部の入試日程において、1回の受験で「開智所沢中学校」と「開智中学校本校(開智中学校)」両校の合否判定を行うという制度があります。
この制度を利用すると、開智所沢中学校の受験結果が基準を満たしていた場合、開智中学校への合格資格も同時に得ることができるんです。
─最終的に開智中学校を選ばれた理由はどんなことですか?
より良い教育環境で学べることを期待して、開智中学校への進学を決めました。系列校なので、教育方針や校風にはあまり差はありません。ただ、学力面で見ると開智中学校の方がやや高いんです。
―最後に、お子さまの中学受験を振り返って、親としていま何を思いますか?
中学受験に向き合って得たものは、「今しかできないこと」だったなと感じています。娘は成長して、どんどん1人でできることが増えてきています。そう考えると、妻と娘と私の3人で1つの目標に向かって一緒に頑張るという機会は、もしかしたらもうないかもしれません。3人で真剣に色々なことを考えて、話し合って、目標に向かって進んでいったあの時間はとても貴重な時間だったように思うんです。
あと、距離としては離れている時間も多かったですが、心は離れていなかったという実感がありました。そのことが当時の私の励みになっていた気がしていますし、いま頑張れる理由にもなっています。
取材後記
今回の取材で印象的だったのは、中学受験を通じて家族の結びつきが一層強まっていたことです。単身赴任の中でも、家族を気遣い、支え合いながら挑んだ受験。最後におっしゃっていた通り、家族で真剣に向き合った経験は、お子さまにとっても、これからの人生において大きな意味を持ち続けるのではないかと思いました。
今回お話しを伺った「開智中学校」の受験情報はこちら。
「親たちの中学受験体験記」では、さまざまなご家庭の受験エピソードをご紹介しています。詳しくはこちらからご覧ください。
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