日本女子大学附属中学校に合格。“1日15分の家庭学習”が無理ない受験の土台に|親たちの中学受験体験記 Vol.9

「勉強を嫌なものにしたくない」。そんな思いから、小学校低学年の頃から“1日15分”の家庭学習を習慣化してきた母と娘。素直でマイペースな娘は、母の問いかけに導かれ、自然な流れで中学受験に挑み、日本女子大学附属中学校に合格しました。無理をさせず、でも支える。母のちょうどいい距離感が、自然体で受験を乗り越える力になりました。

編集部
塾選ジャーナル編集部
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【保護者プロフィール】
お名前 | 井上 智実(仮名) |
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お住まい | 神奈川県横浜市 |
年齢 | 47歳 |
職業 | パート勤務 |
性格 | 物事を推進する対応力と共感力が高い。集中力が強く打ち込む性格。 |
家族構成 | 夫、長女(中学2年生)、長男(小学5年生) |
【中学受験を行った子どものプロフィール】
子どもの名前 | 井上 未来(仮名) |
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性別 | 女子 |
現在通っている学校名 | 日本女子大学附属中学校 |
現在の学年 | 中学2年生 |
受験期に通っていた塾 | 啓進塾 |
苦手科目 | 算数(計算)・国語(漢字) |
性格 | インドア派。マイペースで素直な性格。 |
偏差値 | 学習開始時期の偏差値 50/ 受験時期の偏差値 58(首都圏模試) |
受験結果 | 日本女子大学附属中学校 合格(第一志望校) 横浜女学院中学校 合格 |
「嫌なことは早く終わらせたい」––メリットを伝えて引き出した中学受験の意志
―早速ですが、中学受験をすることにした理由・きっかけを聞かせてください。
私自身、中学受験の経験者なんです。私は中学受験には失敗し地元の公立中学に進学しましたが、その結果、中学受験・高校受験・大学受験と3回受験をしたため、勉強ばかりの学生時代になってしまったんです。子どもたちには、受験勉強以外の経験もたくさんしてほしいという思いがあり、中学受験を勧めました。
―では、最初から附属の中学校を意識されていましたか?
娘の性格を考えても、自分から積極的に動くタイプではないので、環境が変わるより高校、大学と持ち上がりで進学できる附属校のほうが合っているのではないかと思っていました。
―娘さんに中学受験を提案されたのは、何年生のときでしたか?
小学3年生の夏頃です。娘に「受験するなら、小学校から中学校に上がるときと中学校から高校に上がるとき、どっちがいい?」と聞いたら、「嫌なことは早く終わらせたいから、中学受験する」と。
私も「中学受験なら、英語がないから勉強する教科が少ないよ」と、少し誘導もしましたけど(笑)。
―最初にしっかり、中学受験の動機づけをなさったのですね。娘さんもきっと、納得感を持って受験勉強に取り組めたのではないでしょうか。
もともと素直な性格というのもあって、「中学受験をするなら勉強するものだ」と抵抗なく受け入れてくれました。それに、通っていた小学校にはそんなに受験をする子は多くありませんでしたが、たまたま同じマンションに住んでいる同級生9人のうち、8人が中学受験を目指していたんです。そのような環境だったので、娘も中学受験をすごく特別視することはなかったですね。
―お母さま同士で受験の悩みを相談したりもされていましたか?
はい。お互いに受験情報を交換したり、「全然勉強しない」「どうしたらいいかわからない」というような愚痴を言い合ったり…。本音で話して支え合える存在がいてくれたのは、親の立場としても恵まれていたと思います。
―ご家庭での受験サポートには、旦那さまも積極的に関わっていましたか?
基本的には、私が全面的に1人でサポートすることにしていました。2人であれこれ言うよりも、1人のほうが平和かなと考えていたんです。私はパート勤務で比較的、時間の融通を利かせやすかったこともあり、フルタイムで働かれている保護者の方よりは、苦労は少なかったと思います。
日本女子大学附属を選んだ視点は「娘が楽しく学べるか」。通学路や授業内容も事前にチェック
―ここからは、学校選びについて聞かせてください。事前のアンケートでは、学校説明会には10校ほど参加されたとのことでした。
当時はコロナ禍だったので、オンラインの説明会も多く活用していましたが、実際に行ってみないとわからないこともあるので、現地へは積極的に足を運ぶようにはしていましたね。
学校の雰囲気や教育環境は、ホームページやオンライン説明会でも情報を得られますが、教室の広さなどは、身をもって体感すると想像と違うこともありました。
発見が多かったのは、通学路です。道が暗かったり、人通りが少なかったりすると安全面が気になりますし、駅から近くてもすごく急な坂や階段が多かったりすると、毎日通うのは大変ですよね。あと、娘は体が小さいため、通学時にラッシュの電車に乗るのはつらいだろうなと、家からの近さよりも電車が混まない方向にある学校を重視することにしました。
―学校訪問は、娘さんもご一緒に行っていたのでしょうか?
私が一度下見をして、「ここならよさそう」と思った学校には、文化祭や授業体験の機会に娘を連れて行っていました。当時の娘は「こんな学校がいい」というこだわりがなくて、「遠い学校は嫌だ」とだけ言われたのを覚えています。
中学に上がった今、通学に1時間ちょっとかかるので、毎日「遠いなあ」とぼやきながら通っていますね(笑)。
―受験校はお母さまが主体となって決めていかれたのですね。どのような点を重視しましたか?
「娘が楽しく学校生活を送れるか」が何より大事だと思っていたので、体験型の授業が多かったり、いろいろな経験ができたりすることを重視していましたね。今通っている学校も、通学こそ時間がかかりますが、音楽、美術、国語の授業が個性的なのがいいなと思って選びました。音楽でバイオリンの授業があったり、国語では教科書を使わずに、文庫本を1冊読んで感じたことを発表していくような授業スタイルだったり。自分と向き合えるような学びをたくさんさせてくれるので、この学校を選んでよかったなと感じています。
小学校低学年から“1日15分”の家庭学習を習慣化。スムーズな受験勉強スタートの鍵に
―受験のために、小学3年生の3月から週4日での通塾を開始されたとのこと。塾に通い始めてからの生活の変化に、娘さんは抵抗なく適応できていましたか?
娘は「言われたら素直にやる」タイプ。小学校の友達も同じ塾に通っていたので、自然と受け入れていましたね。塾に行かせるのが大変ということはなかったので、声かけとしては「大変だね」となるべく共感することを意識していました。
―受験勉強のスタート期がスムーズにいった秘訣はどこにあると思いますか?
小学低学年のうちから、家で勉強することを習慣づけていたんです。毎日15〜20分ほどの短い時間でもいいから必ずやる、と決めて勉強を見ていました。毎日勉強するのが当たり前になっていたから、塾の勉強にもスムーズに入っていけたのかもしれません。
―塾に通うようになってからも、毎日の家庭学習は続けていらっしゃったのですか?
はい。塾の宿題はそれほど多くなかったのですが、復習をしっかりやるようにしていました。塾の時間割に合わせて、「この曜日はこの科目を復習しよう」みたいな形です。
―学習計画を立てるのに苦労されたことなどがあれば教えてください。
通っていた塾がシステマチックではなかった分、状況を探りながら計画を立てなければならなかったので、その点だけ少し大変でした。例えば、「この問題が解けなければ、この演習をやる」「この教材の難易度はどれくらい」などが目に見える形ではなかったので、「どこまでやればいいのか?」と迷ってしまって…。
そんなときは、同じマンションのお母さん同士で、お互いに通っている塾のテキストを見せ合ったりして、他塾の情報を参考にすることで疑問を解消したりしていましたね。「うちの塾は意外と算数の難しいところを勉強しているな。算数は今のままで大丈夫そうだな」と気づいたこともありました。
―塾はどちらに通われていましたか?
神奈川県にある啓進塾に通っていました。塾の先生からのアドバイスで印象に残っているのは、「塾を頼ってください」という言葉です。その言葉を信じて、勉強方法については、かなり具体的に聞いていましたね。社会の成績が振るわなかったときにも、「単語をひたすら書いて覚える」という方法を提案してくださり、実践したところ成績がぐんと伸びたこともありました。
勉強方法が主な相談内容でしたが、受験校を迷っていたときに意見をうかがったら、「娘さんには、こちらの学校のほうが合っていると思いますよ」と言ってくださって。子どもの個性を理解して寄り添ってくれたのが、とてもありがたかったです。
塾の宿題は“できる分だけ”と割り切って。無理なく続ける生活リズムと取捨選択の工夫
―家庭での環境づくりでは、どのようなことに気を付けていましたか?
無理な受験はさせないつもりだったので、⽣活リズムが崩れないように心がけていました。
意識していたのは、勉強を始める時間は娘自身に決めさせることです。私から声かけはしますが、「何時からやる?」と聞いて、本人に時間を決めさせるようにしていました。やらされるのではなく、自分で決めたこととして取り組んで欲しかったんです。
そのほうが、自分ごととして頑張れるかと思って。
―生活面で心がけていたのはどんなことですか?
「早寝早起き」ですね。娘は体が小さくて成長期でもあったので、勉強も大事だけど、まずはしっかり睡眠をとることを優先に考えていました。受験直前でも、夜10時には寝て朝は6時には起きていたので、だいたい8時間の睡眠時間は確保していました。
―とても大切なことですよね。勉強時間と睡眠時間を両立させるために、どのような工夫をされていましたか?
小学4年生・5年生は週4日、小学6年生には週5日と、塾の授業数を多く入れていたので帰ってくるのが夜の9時。そこから夜ごはんを食べてお風呂に入ったらもう寝る時間になるので、平日の夜は家で勉強する時間が、ほとんどありませんでした。なので、朝学校に行く前に、前日に塾で勉強したことの復習をする時間にしたんです。
朝の時間だけで間に合わないときは、次の日に回すというより、量を減らして諦めるという判断をしていました。無理をさせないと決めていたので、「全部は無理」と割り切るようにしていましたね。
―受験本番を迎えるまで、お子さん自身は落ち込んだりはせず、淡々と取り組んでいたのですか?
そうですね。本人には、スランプらしいものはありませんでした。むしろ私のイライラとの戦いのほうが大きかったくらい。小学5年生の頃、特に苦手だった漢字と計算がなかなか克服できず、態度には出さないようにしていましたが、「なぜできないの?」ともどかしく感じてしまって…。
小学6年生の夏休み頃に新しく習うことがなくなり、復習中心となってからは私自身も少し余裕ができた気がします。少しずつ苦手の克服に取り組みながら何度も過去問を解いて、直前模試では志望校の合格ラインが出ていたので、落ち着いた気持ちで受験本番に臨めたと思います。
娘に合う学校だと直感。第一志望の日女に見事、合格
―願書は、日本女子大学附属中学校、田園調布学園中学校、横浜女学院中学校の3校に提出されたのですよね。
はい。2月1日の午前に日本女子大学附属、午後に横浜女学院。後日に田園調布学園という入試スケジュールでしたが、第一志望の日本女子大学附属から合格をいただいたので、田園調布学園は受験せず。1日で終えることができました。
―受験当日のお子さんのご様子はいかがでしたか?
娘は意外と本番に強いんですよ。少し緊張はしていたようですが、過去問で点数はとれるようになっていたので、本人なりに自信はあったようです。
私は、「何があるかわからないのが受験だ」という不安もありましたが、「本人が淡々としているのに、母親が緊張してどうする」と思って。なるべくいつもどおりに接することを心がけていました。
―合格発表を見たとき、最初に何を思いましたか?
「ああ、よかった! これで大学まで行けそう!」と、安心した気持ちになりました。「ご縁がある学校に行けばいい」とは思っていましたが、頑張る娘の姿を見てきたからこそ、「絶対合格できるように、後悔することがないように勉強させよう」と、結果につなげたい気持ちが私の中でも日に日に強くなっていたんです。
合格発表は、家族みんなでパソコンの前に集まって確認しました。合格したとわかった瞬間、私があまりにも喜びすぎて、「ママがあんなに喜んでいるから、感動するタイミングを逃したよ」と娘に言われましたね。
―強く願っていた分、気持ちがあふれたのですね。合格してほしいという想いの背景には「この学校だったら楽しい学校生活が送れるはず」という確信があったからですよね。
ええ。もちろん、すべての学校を比較検討できたわけではありませんが、「この学校なら、絶対に娘に合うはず」と思って選んだ学校だったので。娘は中学2年生になりましたが、友達にも恵まれて充実した中学校生活を送っています。
生徒の個性を尊重してくれる校風なので、娘らしく伸び伸びと楽しみながら学んでいる姿を見ると、中学受験をして本当によかったと思います。
受験はいつ経験しても楽なものではありません。娘が選んだ中学受験の道でしたが、振り返ると反抗期が始まる前に、一緒に取り組むことができたことは私にとってもよい選択でした。素直に娘が最後まで頑張り切ってくれたからこそ、今があるのだと思います。
―今、小学5年生の弟さんが中学受験の準備中とのことですが、娘さんのときの経験が生きていますか?
ベースは同じですが、姉弟でまったく性格が違うため、娘のときとまるっきり同じという風にはいきません。息子に合わせた方法に調整しながら準備を進めています。ちょうど入れ違いでなかなか気が休まらない日々ですが、息子にも自分らしい道を進んでもらえるよう、頑張ってサポートしていきます。
取材後記
子どもに合った環境を選び、親子の距離感を大切にしながら、毎日の“15分”という小さな習慣を積み重ねる–––。偏差値に重きを置くより、「子どもが自分らしく頑張れる環境」を大切にしたご家庭の姿が印象的でした。
無理をさせず、工夫を積み重ねながら“親子で走る時間”をつくっていく姿勢に、学びのヒントが詰まっています。
これから受験に向き合う方にも、きっと気づきが見つかるはずです。
執筆者プロフィール

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