高校無償化はここまで拡大!私立も無償?所得制限はどうなる?【2025年最新】

高校無償化とは、高校生の子どもを持つ保護者、そしてこれから高校進学を予定している子どもを持つ保護者の経済的負担を減らしてくれる国の制度です。
しかし「そもそも、高校無償化ってどういう制度なの?」「所得制限はあるのかな?」などと疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。高校無償化制度の利用には、所得制限の他に注意しておきたいポイントもいくつかあります。
本記事では、高校無償化の制度概要について解説します。対象者や所得制限、よくある質問なども一緒に紹介しますので、制度活用の参考としてください。

編集部
塾選ジャーナル編集部
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。

監修者
大山雅司
塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。

高校無償化(高等学校等就学支援金制度)とは
高校無償化(高等学校等就学支援金制度)とは一定の条件を満たした家庭の高校生に対して、高校の授業料の一部や全部を、国の助成金でカバーする制度です。これまであった国の制度を拡充する形で、2025年度と2026年度のそれぞれで対象者が異なります。
以下で制度の目的や背景、2025年時点での最新情報などを見ていきましょう。
いつから始まった?制度の目的と背景(2010年〜現在の推移)
高校無償化は、2010年4月1日にスタートしました。
日本国憲法の第26条では「すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と規定されており、教育を受ける権利を保障しています。
高校無償化の目的は、教育を受ける権利の実質的な保障を目指し、すべての高校生が家庭の経済的理由にかかわらず、安心して教育を受けられることです。
高校は義務教育ではないため、たとえ公立高校であっても授業料がかかります。文部科学省の「学校基本調査」によると、2020年度の高校進学率は98.8%でした(通信制を含む)。ほぼ100%の子どもが高校へ進学している現状を踏まえて、高校無償化の制度が誕生したともいえます。
2010年4月1日スタート当初の内容は「公立高校の授業料は全額無償」「私立高校には一定の支援金が支給」といったものでした。私立高校は公立高校よりも授業料が高いため、支援金では授業料の一部しかカバーされませんでした。
2014年度には制度が見直され、所得制限が導入されました。世帯年収によって金額が異なるものの、年収910万円未満の世帯を対象に、支援金が支給されることになりました。年収910万円以上の世帯は、制度の対象外です。
しかし、2017年11月に内閣官房 ⼈⽣100年時代構想推進室が発表した「⼈⽣100年時代構想会議」によると、妻の年齢別に見た理想の子ども数を持たない理由として、30歳未満では76.5%、30〜34歳は81.1%が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と挙げています。「教育にお金がかかりすぎる」ことが少子化の一因となり、少子化対策のひとつとしても、制度改革が検討されました。
法改正によって2020年4月には、私立高校に通う子どもに対して、最大で年39万6,000円の支給がされるようになりました。さらに各都道府県独自の上乗せにより、地域によっては私立高校でも授業料が実質無料になるケースも出てきています。私立高校も公立高校と同様の、実質無償化が実現したといえるでしょう。
そして2024年度からは、一部の自治体で所得制限の撤廃がされ始めました。例えば、東京都では世帯年収が910万円以上であっても、都内のすべての高校にて、授業料の実質的な無償化が始まっています。
さらに2025年では、世帯年収910万円以上であり「高等学校等就学支援金制度」の対象外であった世帯に対して、国が「高校生臨時支援事業」を立ち上げ、世帯年収910万円以上であっても申請が行われた場合には年額最大で11万8,800円が支給されることとなりました。
こちらは2025年度限りの事業であり、2026年度以降の事業の詳細については現在国が検討中です。
公立高校と私立高校で異なる支援内容
2025年5月時点における高校無償化の支援内容は、公立高校と私立高校で異なります。具体的に違うのは、支援金の金額です。
- 公立高校:年間11万8,800円
- 私立高校:年間39万6,000円まで
公立高校の授業料は、全国一律で月9,900円です。1年間で11万8,000円となり、全額が支援金でカバーされます。
私立高校の授業料は学校によって異なり、平均授業料を勘案した年39万6,000円が上限です(11万8,800円までが高等学校等就学支援金で、超えた分を加算として支給)。年間の授業料が39万6,000円よりも安かった場合は、実際にかかった授業料の金額が支給されます。
ただし、国公立の高等専門学校に通っている場合は年23万4,600円、私立高校の通信制課程に通っている場合は年29万7,000円が上限額です。
2025年時点の最新情報
2026年4月からは、私立高校を対象とした所得制限が撤廃される可能性があります。
さらに支援金の上限を、私立高校の全国平均授業料である年45万7,000円に引き上げる案も検討されています。
「高等教育の無償化」と混同しないために知っておきたいこと
「高校無償化(高等学校等就学支援金制度)」とよく混同されがちなのが、「高等教育の無償化(高等教育の修学支援新制度)」です。どちらも名前は似ていますが、対象や目的はまったく異なります。
政府や公的機関が用語として使う「高等教育」とは、高校ではなく、大学・短期大学・専門学校などの“高校卒業後の教育機関”を指します。
以下の表にて、それぞれの主な対象や支援内容などをまとめました。
項目 | 高校無償化(高等学校等就学支援金制度) | 高等教育の無償化(高等教育の修学支援新制度) |
対象 | 高校生(公立・私立) | 大学生・短大生・専門学生など |
支援内容 | 授業料の一部〜全額を補助 | 授業料・入学金の減免+給付型奨学金の支給 |
所得制限の目安 | 年収590万円未満(扶養人数で変動) | 住民税非課税世帯〜年収460万円(家族構成や支援額などによって、所得制限額が変動) |
申請時期 | 高校入学時・毎年度 | 毎年の春と秋(入学金の免除または減額は、入学後3カ月以内の定められた期日まで) |
高校無償化(高等学校等就学支援金制度)は、主に高校在学中の授業料を軽減・無償化するための制度で、全国すべての高校生(公立・私立問わず)を対象に設けられています。
一方の高等教育の無償化(高等教育の修学支援新制度)は、大学・短大・専門学校といった高等教育機関への進学時に利用できる制度です。住民税非課税世帯や、それに準ずる世帯の学生が対象となっています(家族構成や支援額などによって、所得制限額が変動します)。授業料や入学金の減免だけでなく、返済不要の給付型奨学金もセットで提供されるのが特徴です。
進学先が高校か大学かによって制度が異なるため、間違えて申請しないよう注意しましょう。2つの制度を正しく理解し、子どもの進学段階に応じた支援を受けられるようにしてください。
高校無償化に所得制限はある?対象者・支給額・申請条件をまとめて解説
高校無償化の制度を利用するにあたって、事前に注意しておきたいのが所得制限です。世帯収入などによっては所得制限がかかり、制度を利用できません。
以下で、対象者の詳しい条件をまとめました。
所得制限と支給額のまとめ
世帯年収の目安は、次の3種類に分けられます。
世帯年収 | 支給額(公立高校の場合) | 支給額(私立高校の場合) |
---|---|---|
年収590万円未満 | 年11万8,800円 | 年39万6,000円 |
年収590万円以上、910万円未満 | 年11万8,800円 | |
年収910万円以上 | 支給なし ※国による「高校生臨時支援事業」(2025年度)により、年収910万円以上でも、年額11万8,800円が支給されます。 ただし、2025年度限りの事業であり、2026年度以降の事業の詳細については現在国が検討中です |
支給なし ※国による「高校生臨時支援事業」(2025年度)により、年収910万円以上でも、年額11万8,800円が支給されます。 ただし、2025年度限りの事業であり、2026年度以降の事業の詳細については現在国が検討中です。 |
公立高校では年収910万円未満なら、年11万8,800円の授業料が支給されます。私立高校の場合は、年収590万円未満なら年39万6,000円まで、年収590万円以上910万円未満なら年11万8,800円が支給されます。
年収910万円以上では、公立高校と私立高校のどちらでも支給はされません。
※2025年7月時点では「高校生臨時支援事業」によって、世帯年収910万円以上であっても申請が行われた場合には年額最大で11万8,800円が支給されることとなりました。
ただし、こちらは2025年度限りの事業であり、2026年度以降の事業の詳細については現在検討されている段階です。
世帯収入の算定基準と注意点
世帯収入の算定基準は「課税標準額(課税所得額)×6% - 市町村民税の調整控除の額」の計算式で求められます。
年収590万円や年収910万円はひとつの目安に過ぎません。実際に世帯年収を算定する際は、世帯の構成等もある程度反映した、上記計算式によって判定します。
例えば、計算式で算出した額が15万4,500円未満(年収目安590万円未満)だった場合、私立高校授業料の実質無償化の対象です。そして、15万4,500円以上30万4,200円未満(年収目安910万円未満)であれば、高等学校等就学支援金分の11万8,800円の対象となります。
課税標準額(課税所得額)は、住民税の計算に必要な金額です。特別徴収税額決定通知書や課税証明書などで確認できます。
市町村民税の調整控除額とは、所得控除のうち、配偶者控除や扶養控除といった人に対する控除(人的控除)の差によって生じる、負担増加を抑える金額のことです。給与所得等に係る市民税・県民税 特別徴収税額の決定通知書の裏面で確認できます。
ただし、市町村によっては記載されていないことがあるため、詳細は各自でご確認ください。
扶養人数による違い
高校無償化は所得要件や在学要件などを満たしていれば、高校の授業料の全額または一部が支給されます。
このとき、扶養している家族(子どもや親など)が多くなればなるほど、扶養控除が増え、世帯年収の算出の基準になる課税標準額が減ることになります。
無償化制度を受けるための申請手続きの流れ
高校無償化制度を受けるためには、必ず申請が必要です。申請をしないと、要件を満たしていても支給されませんので注意が必要です。
申請の手続きは基本的にオンラインで進めることになっており、新入生と在校生では手続きの時期や進め方に違いがあります。それぞれの流れを解説します。
新入生の場合の手続き(受給資格の申請)
新入生は受給資格の申請が必要で、例年は高校入学時の4月などに学校から案内があります。
※2025年度の申請時期については、第1回6月予定(4月~6月分)と第2回12月末までに学校から通知予定(7月分以降)となっています。
在校生の場合の手続き(収入状況の届出)
在校生は毎年7月頃に世帯の所得情報(課税額)が更新されるため、学校の案内に従って、収入状況を届け出なければいけません(過去にマイナンバーを提出したなど、手続きの一部が不要になる場合あり)。
共通の申請方法
新入生も在校生も、申請は学校からの案内に従い、原則オンラインで行います。方法は以下の通りです。
- マイナンバーカードを持っている場合は、保護者等のマイナンバーカードを読み取り、マイナポータルから課税情報等を取得する
- マイナンバーカードを持っていない場合は、都道府県で課税情報等を確認するため、保護者等の個人番号を入力する
都道府県ごとで申請方法が異なるため、必ず学校の案内に従って申請してください。
申請ミスで支給されないことも?よくあるトラブル例
中には申請ミスで、本来は支給される支援金がもらえなかったケースも見受けられます。よくあるトラブル例は、次のとおりです。
- 自動支給だと思って申請をしなかった
- 期日を過ぎて申請した
- 申請後に他校へ転校し、再申請をしなかった
高校無償化の制度は、所得制限といった要件に該当していても、自動支給ではありません。学校の案内に従って、必ず申請する必要があります。
期日を過ぎて申請すると、支給されない可能性が生じます。提示された期日を守り、余裕を持って申請しましょう。
また申請後に他校へ転校した場合も、改めて申請が必要です。
私立高校無償化の仕組みと上限額
先で説明したように、高校無償化は私立高校へ通っている生徒も対象です。
以下で私立高校無償化の仕組みや上限額をまとめたので、参考にしてください。
私立高校でも授業料は0円になるのか?
2025年4月より、世帯年収の目安が510万円未満の場合は、年39万6,000円を上限に授業料が支給されます。また世帯年収の目安が510万円以上910万円未満の場合は、年11万8,800円の支給です。
また、2025年度に関しては、世帯年収の目安が910万円以上の場合、「高校生臨時支援事業」により年11万8,800円の支給です。
つまり、年間の授業料が上記金額よりも低い場合は、私立高校でも授業料は実質0円となります。
そして、2025年6月時点では、「2026年4月より、国からの支援金の上限が年45万7,000円に引き上げられる」検討がされている状況です。
自治体(都道府県・市区町村)による上乗せ支援制度
これまで説明した高校無償化の制度は国の施策ですが、都道府県によっては独自の上乗せ支援があります。
「所得にかかわらず、私立高校の授業料も負担が軽減される」「所得金額要件に応じて、入学金が補助される」など、具体的な内容は都道府県によって様々です。
例をいくつか紹介します。
東京都 私立高等学校等授業料軽減助成金事業
東京都の「私立高等学校等授業料軽減助成金事業]」は、在住要件や在学要件に該当すれば、国の無償化制度と合わせて最大49万円が助成されます(全日制・定時制の場合)。
2025年度からは所得制限も撤廃されました。
算定基準額※1 | 世帯年収目安 ①所得のある保護者が1人 ②所得のある保護者が2人)※2 |
授業料の負担軽減(年490,000円まで) | |||
---|---|---|---|---|---|
304,200円以上 | ① 約910万円以上 ② 約1,090万円以上 |
【国の就学支援金等】 全日制・定時制・通信制(学年制):年額118,800円(月額9,900円) 通信制(単位制):1単位4,812円 |
【都の授業料軽減助成金】 全日制・定時制:年額371,200円 通信制:年額157,200円 |
||
154,500円以上〜304,200円未満 | ① 約590万円以上〜約910万円未満 ② 約740万円以上〜約1,090万円未満 |
【国の就学支援金等】 全日制・定時制・通信制(学年制):年額118,800円(月額9,900円) 通信制(単位制):1単位4,812円 |
【都の授業料軽減助成金】 全日制・定時制:年額396,000円(月額33,000円) 通信制(学年制):年額297,000円(月額24,750円) 通信制(単位制):1単位12,030円 |
||
154,500円未満 | ① 約590万円未満 ② 約740万円未満 |
【国の就学支援金等】 全日制・定時制:年額396,000円(月額33,000円) 通信制(学年制):年額297,000円(月額24,750円) 通信制(単位制):1単位12,030円 |
【都の授業料軽減助成金】 全日制・定時制:年額94,000円 |
※1 算定基準額304,200円以上(年収910万円以上)の場合、高校生等臨時支援金が支給されます。
※2 年収は目安となります。実際は保護者の課税標準額等に基づく算定基準額により審査があります。
※3 学校の授業料が支給上限額となります。
参照元:都庁総合ホームページ 「所得制限なく私立高校等の授業料支援が受けられます 6月20日からオンラインで申請開始」
兵庫県 私立高等学校等生徒授業料軽減補助制度
兵庫県の「私立高等学校等生徒授業料軽減補助制度」については、国の無償化制度と合わせて最大46万円が助成されます。
年収目安(保護者合算) | 所得額認定基準額(保護者合算) | 支給限度額(年額)※多子世帯は下記の県補助額に1万円加算 | ||
---|---|---|---|---|
兵庫県内の私立高等学校 | ・兵庫県内の専修、各種学校 ・京都府内の私立高等学校 |
大阪府、奈良県、滋賀県、和歌山県、岡山県、鳥取県、徳島県内の私立高等学校 | ||
590万円未満程度 | 154,500円未満 | (国)396,000円 (県)64,000円 |
(国)396,000円 (県)32,000円 |
(国)396,000円 (県)16,000円 |
(計)460,000円 | (計)428,000円 | (計)412,000円 | ||
730万円未満程度 | 154,500円〜217,700円 | (国)118,800円 (県)120,000円 |
(国)118,800円 (県)60,000円 |
(国)118,800円 (県)30,000円 |
(計)238,800円 | (計)178,800円 | (計)148,800円 | ||
910万円未満程度 | 217,700円〜304,200円 | (国)118,800円 (県)60,000円 |
(国)118,800円 (県)30,000円 |
(国)118,800円 (県)15,000円 |
(計)178,800円 | (計)148,800円 | (計)133,800円 | ||
910万円以上程度 | 304,200円以上 | (国)118,800円 (県)対象外 |
(国)118,800円 (県)対象外 |
(国)118,800円 (県)対象外 |
(計)118,800円 | (計)118,800円 | (計)118,800円 |
対象は以下の要件に該当する方です。
- 各年度10月1日時点で在学していること
- 保護者全員が各年度10月1日時点で兵庫県内に居住していること
- 各年度の保護者全員の年収(目安)が910万円未満であること
例年の申請時期は7月~9月頃で、申請書は在校中の学校で配布されます。
埼玉県 父母負担軽減事業補助金
埼玉県には、父母負担軽減事業補助金の制度があります。県が認可した私立高校や中等教育学校を対象に、授業料・施設費等納付金・入学金を補助しています。
生徒と保護者が埼玉県内に在住し、所得要件を満たすことが必要です。
このように、自治体ごとに支援内容が異なりますので、各自治体ごとの教育委員会ホームページなどで支援制度を確認してみるとよいでしょう。
内容だけでなく、申請時期も都道府県ごとに違うため、在籍している学校や行政の窓口などでご確認ください。
私立高校無償化はずるい?【公立と私立の自己負担額を比較】
私立高校の無償化も進むことで、なかには「私立高校と公立高校では、学費に差がないんじゃないの?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
参考として、東京都内にある私立高校と公立高校にかかる費用を比較してみました。
私立高校(令和7年度 全日制の都内私立高等学校 232校の平均)
入学金 | 25万4,311円(初年度のみ) |
---|---|
授業料 | 50万648円(年額) |
施設費 | 3万5,715円(3年間分) |
その他 | 19万7,397円(年額) |
初年度納付金 | 98万7,437円 |
検定料(参考) | 2万3,375円(受験時のみ) |
3年間の総額 ※授業料・その他は3年間分(年額×3)で計算 | 240万7,536円 |
参照元:「令和7年度 東京都内私立高等学校(全日制)の学費の状況について」
公立高校(令和6年度 東京都立青井高等学校の場合)
入学金 | 5,650円(初年度のみ) |
---|---|
授業料 | 11万8,800円(年額) |
学校徴収金 | ・1年生:3万3,600円 ・2年生:11万6,600円 ・3年生:2万4,600円 |
制服代や教科書代、入学一時金など | ・男子:12万9,664円(初年度のみ) ・女性:13万1,474円(初年度のみ) |
3年間の総額(授業料は3倍で計算) | ・男子:66万6,514円 ・女子:66万8,324円 |
参照元:東京都立学校「入学時に必要な費用(参考 令和6年度入学生)」
国の高校無償化+東京都の私立高等学校等授業料軽減助成金によって、2025年度の私立高校の授業料は、年49万円まで支給されます。3年間で147万円です。
3年間の総額240万7,536円から3年間の授業料の支援額147万円を差し引くと、自己負担額は93万7536円となります。
そして公立高校における3年間の総額66万6,514円(男子の場合)から授業料を引くと、自己負担額は31万114円です。
私立高校と公立高校における自己負担分の差は、3年間で62万7422円です。
2026年4月からの実施が検討されている支援金上限引き上げによって、自己負担額は今よりも少なくなる可能性があります。
一部では「私立高校無償化はずるい」という声もあるようですが、無償化の対象になるのはあくまで授業料のみであり、施設費や教材費などは含まれません。これまで学費の高さから私立高校を選べなかった家庭でも、教育の選択肢が拡大するというメリットがあります。子どもの「教育格差の是正」という観点では、有効な支援といえるでしょう。
私立高校無償化の拡大による入試への影響は?
私立高校の無償化拡大によって、高校入試にはどのような影響があるのでしょうか。大山先生によると、考えられる影響は以下の3点です。
1. 私立の選択肢が「誰にとっても」現実的になる
私立高校の選択肢が「誰にとっても」現実的となります。
所得制限の撤廃によって、これまで制度の対象外だった世帯も、私立高校を視野に入れるようになります。
その結果、大学の附属校や中堅私立進学校の人気が高まり、倍率の上昇や併願戦略の変化などが起きるでしょう。
2. 押さえの私立校(東京都では併願優遇校)の人気上昇・基準上昇
例えば東京など、主に内申点を基準に押さえの私立高校を選ぶ制度(東京では「併願優遇制度」)がある地域では、公立高校との併願層が流れ込むことで、内申点の基準が上がる可能性があります。
実際にここ数年、中堅以上の私立進学校で内申点の基準上昇が見られています。
3. 都立高校の専門学科・下位校の受検者数が減少
すでに倍率が低い都立高校の専門学科や下位校の受検者数が減少する可能性も考えられます。
高校無償化によって、そもそも行きたい私立高校へ単願で行けるのであれば、子どもにとって喜ばしいことです。また長く続く受験からの不安やストレスに耐えられない子どもにとっても、単願で早く進学先が決定すれば、心理的な負荷を減らせます。
しかし、私立高校の受験者が多くなる分、倍率が低い都立高校の専門学科や下位校ではさらに受験者数が減少し、2次募集・3次募集枠ですら定員が埋まらなくなる可能性が懸念されるでしょう。実際に2021年度の制度拡充時には、3次募集の定員が前年の約10倍にまで膨れ上がった例もあります。
高校無償化制度と奨学金制度 │併用OK!
高校無償化の制度とは別に、授業料以外の教育費負担を軽減するための奨学金制度があります。対象は生活保護世帯と住民税所得割が非課税の世帯で、概要は次のとおりです。
世帯状況 | 給付額(年額) | |
国公立 | 私立 | |
⽣活保護受給世帯【全⽇制等・通信制】 | 3万2,300円 | 5万2,600円 |
⾮課税世帯【全⽇制等】 | 14万3,700円 | 15万2,000円 |
⾮課税世帯【通信制・専攻科】 | 5万500円 | 5万2,100円 |
参照元:文部科学省「⾼校⽣等奨学給付⾦リーフレット」
上記は国の補助基準で、都道府県によって制度の詳細が異なります。
授業料を対象とした高校無償化制度とは別制度のため、併用が可能です。要件に該当する場合は奨学金制度も上手に活用するとよいでしょう。
高校無償化のよくある誤解と注意点
高校無償化の制度には、よくある誤解や注意点があります。主なものを見ていきましょう。
実際は「無償化」じゃない?教材費や制服代の自己負担とは
「無償化」と聞いて、中には高校にかかるすべての費用が無料になると思われる方がいるかもしれません。
無償化の対象は授業料のみで、入学金や施設費などはもちろん、教材費や制服代なども自己負担となります。ただし、自治体によっては入学金の補助といった独自制度を設けているところがあります。
無償化の対象外になるケースとは?
2025年6月時点では、公立高校における所得制限はありません。私立高校の場合、年収590万円未満なら年39万6,000円まで、年収590万円以上なら年11万8,800円が支給されます。
2026年度からは、私立高校についても所得制限が撤廃される予定です。
申請しないと適用されないって本当?
所得要件などを満たしていても、申請しないと無償化は適用されません。新入生は「受給資格の申請」、在校生は「収入状況の届出」、そして新入生と在校生のどちらも「申請(収入状況の登録)」が必要です。
詳細は学校や行政の窓口などでご確認ください。
よくある質問(FAQ)
最後に、高校無償化に関するよくある質問を紹介します。
高校無償化は自動で適用されますか?申請は必要ですか?
高校無償化は自動で適用されないため、申請が必要です。新入生は「受給資格の申請」、在校生は「収入状況の届出」、そして新入生と在校生のどちらも「申請(収入状況の登録)」が必要です。
高校入学時などに学校から案内があるため、案内に従って申請するようにしましょう。
教材費や制服代も無料になりますか?
教材費や制服代は無料にはなりません。
無償化の対象は高校の授業料のみで、授業料以外の費用は自己負担です。
私立高校の場合、共働きでも所得制限の対象になりますか?
共働きでも、所得制限の対象となります。
以下は共働きか共働きでないかにおける、所得制限の目安です。
子どもの人数 | 11万8,800円の支給 | 39万6,000円の支給 | |
両親のうち、一方が働いている場合 | 2人(高校生・高校生) ※扶養控除対象者が2人の場合 |
~約950万円 | ~約640万円 |
2人(大学生・高校生) ※扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合 |
~約960万円 | ~約650万円 | |
両親が共働きの場合 | 2人(高校生・高校生) ※扶養控除対象者が2人の場合 |
~約1,070万円 | ~約720万円 |
2人(大学生・高校生) ※扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合 |
~約1,090万円 | ~約740万円 |
参照元:文部科学省「私立高校授業料実質無償化リーフレット」
子どもの人数や扶養控除対象者の人数といった条件が同じ場合、共働き世帯の方で所得制限の額が高くなっています。
無償化の対象外となる具体的なケースはありますか?
以下の学校に在籍している生徒は対象外です。
- 高校等をすでに卒業した生徒
- 3年(定時制・通信制は4年)を超えて在学している生徒
- 専攻科や別科の生徒、科目履修生、聴講生
専攻科については、別に授業料等に対する支援があります。
高校を途中で転校・退学した場合、支援はどうなりますか?
転校すると受給資格が一旦消滅するため、転校先の学校にて、改めて申請しなければいけません。
また高校を中途退学した生徒が、再び高校で学び直す際の支援制度があります。法律上の就学支援金支給期間である36月(定時制・通信制は48月)を経過した後も、卒業までの間(最長2年)、継続して就学支援金相当額が支給されます。
「高校無償化」と「高等教育無償化」は何が違うのですか?
「高校無償化」は公立・私立の高校へ通っている高校生が対象で、授業料の一部〜全額を補助します。
一方の「高等教育無償化」は、大学生・短大生・専門学生などが対象です。授業料・入学金の減免+給付型奨学金の支給を、主な支援内容としています。
まとめ:高校授業料無償化の恩恵を最大限に生かすには
高校は義務教育ではないものの、ほぼ100%の子どもが高校へ進学している現状を踏まえて、高校無償化の制度がスタートしました。
私立高校に関しては、2025年6月時点では所得制限がありますが、要件に該当すれば、高校進学にかかる費用負担の軽減に役立ちます。
無償化の制度を正しく理解しながら恩恵を最大限に生かし、それぞれで損のない選択をしてください。
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塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。