中学受験|習い事と受験は両立できる?「バレエをやめたくない」子どもへの向き合い方

「中学受験に専念するために習い事はやめさせるべき?」「習い事はいつまで続けていていいの?」
スイミング、ピアノ、サッカー…習い事の種類は違えども、“好きなことをやめさせる”ことや、受験ファーストに振り切る葛藤は多くの家庭に共通しています。
今回は、プロ家庭教師として、また中学受験に関するメンター役として多くのご家庭に寄り添ってきた安浪京子先生に、中学受験と習い事の両立について話を聞きました。

編集部
塾選ジャーナル編集部
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監修者
安浪京子先生
神戸大学発達科学部にて教育について学ぶ。関西、関東の大手進学塾で中学受験生に算数を指導、プロ家庭教師としては25年以上。中学受験に関する講演、セミナーなど多数。中学受験の悩みを解消するコミュニティーサイト「中学受験カフェ」を運営。「きょうこ先生」として朝日小学生新聞、AERA with Kidsなどでさまざまな悩みに答えている。 受験算数動画の再生回数は400万回以上、音声配信サービスVoicy「きょうこ先生の『教育何でも相談室』」は教育カテゴリで常時上位ランクイン。著書に『中学受験最短合格ノート』(朝日新聞出版)、『中学受験大逆転の志望校選びと』過去問対策 令和最新版』(ダイヤモンド社)など多数。

中学受験と習い事、両立できない?やめたくない子どもの気持ちにどう応える?
【CASE 028】小学5年生・女子
性格:
勉強熱心で何事にも前向きに頑張る子。
【今回のお悩み】
ペンネーム:マツケンサンジさん(小学5年生 保護者)
小学5年生となり中学受験に向けて、いよいよ本格的に勉強がスタートしました。中学受験に向けて習い事のバレエは断念せざるを得ませんでしたが、娘としてはバレエを続けたいと思っていたようです。受験一本に絞る予定ではありますが、娘の希望に寄り添いバレエを続けるほうがいいか? 今でも迷ってしまいます。
子どもの様子を見て、習い事を続けるか何度でも見直していい
中学受験に向けて、習い事はやめる?続ける?どちらがいい?
中学受験を理由に習い事をやめるべきかどうかは、家庭の受験への考え方や、習い事が子どもにとってどんな意味を持つかによって異なります。だからこそ「こうすべき」という正解はないのです。
受験ファーストでいったんお休みするご家庭もあれば、習い事が勉強の気分転換になるからと続けるご家庭もあります。また保護者が言わなくても、本人から「勉強を頑張りたいから、習い事をやめたい」と申し出るケースもあります。
子どものタイプでいえば、習い事に時間をとられる分、限られた時間で集中して勉強する子もいれば、無理やり習い事を奪った結果、すべてに対してやる気をなくしてしまう子だっているわけです。
受験勉強一本に絞るのか、習い事を続けながら頑張るのかは、お子さんと話し合いを重ねながら決めていくとよいでしょう。
習い事をやめなくてもOK?頻度や目的を見直して両立する方法
中学受験に向けて「習い事はやめるべき?」と悩む方は多いですが、実は“やめなくても続けられる工夫”はたくさんあります。やめるか続けるかの二択ではなく、取り組み方を調整することで、受験勉強と習い事を無理なく両立しているご家庭もあります。
🔸やめる/続ける だけじゃない!中間の選択肢いろいろ
工夫の方向 | 具体的な方法 | 向いているパターン(一例) |
---|---|---|
通う頻度を減らす | 週3 → 週1にする/月2回にする | 疲労や時間的負担が気になるとき |
通い方を変える | チームから個人レッスンへ変更 | 責任のプレッシャーを減らしたい場合 |
目標を決めて区切る | 「◯◯ができたら卒業」など | 子どもに納得感を持たせたいとき |
一時的に休止する | 「6年夏までは続けて、その後お休み」など | 勉強との優先順位を調整したい場合 |
限定的に再開する | 「冬休みだけ少し再開」など | モチベーションが下がってきたとき |
このように、取り組み方を少し変えるだけでも、子どものモチベーションや生活リズムが大きく変わることがあります。「やめる or 続ける」ではなく、「どう続けるか」を一緒に考えていく視点が大切です。
習い事をどう続けていくかは、習っている内容や教室の方針によっても変わってきます。
例えばバレエ一つをとっても、「体を動かして楽しむことを目的とした教室」もあれば、「コンクールや発表会に向けて、本格的に取り組む教室」もあります。後者のように練習の密度や時間が多くなると、受験との両立は難しくなることもあるでしょう。教室のスタンスや取り組み方の“本気度”によって、続け方を工夫する必要が出てきます。
サッカーや野球などのチームスポーツの場合も、所属チームによって事情が違ってきます。
キャプテンなどの役割を担っていると「途中でやめづらい」と感じる子もいますし、人数がギリギリのチームだと、「自分が抜けることで周囲に迷惑をかけてしまうのでは…」と考える子もいます。
実際、あるご家庭では6年生の夏まではチームと勉強を両立し、引退後は週1回だけコーチをつけて個別にピッチングを習うスタイルに切り替えていました。やり方を変えることで、本人の「好き」を続けながらも、受験に集中できる時間もしっかり確保できたそうです。
このように、受験と習い事の関係は「0か100」で考える必要はありません。
やめずに続ける工夫もあれば、少しお休みすることでバランスをとる方法もありますし、通い方を見直すだけで両立が可能になるケースもあります。
家庭ごとにできることや優先したいことは違うからこそ、固定的に「やめる・続ける」と決めてしまうのではなく、その間の“グラデーション”をうまく探していくのがポイントです。
子どもの様子を見ながら、親ができる“判断のヒント”と寄り添い方
親が「やめる?続ける?」の選択肢だけを示してしまうと、子どももその中でしか考えられなくなることがあります。子どもの様子と状況を俯瞰して、多角的に考えて大人の目で見てあげられるとよいですね。
一度は決めたことであっても、子どもの様子を見て合っていないと思うのであれば、もう一度考え直すことも大切です。このとき、子どもが元気かどうか、生き生きしているかは一つの判断基準となります。
例えば、一度は習い事のバレエをやめると決めたとしても、教室に行かなくなってから明らかに元気がなくなって、勉強にも集中できていないようだったら「やっぱりバレエって大事?」と聞いてみる。そして「前と同じ通い方じゃなくてもいいんだよ。少しだけバレエをする時間をつくる方法もあるよ」と、生活に負担のないやり方を提案してあげられるとよいですね。
気持ちの面だけでなく体力の面でも同様です。例えばスイミングの競泳コースで週3日通っていたりすると、その日は疲れて眠くなってしまい勉強にならないこともあるでしょう。それならば、週3日を週1日に減らして勉強する日とのメリハリをつけるという方法もあると思います。
とにかく「0か100じゃない」―その心構えを忘れないようにしましょう。
高学年になると、子どもも自分のキャパがわかってくるもの。
習い事をどうするか、どのタイミングでお休みするか、大人が強制的に決めるのはよくありません。塾の講師から「5年生になったら習い事を減らしましょう」と言われる場合もありますが、好きなことをする時間を取り上げてしまって、子どもが元気をなくしてしまうケースを私はたくさん見てきました。時間は有限だからこそ、子どものモチベーションにも気を配ってあげたいですね。
ちょっと面白い事例を紹介しますね。
サッカーをやっていた子で「リフティングが100回できたら、いったんお休みしよう」とお母さんが条件を出したんです。目標達成までに3週間ほどかかりましたが、それで本人も納得して気持ちよくサッカーをお休みできました。子どもに納得感を持たせるために、小さな達成目標を置くのも一つの方法です。
小学高学年にもなると、自分のキャパシティがわかってきます。体も疲れるし勉強も大変だから「ちょっと整理しなきゃ」と思えるようになってくるんですよね。成績が下がれば「習い事ばかりで勉強していなかったことが原因かな」と自分で気づくこともあります。
とあるお子さんは6年生の秋まで「気分転換になるから」と希望して週1日英語教室に通っていたのですが、11月になって「やっぱり12月と1月はお休みする」と自分で決めていました。
実は子どもも、自分でよく考えています。だからこそ、一度決めたことにこだわらず、必要に応じて話し合いを重ね、そのときそのときで最適な選択を一緒に見つけていくことが大切です。
成功へ導く賢者からの金言!
答えは「0か100か」ではない。
「習い事をやめるorやめない」ではなく、柔軟に考えて!
※塾選調べ:
対象:中学受験をする予定の子どもをもつ保護者50名にアンケートを実施
期間:2025年5月21日~26日実施
執筆者プロフィール

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監修者プロフィール

神戸大学発達科学部にて教育について学ぶ。関西、関東の大手進学塾で中学受験生に算数を指導、プロ家庭教師としては25年以上。中学受験に関する講演、セミナーなど多数。中学受験の悩みを解消するコミュニティーサイト「中学受験カフェ」を運営。「きょうこ先生」として朝日小学生新聞、AERA with Kidsなどでさまざまな悩みに答えている。 受験算数動画の再生回数は400万回以上、音声配信サービスVoicy「きょうこ先生の『教育何でも相談室』」は教育カテゴリで常時上位ランクイン。著書に『中学受験最短合格ノート』(朝日新聞出版)、『中学受験大逆転の志望校選びと』過去問対策 令和最新版』(ダイヤモンド社)など多数。