中学受験|子どもが勉強しないとき親はどうすべき?信じる・管理する の境界線

中学受験を控え、子どもが1人で家にいるときに本当に勉強しているのか、不安になる親御さんは少なくありません。
「計画通りに取り組めているのか」「テレビを見ながらダラダラしているのでは?」と気になり、つい口うるさく言ってしまう。
そして、「なんで信じてくれないの?」と子どもに言われてハッとする…。そんな経験に身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、中学受験を目指す小学生にどこまで自己管理を任せていいのか、プロ家庭教師の安浪京子先生に伺いました。

編集部
塾選ジャーナル編集部
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監修者
安浪京子先生
神戸大学発達科学部にて教育について学ぶ。関西、関東の大手進学塾で中学受験生に算数を指導、プロ家庭教師としては25年以上。中学受験に関する講演、セミナーなど多数。中学受験の悩みを解消するコミュニティーサイト「中学受験カフェ」を運営。「きょうこ先生」として朝日小学生新聞、AERA with Kidsなどでさまざまな悩みに答えている。 受験算数動画の再生回数は400万回以上、音声配信サービスVoicy「きょうこ先生の『教育何でも相談室』」は教育カテゴリで常時上位ランクイン。著書に『中学受験最短合格ノート』(朝日新聞出版)、『中学受験大逆転の志望校選びと』過去問対策 令和最新版』(ダイヤモンド社)など多数。

「子どもを信じたい」けど不安…。中学受験期の見守りに悩む共働き家庭の悩み
【CASE 031】小学4年生・女子
性格:
同性・異性問わず仲良く遊ぶ活発な子。学校では代表委員に立候補するなど人前に出ることも好き
【今回のお悩み】
ペンネーム:yuyuさん(小学4年生 保護者)
共働きなので、学校や塾の宿題を子どもが1人でちゃんとやっているのか不安です。「決められた時間でこなす問題をちゃんと時間通りに解いているのか」「テレビを見ながら勉強していないか」とついつい口うるさく言ってしまいます。この間は、「なんで信じくれないの?」と娘に言われ反省しました。
小学生は1人で勉強は難易度高!親や第三者が“そばで見る”サポートが有効
自走できる子はまれ。小学生が1人で勉強できない理由とは?
今の時代、共働きのご家庭も珍しくありません。そのため、今回のご相談のように「仕事で家を空けている間、子どもがちゃんと勉強しているのか不安」と悩む保護者はとても多いです。
私が知っているご家庭のなかには、子どもが家でちゃんと勉強しているかを確認するために、部屋に見守りカメラを設置していたところもあります。ずっと映像を見続けているわけではありませんが、必要に応じてマイクをオンにして「ちゃんとやってる?」と声をかけることもできるとのことでした。
ただ、こうした見守りは子どもたちには不評で、皆一様に嫌がっていました。子どもは子どもで、「カメラが正面にあると気が散るから、せめて後ろからにして」と要求してきます。そして、実際には背中を盾にして手元で漫画を読んでいたり、動画を観ていたり…。
こうなるともう、親と子の騙し合い、”知恵くらべ”ですね(笑)。
小学4年生くらいになると、子どもは少しずつ知恵がついてきます。「なんで信じてくれないの?」と口にすれば、それ以上追及されないことをわかっているのかもしれません。
宿題のノートやプリントの解答欄をのぞいて、答えが埋まっていても、実はテレビを見ながら解答を写していただけ――なんてことも、決して珍しくはないのです。
小学生に「1人でちゃんとやりなさい」というのは、とてもハードルが高いことです。私は家庭教師として200人以上の子どもたちを見てきましたが、自らコツコツ勉強に取り組めていたのは、ごく数人だけでした。
「子どもが家で1人きりで、計画的に学習するのは難しい」という前提に立って、サポートを考えていくことが大切です。
机に向かえない子を動かす!現実的で無理のない学習サポート術
子どもを勉強机に向かわせるなら、自走を求めるよりも学習環境を用意してあげるのが近道です。たとえば、以下のような方法があります。
- 塾に通わせる(塾の授業数を増やす)
- 家庭教師をつける
- 勉強シッターさんにきてもらう
- 親が家にいる時間を勉強時間と決めて、個室ではなく同じ部屋で勉強させる
- 図書館などを利用する
など、誰かと一緒に勉強できる環境をつくれたら理想的です。
いずれも難しい場合は、「オンライン自習室」というサービスを活用する手もあります。親は入室と退室のログを見ることができますし、子どもは画面越しでも黙々とみんなが勉強しているのを見ていると「自分もやらなきゃ」と思えるので、自然と勉強に集中することができます。
なぜ高学年になると勉強しなくなる?子どもの“やらない”背景とは
小学低学年のうちは、まだ幼く素直な子が多いものです。たとえば「今から買い物に行ってくるけど、勉強して待っててね」と声をかけると、「はーい」と返事をして、本当にテレビを消して勉強に取り組んだりします。
でも4年生、5年生と学年が上がるにつれて、勉強をしなくなる。それは決してやる気がないからではありません。成長とともに興味の対象が広がり、勉強よりもゲームや動画、友達との時間といった“楽しいこと”への関心が強くなるからです。
誘惑に勝つのは大人だって難しいもの。子どもならなおさらです。
また、子どもは親の様子をよく観察しています。「スマホばかり見ていたらダメ」と言いつつ、親がSNSを眺め続けていると、子どももそれを見て「ママパパだって見てるじゃない!」と反発します。
大人でも自制が難しいように、子どもが1人で勉強を進められないのは自然なことなのです。
あるご家庭で実際にあった話なのですが、その家では、6年生の1月という受験直前期に、ご両親が綿密なスケジュールを立てていました。仕事で家にいない間も、子どもが1人で勉強できるようにと考え、何度も電話をかけて進捗を確認するなど徹底していました。
「午前中過去問、午後は過去問の見直しと弱点補強教材」といった学習計画に対して、子どもは電話越しに「やったよ」と返答していましたが、実際に帰宅してみるとまったく手がつけられていなかったのです。
このように受験直前であっても、子どもが1人で学習に取り組めないケースは珍しくありません。
こうした例からもやはり、小学生に「自走」を求めるのはハードルが高すぎます。中学受験の学習内容自体が、小学生にとってはそもそも難易度が高く、自力で管理・理解するには無理があるのです。だからこそ「子どもが1人でやるのは難しい」という前提に一度立ち返り、家庭でのサポート体制や学習環境を整えることが何よりの対策となります。
声がけだけでなく“そばにいる工夫”を!子どもを1人にしない学習習慣のつつくり方
子どもが勉強しているかどうかを気にかけて声をかけることは、決して悪いことではありません。むしろ「これはやらなければならないことなんだ」と子どもに意識させるうえで大切な働きかけです。
ただし、どんな声がけをしたとしても、実際に勉強するかどうかは別の問題。塾や家庭教師、勉強シッターなど第三者の手を借りるのか、親がそばについて勉強を見るのか、ご家庭の事情やお子さんの状況によって最適解は異なります。
まずは現状を見極めたうえで、どのように子どもを1人にしない学習環境をつくるのか、考えることが最初の一歩だと思いますよ。
成功へ導く賢者からの金言!
子どもに自走を求めるよりも、1人にならない学習環境づくりをサポートしましょう
対象:中学受験をする予定の子どもをもつ保護者50名にアンケートを実施
期間:2025年5月21日~26日実施
執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール

神戸大学発達科学部にて教育について学ぶ。関西、関東の大手進学塾で中学受験生に算数を指導、プロ家庭教師としては25年以上。中学受験に関する講演、セミナーなど多数。中学受験の悩みを解消するコミュニティーサイト「中学受験カフェ」を運営。「きょうこ先生」として朝日小学生新聞、AERA with Kidsなどでさまざまな悩みに答えている。 受験算数動画の再生回数は400万回以上、音声配信サービスVoicy「きょうこ先生の『教育何でも相談室』」は教育カテゴリで常時上位ランクイン。著書に『中学受験最短合格ノート』(朝日新聞出版)、『中学受験大逆転の志望校選びと』過去問対策 令和最新版』(ダイヤモンド社)など多数。