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医学部の学費は国公立と私立で3,000万円以上の差!? 進学・入試・制度のリアルを解説

更新日:
大学受験
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医学部進学は、一般的な大学進学とは比べものにならないほど、学費・制度・入試方式が複雑です。特に私立医学部の場合、6年間で3,000万円を超える学費がかかることもあり、保護者としての判断材料がとても重要になります。

本記事では、「国公立と私立の学費の違い」から「奨学金・支援制度」「入試制度の特徴」まで、医学部進学にまつわるお金や制度のリアルを徹底解説します。

さらに学費への備え方や、子どもとの進路の話し方、実際に制度を活用して進学した家庭の事例まで、保護者目線で気になる情報をまるごとカバー。医学部進学の可能性を、選択肢として前向きに考えられるよう、正しい情報と視点をお届けします。

塾選ジャーナル編集部

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目次

医学部の学費はどれくらい?国公立と私立でここまで違う

国立大学医学部の学費は6年間で約350万円

医学部学秘 1

●内訳

項目 金額
入学金 282,000円
授業料(年額) 535,800円
6年間の学費総額(標準) 3,496,800円

国立大学は全国どこの都道府県でも、学部でも授業料の差はありません。一般的な国立大学の他学部と比べて異なる点といえば、医学部は6年制なので授業料総額が違うくらいです。

国立大学で学費に差がない理由は、授業料や主要な費用が文部科学省が設定する標準額に準拠するためです。

ただし国立大学では標準額から20%を上限に増額できるため、学費総額が異なる場合があります。例えば、

大学名 入学金 年間授業料 6年間の合計学費 備考
東京科学大学
(現・東京科学大学)
282,000円 642,960円 4,139,760円 2020年4月以降入学(予定)者
東京医科歯科大学 282,000円 642,960円 4,139,760円 2021年4月以降入学
千葉大学 282,000円 642,960円 4,139,760円 令和2年4月以降の入学者
東京大学 282,000円 642,960円 4,139,760円 令和7年度以降入学者

などが該当します。

公立大学医学部の学費は、国立大学と大きく変わらない

公立大学の場合は都道府県や市町村単位で若干異なりますが、授業料は国立大学の標準額と近い金額になります。国立大学の場合と違って特徴的なのは、公立大学では大学がある都道府県(または市区町村)出身者は、他府県から入学するよりも入学費用が安くなるケースが多いことです。

横浜市立大学、名古屋市立大学、大阪公立大学の初年度学費(入学金/施設設備費/授業料)を例に見てみましょう。

大学名 項目 市内/府内居住者 市外/府外居住者
横浜市立大学 入学金 141,000円 282,000円
施設設備費 150,000円 200,000円
授業料 573,000円 573,000円
合計 864,000円 1,055,000円
名古屋市立大学 入学金 232,000円 332,000円
授業料 535,800円 535,800円
合計 767,800円 867,800円
大阪公立大学 入学金 282,000円 382,000円
授業料 535,800円 535,800円
合計 817,800円 917,800円

ご覧のとおり、大学が所在する自治体に住んでいるかどうかで、納入する入学金や施設設備費が異なる場合があります。

反対に、札幌医科大学のように入学金に差がない大学もあれば和歌山県立医科大学のように、入学金が【県内生:282,000円 / 県外生:752,000円】と大きく差がある大学もあります

公立大学の医学部を検討する場合は、各大学のHPでかかる入学費用を確認するようにしてください。

私立大学の医学部は6年間で最大4,600万円超

医学部学秘2

※上記金額はあくまで最大額の一例です。

私立大学の医学部は、国立大学の医学部と比較して、かかる学費に大きな差が生じます。「将来、医学部へ進学したいけど学費面が心配」という場合は、国立大学の医学部が選択肢として優先されると思います。

ただし志望する医学部が私立の場合でも、学費だけを理由に諦めてしまうことがないようにしたいところです。そのためにも、

【1】どれくらい学費が必要か

【2】奨学金や地域枠制度はないか

【3】特待生制度はないか

【4】国や地方公共団体などが実施する(低金利)教育ローンはないか

【5】ほかの支援制度が利用可能か

など、早い段階から調べておきましょう。奨学金や教育ローン、具体的な地域枠などについては、以下の記事も参照ください。

参考リンク

奨学金とは?知らないと損する制度・申請方法、種類をわかりやすく解説【2025年版】

教育ローンのおすすめはどこ?仕組み・金利・審査まで初心者向けにやさしく解説

【2026 大学受験】慶應義塾大学医学部が2026年度の「栃木県地域枠」の情報を公開

【2025 大学受験】岡山大学が2025年度入学者選抜における医学科地域枠コースの二次募集について公開

●人気の私立大学医学部10校の学費一覧

私立大学 6年間総額 入学金 初年度費用 2年次以降
国際医療福祉大学 ¥18,500,000 ¥1,500,000 ¥4,500,000 ¥2,800,000
順天堂大学 ¥20,800,000 ¥2,000,000 ¥29,000,000 ¥3,580,000
関西医科大学 ¥21,000,000 ¥1,000,000 ¥2,900,000 ¥3,620,000
日本医科大学 ¥22,000,000 ¥1,500,000 ¥4,500,000 ¥3,500,000
慶應義塾大学 ¥22,640,000 ¥200,000 ¥3,940,000 ¥3,670,000
東京慈恵会医科大学 ¥22,500,000 ¥100,000 ¥3,500,000 ¥3,800,000
自治医科大学 ¥23,000,000 ¥1,000,000 ¥5,000,000 ¥3,600,000
東邦大学 ¥25,800,000 ¥1,500,000 ¥4,800,000 ¥4,200,000
昭和医科大学 ¥27,000,000 ¥1,500,000 ¥4,500,000 ¥4,500,000
大阪医科薬科大学 ¥28,410,000 ¥1,000,000 ¥5,985,000 ¥4,485,000
東京医科大学 ¥29,400,000 ¥100,000 ¥4,800,000 ¥4,920,000
藤田医科大学 ¥21,500,000 ¥1,500,000 ¥4,920,000 ¥3,320,000
産業医科大学 ¥30,490,000 ¥1,000,000 ¥5,915,000 ¥4,915,000

※上記の金額には委託徴収金(大学の収入にはならない)は一切含みません。

医学部で学費以外にかかる費用

医学部は「学費が高い」とよくいわれますが、実際に進学してからは学費以外にもさまざまな支出がかかってきます。特に私立大学に通う場合や自宅外通学になると、家計への影響はさらに大きくなります。

予備校・塾・家庭教師などの費用以外にも、受験から入学までの間にも以下のような費用がかかることを踏まえておく必要があります。ここでは、医学部進学に際して見落とされがちな「受験・入学前後〜在学中にかかる代表的な費用項目」について整理しておきましょう。

●受験前〜入学までにかかる主な費用

項目 内容・相場 備考
受験料 【国公立】
共通テスト18,000円
二次試験17,000円〜
(最大34,000円)

【私立】
1校あたり
40,000〜60,000円
私立は併願校が多いため、数十万円単位になることも
交通費・宿泊代 会場が遠方の場合は新幹線・ホテル代など 国公立・私立ともに、主要都市に受験会場が集中

特に私立は複数受験することが多く、10校受けると受験料だけで50万円近くになるケースも珍しくありません。

●入学後にかかる主な費用

費目 目安金額 補足事項
教科書代 約10〜20万円
(6年間合計)
医学書は高額。
CBT・国家試験対策などの参考書や問題集・予備校代などを含めると、さらに高額になることも
実習費 大学ごとに異なるが、白衣・聴診器・予防接種・保険代などが必要 高学年から始まる臨床実習で交通費・生活費が増加
下宿・生活費 月額15万円前後
(家賃7〜8万円+生活費)
※東京23区内の想定
東京23区内や都市部では家賃水準も高め

特に臨床実習が本格化する4〜6年生では「朝から夜まで拘束される」「実習先が遠方」ということも多く、アルバイトが難しくなるため、仕送りや奨学金への依存度が高まる傾向があります。

医学部は一般の学部と異なり、6年間通学する長丁場です。授業料や入学金だけでなく、毎月かかる生活費、後半に増える実習負担、教材費などをトータルで考える必要があります。

特に「下宿+私立」の組み合わせは最もコストが高く、学費以外に年間180〜200万円近い出費がかかるケースもあります。

医学部日 3

※上記金額はあくまで目安であり、住居形態や生活スタイルにより変動します。

主な出費項目は、【教科書費】【教材費】【参考書代】【生活費(家賃、食費、交通費など)】【学会費】【研究費】【課外活動費】です。

早めに出費に備えたり、奨学金や支援制度の情報を押さえておいたりすることが、現実的な進路設計につながります。

医学部の入試制度とは?国公立と私立の違い

国公立は「共通テスト+2次試験」、私立は「独自試験」

国公立大学の医学部では、大学入学共通テストおよび2次試験をすべて合わせると、国語、英語、数学、社会、理科の5教科すべてが受験科目になります(一部の総合型・学校推薦型選抜のケースは除きます)。

一方で私立大学の医学部では、一部の総合型・学校推薦型選抜および特殊な一般入試方式を除けば、英語と数学に加えて理科2科目の4教科であることがほとんどです

推薦入試・AO入試・地域枠入試とは?

AO入試(総合型選抜)学校推薦型選抜入試地域枠入試は、一般入試とは異なる選抜方法です。

一般選抜入試(前期は2月末/後期は3月上旬)よりも前に実施されるため、万が一不合格になった場合は一般選抜の受験も可能です。

ただし出願資格(各種資格試験・評定平均・現役浪人の別)や専願受験、そして一般選抜よりも早い受験日程になるため、現役生は特に受験準備が十分にできないケースもあります

同時に、特殊な入試対策に時間が割かれるものの、最難関受験である医学部受験で受験機会を増やすことは、合格を勝ち取る貴重な機会になります

医学部合格に向けて有利な受験機会になり得るのかも含めて、事前に選抜方法の特徴を調べて受験に臨みましょう。

●推薦入試の区分と特徴

入試区分 内容・特徴 備考
指定校推薦 大学が指定した高校に推薦枠を与え、その高校の生徒に限定して募集される推薦入試。校内選考を経て出願 出願資格に制限あり
(指定校の生徒に限る)
公募推薦 一般公開された条件(評定平均など)を満たせば、どの高校の生徒でも出願可能な推薦入試 出願者の母数が多いため、一定の競争がある
地域枠推薦 地域医療や診療科不足の対策として設けられた制度。出身地・居住地や卒業後の勤務先に条件がある 地域や大学により、「共通テスト不要」か「共通テスト必須」かの違いがある。年内合否判明の大学もあり

大学入学共通テストの受験が不要で、「年内に合否が判明する大学」と、「共通テスト結果により判定される大学」の2パターンがあります。ほとんどの大学が共通テスト結果により合否が判定される大学ですが、出願時には要確認です。

●AO入試(総合型選抜)の特徴

項目 内容
特徴 学力試験だけでなく、個性・意欲・大学との適性などを総合的に評価する入試方式
選考方法 書類選考・面接・小論文などが中心。大学によってはプレゼンテーションやグループディスカッションを実施
メリット 一般入試より競争率が低い場合があり、学力以外のアピールが可能。個性や熱意が重視されやすい
デメリット 大学によって選考基準や形式が異なり、出題傾向が不明確で対策が難しい。過去問が手に入らないことが多い

AO入試は「学力以外も評価される」という強みがある一方で、一般入試のように過去問が入手できず、事前に過去問対策がしにくいことがほとんどです。

●地域枠入試の特徴

項目 内容
目的 医師不足や特定の診療科の人材確保を目的とし、特定地域の出身者・在住者、または卒業後に指定地域・診療科で勤務する意思がある人を対象とする入試
特徴 一般枠よりも競争率が低い場合がある一方で、卒業後の進路に制約がある。大学・自治体ごとに条件が異なるため、事前の確認が不可欠
メリット 奨学金制度が充実しているケースが多く、学費や生活費を大幅に軽減できる可能性がある
デメリット 卒業後の進路が地域や診療科で限定されるため、将来的なキャリアの自由度が下がる可能性がある

地域枠入試は、地域医療への貢献を目指す方にとって大きなメリットですが、卒業後の進路に制約があります。自身のキャリアプランと照らし合わせて検討することが重要です。

医学部の入試で問われるのは学力だけではない

医学部入試では「学力試験」の結果以外にも「面接」や「小論文」「調査書」、そして医師としての「適性」や「意欲」そして「倫理観」なども問われます。

特に面接では「志望理由」「医師としての資質」「高校/大学生活の内容」「パーソナリティ」「コミュニケーション能力」「協調性」などが評価されています

評価項目 内容・ポイント 補足・留意点
面接試験 志望理由(なぜ医学部か/なぜその大学か)を明確に答えることが求められる 自分の将来像や動機を自分の言葉で説明できるよう準備が必要
医師としての適性 理想の医師像、自分の長所・短所、医療に対する考え方、倫理観など 単なる自己PRではなく、医師としての資質があるかを見られる
学校生活の振り返り 高校での取り組みや経験、成績、課外活動、高卒後の経験など 調査書との整合性が問われる場合もある
パーソナリティ 尊敬する人、趣味、ストレス対処法などを通じて人間性や性格を確認 面接官との会話の中で、自然な受け答えが求められる
小論文 医療・社会・倫理などのテーマについての考察力・表現力が問われる 実際には筆記試験(数学・理科・英語など)を小論文枠で出す大学もあり。
出題内容の事前確認が必須
調査書 成績、部活動、生徒会、ボランティアなどの活動を通じて人となりを総合的に評価 出願時に提出。
自己PR書と矛盾が出ないように注意
適性検査 ストレス耐性、倫理観、思考スタイルなどを確認するための心理検査 全大学で実施されるわけではないが、導入する大学は増加傾向
集団面接/グループディスカッション 協調性、リーダーシップ、コミュニケーション力、論理的思考力が評価対象 医療現場でのチームワーク重視の観点から導入。
初対面の人との議論や協働が試される

大学により評価方法や配点の比重は異なります。個別大学の出題傾向・方式は必ず事前に調査することが大切です。

合格難易度・併願戦略にも大きな違いがある

医学部入試は、国公立と私立で難易度や併願戦略に大きな違いがあります。

国公立医学部は、大学入学共通テスト対策と一般入試対策を並行して実施しているため、一般的に複数の私立医学部の併願には、慎重な対応と選択が必要です。

一方で私立医学部は大学ごとに試験傾向や問題難易度が大きく異なるため、併願戦略(出題傾向や対策が似ている受験校の絞り込み)が非常に重要になります。

私立大学医学部受験、併願受験校の絞り込み方

① 志望大学をリストアップ
まず、自分の進路や条件に合う大学をリストアップします。

《ポイント》

現在の成績・偏差値などは考慮しない。
"入れそうな大学"ではなく"行きたい大学"をリストアップする

② グループ分け
出題傾向・受験倍率・偏差値・合格最低点などで、大学をグループ分けします。

《ポイント》

出題傾向と合格最低点は、科目別に確認。
合格最低点については、得意科目が苦手科目を補って到達するのが一般的。

③過去問研究
各大学の過去問を分析し、相性の良い大学に順位付けをします。

《ポイント》

少なくとも最新年度から5年分(入試方式別に)遡り、科目別に分析する。可能なら過去10年分を分析できたらベスト。
受験年度によって出題傾向や合格最低点が大きく異なる場合があることも留意する。

④受験スケジュール
受験日・受験会場・試験時間を確認し、受験スケジュールを立てます。

《ポイント》

必ず移動日や休憩日も考慮する。
連続して3日以上の連続受験は体力的に相当負担が大きいため、避けるのが無難。

制度を知れば変わる!奨学金・支援制度で広がる進学の可能性

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国の奨学金制度(JASSO):第一種・第二種・給付型

JASSO(日本学生支援機構)が提供する奨学金には、大きく分けて「第一種奨学金(無利子)」「第二種奨学金(有利子)」「給付型奨学金」の3つがあります。それぞれに対象条件や返済有無などが異なり、家庭の経済状況や進学先の学費に応じた制度選択が重要です。

また入学時の初期費用に備える「入学時特別増額貸与奨学金」や、申し込みタイミングに応じた採用方式も用意されています。

●JASSO(日本学生支援機構)の入学金の種類

区分 返済有無 特徴 対象者の条件例 月額目安/備考
第一種
奨学金
(無利子)
あり
(元本のみ)※返済は卒業後
学力・家計状況ともに一定水準以上の優れた学生に対して無利子で貸与 成績が優秀/世帯年収制限あり 月額:自宅生2~5.3万円、自宅外生2~6万円(※大学・学年により異なる)
第二種
奨学金
(有利子)
あり(利子付き)※返済は卒業後 採用基準が第一種よりも緩やか。利子付きで柔軟な月額設定が可能。第一種奨学金と併用利用可 世帯年収・成績の基準を満たせば比較的通りやすい 月額:2~12万円(1万円単位で設定可能)利率例:利率固定1.712%/利率見直し1.000%(2025年6月時点)
給付型
奨学金
なし 経済的に特に厳しい家庭の学生に対して、返済不要で支給される制度 厳格な家計審査+学業成績基準あり。2020年4月から対象者や給付金額が拡充されている 自宅生:月額2~3万円、自宅外生:月額3~4万円など(住民税非課税世帯を対象)

なお申し込みのタイミングは進学前申込の「予約採用」、進学後申込の「在学採用」、緊急時申込の「緊急採用」の3種類です。奨学金の種類や申し込み方法によって審査基準や採用条件が異なるので、必ずJASSO公式ホームページなどで、最新情報を確認するようにしましょうこちらの記事でも詳述しています)。

地方自治体・病院・財団の独自支援制度とは?

地方自治体や病院、そして財団が運営する奨学金や支援制度があります。地域医療を支える医師を育成・確保するのが目的です。

卒業後に一定期間、指定された地域や病院で勤務することを条件に、奨学金の返還免除や、大学入学時の選考で優遇措置を受けることができます。

地方自治体や病院の奨学金制度(地域枠など) 

奨学金の返還義務を免除する代わりに、卒業後一定期間、指定された地域や病院で勤務することが条件となります。給付金額は自治体や病院によって異なりますが、おおむね月額10万円から30万円程度が一般的です。日本学生支援機構の奨学金など、ほかの奨学金と併用できる場合もあります。

一部の病院が独自に実施している奨学金制度

一部の病院グループなどが、医師不足の解消や診療科の偏在を解消するため、独自に奨学金制度を設けています。卒業後にその病院で勤務することを条件に、奨学金の返還免除や、高額な奨学金の貸与を受けることができます。

例:徳洲会グループ 「奨学金制度ページ」

私立大学が実施する特待生・授業料免除制度

大学が成績優秀者や経済的に困窮している学生に対して、学費の一部または全額を免除する制度です。多くの私立大学医学部で設けられており、奨学金制度と併用することで、経済的な負担を軽減しながら医師を目指すことが可能です。

●私立大学の授業料を優遇する主な制度

制度名 内容
特待生制度 大学が定める成績基準を満たした学生に対し、学費の一部または全額を免除する制度。
入試成績優秀者や国家試験結果を含む総合評価による選考が多い。
大学によっては特定条件を満たす学生も対象。
授業料
免除制度
経済的な理由で学費の支払いが困難な学生を対象に、授業料の一部または全額を免除する制度。
大学によっては成績優秀者も対象となる場合あり。

例として国際医療福祉大学の特待制度例を紹介します。

●国際医療福祉大学の場合

項目 特待奨学生 S 特待奨学生 A
選抜人数 一般入試で20名 一般入試で25名
共通テスト利用で5名
留学生・帰国生特別選抜で若干名
給付額(最大) 6年間で1,700万円 6年間で1,400万円
学生納付金 6年間ゼロ 6年間で300万円
※国立大学よりも低額な学生納付金での進学が可能
入学金 150万円を免除
※入学後返還
150万円を免除
※入学後返還
学生寮 「成田インターナショナルハウス」「公津の杜ハイツ」の寮費が全額給付 「成田インターナショナルハウス」「公津の杜ハイツ」への入寮が優先的に可能

出典:国際医療福祉大学「医学部特待奨学生制度」に関するページ

奨学金の注意点(返済義務・条件・併用可否など)

奨学金の利用にあたっては、返済計画やほかの制度との併用可否、進学先の大学が対象校であるかなどを事前に確認することが重要です。

貸与型奨学金の注意点

  • 返済義務がある。
  • 滞納すると延滞金が発生したり、最悪の場合、財産の差し押さえや自己破産につながったりする可能性がある。

給付型奨学金の注意点

  • 一定条件を満たさないと給付が打ち切られたり、返還を求められたりする場合がある
  • 特定の大学や学部のみを対象としている場合がある
  • 成績優秀、品行方正、健康状態良好などの条件が設けられていることが多い
  • 採用候補者は資産状況を申告する必要がある
  • 虚偽の申告が発覚した場合は奨学金の返還を求められることがある

医学部の学費はどう備える?学資保険・積立・教育ローンの活用法

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学資保険の特徴と注意点:満期・解約・利率

学資保険は、子どもの教育資金を計画的に準備できる方法として、多くの家庭に利用されています。同時にデメリットも留意したうえで検討することをおすすめします。

●学資保険のメリットとデメリット

観点 メリット デメリット
保障機能 親が万が一の事故や病気で死亡した場合でも、死亡保障がついているため、教育資金が確保される ―(保障のないプランもあるため、内容の確認が必要)
資金の積立 計画的に積立ができるため、進学時に合わせて準備がしやすい 長期間の支払いが必要なため、収入が変動する家庭には負担になる可能性がある
貯蓄性 一部のプランでは、満期時に受け取れる金額が保険料を上回る(貯蓄型) 中途解約すると元本割れのリスクがあり、緊急時の引き出しには不向き
受取方式 進学時期に合わせて分割で受け取れるため、必要な時期に必要な額を確保しやすい 利率が高くないため、長期投資としてのリターンは限定的

NISA・つみたて投資信託のメリットとリスク

NISAやつみたて投資信託も、学費の備えにも活用されるケースが増えています。

●NISAのメリットとデメリット

項目 NISA つみたて投資信託
メリット 配当金や売却益が無期限で非課税 少額から投資できる
非課税保有限度額(総枠)が最大1,800万円 透明性が高く信頼できる
長期・分散投資でコツコツ続けられる
デメリット 投資できる商品に条件がある 元本割れの可能性がある
損失が出た場合に損益通算ができない 短期間で大きな利益をあげるのは難しい
コストがかかる(信託報酬など)

なお学資保険と同様、デメリットへの留意が必要です。

教育ローンの種類:国の教育ローン・民間ローン

医学部の学費支払いに利用できる教育ローンには次のようなものがあります。

●教育ローンの種類

借入機関 日本政策
金融公(国)
労働金庫 民間の金融機関
(例.横浜銀行)
上限金額 350万円 2,000万円 1,000万円
金利 2.85%
固定金利
保証料別
6月2日現在
2.550%
固定金利
10年以内借入
証書貸付型
団体会員の構成員
0.9%〜3.3%
変動金利
保証料なし
返済期間 最大15年 最大15年 最大18年
融資審査 通りやすい 通りやすい やや厳しめ

そのほか、民間の教育ローンについて詳しく知りたい方は、

教育ローンのおすすめはどこ?仕組み・金利・審査まで初心者向けにやさしく解説

をご覧ください。

医学部進学に向けた長期資金計画

まずは目標(必要)金額を明確にし、それから積立方法や奨学金、教育ローンの検討を始めてください。具体的な長期間の資金計画を立てることで、経済的な負担を軽減し、安心して医学部を目指すことができます。

資金計画づくりのポイント①: 学費以外にかかる費用を見積もる

教材費と生活費、自宅外通学の場合は家賃、光熱費、食費・通信費・交際費・交通費を考慮し、6年間で必要となる総額を算出します。

医学部記念碑 4

資金計画づくりのポイント② :資金調達方法を選択する 

進学に必要な資金をどのように準備するかは、家庭ごとに大きく異なります。無理のない範囲で複数の手段を組み合わせることが、安定した資金計画につながります。

医学部学秘 5

資金計画づくりのポイント③ 長期資金計画

積立期間から逆算して毎月の積立額を決めます。資金調達方法の側面からも再度、積立額を算出しましょう。長期にわたる資金計画なので、定期的な見直しを最低1年に1回行うことが大切です。

医学部学秘 6

医学部進学のための費用の話。子どもとどう話す?

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家計の現実を子どもに共有する際の工夫

医学部を目指す我が子に向けてお金の話をするとき、どんな家計の現実があっても「夢を応援する気持ちは、この先も決して変わらないよ」という気持ちをまず伝えてあげてください。最初に子どもの希望を最優先で尊重すること、これを伝えることが大切です。

ただし現実には6年間で入学金・授業料以外にも多額の費用が必要になります。現時点で、親として準備ができる限界を伝え、「奨学金や教育ローン、本人返済か保護者返済か、減免制度を利用する方法について、一緒に考えてほしい」と、前向きな姿勢で話し合いましょう。

高校生ともなれば、程度の差こそあれ、家計の状況を肌で感じて理解しています。できないことを約束するよりも、本音で話し合うことが重要です。

覚悟と本気度を引き出すための会話例

家計に関する情報を共有したら、医師になるためならどんな困難でも乗り越える「覚悟」を再確認しましょう。覚悟を再確認しながら本気を引き出す会話例は以下のとおりです。

例1)どうして医師になりたいの? 医師になることはあくまで目標で、その先に何か目的があるんだと思うけど、それを聞かせてほしい

例2)医師になろうと思ったきっかけは? 医師の仕事のどんなところに魅力を感じた?

例3)医師に限らず、仕事には良い面ばかりではなく、つらいこと・大変なこと・しんどいことも多くあるけど、医師の仕事のやりがいをどう考えているか聞かせてほしいな

中途半端な気持ちや視野の狭さ、実態理解の不足がないか対話からすくい上げ、我が子の意志や覚悟、気持ちを定期的に盛り上げてあげてください。

親が冷静に対話するための心得3

家計や意思に関する対話をする際は、3つのポイントを心がけましょう。

①まずは子どもの意見を最後まで聞く

医学部受験について子どもと話をするとき、子どもが話しているときは、決して途中で口を挟まないでください。親として意見するのは、必ず子どもの話を聞いた後です。

②リスペクトの念と事実に基づいて話す

子どもの意思を最大限に尊重する姿勢を真っ先に伝えましょう。そうしなければ、子どもの本音が聞けません。本音を引き出したら、客観的な事実を根拠に意見しましょう。このとき、先入観や世間体に基づいた意見はNGです。

③学校の先生や塾の講師など、第三者の意見も意識する

子どもと話していて「自分の考えとズレがあるな」と感じたときは、第三者の意見を意見も聞きながら再検討しましょう。客観視することで子どもも親も、原点に立ち戻れたり、新しい視点を得たりすることができます。

その後は①に戻って再度対話を進めましょう。結論を急がず、そしてせかさず、子どもが考える期間をしっかりつくることが重要です。

奨学金や支援制度を使って医学部に進学したケースを紹介

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続いて、奨学金や支援制度を使って医学部に進学した受験生の実例を紹介します。特に費用を工面する部分で参考になると思います。

― 琉球大学医学部に地域枠で合格・進学
私立高校に通う彼は3人兄弟の長男。国立大学の医学部志望で、私立大学への進学は想定していませんでした。理由は学費の面もありますが、何よりも「離島医療に従事したい」という希望であったからです。
そうした理由から、琉球大学医学部の「離島・北部枠」だけを志望していました。

― 琉球大学医学部の「離島・北部枠」をどう活用した?
彼は、保護者とともに沖縄県地域医療支援センター主催の説明会に参加したことをきっかけに、早い段階で琉球大学医学部医学科「学校推薦型選抜II(離島・北部枠)」の受験を決意しました。
この選抜方式では、「共通テストの成績」「個別学力検査(小論文・面接)」「調査書」「推薦書」「志望理由書」など、複数の選考資料が求められますが、もともと明確な志望動機を持っていたこともあり、志望理由書の作成もスムーズに進みました。
その後、無事に琉球大学医学部に合格。親元を離れての一人暮らしが始まりました。地域枠での入学だったため、在学中の6年間、学費に加えて生活支援金の貸与も受けることができました。
この制度では、卒業後に沖縄県が指定する離島や北部の医療機関で一定期間勤務することで、貸与された費用の返還が全額免除されます。そのため彼は、学費や生活費への不安なく、アルバイトもしながら安心して学生生活を送ることができたそうです。
進学前には、勉強とアルバイトの両立が可能か、学費以外の生活費を賄えるのかといった不安もありましたが、結果的には仕送りに頼らず、アルバイト収入も活用しながら自立して6年間をやり遂げることができました。

この生徒はただ「医師になる」ではなく、「離島医療に従事したい」という明確な目的があり、その特性が地域枠にフィットした事例です。

国公立志望とはいえ、2人の弟がいることもあり、学費面から進路選択を躊躇した可能性もありましたが、地域枠の制度が良い後押しになったようです。

今現在医学部を目指して頑張っている生徒とその保護者には、高額な学費を理由に進路を諦めず、この生徒のように医師になる目的をより確固たるものに育みながら、地域枠制度や奨学金制度の条件にフィットする努力をしていただきたいと思います。

医学部進学の費用・制度に関するよくある質問

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医学部の6年間の費用はいくらですか?

国公立大学で約350万円。私立大学で約2,000〜5,000万円程度(平均で約3,200万)です。私立大学医学部の場合、最も安いところでも1,850万円程度となっています。

また私立医学部では、授業料以外にも施設設備費や教育充実費などの諸費用が高額になることがあります。

一番学費が安い私立の医学部はどこですか?

国際医療福祉大学の医学部で、6年間総額は約1850万円です。なお同大には先述したとおり、特待奨学生制度があります。

「医学部特待奨学生S」なら 6年間総額が0円、「医学部特待奨学生A」なら 6年間総額は300万となります。

ほかの例では、自治医科大学は6年間で約2,300万円かかりますが、入学者全員に与えられる修学資金貸与制度を利用すれば学費総額は0円です。

日本医科大学の6年間の学費はいくらですか?

日本医科大学の6年間の学費は、6年間総額 2,200万円です。特待生や独自の奨学金制度があり、学費の減免や返済方法の優遇措置を受けられる可能性もあります。

項目 特待生① 特待生② 独自奨学金
対象 一般前期・後期
(成績優秀者)
グローバル特別選抜
(成績優秀者)
①新入生・在学生
②父母会奨学金
③特別学資ローン
学費総額 6年間で1,950万円 6年間で1,700万円 -
特徴 - - 元金返済が卒業後3年目から10年間の均等払い
(在学中は元金返済なし)

東大医学部の6年間の学費はいくらですか?

令和6年度以前入学者は3,496,800円、令和7年度以降入学者は4,139,760円です。

授業料の年額が535,800円から642,960円に値上げされています。

慶応医学部の6年間の学費はいくらですか?

慶應義塾大学医学部の学費と奨学金

慶應義塾大学医学部の6年間総学費は、22,659,500円です。また大学独自の奨学金制度も充実しており、以下のような種類があります。

奨学金の種類 内容
入学前予約型奨学金 初年度110万円、2年目以降150万円を給付
合格時保証型奨学金 年間200万円(第1〜第4学年時)を給付
在学生対象奨学金 年額10〜80万円(学内で5種類)を給付

日本で最も学費が高い医学部はどこですか?

日本で最も学費が高い医学部は、東京女子医科大学です。6年間総額で4,621万円となっています。受けられる奨学金制度は以下のとおりです。

奨学金制度 内容
東京女子医科大学の特別奨学生 授業料および実習費相当額またはその一部を貸与。 卒業後、返還期間中は本学附属医療施設に勤務することが条件となります。
公益財団法人 小林育英会 月額25,000円を給付
財団法人
颯田医学奨学金
月額30,000円を給付

※上記以外にも複数の奨学金制度があります。

まとめ 進学の判断は“現実と希望の両立”から考えて

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国公立と私立大学の学費の違い以外に、私立医学部の学費が非常に高額である一方、いずれの医学部にも、奨学金・地域枠などの支援制度が充実していることも、ご理解いただけたと思います。生徒・保護者には、学費や制度のリアルを早期から把握し、現実と希望を両立させる準備を今から検討していただきたいと思います。

なお本記事にてご紹介した「各種制度の条件」などは改定されることが多く、非常に条件が複雑です。お困りの場合は、ぜひ学校や予備校、名門会までお気軽にご相談ください。

未来社会を担う、“高い志” “大きな夢” を持った受験生たちが、学費を理由に希望する進路を諦めてしまわないよう、名門会としても精一杯ご相談に応じております。

今回紹介した制度や金額などは、今後も変更されることがあります。最新情報や詳細は、必ず各種団体の公式HPや大学HPなどをご参照いただきますよう、よろしくお願いいたします。

執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部
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塾選ジャーナル編集部

塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。

執筆者プロフィール

株式会社名門会
プロ家庭教師の名門会
株式会社名門会

プロ教師の実力を最難関校への合格実績で証明しつづける家庭教師センター。最難関中学受験~医学部受験まで、学年を問わず、数多くの受験生をサポートし合格へと導いている。

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