国際バカロレア(IB)とは? 大学受験で有利になる? 費用・メリット・デメリットも簡単に解説

国際バカロレア(IB)とは、世界160以上の国と地域で共通の基準で実施されている国際的な教育プログラムです。国や地域が違っても同じ水準の教育を受けられ、必要な条件を満たせば世界各国の大学への入学資格として活用できます。
日本でもIB認定校が増えており、「大学進学で有利になるの?」「一般受験と両立できる?」といった関心を持つ保護者が増えています。一方で「難易度が高い」「日本語力への影響が心配」といった不安もよく聞かれます。
この記事では、国際バカロレアの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、国内で学べる学校、大学入試との関係、そして子どもに合うかどうかの判断ポイントまで、受験を控えるご家庭に必要な情報をわかりやすく解説します。

編集部
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国際バカロレア(IB)とは?
国際バカロレア(IB)は、世界共通の基準で学べる国際的な教育プログラムです。
単なる暗記にとどまらず、「自分で調べ、考え、発表する力」を重視し、英語力や論理的思考力、探究心を育むことを目的としています。学びを通じて国際的な視野や多文化への理解を深められるのも大きな特徴です。
現在、世界160以上の国と地域で約5,900校が導入しており、日本でも年々注目が高まっています。
国際バカロレア(IB)は、知識の習得を超えて、グローバル社会で活躍できる力を育てる教育プログラムとして位置づけられています。
国際バカロレア(IB)の教育理念
国際バカロレア(IB)の教育理念は、多様な文化を理解し、尊重しながら、より平和な社会づくりに貢献できる若者を育てることです。
授業では知識を覚えるだけでなく、「なぜそうなるのか」を問い続け、自分で調べ、考え、友達と意見を交わす姿勢を重視します。たとえば調べ学習の成果を発表したり、討論で多様な意見を受け入れたりする体験を通じて、探究心や表現力が自然と育まれる点が大きな特徴です。
国際バカロレア(IB)のプログラムの種類(250)
国際バカロレア(IB)は、生徒の年齢と発達段階に応じて4つのプログラムに体系化されています。
<PYP>
3歳から12歳を対象とする初等教育プログラム(PYP)では、教科の枠を超えてテーマに沿って学びを進め、子どもの「なぜ?」という気持ちを大切にしながら探究心を育てていきます。
<MYP>
11歳から16歳を対象とする中等教育プログラム(MYP)では、教科ごとの学びをつなげて考えることを大切にし、より広い視点で物事を理解できるようにするのが特徴です。
<DP>
16歳から19歳を対象とするディプロマ・プログラム(DP)は、世界中の大学で入学資格として広く認められており、国内外の進学につながる学びができるプログラムです。
<CP>
同じ16歳から19歳を対象とするキャリア関連プログラム(CP)は、職業教育に力を入れたカリキュラムで、社会で役立つ実践的なスキルを身につけることを目指します。
なぜ今、国際バカロレア(IB)が注目されるのか?
国際バカロレア(IB)が注目されているのは、暗記中心の従来型教育とは違い、自分で考え表現する力を伸ばす学び方が、グローバル化の時代に求められる人材像に合っているからです。日本の大学でも、その教育的価値を高く評価する動きが広がっています。
国内外の大学入試で国際バカロレア(IB)が評価される理由
国際バカロレア(IB)が世界の大学で評価される大きな理由は、生徒が自分で問いを立て、答えを探していく学習を重視しているからです。こうした探究型の学びを通じて、課題を発見して解決する力や、根拠を持って表現する力が育まれます。
海外では、ハーバード大学やオックスフォード大学、ケンブリッジ大学など世界トップレベルの大学がIBディプロマを高く評価し、入学基準のひとつとしています。
日本でも、東京大学・京都大学・一橋大学といった国立の難関校や、早稲田・慶應・上智などの私立大学がIB入試を導入しており、進路の選択肢が広がっています。
国際バカロレア(IB)教育で身につく「生きる力」
IB教育の大きな価値は、テストで測りにくい「非認知能力」を育てられる点にあります。論理的に考える力や、話し合いながら協力する力、リーダーシップなど、社会で生きていくうえで大切な力を、自然に身につけられるよう工夫されています。
<国際バカロレア(IB)が掲げる10の学習者像>
- Inquirers 【探究する人】
- Thinkers【考える人】
- Principled【信念をもつ人】
- Risk-takers【挑戦する人】
- Balanced【バランスのとれた人】
- Communicators【コミュニケーションができる人】
- Reflective【振り返りができる人】
- Caring【思いやりのある人】
- Open-minded【心を開く人】
- Knowledgeable【知識のある人】
国際バカロレア(IB)が示す「10の学習者像」は、生徒がどんな姿を目指すのかをわかりやすく示した指針です。たとえば、新しいことを探究する「探究する人」や、誠実さと正義感を大切にする「信念をもつ人」などがあります。これらは人としての成長を促し、変化の大きい社会で学び続ける力を育てます。
国際バカロレア(IB)のメリットとは
次に国際バカロレア(IB)のメリットについて、簡単に紹介します。
学力と同時に人間性の成長も期待できる
国際バカロレア(IB)の大きな魅力は、学力を伸ばすと同時に、人としての成長も育めることです。知識を覚えることと人間性を育てることを一体的に進められる点は、従来の教育にはなかった強みと言えるでしょう。
国内外の大学で広く評価され、進学に有利
海外大学への進学では、国際バカロレア(IB)のディプロマが強力な「パスポート」となり、大きな武器になります。世界の多くのトップ大学がIBを高く評価し、入試の重要な基準のひとつにしています。
国内でも、東京大学や京都大学といった国立大学に「IB入試枠」があり、慶應義塾大学や早稲田大学などの私立大学も専用入試制度を導入しています。
IB入試は一般入試に比べて受験機会が限られますが、進路をしっかり選べば大きなチャンスとなるのが特徴です。
英語力・論理的思考力・探究力が育つ
DP課程では多くの科目が英語で行われるため、自然に英語力を伸ばせます。複雑な内容を英語で理解し、自分の考えを論理的に伝える力は、大学進学や将来のキャリアにとって大きな強みになるでしょう。
また、授業では常に「なぜそうなるのか」と問いながら学ぶ姿勢が求められ、物事を多角的に考え、根拠をもとに結論を導く力が養われます。さらに、約4,000語の研究論文「EE(Extended Essay)」を通じて、大学さながらの研究経験を積める点も大きな魅力です。
国際バカロレア(IB)のデメリット&注意点
国際バカロレア(IB)の教育には、多くのメリットがある一方で、すべての生徒に適しているわけではありません。高い教育効果を得るためには、相応の努力と適性が必要です。
難易度が高い
国際バカロレア(IB)の学習難易度は高く、特にDP課程では最終試験が成績の大部分を占めるため、継続的な努力が欠かせません。専門的な内容を英語で理解し、論文としてまとめられるだけの高度な言語力も必要です。
課題の量は膨大で、計画的にスケジュールを管理できなければ精神的な負担が大きくなります。表面的な回答では評価されず、深い理解に基づいた論述が求められるため、自己管理力が不足すると十分な成果につながらないでしょう。
日本語力と一般受験との両立が難しい
DP課程を英語で履修すると、日本語で深い思考や表現をする機会が減りやすく、母語である日本語の論述力や語彙力の維持に不安を抱く保護者も少なくありません。
また、国際バカロレア(IB)が重視する探究・論述型の学びと、共通テストのように知識や処理スピードを問う試験とは根本的に性質が異なります。そのため、国際バカロレア(IB)を選ぶ際には「IB入試」や「IBを評価する大学」を前提に、早めに進路や受験方針を定めることが重要です。
学費などの費用が高くなりやすい
国際バカロレア(IB)の教育費は、学校の種類によって大きく変わります。
公立校でも通常の授業料に加えて特別費用が必要となり、私立校やインターナショナルスクールではさらに高額な教育投資を求められることが一般的です。加えて、IB機構への受験料(約11万6,000円)のほか、副教材費や海外研修費などが別途かかるケースもあります。
そのため、同じIB認定校でも家庭ごとの負担額には大きな差が出ます。教育環境の魅力や進学実績といった内容と費用を冷静に比べ、見合う効果が得られるかを見極めることが大切です。
うちの子に合っている?向いている子の見極め方
国際バカロレア(IB)の教育は優れたプログラムですが、すべての生徒に適しているわけではありません。子どもの性格や学習スタイルを考慮して判断しましょう。ここでは、向いているかどうかの見極め方を紹介します。
国際バカロレア(IB)に向いている子の特徴
国際バカロレア(IB)で成長できる生徒の最大の特徴は、旺盛な探究心があることです。
- 旺盛な探究心を持ち、「なぜ?」と疑問を持ち続けられる
- 表面的な答えではなく、深い理解を求める姿勢がある
- 自律的に学ぶ習慣があり、主体的に取り組める
- 自分でテーマを見つけて調べることを楽しめる
- 長期的な課題やプロジェクトを計画的に管理できる
「なぜ?」と常に疑問を抱き、表面的な答えではなく深い理解を求める姿勢があれば、探究型の学びに自然と溶け込めます。
さらに、自律的に学ぶ習慣があることも重要です。課題をこなすだけでなく、自分でテーマを見つけて調べることを楽しめたり、長期プロジェクトを計画的に管理できたりする生徒は、IBの多くの課題にもしっかり対応できます。
国際バカロレア(IB)で苦労しやすい子の特徴
受け身の学習スタイルに慣れている生徒は、戸惑いや苦労を感じる可能性があります。
- 受け身の学習スタイルに慣れている
- 自分で学習計画を立てたり調整したりするのが苦手
- 完璧主義の傾向が強すぎ、一つの課題にこだわりすぎてしまう
- 時間配分や優先順位付けが苦手
- 正解がない課題への対応力と柔軟な発想力が不足している
たとえば「先生の指示通りに勉強する」「与えられた課題だけをこなす」といった学習習慣が中心になっている場合、自分で学習計画を立てたり調整したりするのに時間がかかりがちです。
また、完璧主義の傾向が強すぎる生徒も注意が必要です。一つの課題にこだわりすぎると時間配分を誤る原因となります。さらに、国際バカロレア(IB)で出される課題には「明確な唯一の答えが存在しない」ものが多く、柔軟な発想や幅広い解釈を受け入れる力が欠けていると苦戦する可能性があります。
向き不向きの見きわめ方(チェックリスト)
子どもが国際バカロレア(IB)教育に適しているかを判断するために、以下の項目をチェックしてみましょう。
国内で学べる国際バカロレア(IB)
日本国内で国際バカロレア(IB)の教育を受けられる学校は着実に増加しており、現在は多様な選択肢が用意されています。ご家庭の教育方針や経済状況に応じた最適な選択が可能です。
日本のIB認定校のタイプ
国内IB認定校は、公立学校、私立学校、インターナショナルスクールの3タイプに分類されます。公立校には東京都立国際高校、広島県立広島叡智学園などがあり、比較的安価な学費が魅力です。
私立校では、開智日本橋学園、加藤学園暁秀などが代表的で、独自の教育理念とIBを融合させた一貫教育を提供しています。インターナショナルスクールは、アオバジャパン・インターナショナルスクール、清泉インターナショナルスクールなどがあり、多国籍な環境でグローバル感覚を養えます。
どの学校のタイプが合っている?
教育費をできるだけ抑えたい場合は、公立のIB認定校が有力な選択肢となります。ただし、公立であってもIBプログラムに特有の費用が別途発生することがあるため、授業料だけで判断せず、総額を事前に確認しておくことが大切です。
一方で、海外大学進学を希望する場合は、出願サポートやカウンセリング体制が充実しているインターナショナルスクールも選択肢になります。多国籍の同級生と学ぶ環境も、海外進学に向けた準備として大きな強みになります。
転校や途中編入はできる?
IB認定校への転校や途中編入は可能ですが、受け入れ時期や募集人数には制限があります。特にDP課程は、2年間で完結する高度に構造化されたカリキュラムであるため、途中から合流するには相当な努力と準備が求められます。
編入を検討する際には、できるだけ早い段階で希望校に相談することが大切です。
国際バカロレア(IB)と大学入試の関係
IBディプロマと大学入試の関係は、進路選択において極めて重要な要素です。IBディプロマの価値を最大限活用するため、入試制度との関連性を正しく理解しましょう。
国内大学のIB入試枠と活用法
日本の大学におけるIB入試は年々拡充されており、現在では多くの難関大学でIBスコアを活用した選抜が実施されています。たとえば、東京大学の外国学校卒業者特別選考、京都大学の特色入試、慶應義塾大学のFIT入試などが代表例で、IB生を積極的に受け入れる仕組みが整いつつあります。
慶應義塾大学法学部FIT入試。合格のカギは「経験の言語化」と「教授陣との共鳴」
IB入試の特徴として、募集人数は依然として少数に限られています。そのため、一般入試に比べて競争率が低くなる傾向が見られます。
海外大学進学での生かし方
IBディプロマは、世界75以上の国の大学で大学入学資格として認められ、特に英語圏の大学では非常に高い評価を受けています。ハーバード大学、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学などのトップ大学が、IBスコアを重要な指標として活用しています。
一般受験や共通テストとの併用
IB国際バカロレア(IB)の探究型学習と、一般受験や共通テストに代表される情報処理のスピード重視型学習には、根本的な違いがあります。
IB国際バカロレア(IB)では、知識の深い理解と表現力が求められる一方、一般受験や共通テストは選択肢形式による正確な回答と、素早い処理能力が中心です。そのため、両方を同時に準備することは現実的に難しく、多くの受験生にとって併用は大きな負担となります。
このため、基本的にはIB入試やIBスコアを活用できる大学を中心に進路設計を行うことが賢明です。中途半端な準備に終わってしまうと、どちらの入試でも十分な成果を得られないリスクが高まるため、早めに方向性を定めて取り組むことが重要です。
国際バカロレア(IB)の授業料・追加費用の目安
IIB教育にかかる費用は、通う学校の種類によってかなり差があります。公立のIB認定校でも、通常の学費に加えて専用の費用がかかることがありますが、私立やインターナショナルスクールと比べると比較的負担は少なめです。
たとえば都立国際高等学校では、授業料そのものは東京都の授業料無償化制度で基本的にかかりません。ただし、一般コースと比べるとIBコースでは学年積立金が高く、年間でおよそ23万円ほど多く必要になります。
<参考:都立国際高等学校の積立金比較>
学年積立金 | 1年(一般) | 125,000円 |
---|---|---|
1年(IB) | 235,000円 | |
2年(一般) | 111,000円 | |
2年(IB) | 203,000円 | |
3年(一般) | 29,000円 | |
3年(IB) | 57,000円 |
一方、私立校では一般的な学費に加えて、年間46〜48万円程度が上乗せされるケースが多いです。
たとえばぐんま国際アカデミーの場合、授業料が年間96万円、IB受講料は年間約48万円かかります。
参照:ぐんま国際アカデミー「学費について」
インターナショナルスクールでは、年間150万~300万円を超えるのが一般的で、それ以上かかるケースもあります。学費には英語を母語とするネイティブ教員による少人数授業や施設利用料が含まれる点が特徴です。
また、すべての学校に共通して、IB機構への受験料約11万6,000円が必要です。副教材費や海外研修費、寄付金などが加わる場合もあります。
国際バカロレア(IB)についてよくある質問
国際バカロレア(IB)の授業はすべて英語ですか?
日本では「日本語DP(Dual Language Diploma Program)」が整備されています。経済・地理・歴史・生物・化学・物理・数学・音楽・美術・TOK(知の理論)・EE(課題論文)・CAS(創造性・活動・奉仕) など一部科目を日本語で履修可能です。
日本語力(国語力)は落ちませんか?
DP課程を英語で履修すると日本語使用の機会は減りますが、日本では母語力維持のため「日本語DP」が導入されています。日本語科目の履修や読書・記述習慣を補完すれば、日本語力低下のリスクは抑えられます。
国際バカロレア(IB)は普通の高校と比べて難しいですか?
課題量や論述の質が高く、自己管理力も求められるため、一般的な高校より難易度は高いです。ただし探究的な学びが合う生徒にとっては大きな成長の機会になります。
奨学金や補助はありますか?
IB認定校では、成績優秀者向けや家計負担軽減を目的とした 奨学金制度 を設けている学校があります。自治体や国の就学支援金を活用できるケースもあります。ただし補助の有無や金額は学校・地域によって異なるため、希望校へ直接問い合わせることが重要です。
参照: 国際高等学校《全寮制》IB Boarding 学納金 奨学金
国際バカロレア(IB)の学び方は?
国際バカロレア(IB)の学び方は、日本の知識重視型教育とは大きく異なり、探究心や論理的思考力を伸ばす設計になっています。
DP課程では、6つの教科群(言語と文学、第二言語、個人と社会、理科、数学、芸術)からそれぞれ1科目を選び、合計6科目を履修します。履修科目のうち、3〜4科目を上級レベル(HL・約240時間)、残りは標準レベル(SL・約150時間)で学びます。
さらに、IBの学びの核として「EE(課題論文)」「TOK(知の理論)」「CAS(創造性・活動・奉仕)」の3つのコア科目が必修です。
国際バカロレア(IB)の評価方法は?
評価は7点満点×6科目にコア科目の加点を合わせた45点満点で行われ、24点以上でディプロマ取得が可能です。ただしHL(ハイアー・レベル)・SL(スタンダード・レベル)それぞれの最低点やCAS修了が必須で、点数だけではなく、学び全体への姿勢も問われます。
まとめ 国際バカロレア(IB)の全体像と判断ポイントを踏まえて進路選択を
国際バカロレア(IB)は、思考力や探究心を育て、国内外の大学進学に強みを発揮する一方、英語力や自己管理力など高い適性を求めるプログラムです。国内には公立・私立・インターナショナル校があり、費用や学習環境は異なります。進学目標や家庭の方針に照らし、子どもの適性と負担のバランスを見極めることが大切です。
より具体的に検討したい場合は、学校説明会や資料を活用し、IBが「本当に合う選択肢か」を確かめたうえで進路を判断していきましょう。
執筆者プロフィール

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