大阪・関西万博に出展!「ロボッチャスクール」が実践するAI時代の探究教育
AIやロボットが身近になった今、テクノロジーを使いこなす力を育む学びが注目されています。今回取材をしたのは「ロボッチャスクール」。ロボット・プログラミングとパラスポーツをかけ合わせた「ロボッチャ®」を通じて、技術だけでなく思考力や問題解決力といった総合的な学びを提供する新しいスタイルの探究学習塾です。
2025年9月20日には、大阪・関西万博にも出展し、「ロボッチャ®」の体験イベントを開催。子どもから大人まで幅広い層で賑わいました。
そのユニークな取り組みのなかで、「楽しい!」をきっかけに、子どもたちが見せる成長・変化とは?スクールを運営する株式会社エデュソル代表取締役・岡本弘毅さんにお話を伺いました。
編集部
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今回取材した塾▶

| 塾名 | ロボッチャスクール |
|---|---|
| 対象学年 | 小学2年生~中学生・高校生/大人 |
| 住所 | 東京本社 東京都港区赤坂4-12-5 FAD20ビル2F つくば本社 茨城県つくば市吾妻1-8-10 BiViつくば4F |
| プロフィール | ロボッチャスクールの学びの中心にあるのは、ロボット・プログラミングとパラスポーツ「ボッチャ」を融合した新しいテクノロジースポーツ「ロボッチャ®」。スポーツの楽しさと戦略性をベースに、実社会で使われている身近なモノのしくみや原理・理論を学ぶことで思考力や問題解決力、コミュニケーション力など幅広い力を育んでいきます。 また、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術・リベラルアーツ、数学)を軸に、ダイバーシティ的な視点も重視。異なる背景を持つ仲間と協働する力や高い視野が身につくのも魅力です。 |
| 塾の詳細ページ | https://robocciaschool.com/ |
今回取材を受けてくださった方▶
ロボッチャスクール 岡本弘毅さん

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ロボット・プログラミング × スポーツ=ロボッチャ®を通して、考える力を磨く

-まず、ロボッチャスクールの学びのベースとなる「ロボッチャ®」について教えてください。
「ロボッチャ®」は、パラスポーツの「ボッチャ」をもとにした“テクノロジースポーツ”です。
ボッチャは、体が不自由な人のためにヨーロッパで考案されました。年齢や性別、障がいの有無に関わらず、すべての人が一緒に楽しめるスポーツです。赤と青の2チームがそれぞれ6球ずつチームのカラーボールを投じて、判定基準となる白球(ジャックボール)にどれだけ近づけられるかを競います。

(体が不自由な人のためにヨーロッパで考案されたボッチャ)
ボッチャのコートの大きさは、縦12.5m×横6mでバドミントンコートと同等サイズ。球はソフトボール程度の大きさをした275gの球を使用します。
「ロボッチャ®」では、その10分の1サイズに縮小したコートと球を使用し、自らプログラムを設計したロボットを使って、ボールを投てきしてゲームを進行するんです。サイズでいうと机の上で競技ができるくらいの大きさです。
-ボッチャはパラスポーツとして有名ですが、スクールにやってくる子どもたちの反応はどうですか?
パラリンピックの正式種目でありながら、ボッチャを知らない人は少なくないんです。そのため、まずはボッチャのルールを覚えることで、パラスポーツへの理解を深め、ダイバーシティ&インクルージョンの重要性を知るきっかけになります。そして、実際にプレーする中で楽しみながらチームプレーを学ぶことができます。人見知りでも、初めて出会った子ども同士でも、終わるころには、みんな仲良くなっていますね。
ボッチャでは、人間が「どのように球を投げるか」を考え「ボールを動かす」わけですが、ロボッチャ®ではロボットエンジニアリングやプログラミングで制御します。スポーツですから、当然勝つためには戦略が必要になりますよね。単なるエンジニアリングやプログラミングの技術だけでなく、何度もトライアル&エラーを繰り返しながら、論理的な思考を身につけていくことができます。
-スポーツとロボット・プログラミングを組み合わせるというアイデアはどのような背景から生まれたのですか。
今や、AIをはじめとするテクノロジーが日常生活の中で身近な存在となり、あらゆる情報やサービスがデジタル化されています。しかし、20年ほど前からSTEAM教育(※)に取り組むなかで、テクノロジーは本来「手段」のはずなのに、いつのまにか「学ぶこと自体」が目的になってしまっている。それにずっと違和感を覚えていました。
そこで、スポーツの要素をテクノロジーの学びに組み込むことで、“勝利する”という目的に対して、試行錯誤する手段としてテクノロジーを位置づけようと考えました。
(※)STEAM教育:Science(科学)・Technology(技術)・ Engineering(工学)・Mathematics(数学)の理数系の学びにArts(芸術・リベラルアーツ)を含めた教科横断的な学びを指す言葉
-手段と目的を取り違えることはあらゆる仕事や生活のなかで、起こり得ることですよね。子どものうちから正しく手段と目的を見極めて物事を進めた経験は、大人になってからも活きてくるのでしょうか。
手段が目的になってしまうことは、大人でもよくありますよね。例えば、「契約を獲得する」という目的のために「メールを送りなさい」と言われていたはずなのに、いつのまにか“メールを送ること”が目的にすり替わってしまう―そうなると、本来の目的を果たすために有効なはずの「電話で話す」「直接会って話す」といった別の手段が思いつかなくなってしまう人もいます。
このような行動の背景には、「決められたやり方を覚えればいい点数が取れる」という画一的な教育が影響しています。
もしかすると、子どもを守りたいという気持ちから「失敗をさせたくない」と考える保護者もいるかもしれません。ただ、言われた通りにするだけでは、「思考する力」や「問題を解決する力」は身につきません。小さいうちから、自分で試行錯誤を繰り返す経験を積むことは、とても大事なことです。
ロボッチャスクールの学びの根幹にあるのは、トライアル&エラーを繰り返すこと。エラーが起きるのは悪いことではないんですよ。うまくいかないからこそ、「どこに原因があるんだろう?」「どうすれば次はうまくいくのだろう?」と自分で考える力が育っていくんです。
テクノロジーは、社会の課題を解決したり、人々の暮らしを豊かにしたりするための道具です。だからこそ、子どもたちには「楽しいからやってみたい」という気持ちを入口に、自分で考え、課題を見つけ、解決する力を育んでほしい。プログラミングやロボットなどの技術を、目的ではなく手段として使いこなせるようになることが、これからの時代を生きる上で大切だと考えています。
ロボッチャスクールの授業には、楽しみながら多くを学べる工夫がたくさん!

-ここからは、ロボッチャスクールの授業内容について詳しく聞かせてください。
ロボッチャスクールでは、自分の手でロボットをつくり、試合で成果を出すためにトライアル&エラーで改善を繰り返します。ここでは、まず4つのステップに分けて授業で取り組む一部を簡単に説明しましょう。
1.エンジニアリング
「ビルディングブック」という組み立て図を見ながらロボットをつくります。最初は単純な仕組みのロボットからスタート。ギアの組み合わせ方や構造のつくり方を通して、力学的なエネルギーをどのように発揮するかを学びます。レベルに応じて複雑な組み合わせにチャレンジし、最終的には何も見ずに、頭の中にあるイメージを形にしてオリジナルのロボットをつくれるようになっていきます。

(ロボットを組み立てる生徒の様子)
2.プログラミング
どのように動くかを想像しながらプログラムを組み、オリジナルのロボットを動かします。ビジュアルプログラミングという直感的に手を動かせる制御を学んだ後に、テキストコードといわれる英語の文章での命令を出す制御へと段階的に学びを深めていきます。

(プログラムを組む生徒の様子)
3.データサイエンス
ロボッチャ®の魅力は、データを活用して戦略を立てる点にあります。コート上のマス目を使い、ボールの飛び方をデータとして記録。その結果を分析し、ジャックボールに近づけるためのプログラム制御の仕方を自ら考えます。上の学年になると、スプレッドシートでのデータ解析にも挑戦します。

4.ソーシャビリティ
ロボッチャ®は、1チーム2~4名ほどのチーム戦で戦います。チームで戦略を練りながら授業のミッションや試合を通して、人の話を聞き、自分の意見を伝えるコミュニケーション力も身についていきます。「言語化する力」は、今後ますます必要になりますので、楽しみながら言語化できるようになっていきます。

-ロボッチャ®には、授業の各ステップで多くの学びがあるのですね。
決められた課題に対して、どうすれば自分たちの力でクリアできるかを考える―これこそが「探究」だと思います。その過程には、エンジニアリングの工夫、プログラミングによる制御、戦略を支えるデータの収集と分析が含まれます。そして、チームで協力して取り組むことで、自然と人との対話、コミュニケーションが生まれます。
このように、大人になってから必要になるチームビルディングの力を育てることも、ロボッチャスクールの大きな特徴です。

(ロボッチャスクールでの学びで育まれる力は多岐にわたる)
-子どもたちの理解を深めるために、カリキュラムにおいて工夫していることはありますか。
カリキュラムは、単にロボットを動かすだけでなく、その裏にある原理・理論的な仕組みや社会とのつながりまで学べるように設計しています。

例えば、タッチセンサーでボールを投げるロボットをつくるとします。その仕組みは、自動販売機の内部で商品が出てくる動きや、工場で生産ラインが止まらずに動く工夫など、実社会の技術とつながっているんですよね。ロボッチャ®で学んだ仕組みやスキルを、実社会と結びつけたり、逆に実社会からインスピレーションをもらって、ロボッチャ®に反映したりさせています。
子どもたちは飽きることなく「なぜ?」「どうする?」と横断的に問いを立てながら、継続的に思考力を磨くことができます。

また、高校生以上の学年では、ロボットに搭載したカメラが捉えた映像からの画像解析・プログラム制御にも取り組んでいます。ボールの位置をAIが自動で判断し、どこに向かって、どの強さで投げるかを計算するような仕組みですね。そこから徐々にロボット・プログラミングを通して、社会におけるAIの活用方法を考えていくフェーズに移行していきます。
-どんどんレベルアップしていくのですね。小学生から通塾を開始して中学生、高校生と通い続ける生徒さんが多いのでしょうか?
そうですね。多種多様な学びがありますので、長い期間、スクールに通ってくれるケースが多いです。また、現在は、1/10サイズですが、来年度から1/3サイズの大きなロボットの学びも開始します。そして、幼少期からも通えるように、「クリエイティブキッズ」という小1以下のクラスも開講します。幼児から大人になるまで学び続けられるスクールにしていきたいと考えています。
生徒の最大の目標は年1回開催される公式大会「ロボッチャ®ジャパンカップ」

(「ロボッチャ®ジャパンカップ 2024」の様子)
-毎年3月に開催されている「ロボッチャ®ジャパンカップ」についても話を聞かせてください。
「ロボッチャ®ジャパンカップ」は、一般社団法人ロボッチャ協会が主催する公式大会です。日本全国から集まる大規模な大会で、プログラミングやロボット構築のスキルを競い合います。また、単なるロボット競技ではなく、自分たちのチームの強みやロボットの特徴、プログラミングのポイントなどをポスターにして提出します。それを審査委員に評価されるので、言語化の重要性も学んでいます。
ロボッチャスクールの生徒も1年の学びの集大成として毎年参加しており、モチベーションのひとつになっていますね。
2024年の大会では、すべてのチームがリーグ戦形式で戦い、敗者復活戦も実施されました。そこから勝ち上がった16チームが決勝トーナメントに進出し、最後は白熱した決勝戦で幕を閉じるという見応えのある大会でした。
決勝戦は小学4年生と高校2年生のチームでの一騎打ち。序盤は小学生がリードしましたが、終盤に高校生が逆転し、延長戦の末に高校生チームが競り勝ちました。事前に多くのデータを取って、試合で活用していた高校生らしい勝ち方でした。

(「ロボッチャ®ジャパンカップ 2024」で優勝した高校生チーム)

(「ロボッチャ®ジャパンカップ 2024」で準優勝となった小学生チーム)
学年による多少のスキルの差はあるものの、世代を超えて一緒に楽しめるテクノロジースポーツであることもロボッチャ®の魅力だと思います。
子どもと社会の幸せにつながる、実践的な学びを目指して

-2025年9月20日(土)には、大阪・関西万博にて「ロボッチャEXPO」という体験型イベントに出展されたそうですね。
今回のイベントは、万博の運営側から「老若男女、そして障がいの有無を問わず、誰もが一緒に楽しめる新しいテクノロジースポーツとしてロボッチャ®を紹介してほしい」とお声がけいただき、実現したものです。

(大阪・関西万博 フューチャーライフヴィレッジにおける「ロボッチャEXPO」の様子)
会場では、子どもからシニアまで、初めてでも楽しめる体験コーナーを設置。パラスポーツの現役選手や学校の先生との対談や、ロボッチャ®を授業に取り入れている小学校の児童による試合など多彩なコンテンツを用意しました。多くの来場者にご参加いただき、さまざまな背景を持つ人々が交流する有意義な時間になったと思います。
-ロボッチャ®はプレーする人を選ばないからこそ、人と人との架け橋になるのですね。
集まった人たちがみんな平等にわいわいと楽しそうに過ごしている光景はとても素敵でしたよ。

(多くの来場者でにぎわった「ロボッチャEXPO」)
私たちが目指しているのは、単なる習い事にとどまらず、子どもたちが世の中に出てから自分や社会を幸せにするための力を育むことです。最初の入口は「楽しいから」という気持ちだけで充分。ロボッチャ®を通じて身につくテクノロジーを使いこなす力、そして自ら考え課題を解決していく力が、変化と多様性の時代を生きる子どもたちの明るい未来につながっていくと信じています。
ロボッチャスクールへ通った生徒や保護者からの反響は?
😊本人/小学2年生
😊本人/小学5年生
😊本人/中学2年生
✨保護者/小学4年生
✨保護者/小学3年生
【取材後記】
取材のなかで、特に印象に残ったのは「テクノロジーは手段であり、目的ではない」という岡本さんの言葉。これは、デジタル社会を生きる私たち誰もが忘れてはいけない本質を鋭く突いた一言でもあります。そして、多様性が問われるこれからの社会で学ぶべきは、テクノロジー技術だけでは足りません。
ロボッチャ®を通じて学ぶ本質的なゴールは、ロボットを動かすことではなく、社会課題を見つけ、仲間と協力して解決する力を育てること。「競技に勝つ」という明快な目的に向けて試行錯誤を繰り返す中で、エンジニアリング、プログラミング、データサイエンス、コミュニケーションといった複合的な力が身につくのがロボッチャスクールの魅力です。
「楽しいからやってみたい」という思いをきっかけに、社会に出てから役立つ実践力を磨いていく一連の学びは、まさに探究学習の理想的なプロセスではないでしょうか。
人と人をつなげるロボッチャ®が持つ高いポテンシャルに、これからの教育の在り方を考えさせられるだけでなく、より自由な未来への希望を感じることができました。
『塾選(ジュクセン)ジャーナル』編集部/※掲載内容は、2025年9月時点の情報です。
執筆者プロフィール
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