インクルーシブ教育とは?実は“すべての子”が関係する教育の最前線を解説
最近、教育関連のニュースなどで「インクルーシブ教育」という言葉を耳にする機会が増えてきました。もしかすると、「障がいのある子どもを対象にした特別な教育のことでは?」とイメージしている方もいるかもしれません。
しかし、日本におけるインクルーシブ教育とは、障害の有無にかかわらず、すべての子どもが同じ場で学び合えるよう工夫された教育の仕組みを指します。
とはいえ、「うちの子どもにどう関係するんだろう?」「どのくらい影響があるの?」と疑問や不安を抱く保護者も少なくないでしょう。
本記事では、その定義や背景、メリット・デメリットなど保護者が知っておきたいポイントを整理。保護者100人に聞いた本音もまじえて、わかりやすく解説します。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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インクルーシブ教育とは?わかりやすく解説
インクルーシブ教育の定義

インクルーシブ教育を簡単に言うと、国際的には「障害の有無や国籍、性別、言語、文化的背景などにかかわらず、すべての子どもが共に学べる教育のあり方」を指します。特定の子どもを分けて指導するのではなく、できる限り同じ教室・同じ学校で学ぶことを基本としています。
ユネスコのガイドライン(2005年)では「多様な子どもがいることを前提に、教育制度そのものを見直していくプロセス」と定義。さらに、国連の障害者権利条約(CRPD)は、障害のある子どもを含むすべての子どもに、平等に学ぶ権利を保障することを各国に求めています。
つまり、世界では「障害」だけでなく、貧困・民族・言語・ジェンダーなど、社会的に排除されがちなすべての子どもを同じ場で学べるようにする権利ベースの改革が重視されています。
一方、日本ではインクルーシブ教育が特別支援教育の延長線上で位置づけられているのが特徴です。文部科学省は「障害のある子どもとない子どもが、できる限り同じ場で学び、それぞれの教育的ニーズに応じた支援を受けられる仕組み」と説明。
国際的な定義に比べると、障害児への支援に重点が置かれていることが分かります。
参照元:文部科学省 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)概要
従来の教育との違い:特別支援教育は「分ける」、インクルーシブ教育は「共に学ぶ」

ここでは、日本におけるインクルーシブ教育について、従来教育との違いを解説します。
日本の教育現場ではこれまで、障害のある子どもには特別支援学校や特別支援学級での教育(特別支援教育)が主流でした。このように「分けて教える」形を分離教育と呼びます。
一方で、障害の有無に関わらずできるだけ「同じ場で共に学ぶ」ことを前提とした仕組みがインクルーシブ教育です。両者の違いを表にまとめました。
| 項目 | インクルーシブ教育 | 従来の特別支援教育/分離教育 |
|---|---|---|
| 場所 | 障害のある子もない子も、できるだけ同じ教室や学校で一緒に学ぶ。必要に応じて、通級(※)や特別支援学級などの支援も柔軟に組み合わせて学ぶ。 ※通級=通常の学級に在籍しながら、一部の時間だけ専門の教室で特別な指導を受ける制度のこと |
障害のある子どもは、特別支援学級や特別支援学校など、専用の場で分かれて学ぶのが基本。 |
| 対応 | 子ども一人ひとりの違いを前提に、みんなで関わり合いながら学ぶことを大切にしている。 | 主に障害のある子どもを対象に、その子に合った支援を個別に行う。通常学級の子とは基本的に別々に学ぶ。 |
参照元:文部科学省 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)概要
インクルーシブ教育が推進される背景
「インクルーシブ教育って、最近よく聞くけど、なぜ今これほど注目されているの?」そんな疑問を持つ保護者の方も多いかもしれません。
その背景には、国際的な約束と国内の方針、そして教育面のねらいがあります。
1. 国際条約を受け入れたから
日本は2014年、国連の「障害者権利条約」を受け入れました。さらに、2022年には国連の委員会から、日本は“分けて学ぶ”場面が多いことや配慮の不足を指摘され、改善を求められています。これが制度や運用の見直しを後押ししています。
参照元:内閣府ホームページ
2. SDGs目標になっているから
SDGs目標4は「すべての人に質の高い教育を」。なかでも4.5(弱い立場の子どもへの平等なアクセス)と4.a(障害やジェンダーに配慮した学校づくり)は、インクルーシブ教育そのものです。日本もこの流れに沿って改革を進めています。
3. 教育政策の柱に「共生社会の形成」があるから
国は「誰もが地域で共に暮らす共生社会」を教育政策の柱としています。実現に向けて法改正も進んでいます。2007年に特別支援教育が本格導入され、2013年には就学先を決める際に保護者の希望をより尊重する制度へ改正。さらに2016年には障害者差別解消法により、学校にも「合理的配慮」の提供が義務づけられました。
合理的配慮とは、障害や特性によって学びにくさがある子どもが、ほかの子と同じように学びやすくなるためのもの。授業や学校生活のやり方・環境を必要に応じて柔軟に調整することを指します。
参照元:文部科学省ホームページ、内閣府
4. 教育効果への期待もあるから
国はインクルーシブ教育が障害のある子の学びだけでなく、他の子どもにとっても思いやり・協力性・多様性への理解を育む効果があるとしています。
中央教育審議会の報告では、「同じ場で学ぶことは互いの理解と尊重を育てる」と明記されています。
2023年度から始まった「インクルーシブな学校運営モデル事業」では、特別支援学校と地域の学校が連携し、こうした効果を実証しています。
参照元:文部科学省「中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会論点整理概要」
インクルーシブ教育のメリット・デメリット
インクルーシブ教育は「障害のある子どもだけの制度」と誤解されがちですが、本来はすべての子どもに関わる教育の仕組みです。どのようなメリット・デメリットがあるのかを紹介します。

メリット
① 障害のある子が孤立せずに成長できる
通常学級で学ぶことで、障害のある子どもは周囲との交流が増え、社会的スキルや自己肯定感が育ちやすいと報告されています。
② 多様性を自然に尊重できるようになる
周囲の子どもにとって「違い」を受け入れる態度が育まれます。将来の多文化社会での協働力にもつながり、いじめ・差別の抑止にも効果が期待されます。
③ 自分に合った学び方を見つけやすい
タブレット教材や通級指導など、個々のニーズに合わせた支援が整うことで、得意・不得意が可視化され、学びやすい環境が広がります。
④ 協調性や社会的スキルが身につく
異なる背景を持つ友達と協力する経験から、共感力・協働スキル・柔軟性など社会で必要な力が育ちます。
インクルーシブ教育は、障害の有無に関係なく誰もが安心して学び合える環境と、多様性を尊重する社会づくりに必要な仕組みといえます。
デメリット
① 必要な支援が行き届かないことがある
教員の研修不足や支援員の人数不足により、子ども一人ひとりのニーズに十分対応できない場合があります。 「みんなと同じことをやる」ことが重視されすぎて、必要な個別支援が見落とされることもあります。
② 学校現場の負担が大きい
教員や支援員、専門スタッフが足りず、教室のバリアフリー化やICT教材の整備も不十分な学校があります。そのため先生の負担が増え、支援が十分に行き届かないことがあります。
③ 授業の進度やクラスの雰囲気に影響が出ることがある
学習の進み具合に差があるため、「授業が遅れるのでは」と心配する保護者の声もあります。クラスメイト同士のストレスや人間関係のトラブルにつながることもあります。
④ 子どもへの心理的影響が出るケースもある
インクルーシブ教育は子ども同士の理解を深める一方で、心理的な負担が生じることも。支援を必要とする子どもにとっては、「みんなと同じようにできない」という劣等感やストレスを抱えやすくなる懸念があります。
また、周囲の子どもも、友達を助けることを求められる反面、精神的な負担を感じるケースも考えられます。子どもの心への配慮が欠かせません。
インクルーシブ教育の現状と課題【データで解説】
日本でのインクルーシブ教育は、現在どの程度進んでいるのでしょうか。データからは、実現に向けて進みつつも、地域や学校によって差がある発展途上の段階であることが分かります。
インクルーシブ教育の方針を定めた都道府県・政令指定都市は8割以上

参照元:東京都教育委員会の資料P.19(令和元年度)を元に作成
特別支援教育を受ける児童生徒数は10年で2.0倍へ増加
| 区分 | 項目 | 平成25年度 | 令和5年度 | 10年の増減(倍率) |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 義務教育段階の全児童生徒数 | 1,030万人 | 941万人 | 0.9倍 |
| 特別支援教育 | 特別支援教育を受ける児童生徒数(全体) | 32.0万人 | 64.0万人 | 2.0倍 |
| └ 内訳 | 特別支援学校 | 6.7万人 | 8.5万人 | 1.3倍 |
| └ 内訳 | 小学校・中学校(特別支援学級) | 17.5万人 | 37.3万人 | 2.1倍 |
| └ 内訳 | 小学校・中学校(通常の学級・通級による指導) | 7.8万人 | 18.2万人 | 2.3倍 |
参照元:文部科学省「特別支援教育の充実について(令和5年度)P.3」を元に作成
直近10年の児童生徒数からもインクルーシブ教育の普及度が分かります。令和5年度の義務教育段階の全児童生徒数は、少子化の影響で平成25年度の0.9倍(1030万人→941万人)に減少しました。
その一方で、特別支援教育を受ける児童生徒数は約2.0倍(32万人→64万人)に増加しています。特に、通常の学級(通級による指導)を受ける児童生徒数は約2.3倍(7.8万人→18.2万人)と増加率が最も高く、障害や発達特性のある子どもが地域の学校・学級で学びながら支援を受ける仕組みが広がっていることが分かります。
通級指導は学年・地域格差が明白
ここからは、学年別に公立学校での通級指導の実態を見てみましょう。
学年別の実施状況:進学とともに減る支援
日本では通級による指導を行う学校が増えていますが、学年が上がるほど割合が下がります。小学校は全国の約8割で実施されている一方、中学校は約5割、高校はわずか1割にとどまります。
| 学校種別 | 全国平均の実施校割合 (全体数に占める割合) |
| 小学校 | 77.5% |
| 中学校 | 50.8% |
| 高等学校 | 12.1% |
参照元:文部科学省 令和5年度通級による指導 実施状況調査のP.11~13を基に作成
都道府県別の実施状況:地域格差が明白
また、地域差も大きいことが分かります。ほぼ全校で実施する都道府県がある一方、3割以下の場合もあります。
◇小学校(公立)
通級指導の実施率が高い都道府県
| 都道府県 | 実施率(%) |
|---|---|
| 京都府 | 98.0% |
| 群馬県 | 96.0% |
| 富山県 | 94.4% |
通級指導の実施率が低い都道府県
| 都道府県 | 実施率(%) |
|---|---|
| 熊本県 | 35.0% |
| 大分県 | 31.5% |
| 高知県 | 26.0% |
◇中学校(公立)
通級指導の実施率が高い都道府県
| 都道府県 | 実施率(%) |
|---|---|
| 兵庫県 | 91.0% |
| 滋賀県 | 88.8% |
| 富山県 | 87.0% |
通級指導の実施率が低い都道府県
| 都道府県 | 実施率(%) |
|---|---|
| 岩手県 | 10.3% |
| 徳島県 | 10.3% |
| 山形県 | 9.4% |
◇高校(公立)
通級指導の実施率が高い都道府県
| 都道府県 | 実施率(%) |
|---|---|
| 福井県 | 72.0% |
| 島根県 | 70.3% |
| 群馬県 | 62.1% |
通級指導の実施率が低い都道府県
| 都道府県 | 実施率(%) |
|---|---|
| 広島県 | 2.4% |
| 滋賀県 | 2.2% |
| 京都府 | 1.9% |
これらのデータから、中学・高校段階の整備や地域格差の解消が課題といえそうです。
参照元:文部科学省 令和5年度通級による指導 実施状況調査のP.11~13を基に作成
インクルーシブ教育の具体的な実践例
インクルーシブ教育は理念だけでは実現しません。教室や授業の工夫、教員や支援員の配置、地域との連携など、学校ごとに具体的な取り組みを積み重ねることが不可欠です。
ここでは、通常学級で多様な子どもが共に学べる環境を整えるために、実際の学校や自治体がどのような取り組みを行っているのかを紹介します。
①授業での実践例
ユニバーサルデザイン授業を実施
板書をそのままタブレットに配信したり、黒板の文字や図を色分けして提示したりすることで、視覚的に理解しやすくします。たとえば色弱の子どもでも識別できる工夫を行い、情報を多様な方法で伝えることで「誰も取り残さない授業」を可能にしています。
視覚支援カード・絵で授業の流れを示す
「今は聞く時間」「次は書く時間」といった授業の流れを絵やカードで示すと、発達障害や日本語が十分に理解できない子も安心して活動に参加できます。視覚的な手がかりを用意することで、不安の軽減や集中力の持続につながります。
②教室環境改善の実践例
車いす対応の座席配置・スロープ設置
机の配置を工夫して通路を広げ、教室出入口にスロープを設置すれば、車いすの子どもも自分の力で教室に入りやすくなります。段差解消や通路の確保は、物理的バリアを取り除く最初の一歩です。
補聴援助システム(マイク・スピーカー)導入
先生がマイクを使うと、教室全体に声が均等に届くため、聴覚障害のある子も聞き取りやすくなります。騒がしい環境でも音声がクリアに届き、授業への参加意欲を高めます。
③人員配置と指導の実践例
協働指導(ティームティーチング)
担任と特別支援担当教員が同じ教室に入り、授業中に補足説明を行ったり、行動のサポートをしたりします。複数の教員が関わることで、一人ひとりに目が届きやすくなり、安心感が生まれます。
学習支援員・通級担当教員の配置
授業の記録を手伝ったり、ノートを取るのを補助したり、行動をサポートしたりと、支援員がいることで学習や生活のハードルが下がります。こうした支援は「自分もできる」という自信につながります。
特別支援学校と地域校の連携
文部科学省の委託事業「インクルーシブな学校運営モデル事業」では、特別支援学校と地域校が連携し、授業設計や指導を共同で行う体制が整えられています。特別支援学校教員が小学校を兼務して授業設計やサポートに関わり、センター的機能を通じて授業改善やユニバーサルデザインの導入支援を行う事例もあります。
事例校:横浜市立若葉台特別支援学校、横浜市立若葉台小学校(参照元:文部科学省「(横浜市)R6インクルーシブな学校運営モデル事業情報交換会発表資料」)
④学校生活全体支援の実践例
合理的配慮の提供(法的義務)
体育では代替運動を用意したり、給食でアレルギー対応をしたり、点字・触覚教材を取り入れたりするなど、子ども一人ひとりに合わせた「合理的配慮」が提供されます。これは法律で義務づけられています。
ピアサポート(友達による支援)
例えばインクルーシブ教育実践推進校の神奈川県立城郷高等学校では、生徒同士の相互理解を深めることを目標として、すべての生徒に対して相互理解教育を実施しています。こうした教育を通して、互いに認め合い、多様性を尊重する態度や自然と協働する力が育まれます。
⑤学校外との連携事例
就学前相談と個別支援計画の共有
入学前から教育委員会・学校・保護者が一緒に話し合い、個別支援計画を作成。これにより、入学後すぐに必要な支援が提供され、子どもが安心して学校生活をスタートできます。
保護者・医療・福祉とのケース会議
定期的に学校・家庭・医療機関が集まり、支援目標を共有。例えば「授業中に集中が続かない子」への対応を、医師・教師・保護者が一緒に検討することで、支援が一貫性を持つようになります。
こうした取り組みが広がっていくことで、障害のある子も地域の学校で安心して学べる環境となっていきます。
インクルーシブ教育、どう思う?保護者100名の本音を調査
インクルーシブ教育はニュースや教育現場で注目される一方で、実際に子どもを学校へ通わせる保護者はどのように感じているのでしょうか。
塾選ジャーナルでは、制度の認知度や期待・不安の実態を調査しました。調査からは、多くの保護者が理念には賛同しつつも、現場での支援体制や授業への影響に懸念を抱いていることが分かりました。
インクルーシブ教育 言葉の認知割合は50%弱にとどまる

まず、「インクルーシブ教育」という言葉の認知度を尋ねたところ、「よく理解している」5%、「ある程度理解している」43%にとどまり、半数近くが十分には理解していないことがわかりました。
期待することは「思いやりや共感力が育つ」が最多

※本アンケートは複数回答形式のため、合計が100%を超える場合があります。
インクルーシブ教育に期待することで、最も多かったのは「思いやりや共感力が育つ」(34%)でした。続いて、「社会性・協調性が育つ」(27%)、「障害のある子も安心して学べる」(24%)など、人間性や多様性への理解への期待が大きいことが分かります。
「小さいうちからさまざまな子どもと触れ合うことで、違いを個性として捉えられるようになる」といった意見も多く、子どもの心の成長を期待する保護者が目立ちました。
不安に思うことは「教師の負担」や「授業の進度」

※本アンケートは複数回答形式のため、合計が100%を超える場合があります。
一方で、不安の声も少なくありません。最も多かったのは「教師の負担が増えるのでは」(26%)、次いで「授業の進度が遅れるのでは」(25%)でした。
「支援が必要な子がいると先生の手が分散し、ほかの子どもへの指導がおろそかにならないか心配」「障害のある子に配慮するあまり授業が遅れないか心配」といった声など、現場のサポート体制の不足を不安視する意見も見られました。
保護者の本音 ― 賛同から懸念まで
自由回答では、理念や効果を評価する意見から、制度や現場運営への懸念、さらには否定的な意見まで、多様な声が挙がりました。
① 肯定的な意見
とてもよいとおもっている。私自身、特別学級はあったが、一部の授業は共に受けてきたなかで、障害があるからできないんだ!ではなく、こういうことができるんだ、こういうことが困るんだと理解を深めることができたから。(埼玉県 小学生/公立 保護者)
自分の子供も障害があり、つまづくことは多々ありますが、皆と入学から同じ空間で過ごすのは子供にとって皆と同じことをしているという安心感や満足感に繋がっていて良いことだと思います。障害のない子も障害のある子と接することで、自分とは違う価値観などに気付けるきっかけとなり良いと思います。(東京都 中学生/公立 保護者)
本人が学校などを通じて一緒に生活することで、障害などに対する配慮や考えた方を持つようになり、次第に障害などに配慮しつつも自分達と変わらない存在として認識していくようになった(埼玉県 中学生/公立 保護者)
いじめや差別の抑止に繋がるなと思います(愛知県 中学生/公立 保護者)
障害の有無に関係なく、すべての子どもが共に学ぶ環境を通じて、多様な価値観や背景を理解し尊重する姿勢が出るなと思います(三重県 中学生/私立 保護者)
社会で生きていくためには必要なことで、自分さえよければいいという考えを改めるためには効果的だと思う(東京都 中学生/私立 保護者)
一斉授業だけでなく、多様な学習スタイル(個別支援、ICTの活用など)を取り入れるきっかけになるなと思います(滋賀県 中学生/私立 保護者)
② 制度には肯定的だが課題・懸念がある
理念には賛成ですが、実際には教員の知識や人手不足など、制度だけでは補いきれない部分が多いと感じています(東京都 小学生/公立 保護者)
子供達にはとても良いと思うが、教師の負担がとても大きいので続かないのではと思いました(神奈川県 中学生/私立 保護者)
多様な生徒と教育を受けるということで授業がちゃんと進むのか心配ではあります(神奈川県 小学生/公立 保護者)
個人的には受け入れられる考え方だし、できればそれが自然になってほしいと思うが、現実的には知識不足や人材不足で十分な受け入れ態勢がないなど様々な問題点があり難しいのかなと思う(山梨県 中学生/公立 保護者)
考え方としてはとても良いと思います。違いを認め合うことは、子供達の成長にとって大切ですが、実際の現場では先生方の負担が増えていないか心配で、うちの子がお世話係になってしまわないかという不安もあります。制度としては賛成ですが、運用面での課題も感じてます。(兵庫県 中学生/公立 保護者)
社会には何らかのハンディキャップを持っている人がいることを早いうちから実感することは大切だと思うが、それによって自分の子に不利益なことがあるのは避けたいと感じる。(神奈川県 小学生/公立 保護者)
③ 否定・懐疑的な意見
無理やり受け入れさせようとして、教育現場を疲弊させている。もっと時間をかけて理解を深めたり、受け入れる準備をした方が良い。(兵庫県 小学生/公立 保護者)
子供に障害があり特別支援学校に通っているのだが、子供の障害に合わせた教育をしてもらっている。そのおかげでだいぶ子供なりに成長したし、インクルーシブ教育は障害のある子の教育機会を逆に奪うものだと思う。(宮城県 小学生/公立 保護者)
実際は多様性への配慮がやりすぎだと感じている(奈良県 中学生/公立 保護者)
授業中に奇声を発して、よく中断すると聞いたことがあります。(東京都 小学生/公立 保護者)
理想的な考え方であり尊重すべきであるとは思います。ただ、現実的には導入は難しいと思いました。理由としては、部分隔離をしている生徒さんが授業でハサミを振り回していたのですが、教師も注意して取り上げていたのです。取り上げられたあと、別のハサミを持ってきたとのこと。教師に対する負担を考えれば、否定的な意見です。(大阪府 小学生/公立 保護者)
インクルーシブ教育についてのFAQ
インクルーシブ教育と特別支援教育の違いは何ですか?
特別支援教育は、障害のある子や発達に支援が必要な子に個別の支援を提供する制度(特別支援学校・学級・通級など)です。
インクルーシブ教育は初めから全員が学びやすい環境を整える点が異なり、特別支援教育を含みつつ制度や授業を共生前提で設計します。
インクルーシブ教育とインテグレーション教育の違いは何ですか?
インテグレーション教育は、障害のある子どもを通常学級に「統合」することに重点を置いた考え方です。主に学ぶ“場所”を一緒にすることに重きがあり、授業や支援が従来のままで十分なサポートがないこともあります。
一方、インクルーシブ教育は授業・環境そのものを多様性前提で作り直し、全員が安心して学べるようにする仕組みです。板書や教材の工夫、支援員の配置などで参加と達成感を重視します。
海外と日本のインクルーシブ教育に違いはありますか?
海外では、インクルーシブ教育は障害だけでなく貧困・言語・文化・ジェンダーなど多様な背景を持つ子どもを包摂します。
例として、カナダや北欧では経済的に困難な子や移民も対象に学習支援を実施。イタリアは1970年代に特別支援学校を廃止し、全員が通常学級で学ぶ“フルインクルーシブ教育”を導入しました。
日本は主に障害児教育の延長として捉えられている点が異なります。
まとめ:すべての子どもが学びやすい学校づくりへ
インクルーシブ教育は、障害のある子どもだけでなく、経済的背景・言語・文化・ジェンダーなど、さまざまな事情で学びの場から取り残されがちな子どもをも包み込む教育のあり方です。
海外ではこうした広い視点が制度の中心にあり、イタリアのように特別支援学校をなくして通常学級に統合する国もあります。一方、日本では特別支援教育の延長として捉えられることが多く、支援の充実や地域差の解消は今後の課題です。
今回実施したアンケート調査では、保護者の多くが「思いやりや共感力が育つ」など理念には賛同する一方で、「教師の負担」や「授業の進度」への不安も抱えていることが分かりました。
アンケート調査概要
調査対象:小中学生の保護者(有効回答数100名)
調査時期:2025年9月
調査機関:自社調査
調査方法:インターネットを使用した任意回答
調査レポート名:「インクルーシブ教育」についての調査
※本調査レポートの内容(グラフ・データ・本文など)の無断転載・改変を禁じます。掲載しているグラフや内容を引用する場合は、出典「塾選ジャーナル調べ:『インクルーシブ教育』についての調査」と明記し、『塾選ジャーナル』の記事(https://bestjuku.com/shingaku/s-article/34877/)へのリンク設置をお願いします。
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。