女子御三家・雙葉中学校に合格!スランプ脱出のきっかけは、“パパ塾の開講”と“取捨選択の勇気”|親たちの中学受験体験記 Vol.17
女子御三家で知られる雙葉中学校に、見事合格。その大きな勝因は、まじめで努力タイプの娘が最後まで走り切れるよう、志望校や娘の適性を徹底分析した両親のサポート力にありました。コツコツと成績を伸ばしてきた娘が、後伸びタイプのライバルたちに追いつかれてスランプに陥ったとき、どんな工夫で巻き返したのか? 必見です。
編集部
塾選ジャーナル編集部
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
【保護者プロフィール】
| お名前 | 永井 隼人/悠乃(仮名) |
|---|---|
| お住まい | 東京都 |
| 年齢 | ともに38歳 |
| 職業 | ともに会社員 |
| 家族構成 | 父、母、長女 |
【中学受験を行った子どものプロフィール】
| 子どもの名前 | 永井 日桜里(仮名) |
|---|---|
| 性別 | 女子 |
| 現在通っている学校名 | 雙葉中学校 |
| 受験時にしていた習い事 | 中学受験グノーブル |
| 得意科目 | 国語 |
| 苦手科目 | 算数・理科の思考系問題 |
| 性格 | 内向的で人見知り、こつこつ努力型 |
| 偏差値 | 通塾開始時の偏差値:57~63(塾の模試) 受験本番直前の偏差値:59(塾の模試) /SAPIX合格判定模試56 |
| 受験結果 | 雙葉中学校 合格(第一志望) 淑徳与野中学校 合格 浦和明の星女子中学校 合格 白百合学園中学校 合格 |
上品なのに自由で生き生き。雙葉中学校の自主性を重んじる校風にひかれて

―最初に、中学受験を考え始めた理由・きっかけを聞かせてください。
母:小学3年生のとき、お友達に誘われて早稲田アカデミーの「全国統一小学生テスト」を受けたのが直接のきっかけです。
私たちは教育熱心な地域に住んでいて、近所で知る限りだと、女子は7割くらいが中学受験をしているかな。実際に5割くらいは、私立中学に進学していると思います。中学受験については、娘が保育園のときからママ友との話題にのぼっていたくらいなので、私も娘も以前から心づもりはあったように思います。
統一テスト後の面談では、「女子は高校募集を停止する名門校もあり、高校受験では選択肢が少ない」という話もあったので、親子で中学受験することを決意しました。元々、小学1年生から公文にも通って勉強に意欲的でしたし、家庭学習の習慣ができていたことも大きいですね。
―志望校選びは、親子でどのように進めましたか?
母:実際の校風や在校生の様子などを知ろうと、学校説明会や文化祭などに積極的に参加しました。およそ10校(雙葉、鷗友学園女子、頌栄女子学院、白百合学園、田園調布学園、女子学院、広尾学園、洗足学園、吉祥女子、学習院女子)をまわりました。
―最初から女子校をメインに探していたのですか?
父:娘は大人しいタイプですが、男の子の友達もいたので、最初から女子校を考えてはいなかったんです。共学も含めて見学した中で、娘本人が女子校の落ち着いた雰囲気のほうが自分にしっくりくると。高等部も一緒の文化祭だったこともあり、共学のテンションの高さに圧倒されてしまったのだと思います。
交通の便なども確認しながら、親子で感想を出し合って絞り込んでいったら、結果として第一志望が女子校になったという感じです。
―大学附属の中学校は候補にはなかったのですか?
母:学校見学を始める前に、「大学附属校の選択肢もあるよ」っていう話はしました。親としては受験回数が少ないほうがストレスも減りますし。
でも、内部進学などの説明をしたら、「まだ将来の夢も決まっていないから進路を狭めたくない」と。娘はのんびりしていて、いろいろ親任せで不安もあるのですが、肝心なところはしっかり主張してくれるので、志望校も選びやすかったです。
―最終的にどのような点を重視して、雙葉中学校に決めたのですか?
父:在校生から伝わってくる伝統校ならではの魅力、でしょうか。お嬢様校の硬いイメージがあったんですが、上品さやまじめさだけではなく、生き生きと自立していて、充実した学校生活が感じられました。
娘もそんな在校生と文化祭などで交流してみて、雙葉中学校に通いたいと思ったようです。管理型ではなく、一人ひとりの個性と能力を伸ばすという教育理念も、娘にぴったりでした。
―併願校は、どのような基準で選びましたか?
母:学校見学を進めていく中で、娘がどんな学校に進学したいか具体的になってきたので、在校生の雰囲気や教育方針が第一志望と似たような学校を併願校として選んでいきました。
勉強量を無駄に増やさないために、出題傾向が似ているかどうかも重視しています。6年間も通うわけですから、通学時間が負担にならない学校であることも外せないねって親子でたくさん話し合って決めました。
\志望校・受験校選びで意識したポイント/

親の都合ではなく、娘の相性を優先して塾選び。相性ぴったりの先生はモチベーションの維持に

―塾はどのように決められましたか?
母:共働きということもあり、通塾日数も多くてサポートが手厚いと聞いていた早稲田アカデミーを最初は検討していました。ですが、体験授業のときに男の子が多いクラスだったせいか、解答スピードも早くて熱量も高かったのが娘に合わなかったみたいです。
グノーブルの授業も体験したら、娘が気に入りました。サピックスよりは成績によるクラス変動も少ないと聞きましたし、点数や順位といった数字をあまり気にしない娘にはそのほうがよいのかもと。
とても相性のよい先生と巡り合えて、結果として3年間ずっと同じクラス、同じ先生で頑張れたのはかなりプラスの要因になったと思います。
―先生との信頼関係は受験のモチベーションに大きく影響しますよね。どのような先生だったのですか?
母:あまり主張できない生徒のこともきちんと理解してくださって、タイミングよく声かけしてくれる先生でした。娘は積極的に質問したり、テスト結果を報告しに行ったりはしないタイプなんです。
ですが、先生のほうから聞いてくれるし、褒めてくれるし、冗談で笑わせてくれるし。大人しい娘ともうまく関係を築いてくださいました。
―通塾開始はいつで、どのくらいのペースで通っていましたか?
母:小学3年生の夏期講習からグノーブルに入塾し、週1回通っていました。小学4〜5年生からは週2回、小学6年生になると週4回になりました。授業時間も1コマ50分から始まって、最後は1コマ80分です。
娘のお友達はそれぞれ別の塾に通っていたのですが、グノーブルは授業数が多いほうではなく、家庭学習の比重が大きいと思います。塾のテキストは私が管理して、1日の配分を考えて渡していました。
自分の好きな科目からではありますが、私の帰宅前に一人で取り組んでくれていました。中学受験前に公文の宿題で、自習の下地をつくっておいてよかったと思います。
\塾選びで意識したポイント/

小6の春に訪れたスランプは、夫婦で協力して克服!

―塾に通い始めてから、成績は順調に伸びていきましたか?
母:毎日コツコツ取り組めるタイプなので、小学5年生の終わりくらいまでは偏差値も順調に伸びていきました。模試なども自己採点するだけでなく、解説を読んで一人で解き直しまでできていたんです。
雙葉中学校も合格圏内で安心していたのですが、小学6年生になってすぐに成績が落ちてしまって。算数や理科の思考力系問題でつまずくようになったんです。後伸びするタイプの子たちにも追い上げられてしまって、偏差値も下がりました。
―成績を順調に伸ばしてきた子にありがちなスランプだと思いますが、どうやって乗り越えましたか?
父:“パパ塾”の開講です。ぼくが算数や理科を単元別にチェックして、娘の苦手克服をフォローしたり、志望校の出題傾向を把握して塾のテキストから問題を取捨選択して教えたりするようにしました。
娘の適性を考えて、難易度の高い理系問題に時間をかけすぎて、得意科目の勉強にまで影響が及ばないように気をつけていたと思います。
―家庭で教えるには準備も必要ですし、どうやって時間の捻出を?
父:帰宅後だけではもちろん、準備の時間が足りません。出勤前、前日に娘がつまずいた箇所を見直したりしました。その日の学習内容はお昼休みに考えるなど、私も時間のやりくりを工夫して。平日は1〜2時間、理系科目のサポートをして受験までの最後のダッシュを伴走しました。
―共働きで多忙だったとは思いますが、夫婦で役割分担をして受験のサポートをされていたんですね?
母:最初は私だけのサポートで十分でした。塾のテキスト整理や家庭学習のスケジュール管理をしてあげれば、付き添っていなくても毎日のノルマをこなせる娘だったので。でも、問題の難易度が上がった小学5年生の夏くらいに限界がきてしまったんです。
グノーブルは小学5年生のときも週2回しか授業がなくて、家庭学習で大量のテキストをこなさなければなりませんでした。問題の難易度も上がって家庭で教えてあげないと終わらせることができなくなり、正直、転塾を考えたくらい私は追い詰められてしまって。
でも、娘は絶対にグノーブルに通い続けたいというので、先ほどもお話しした「パパ塾」の開講になったわけです。
\スランプを抜け出せたポイント/

頑張りすぎて燃え尽きないよう、志望校分析で必要な勉強を取捨選択

―パパ塾の補習で、苦手科目を克服できたコツは?
父:集団授業だけでは理解しきれない算数や理科の学力を底上げしなければいけないのですが、娘の睡眠時間を削るほど勉強量を増やすのはやめようと妻と決めました。
娘のつまずきポイントを知るのはもちろんですが、同時に志望校の出題傾向を過去問から分析しました。塾の先生とも相談して、膨大なテキストから問題の取捨選択をしたのが正解だったと思います。
―まじめな子ほど、頑張りすぎて燃え尽きることもあります。勉強量の調節は大切ですね。
父:苦手な思考力系の問題であっても、最初はすべてできるようにしようと根を詰めて教えてみたんです。ただテキストの量も難易度もますます上がっていくにつれ、「いや、違うな」と。
娘にとって、難易度の高すぎる問題が続くとミスも増えるし、解き直す時間も増え、娘のストレスも増えてしまう。受験を最後まで走り切るためには、得意科目で点数が取れるなら苦手科目は合格の最低ラインでよい、と方針を変えたんです。
―子どもの適性や志望校によって学習内容を最適化するのが理想ですが、難しくはなかったですか?
父:かなり難しいし、すごく不安にもなります。どれをやってどれをやらないかの取捨選択をすることで、学習が必要な問題を取りこぼしてはいけないですし。
過去問の分析は週末を使って5年分くらいをチェックして取り組みました。そのうえで塾の先生ともメールなどで相談を繰り返して、なるべく効率的に進められるように学習計画を立てていきました。
―志望校に合わせた問題の取捨選択、具体的にはどうやって?
父:同じ単元でも志望校によって、比較的基礎しか出さない学校と応用まで出す学校があります。娘はどのくらいの難易度まで解けるようになればよいかを単元ごとに見極めて、塾のテキストから問題を取捨選択しました。
もちろん、算数や理科の思考力系問題が苦手だからといって、すべて捨てたわけではありません。たとえ難易度が高くても、解き方のパターンを覚えてしまえばできるようになる問題も多くあります。繰り返し一緒に解いて解説し、量をこなしてパターンを覚えてもらって、確実に点数が取れるようにしました。
―親が先生だと甘えてうまくいかない家庭も多いですが、どのような工夫を?
父:そもそも苦手科目を教えるのですから、娘からイライラされることもあります(笑)。難しい問題が続いて負担が多そうなときは、私も一緒に解いてどちらが早いか競走したり。お互いの解き方を比べてどちらがよいかを考えたりして、楽しめる工夫をしました。
模試や復習テストの結果をチェックして、娘のつまずきポイントを細かく把握していたのもよかったと思います。困っているときに的確なアドバイスが出せたので、頼れるパパだったかと(笑)。娘は元々、素直に聞いてくれるタイプなのですが、納得していなくても言わない子なんです。教えた後も間違えてきたときに、やっぱり腑に落ちてはいなかったんだなというのは何度かあったので、表情から気持ちをくみ取ったり、という苦労はありました。
\苦手科目を克服できた学習のコツ/

勉強の進捗より睡眠時間を優先。健やかな生活も合格に必要なポイント

―合格に結びついたポイントは、どんなところにあると思いますか?
母:やはり、取り組む問題の取捨選択をして、娘の負担を減らしたのはよかったと思います。勉強量を調節できたので、生活リズムを崩さず、十分な睡眠時間を確保することは受験期間ずっとできていました。
受験生は朝型の生活にするのを勧められることが多いと思いますが、我が家では夜にパパ塾があるので、起床時間はずっと7時半のままで早めることはしませんでした。小学5年生までは10時半、受験の直前でも11時に寝るように心がけていました。
宿題が終わらなくても、解き直し中の問題があったとしても就寝時間がきたら終了。明日に回して、必ず8時間半の睡眠を取ろうね、と親子で決めていました。
―パパ塾でスランプを乗り越え、そのまま試験まで順調でしたか?
母:いえいえ。苦手な理系科目でも点数が取れるようになったし、夏休みに頑張ったこともあって、9月には合格確率80%になったんです。でも、そこで安心してしまったのか息切れしてしまって、その後に合格確率は50%に。
そのまま試験まで50%だったんですが、本人はあまり気にしていなくて。順位とか点数にさほど執着がなくて競争心がないのが、逆によかったのかもしれません。成績が下がっても悔しがったり落ち込んだりしないので、冷静なまま試験当日を迎えました。
―どのような受験日程だったのでしょうか?
母:1月に併願となる女子校を2校受験して、合格をいただいてから雙葉中学校の入試に臨みました。塾からはほかにもチャレンジ校の提案はあったんですが、娘が受けなくてよいというので尊重しました。
―入試本番の日は、どのように送り出されましたか?
母:親のほうが緊張しているので、動揺して余計なことを言わないようにと、小さな手紙を用意して渡していました。娘は読まずに「後で見るから」と鞄に入れてしまったので、読んだところは見ていません。でも、受験会場では読んだと思います。
夫婦で励ましの言葉などを一生懸命に考えて、試験の度に文言を変えて書いていましたが、試験終了後も感想は聞いていません。淡々としていて、なかなかドライなんですよ(笑)。入試前日も緊張して眠れないなんてことはなく、平常心を保っていました。
―受験時期に親として心掛けていたこと、モットーにしていたことなどはありますか?
父:人生で考えたら中学受験はただの通過点ですし、今後のためにも娘の自発性、自主性を養う機会にしたい、と思っていました。まじめで責任感は強いけれど、積極的に意見はしないので、一つひとつたくさん話し合って確認して、決めてきたつもりです。
本人の意向があったので、習字の習い事も小学5年生まで通いました。公文もそうなのですが、コツコツと取り組んで、昇級していくのが好きなんです。習字教室には学校のお友達と通っていましたし、よい息抜きになっていたと思います。
─中学受験を終えて、娘さんの成長を感じることはありますか?
父: 中学受験を通して自主性が身についたかというと、まだまだです。やっぱり親が先に手を出して対策してしまったし、娘の頭越しに塾の先生にも相談していましたし。
ですが、将来の夢を考えるきっかけにはなったようです。大学や職業など、将来を見据えた話を自分からするようになりました。のんびりしたタイプだったので、やはり中学受験を経験したからこその成長だと思います。
\無理のない生活リズムを維持するコツ/


取材後記
高校や大学受験とは違い、小学生が挑む中学受験では子どもがピンチに直面したときに家族の絆やその人間力が試されるように思います。娘さんの成績が落ちても、合格第一だからとやみくもに勉強量を増やさず、生活リズムの維持を優先されたお母様の判断。苦手科目を娘の努力だけではなく、パーソナライズした学習内容で負担を減らして克服させたお父様の対応は、とても参考になります。
娘さんへの愛情をいちばんに、家族一丸となって挑んだからこそ雙葉中学校に合格できた永井さんたちの中学受験。「親や家族にとって、中学受験に必要なことは何か?」を、垣間見ることができたと思います。
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。