中学受験で全落ち…親が絶対やってはいけないことは?高校受験でリベンジを果たした親子の体験記
子どもの中学受験で「全落ち」という結果を前に、頭が真っ白になってしまった――。これまでの努力やかけた時間がすべて無駄になったように感じ、深く落ち込んでいる保護者もいるのではないでしょうか。
首都圏模試センターのデータによれば、2025年の中学受験では約15人に1人が合格できないという厳しい現実があります。そのため中学受験の全落ちは、決して珍しいことではありません。
この記事では、中学受験の厳しい実態や、子どもが深く傷ついているときに親がやってはいけないNG行動を解説します。さらに、中学受験で第一志望校に不合格となったものの、高校受験で見事リベンジを果たした親子のリアルな体験談も紹介します。
「全落ち」というショックな現実を、親子でどう乗り越えていくかのヒントを見ていきましょう。
編集部
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中学受験の「全落ち」は決して珍しいことではない

「全落ち」という現実は、子どもにとっても親にとっても、想像を絶するほど重いものです。しかし最新のデータを見ると、中学受験がいかに厳しい戦いであり、不合格という結果が決して他人事ではないことがわかります。
ここでは、首都圏模試センターが発表した2025年の入試結果のデータをもとに、中学受験の実態を見ていきましょう。
約15人に1人が合格できない厳しい現実
首都圏模試センターのデータによると、2025年の首都圏(私立・国立)中学受験の推定受験者数は52,300人でした。これに対し、推定合格者数は48,897人となっています。
全体の合格率は93.5%となっており、一見すると高く見えるかもしれません。しかし裏を返せば、受験者のうち6.5%、およそ15人に1人は合格を得られていないという厳しい現実を示しています。
特に熾烈を極める男子の受験
首都圏模試センターのデータを男女別に見ると、男子の受験のほうがより深刻さが際立ちます。
2025年度の入試結果は、男子の受験者数27,405人に対し、合格者数は22,875人。合格率は83.5%にとどまりました。これは、女子の合格率(104.5%)と比べて低く、男子の受験がいかに厳しいものであったかがわかります。
女子も油断できない!人気校集中というワナ
一方で女子のデータを見ると、受験者数24,895人に対し、合格者数は26,022人、合格率は104.5%となっています。
この数字だけを見ると「女子は全員どこかに合格できる」と思われがちです。しかし合格率が高いのは、多くの受験生が複数の学校から合格を勝ち取っている結果に過ぎません。
同センターのデータによれば、2025年の女子の1人あたり平均出願校数は7.19校にも上ります。多くの受験生が併願校を確保しつつも、人気のある難関校に挑戦が集中しているとうかがえます。
たとえ全体の合格率が100%を超えていても、人気校に受験生が集中する以上「全落ち」のリスクは女子にとってもゼロではないといえるでしょう。
参考:首都圏模試センター「2025年首都圏中学入試 結果状況【2/17ほぼ確定版】」
第一志望合格はさらに狭き門
全体の合格率が93.5%と聞くと、多くの受験生が志望校に合格していると感じます。しかし、合格者数はあくまで「いずれかの学校に合格した人」の数です。受験生が本当に行きたいと願う「第一志望校」の合格となると、合格者数はさらに少なくなると考えられます。
また合格校の中には、本番の緊張感に慣れるために受験する「お試し受験(安全校)」が含まれているケースも少なくありません。たとえ「お試し受験」の学校に合格しても、自宅から通うには現実的でない遠方の学校であったり、教育方針が本命校とは異なったりするため、進学を選ばない家庭もあります。
第一志望校に不合格となり公立中学校への進学を選ぶという決断は、決して珍しいことではないのです。
全落ちした時に親がやってはいけない5つのこと

中学受験で全落ち、あるいは第一志望校不合格という結果を突きつけられたとき、一番ショックを受けているのは子ども本人です。しかし親も同じように、あるいはそれ以上に動揺し、落ち込んでしまうケースもあるでしょう。
よかれと思って取った行動が、かえって子どもを追い詰めてしまうことも少なくありません。ここでは、親がやってしまいがちなNG行動を5つ紹介します。
子どもの前で無理やりいつもどおりにふるまう
子どもが深く落ち込んでいるとき、親が無理に「いつもどおり」を装うのは逆効果になるケースがあります。子どもは親の不自然な明るさや、無理に作った「いつもどおり」の態度を敏感に察知します。
「自分はショックで悲しいのに、親は平気なんだ」と孤独感を深めたり、「親に心配をかけてはいけない」と自分の本当の気持ちを押し殺してしまったりするかもしれません。
暗い雰囲気になるのもよくないですが、無理に「いつもどおり」を作るのではなく、子どもの気持ちに寄り添ってあげましょう。子どもの感情を受け止め共有することが、子どもの安心につながることもあります。
受験までの過程だけを肯定する
もちろん、これまでの努力を否定する必要は一切ありません。しかし不合格という「結果」が出た直後に、親が受験までの過程の素晴らしさばかりを強調しすぎると、かえって追い詰められる子どももいます。
本人が一番感じているのは、努力が報われなかった「結果」に対する悔しさや悲しさです。受験までの過程ばかりを肯定されると「結果を出せなかった自分はダメなんだ」と自分自身を責めることになりかねません。
まずは「悔しいね」「悲しいね」と、結果に対するネガティブな感情を親子で共有し、受け止める時間を作りましょう。
子どもの気持ちの整理がつくまで何もしない
子どもの自主性を尊重し「気持ちの整理がつくまでそっとしておこう」と距離を置いて見守る姿勢は、子どもの性格によっては「放置」や「無関心」と受け取られてしまう可能性があります。
特に全落ちという大きなショックを受けた直後は、子ども自身もどうしていいかわからず混乱しています。たとえ子どもが「放っておいてほしい」と言ったとしても、完全に距離を取るのではなく「何か食べたいものある?」「少し散歩でも行かない?」など、様子を見ながら適度なタイミングで声をかけましょう。
親が常に関心を持っているというサインを送り続けることが大切です。
過度に気を遣いすぎる
子どもを傷つけたくない気持ちから、過度に気を遣い、腫れ物に触るような態度をとると、家庭内の空気はかえって重くなります。子ども自身も「自分は不合格だったから」と特別扱いされていると感じ、居心地の悪さを覚えてしまう可能性もあるでしょう。
普段どおりの会話や生活を心がけると、子どもが日常を取り戻すことにつながります。というと今までの話とは逆のように聞こえますが、大切なのは「無理をしない」ということです。
普段どおりの生活を淡々と続けつつも、子どもの様子にはアンテナを張り「話したくなったら聞くよ」という姿勢を見せる。その「変わらない日常」と「いざというときの安心感」のバランスが、子どもが日常を取り戻すきっかけになります。
一人で抱え込んでしまう
「子どもの前ではしっかりしなければ」「親である自分が何とかしなければ」と、すべての不安や責任を一人で抱え込んでしまうのは危険です。親自身も子どもと同様に深く傷つき、疲弊しているケースがほとんどです。
そのイライラや不安が、意図せず子どもへの態度に表れることもあります。親自身の心の健康を保つためにも、友人や塾の講師などの第三者に話を聞いてもらい、感情を吐き出す場所を持つようにしましょう。
中学受験「志望校不合格」からの3年間~高校受験でのリベンジ

中学受験で不合格──。親子にとっては大きな挫折ですが、それがすべてではありません。
今回お話を伺ったのは、中学受験で第一志望に落ちて公立中学校へ進学後、高校受験で第一志望に合格したという娘さんの保護者。
「全落ち」ではなかったものの、合格した第二志望校への進学は体力的な事情で断念、公立中学校への進学を決めました。それでも入学までには気持ちを切り替え、新たな環境で前向きなスタートを切ることができたといいます。
どのように気持ちを切り替えて高校受験へとつなげたのか、詳しくお話をお伺いしました。
本人の希望で始まった中学受験。しかし、第一志望校は不合格
—中学受験を決めたきっかけを教えてください。
中学受験は娘が小学5年生ぐらいに決めました。小学4年生の1月頃から塾に通っていて、塾から中学受験の有無を選択するという話が出ていました。そういった中学受験の話も出る環境の中で学習しているうちに、娘が中学受験をすると宣言したのがきっかけです。
—中学受験の結果はどうでしたか?
第一志望と第二志望の2校を受け、第一志望は不合格でした。第二志望には合格しましたが、学校が自宅から遠く、娘の体力も考えて公立中学校への入学を決めました。
—公立中学校への入学は最終的に娘さんが決められたのでしょうか?
そうですね。親から説得したような感じではなく、通学にかかる時間やバス・電車に乗って学校へ行く必要があると説明したところ、中学校は身近なところに行こうという結論になりました。
親子で乗り越えた不合格の壁。公立中学への進学を決意するまで
—第一志望の学校が不合格だったとき、親御さんはどのような気持ちでしたか?
一言でいえば「残念」という気持ちでした。残念という気持ちがありながらも、娘には「その努力は無駄じゃない」ということを伝えたい、そう感じてほしいと思いながら接していました。
—娘さんはどのような様子でしたか?
なんともいえないような雰囲気でした。表面上は明るく振る舞っているように見えましたが、ふとした瞬間に落ち込んでいるのを感じられるような……そんな状態でしたね。
—家庭内の雰囲気はいつもどおりでしたか? それとも少しギクシャクしましたか?
ギクシャクとかはありませんでしたが、コミュニケーションの取り方を気にしましたね。娘にどう声をかけたらいいかなとか、外に連れ出したほうがいいかなとかを考えていました。
実際に受験結果が出た日やその翌日は、家にいても落ちたことばかり考えてしまいそうだったので、ショッピングモールに行ったりドライブをしたりと身近な場所に複数回お出かけしました。
—そういったお出かけを重ねる中で、娘さんが立ち直ったなと感じたのはいつ頃ですか?
公立の中学校に行くと決めたときぐらいに娘の中でも整理ができたように感じました。中学校の行き先を決めるまでは合格発表から1週間から10日ぐらいと短かったのですが、あまり長く考えすぎるのもよくないと思っていたので、先延ばしにせずに短期間で話し合って決めました。
中学受験で得た力で挑んだ高校受験
—中学校に入学された娘さんの勉強面での様子はいかがでしたか?
1年生のときは、あまりガツガツと勉強の話をするよりも、一度受験からは離れて過ごしていた印象です。もともと中学受験で培った学習習慣があり、学習へのモチベーションも維持できていたので、中学校の中間テストや期末テストの点数は相対的に高い状態でした。
部活動(卓球部)や友人との遊びも楽しみながら過ごしていましたね。
—では、高校受験を意識し始めたのはいつ頃からでしたか?
中学2年生の夏か秋頃だったと思います。通っていた塾や学校で自然と受験の話が出るようになってきて、娘も受験モードに徐々にシフトしていったという感じですかね。
—中学受験で不合格だった学校を第一志望にされたのですね。それはなぜでしょうか?
中学3年生の夏頃にあった塾の合宿がきっかけだったようです。その合宿では事前に自分の行きたい高校を志望校として提出でき、テストの結果によって実際の受験のようにホールに合格者の番号が発表されるというイベントがありました。
そのときに、もともと中学受験で不合格になった学校を志望校として提出したところ、合格になったみたいなんです。その瞬間に「行けるんだ」という印象が強く残り、その学校を志望校にするという感じで高校受験の勉強をスタートしていったのが、最初のきっかけだったと聞いています。
—中学受験の経験が高校受験に生きたと感じる点はありますか?
勉強の方法を知っているという点が武器になったと感じています。受験が初めてではない状態でスタートできたので、学習にスムーズに入っていけている印象を受けました。学習習慣もすでに身についていたため、親が言わなくても自ら勉強に取り組む状況でした。
「中学受験のリベンジをしたい」というよりは、「不合格という経験を繰り返したくない」という思いのほうが強かったのではないかと感じています。
—高校受験でのサポートで、中学受験のときと変えたことはありますか?
最も気を配ったのは「体調管理」です。実は中学受験の1~2週間前ぐらいのタイミングで、娘がかぜを引いて数日寝込んでしまったことがありました。
親戚で集まった際にかぜを引いている人がいたにもかかわらず、油断してその場にいさせてしまったという後悔がありました。そのため外出時のマスクの徹底や、かぜのような症状がある人がいたら、なるべく早くその場を離れる努力をするなど、健康管理を徹底しました。
その結果、高校受験ではかぜを引くことなく健康な状態で勉強に集中できました。
つかみ取った第一志望校合格。中学受験の経験がもたらしたもの
—高校受験では第一志望校に合格されたんですね。そのときの親御さんの心境はいかがでしたか?
「安心」「ほっとした」という気持ちが一番強かったです。前回不合格だったときの残念な気持ちが記憶に残っていたため、合格がわかった瞬間の子どもの表情を見て、ほっとしました。
—娘さんはどのような反応でしたか?
「解放感」が一番強かったのではないかと思います。
中学受験の失敗がどこかに引っかかっていたかもしれませんが、高校受験で努力し、最終的に行きたい学校に行けることになったので娘の表情はだいぶ晴れ晴れとしていました。
—中学受験の経験は、今、高校2年生の娘さんにどのように生きていると感じますか?
「経験値」として生きていると感じています。中学受験そして高校受験のためにしっかりと学習してきたので、お寺や美術館などの場所に行った際に、単純に見たときに想像できるものが増えていたり、美術の絵や人名を見たときに、単に名前として捉えるのではなく、過去に学習したことが結びついたりして、理解の深さが変わったと感じました。
—今振り返って、中学受験は「やってよかった」と思われますか?
「やってよかった」と思っています。結果に関係なく、チャレンジしなければ得られなかった経験があると思うので。
—中学受験で不合格になった当時のご自身(親)に声をかけるとしたら、どのような言葉をかけたいですか?
「受かろうが落ちようがマイナスはない」という言葉をかけたいです。当時はマイナスなことを考えてしまいましたが、成功も失敗も積み重ねになり、子どもにとってマイナスはことはないと伝えたいです。
—最後に志望校に落ちてしまったり、公立中学校への進学に不安を感じていたりする保護者に向けてのメッセージをお願いします。
「子どもの意思を尊重しながら、親としてできることをやりましょう」という言葉を伝えたいです。
落ちても受かっても子どもの経験にはなりますし、マラソンで例えるなら中学校はその後の高校、大学、就職という長い道のりのうちの「1つ目の電信柱に向かって走っている」くらいの段階です。子どもに寄り添い、一緒に伴走していくのがよいと思います。
中学受験の経験は価値ある財産

インタビューでお話を伺った親子のように、中学受験での不合格という経験が、失敗のまま終わるわけではありません。
不合格という現実は、親にとっても子どもにとってもつらいものです。しかし中学受験に向けて親子で悩み、努力した時間は、形を変えて未来の力になります。
中学受験での経験は、合否に関わらず、子どもと家族にとって価値ある財産です。今はつらくとも、子どもの意思を尊重し、再び前を向いて歩き出せるように、親として伴走してあげてください。
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