慶應義塾中等部に合格!母のスケジュール管理と父の勉強サポート、集中を切らさず完走した3年半|親たちの中学受験体験記 Vol.18
母の綿密なスケジュール管理と、父の勉強サポート。親の支えを力に変え、息子は3年半、集中を切らさずに走り続けました。
夜9時就寝・朝6時起床の生活リズムを貫き、息抜きや小さなごほうびも取り入れながら、家族で挑み続けた日々。積み重ねた努力と家族のチームワークが、名門・慶應義塾中等部合格というゴールにつながりました。
柳沢さん一家の“集中を保ち続けたチャレンジ”には、中学受験のヒントが詰まっています。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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【保護者プロフィール】
| お名前 | 柳沢 真実(仮名) |
|---|---|
| お住まい | 東京都大田区 |
| 年齢 | 41歳 |
| 職業 | 専業主婦 |
| 性格 | 芯が強く計画的。子どもの個性を尊重している。 |
| 家族構成 | 夫、長男(中学1年生)、次男(小学3年生) |
【中学受験を行った子どものプロフィール】
| 子どもの名前 | 柳沢 奏(仮名) |
|---|---|
| 性別 | 男子 |
| 現在通っている学校名 | 慶應義塾中等部 |
| 現在の学年 | 中学1年生 |
| 受験時にしていた習い事 | 四谷大塚 |
| 得意科目 | 国語・社会 |
| 苦手科目 | 理科 |
| 性格 | 友達は狭く深く付き合うタイプ。学校で代表委員を務めるなど人前に出ることが好き。 |
| 偏差値 | 通塾開始時の偏差値:四谷偏差値55 受験本番直前の偏差値:四谷偏差値63 |
| 受験結果 | 慶應義塾中等部 合格(第一志望) 聖光学院中学校 不合格 広尾学園中学校 不合格 都市大学等々力中学校 合格 世田谷学園中学校 合格 栄東中学校 合格 |
息子の“得意を伸ばす”を軸に中学受験。慶應義塾中等部に決めた理由は?

―最初に、お子さんの中学受験を決めた理由やきっかけについて教えてください。
幼少期からピアノ、スイミング、サッカーなど、さまざま な習い事をしてきた長男ですが小3からは塾にも通い始めました。その中でも特に「勉強」が一番頑張れる分野でした。
もともと本を読むのが好きな子で、特に歴史の本が好きです。社会は昔から得意科目で、ドリルも最初は「面倒くさい」と言うのですが、「これをやるとこんなことができるようになるよ」と伝えると、ちゃんと自分から取り組みます。コツコツと問題に取り組む姿をそばで見ていて、「勉強に向いている子なんだろうな」と感じました。
学校でも、他の子よりも点数が高かったり、名前が貼り出されたりするのがうれしくて、自分から意欲的に頑張っていましたね。そんな息子の姿を見て、「強をもっと伸ばせるのではないか」と思ったのが最初のきっかけでした。
また、私も夫も私立の中高一貫校で、勉強以外にも好きなことに打ち込む時間を持つことができたのも理由の一つです。子どもにも同じような経験をさせたい気持ちもあり、息子が小3の頃に中学受験を決めました。
―通う学校選びで重視していたポイントはどこになりますか。
中高一貫であることのほかに重視していたのは、通学時間と学校の雰囲気です。部活には絶対に入ると思ったので、通学時間は1時間以内を目安にしていました。
学校の雰囲気が息子と合っているかどうか、入学後に勉強以外のことも充実した生活が送れるかどうか、という点を考えて選びました。あとは、男子校か共学かも見ていました。
息子は男女問わず友達がいて、男子特有の激しいボディタッチはあまり好まないタイプなんです。女子もいる方が気楽に過ごせるのではと思い、できれば共学が望ましいなと考えていました。
―学校説明会にも10校ほど参加されていますね。最終的に志望校はどのように絞りましたか?
当初は、聖光学院の雰囲気や学校の設備の充実、部活の豊富さに惹かれて第一志望に考えていたんです。ただ男子校であること、学力的にチャレンジになることに不安もありました。
塾のクラスが志望校別に分かれる小6夏のタイミングで、第二志望だった慶應義塾中等部に本命にシフトすることを決めました。
塾の先生からは「夏以降に学力が伸びるケースもある」と伺っていたので、「ここで諦めていいのかな……」とかなり迷いました。でも、仮にギリギリ合格したとしても、入学後に苦しい思いをするかもしれません。もともと中学受験の目的にしていた「伸び伸びとした中高生活」を送れなくなってしまうのでは? という心配もありました。
―入学後の学校生活の充実度・相性を優先したいと思われたのですね。
慶應義塾中等部も息子のやりたいことができる環境は整っていました。中学は共学、高校は男子校と両方を体験できるのも魅力のひとつです。大学付属ですから、長く付き合える友だちができるし、好きなことをする時間も充分あります。
最終的には本人も私たちも納得して志望校を変更しました。無事に合格して実際に通ってみると、伝統校ならではの雰囲気と明るい校風で、息子も充実した日々を過ごしています。悩んだ末の決断でしたが、「慶應義塾中等部を選んでよかった」と感じています。
\志望校・受験校選びのポイント/

夜9時就寝・朝6時起床を徹底。集中力を高める生活リズムと息抜きの工夫

―では、ここからは受験に向けたご家族のサポートについて聞かせてください。ご両親の中学受験体験は、息子さんをサポートするうえで役立ちましたか?
私立校ならではの雰囲気については、イメージしやすいという利点はありました。でも子どもの中学受験となると、これは別物ですね。
私たち夫婦は関西出身なので、学校数も倍率も異なる東京の中学受験は未知の世界でした。インターネットやSNSを駆使して情報を集めながら、家族で力を合わせて進めていきました。
―受験サポートは、お父様とお母様で役割分担などは決めていましたか?
私が全体的なマネジメントをして、勉強は夫が見るという分担をしていました。
私の役割は勉強計画を立てること、日々の課題を整理することです。私が算数などわからない問題や単元をピックアップして、夫が時間をつくって教えるというサイクルにしていました。
塾の先生に教えてもらう手もあるかと思いますが、息子は「恥ずかしい」「塾にいる時間が増えるのが嫌」というタイプです。中学受験の問題は準備をしないと教えるのが難しいので、夫は過去問を予習してから息子に教えていました。
―家庭学習を含めて受験準備を本格的に始めたのは、通塾開始からですか?
小3の9月に塾に通い始めてから、家でも勉強するようになりました。通塾の頻度は、週2日から始まり、小4で週3日、小6の後期から週4日になりました。
通塾の日数が増えて授業時間が長くなると、予習・復習・宿題とやることが増えるので、家での学習時間も自然と長くなります。だからこそ、モチベーションの維持と生活リズムを崩さないことは常に意識していました。
―生活リズムを整えるために工夫したことは何ですか?
8時にはテレビを消して、寝る態勢に入ることです。親が起きていると子どもも起きていたくなるので、家族全員で9時には寝るのを目標にしていました。
朝は6時に起きて6時半から朝の勉強タイム。これは、家族の決めごとで今も続けています。周りには「寝る時間が早い」と言われますが、おかげで受験直前期も睡眠不足になることはありませんでした。
―やるべき課題が多いと、生活リズムを崩さずに予定を組むだけでも大変ですよね。
通塾頻度が増えた小4〜6まで、私が毎日やっていたのはスケジュール帳に「今日やること」を具体的に書き出すことでした。朝・夕・夜とそれぞれに「●●の計算問題」のように詳細にやることを5分刻みに書いて、やりきれなかったことをメモ欄に入れて後日に振り分けるみたいな。
塾の宿題・予習・復習のほかに、テスト日から逆算して学習スケジュールを全部書き出していましたね。とにかくやることが多いので、可視化しないとわからなくなってしまうんです。
―時間が足りないと感じたときに、工夫したことはありますか。
6年生になった時、息子と相談して「今が頑張りどころだから」と、大好きなマンガやゲームをすべて箱にしまって封印しました。
5年生のころまでは、隙を見てマンガを読んでしまうと、のめり込んで勉強に戻ってこれないことがあったんです。箱にしまっても家にあると気になってしまうので、私の実家に全部送って「家にマンガはない」という状態を意図的につくりました。
1年間はガマンの日々でしたが、息子は「合格したら好きなマンガを大人買いするからね!」と、それを目標に頑張っていました。慶應義塾中等部に合格したら、すぐに祖父と書店に行ってリュックいっぱいにマンガを買って帰ってきたのを覚えています(笑)。
―すべて終わった後の楽しみが、頑張るモチベーションになったんですね。
とはいえ子どもなので、遊びたい気持ちは強いんです。もともと勉強が好きな子なので、1〜2時間の勉強は苦にしません。でも6年生になると、勉強時間がさらに増えます。さすがに「こんなには勉強したくない」というか、自分の時間がないことにフラストレーションは溜まっていたと思います。
だからこそ、たくさん勉強した後は家族でトランプやボードゲームをしたり、おいしいものを食べに行ったり、息抜きすることをかなり意識していました。
他にも「30分なら好きな小説を読んでいい」とか、「成績が上がったら好きなトレーディングカードを買う」とか、“小さなごほうび”は欠かしませんでした。短い時間でも楽しい瞬間をつくって、勉強のストレスを軽減してあげたかったんです。
\受験サポートのポイント/

塾と家庭の継続学習で苦手を克服。読書習慣が導いた“得意を伸ばす力”

―受験勉強に取り組む中で、学力面ではどのような変化がありましたか?
いちばん伸びたのは算数です。最後の1~2月にぐんと伸びましたね。
偏差値(四谷大塚)は60~63をうろうろしていたのですが、受験直前期に基本問題を大量におさらいしてから過去問に取り組みました。おかげで過去問演習では、合格点を取れるようになっていました。
一方で苦労したのが理科。力学、化学の計算問題が足を引っ張っていたので、市販の問題集を購入して基本問題を何度も復習しました。苦手克服のために、最後の方は理科に時間を取らざるを得なかったという感じです。
幼少期にあまり理科に関することに触れてこなかったので、興味関心がなかったことも苦手の要因だったのかもしれません。
―得意科目の国語・社会はずっと安定していたのでしょうか?
はい、国語・社会は苦労することはありませんでした。振り返って、やっておいて良かったと思えたことは「読書」です。毎日小説や伝記を読んでいたので、語彙力と読むスピードが備わっていたことが強みになったと思います。
―読書を習慣づけるための声がけのコツがあれば、ぜひ教えてください。
小さい頃から、息子は好きなアニメの小説版を読んでいました。テレビドラマや映画を観るようになってからは、ドラマや映画の原作小説を「これ面白いよ」と勧めたり。
子どもが興味を持ちそうなテーマに合わせて、図書館でたくさん本を借りてきて置いておくと、「これ面白い」といって読むようになりました。
―好きなアニメの小説から、というのは読書習慣の入口としては入りやすいですね。
アニメの小説版だと語彙力はあまり増えませんが、読むスピードは上がります。語彙力を増やすために少しずつ内容のレベルを上げて、次第に大人向けの本を勧めるようにしていました。
あとは入試に出そうな小説を予想しているサイトがあるので、時々、息子の趣味趣向と関係ない本も勧めたりしていましたね。
―小3から通い始めた塾の影響はどうでしたか?
良かったことは、予習・復習の習慣が身についたこと。四谷大塚は、復習だけでなく予習も重視する塾です。実際、予習してから授業を受けると、難しい内容でも「昨日やったな」と思えて、頭にスッと入ってくることがあったと、息子は言っていました。
過去の授業内容は動画視聴できるので、何度も振り返ることができるのもありがたかったです。
―合格に結びついたと思う塾のサポートがあれば教えてください。
受験対策のカリキュラムが充実しているので、その通りに進めればよいという安心感はありました。何より、他の塾生との交流は「他の子が頑張っているなら、自分もやらなきゃ」と、息子に良い刺激を与えてくれたと思います。
志望校別コースだと、ライバルでありながらも、同じ目標・同じ思いを持つ仲間が集まっているので、「絶対合格したい」というモチベーションも生まれやすかったのではないでしょうか。
―塾では、模擬面接といった面接のためのカリキュラムも用意されていたそうですね。
慶應義塾中等部は保護者同伴での面接があるので、塾で模擬面接をしていただきました。塾からいただいた資料やインターネット上の予想質問をもとに、質疑応答を一覧化して繰り返し家族で練習しました。
―慶應義塾中等部の入試に向けて、体育実技の練習もしていたとか。
本番前の1〜2月は感染症対策のために学校を休むと決めていたので、その3週間で体育実技の練習をしました。
毎朝8時くらいに公園に行って、体育実技で予定されている縄跳びやボール投げなどを一通りやって体を動かす。学校に行ってない分、体を動かす時間も取りたかったので、いい時間の使い方だったと思います。
\受験対策のポイント/

本番直前に直面した併願の壁。集中して向き合った“慶應対策”が冷静な判断を導いた

―改めて息子さんの中学受験を振り返り、やっておけば良かったと思うことはありますか。
第一志望の慶應義塾中等部への対策はしっかりできたのですが、他の学校の対策に充分な時間を取れなかったことが心残りです。
1月に押さえで受けた栄東中学校は合格をいただいていましたが、2月1日の第三志望・広尾学園は不合格。慶應義塾中等部に挑む前ということもあって、精神的につらい期間ができてしまいました。

―やはり学校ごとに傾向は顕著に異なるのですね。
同じ学力レベルの学校であっても、出題形式や内容は全く異なるので、各学校の過去問に沿った対策は絶対に必要だと思います。
併願校は受かれば行きたいと思える学校だけを選んでいましたし、プレッシャーを避けるためにも合格につなげたい気持ちはありました。でも、第一志望の慶應義塾中等部に全振りすると他の対策をするには時間が足りなくて……。「どうすれば良かったのかな」と今も答えを出せずにいます。
―時間が限られる中、何を優先して時間を配分するか。難しい問題ですね。
メンタル面では、受験の日程も大きく影響することを実感しました。第一志望の結果がわからない中で、第二志望・第三志望の合格がないと結構しんどいと思います。
―不合格から気持ちを切り替え、連日の入試に挑むのは精神力がいると思います。息子さんは、どのようにして乗り越えたのでしょう。
広尾の結果は本人も納得しようと努力していましたが、落ちたとわかった瞬間は床に伏せて泣いていました。実際のところ、気持ちを切り替えられないまま、翌日の入試に向かった感じです。
ただ、世田谷学園や都市大学等々力には無事合格できて、そこで気持ちが落ち着いてきたようでした。本命校の日程が遅い場合は、納得できる併願校を一つでも押さえておくことが大事だと感じました。
―およそ1週間におよぶ長い受験でしたが、お母様のお気持ちはいかがでしたか。
もちろん、本人が一番つらいと思いますが、私もプレッシャーとの闘いでした。インターネットで結果が発表されるたびに結果を見るのが怖くて、合格発表のページを開くのは夫に任せていました。
体調管理の面でも気を使いましたね。受験が終わるまでは絶対にウイルスを持ち込まないように、気を張りつめた1週間でした。正直な気持ちとしては、早く無事に終わって欲しかったです。
―そんな過酷な環境の中で、見事に第一志望の慶應義塾中等部から合格をいただきました。
いちばん対策をしてきた学校ですから、息子も集中できていましたね。一次の筆記試験の後も「結構できた」と言っていましたし、面接も私と夫よりもずっと落ち着いていました。受け答えもばっちりで、むしろ私たちが息子に引っ張ってもらったと言えるほど。本番でどっしりと構え力を発揮する姿が頼もしかったです。
慶應義塾中等部に関しては、全力で取り組んだ時間の多さが自信につながっていたと思います。
―合格発表を見て最初に何を思いましたか?
最初は驚きが大きくて、当日は家族4人でお祭り騒ぎでしたね。週末には、祖父母をはじめ親戚一同が集まり、レストランで合格祝いをしました。
今後、息子は親の手から少しずつ離れていくと思います。親子一丸になって大きな挑戦に取り組む機会もほぼないでしょう。だからこそ、大変なこともたくさんありましたが、終わってみると中学受験は本当にいい思い出です。
―中学受験を通して、息子さんの成長を感じることはありますか。
中学での勉強を自分なりに真面目に取り組んでいる姿を見ると、勉強習慣が身について良かったと思います。本人はふざけて「もうあんなに勉強したくない」と言っていますけど(笑)。
でも「受験して良かった」と話すときの明るい表情から、最後まで頑張って結果を得た経験が本人の誇りになっているのを感じます。中学校の友だちと土日に楽しそうに出かけていく姿を見ていると、「慶應義塾中等部に入学できてよかった」と、心から思います。
\中学受験を振り返って感じたこと/

取材後記
家族全員で支え合いながら中学受験を乗り越えた柳沢さんご一家。「読書が好き」「コツコツ勉強するのが得意」「塾の先生に質問するのは恥ずかしい」──そんなお子さんの個性を尊重し、伴走するご両親の姿がとても印象的でした。
入試本番が近づくにつれて、やるべきことに追われ、親も子も時間の足りなさを課題に感じるご家庭も多いことでしょう。柳沢家の体験談では、生活リズムの徹底、ご夫婦での役割分担、そしてごほうびの工夫など、真似したくなるエピソードが随所に見られました。
モチベーション維持に細やかに気を配りながら、最後までお子さんをゴールへ導いた家族の意思の強さと優しさは、中学受験には欠かせないものなのだと、改めて感じさせられる取材となりました。
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