【中学3年】三平方の定理(ピタゴラスの定理)とは?5分で理解できる公式と証明の解説
「三平方の定理、よくわからない……」このような疑問を感じていませんか?
三平方の定理とは、直角三角形について、2つの辺の長さがわかっているときに、もう1つの辺の長さを求めることができるという定理のことをいいます。
この記事では、高校時代に数学オリンピック本選に出場し、学習塾に通わずに東大へ現役合格した永田耕作さん(現在はカルぺ・ディエムで講演活動を実施)監修のもとで、「三平方の定理とはとはなにか」の定義から「簡単な証明方法」「押さえたいポイント」までをやさしく紹介します。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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監修者
永田耕作
2001年生まれ 東京大学教育学部卒 公立高校から学習塾に入らずに東大へ現役合格。中学・高校は野球部に所属、部活動と勉強を並行し 「練習で自分の苦手を潰して、試合で自分の力を最大限に発揮する準備をする」という努力の「型」を 勉強にも活かして受験勉強を乗り切る。得意科目は数学で、高校2年生のときに数学オリンピック本選に出場した経験がある。現在は(株)カルぺ・ディエムに所属し全国各地で年間100回以上の講演活動を行い、勉強モチベーションや計画の立て方などを伝えている。自著に、「東大生の考え型(2022,日本能率協会マネジメントセンター)」「東大式 数値化の強化書(2024,彩図社)」などがある。 X公式アカウント:https://twitter.com/nagatakosaku08
目次
三平方の定理とは?

三平方の定理(ピタゴラスの定理)とは、直角三角形の3つの辺の長さに関するきまりのことです。この定理を使うと、2つの辺の長さがわかっているときに、もう1つの辺の長さを求めることができます。
例えば、少し離れた地面から建物の屋上までの距離や坂道の長さなど、「ななめの距離」を知りたいときに役立つ考え方です。数学の中では、直角三角形に必ず成り立つルールとして非常に重要な定理です。
この定理は、古代ギリシャの数学者「ピタゴラス」にちなんで「ピタゴラスの定理」とも呼ばれています。日本では「三平方の定理」という名前で教科書に登場します。
直角三角形の3つの辺には特別な関係がある
直角三角形には、3つの辺の長さの間に特別な関係があります。直角をはさんでいる2つの辺を「a」と「b」、直角の向かいにある一番長い辺を「c(斜辺)」とすると、次のような関係が成り立ちます。
a² + b² = c²
この式は、「2つの短い辺の平方(2乗)の和が、斜辺の平方に等しい」という意味です。 つまり、直角三角形では3つの辺が常にこの関係を満たしています。
このきまりを三平方の定理(ピタゴラスの定理)と呼びます。どんな直角三角形でも、3つの辺の長さがこの関係で結ばれていることがわかるのです。
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東大卒教育ライター・永田さん「どの辺が斜辺なのかを確認しよう」 文字だけで覚えようとせず、「どの辺が斜辺、つまりcなのか」を図で確認することが大切です。直角三角形の図と一緒にイメージすることで、公式も定着しやすくなります。 |
公式は a²+b²=c²
三平方の定理を数式で表すと、次のようになります。
a² + b² = c²
この式は、「直角をはさんでいる2辺の平方(2乗)の和が、斜辺の平方に等しい」という意味です。ここでいう「平方(へいほう)」とは、同じ数を2回かけることを表します。たとえば、3の平方は「3×3=9」、4の平方は「4×4=16」です。
つまり、次のような関係になります。
もし a=3、b=4 のとき、
a²+b²=3²+4²=9+16=25 となり、
c²=25 → c=5 となります。(辺の長さは正の値であるため)
このように、2つの辺の長さがわかれば、残りの1辺(斜辺やほかの辺)を求めることができるのが三平方の定理の大きな特徴です。
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東大卒教育ライター・永田さん「平方=同じ数を2回かける」 「平方」の意味を理解しないまま、公式の名前だけ覚えても、使えるようにはなりません。「平方=同じ数を2回かける」としっかり覚えておきましょう。 |
三平方の定理をかんたんに証明【5分でマスター!】

三平方の定理(ピタゴラスの定理)は、面積の考え方を使うと、図形的にわかりやすく証明できます。ここでは、「正方形を使った証明」という最も基本的な方法を紹介します。
この証明は、直角三角形を4つ使って1つの大きな正方形を作る考え方です。実際に図を見ながら確認すると、三平方の定理が自然に導かれることがわかります。
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東大卒教育ライター・永田さん「三平方の定理の証明は面積に注目しよう」 「平方」の意味を理解しないまま、公式の名前だけ覚えても、使えるようにはなりません。「平方=同じ数を2回かける」としっかり覚えておきましょう。 |
ステップ1 正方形を使って考えてみる
三平方の定理は、正方形を使って面積の関係を考えると、むずかしい計算をしなくても納得できます。
まず、一辺の長さが a+b の大きな正方形を考えます。その中に、同じ大きさの直角三角形を4つ入れてみましょう。4つの三角形を角を合わせるように並べると、中央に小さな正方形ができます。

このとき、中央の小さな正方形の一辺の長さは「c(斜辺)」になります。つまり、大きな正方形の中には「4つの三角形」と「1つの小さい正方形」が入っていることになります。
この図を使うと、直角三角形の3つの辺(a、b、c)の面積の関係を見つけることができるのです。
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東大卒教育ライター・永田さん「面積の関係に注目することが重要」 「証明」というと計算を思い浮かべがちですが、三平方の定理は「図の中に隠れた面積の関係」を見つけるだけで理解できます。まずは直角三角形をしきつめてできあがった図を脳裏に焼きつけましょう。 |
ステップ2 面積の関係から導く
先ほどの図には、「大きな正方形」と「4つの直角三角形」、そして「中央の小さな正方形」がありました。このとき、それぞれの面積の関係を比べることで、三平方の定理を確かめることができます。

まず、大きな正方形自体の面積は、 (a+b)² = a²+2ab+b² となります。縦×横ですね。
次に、4つの三角形と中央の小さな正方形を合わせた面積を考えます。直角三角形1つの面積は (a×b)÷2 なので、4つで 2ab。それに中央の小さな正方形の面積 c² を足すと、c²+2abとなります。
これら2つの面積は同じ正方形を表しているため、a²+2ab+b² = c²+2abが成り立ちます。
両辺の「2ab」を引くと、次の関係式が残ります。a²+b²=c²
このようにして、図形の面積のつり合いから三平方の定理を導くことができます。
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東大卒教育ライター・永田さん「図から式を導けるようにしておこう」 式をそのまま覚えられる人はそれでもいいですが、覚えにくいと感じている人は、図から式を導けるようにしておきましょう。 |
三平方の定理でおさえたいポイント

三平方の定理を学ぶときに、特に意識しておきたい基本のポイントを整理しておきましょう。これらを理解しておくと、問題を解くときに迷わずに公式を使えるようになります。
斜辺の位置を確認しよう
三平方の定理では、斜辺(しゃへん)の位置を正しく理解することがとても大切です。直角三角形では、直角の向かい側にある一番長い辺が斜辺になります。
たとえば、次のような直角三角形を考えてみましょう。
直角をはさんでいる2つの辺を「a」と「b」、直角の向かい側の長い辺を「c」とすると、この「c」が斜辺になります。
この関係をもとに、三平方の定理の公式
a²+b²=c²
が成り立ちます。
もし斜辺の位置を間違えてしまうと、公式を正しく使っても答えが合わなくなることがあります。計算を始める前に、どの辺が斜辺なのかを必ず図で確認しましょう。
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東大卒教育ライター・永田さん「名前と意味を関連付けることが大切」 「斜辺」というのは、その名のとおり「斜めの辺」です。つまり、直角をなす2つの辺のどちらかを床と平行に置いたとき、斜めになっている辺が斜辺になります。名前と意味を関連づけて覚えると間違えにくいです。 |
公式の位置関係を間違えない
三平方の定理の公式は、次のように書きます。
a²+b²=c²
このとき、右側(=の右側)にくる「c²」が斜辺の2乗です。つまり、「直角の向かい側の辺(斜辺)」は、基本的に式の右側に書きます。
たとえば、直角三角形の辺の長さを a=3、b=4、c=5 とすると、
3²+4²=5²
9+16=25
のように計算が成り立ちます。
もし公式の左右を逆にしてしまうと、 「どの辺がどの記号にあたるのか」がわからなくなり、計算を間違えやすくなります。慣れてきたら変えてもいいですが、慣れるまでは順番を決めておくといいでしょう。
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東大卒教育ライター・永田さん「式の左右の位置関係をそのまま覚えてしまおう」 三平方の定理は式の「左右の位置関係」をそのまま覚えて使いはじめることが大切です。最初から順番をごちゃ混ぜにしてしまうと、間違えやすくなります。教科書どおり、「右側が斜辺についての式」とマイルールを決めておきましょう。 |
特殊な三角形について確認
三平方の定理では、整数の長さできれいに成り立つ三角形があります。これを知っておくと、計算しなくてもすぐに答えを出せる場合があります。
もっとも有名なのが「3・4・5の三角形」です。これは次のような関係が成り立ちます。
3²+4²=5²
9+16=25
つまり、3cm・4cm・5cm の直角三角形では、三平方の定理の公式 a²+b²=c² がぴったり成り立つ<のです。
このような三角形は「整数比できれいに計算できる」ため、定期テストや入試の図形問題でもよく登場します。
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東大卒教育ライター・永田さん「3:4:5の三角形は頭に叩き込んでおこう」 「3:4:5の三角形」の存在を覚えることは三平方の定理の理解を深める第一歩です。問題を解くとき、「この数の組み合わせなら、直角三角形だ!」とすぐに気づけるようにしておきましょう。 |
ピタゴラス数を覚えておく
三平方の定理を満たす整数の組み合わせを、ピタゴラス数(またはピタゴラスの数)といいます。これらは、直角三角形の3つの辺の長さとして使うことができる便利な数の組です。
もっとも基本的なピタゴラス数は「3・4・5」です。このとき、次の関係が成り立ちます。
3²+4²=5²
9+16=25
つまり、3cm・4cm・5cm の三角形は直角三角形になります。このような組み合わせはほかにもあります。
5・12・13
8・15・17
これらも、a²+b²=c² の関係を満たしています。
ただし、最初の段階では「3・4・5」だけを確実に覚えておけば十分です。この組み合わせは最もよく使われ、テストでも頻出です。
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東大卒教育ライター・永田さん「ピタゴラス数は問題を解きながら覚えていこう」 問題で何度も繰り返し同じピタゴラス数が出てくるうちに、だんだんと頭に入ってきます。最初は「3:4:5」だけ何度か頭で計算して覚えたら、あとは問題を解きながら少しずつ覚えていきましょう。 |
三平方の定理を例題で確認しよう

ここまで学んだ三平方の定理を、実際の計算で確かめてみましょう。例題を通して、公式 a²+b²=c² の使い方を確認します。
例題

短い2つの辺が3cmと4cmの直角三角形があります。このとき、斜辺の長さ c を求めましょう。
解き方の手順
① まず、三平方の定理の公式を使います。
a²+b²=c²
② a=3、b=4 を代入します。
3²+4²=c²
③ 計算します。
9+16=c²
25=c²
④ c を求めます。
c=√25(cは辺の長さで、正の数であるため)
c=5
答え
斜辺の長さは5cmになります。
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東大卒教育ライター・永田さん「なぜその式を使うのかを考えることが大事」 公式をなんとなく当てはめるのではなく、「なぜその式を使うのか」をきちんと説明できるようにしておくことが大切です。また、問題を解いたあと、どの辺がa、b、cなのかを確認するくせをつけておきましょう。ミスを防ぐために大切なプロセスです。 |
まとめ 三平方の定理の基本を整理しよう

三平方の定理(ピタゴラスの定理)は、直角三角形の3つの辺の長さに成り立つ関係を表した重要な定理です。直角をはさんでいる2辺をa・b、直角の向かいにある一番長い辺(斜辺)をcとすると、次の公式が成り立ちます。
a²+b²=c²
この関係は、どんな直角三角形でも必ず成り立ちます。
三平方の定理は、図形問題の基礎になる考え方です。まずはこの公式をしっかり覚えて、「どの辺がa・b・cにあたるのか」を図で確認する習慣をつけましょう。これができれば、次の段階(高さ・距離・立体の応用)もスムーズに理解できます。
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東大卒教育ライター・永田さん「三平方の定理は図形の性質を表すルール」 三平方の定理は「計算の公式」ではなく、「図形の性質を表すルール」です。丸暗記するのではなく、図を見て「なぜその式が成り立つのか」を理解することで、ミスなく応用できるはずです。わからなくなったら、証明に立ち返って確認してみましょう。 |
執筆者プロフィール
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2001年生まれ 東京大学教育学部卒 公立高校から学習塾に入らずに東大へ現役合格。中学・高校は野球部に所属、部活動と勉強を並行し 「練習で自分の苦手を潰して、試合で自分の力を最大限に発揮する準備をする」という努力の「型」を 勉強にも活かして受験勉強を乗り切る。得意科目は数学で、高校2年生のときに数学オリンピック本選に出場した経験がある。現在は(株)カルぺ・ディエムに所属し全国各地で年間100回以上の講演活動を行い、勉強モチベーションや計画の立て方などを伝えている。自著に、「東大生の考え型(2022,日本能率協会マネジメントセンター)」「東大式 数値化の強化書(2024,彩図社)」などがある。 X公式アカウント:https://twitter.com/nagatakosaku08