仮面浪人とは?50人の仮面浪人経験者に聞いて分かったメリット・デメリット
仮面浪人を考えているものの、周囲から「やめとけ」と言われて不安を感じている人や、「仮面浪人の成功率はどれくらいなの?」と疑問を抱えている人は多いのではないでしょうか。
仮面浪人とは、大学に通いながら、別の大学への合格を目指して受験勉強を続ける浪人スタイルのことです。
この記事では、仮面浪人経験者50人へのアンケート調査をもとに、仮面浪人のリアルな実態を徹底解説します。メリット・デメリット、実際に仮面浪人で合格した人の特徴や勉強法まで詳しく紹介します。
仮面浪人を検討している人は、後悔のない判断をするための材料として、ぜひ参考にしてください。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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目次
仮面浪人とは?

仮面浪人とは、大学に在籍したまま、翌年の入試で別の大学への合格を目指して受験勉強を続ける選択肢を指します。
大学生として授業を受ける立場でありながら、同時に受験生でもあるという、二重の立場で一年を過ごす点が大きな特徴です。
もう少し具体的なケースで考えてみましょう。第一志望が早稲田大学で、併願校としてMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)を受験していたとします。結果は、早稲田大学は不合格、MARCHの大学には合格しました。
この場合、多くの受験生は合格したMARCHの大学へ進学します。一方で、「どうしても早稲田大学を諦めきれない」「もう一年、本気で挑戦したい」と考える人も一定数います。
「MARCHの大学に進学しつつ、翌年の早稲田大学合格を目指して受験勉強を続ける」というような選択をする人が、いわゆる仮面浪人です。
なお、仮面浪人は「編入」と混同されることがありますが、両者は仕組みが異なります。 編入は、大学の編入学制度を利用して学年途中から別の大学へ移る制度です。一方、仮面浪人は、現在の大学とは別に、一般入試を再度受け直す点が大きな違いです。
一般的な浪人とはどう違う?
仮面浪人と一般的な浪人は、どちらも翌年の入試に向けて勉強を続ける点では共通していますが、生活環境やリスクの面で大きな違いがあります。主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 仮面浪人 | 一般的な浪人 |
|---|---|---|
| 在籍状況 | 大学に在籍したまま受験勉強を行う | 大学には在籍せず、受験勉強に専念する |
| 生活の中心 | 大学の授業・友人関係と受験勉強を並行 | 予備校や自宅での勉強が中心 |
| 勉強時間の確保 | 授業や課題があるため確保しづらい | 1日の多くを受験勉強に充てやすい |
| 精神的な負担 | 大学生と受験生の両立による負担が大きい | 受験一本のためプレッシャーは集中しやすい |
| 経済的負担 | 学費と受験費用が同時にかかる | 予備校費用が主な負担 |
| 進路リスク | 再受験に失敗しても在籍大学に残れる | 再受験に失敗すると進路が未定になりやすい |
大学で単位を取得しながら仮面浪人をする場合は、時間管理と優先順位付けが成否を分ける重要なポイントになります。一方で、一般的な浪人は勉強に集中しやすい反面、再受験がうまくいかなかった場合のリスクも考慮する必要があります。
大学に出席するタイプ・出席しないタイプに大別される
仮面浪人には、大きく分けて 「大学に出席するタイプ」 と 「大学に出席しないタイプ」 の2つがあります。それぞれ生活スタイルやリスクが異なるため、特徴を理解したうえで選ぶことが重要です。
| 項目 | 大学に出席するタイプ | 大学に出席しないタイプ |
|---|---|---|
| 単位取得 | 取得する | 取得しない |
| 勉強の軸 | 授業+受験勉強 | 受験勉強が中心 |
| 時間の自由度 | 低い | 高い |
| 受験失敗時 | 学業の遅れが少ない | 学業が遅れる可能性 |
| 主な不安 | 両立の難しさ | 復学時の負担 |
大学に出席しながら仮面浪人するタイプは、大学の授業に出席し、単位を取りつつ受験勉強を進めていきます。再受験がうまくいかなかった場合でも学業の遅れが少ない一方、時間管理の難易度は高くなる点に注意が必要です。
一方、大学には通わず、籍だけ置いて仮面浪人するタイプは、大学には在籍したまま授業には出席せず、受験勉強を最優先します。勉強に集中しやすい反面、再受験に失敗すると学業が遅れるリスクがあります。
仮面浪人のメリット

ここでは、仮面浪人経験者50人へのアンケート結果を交えながら、仮面浪人のメリットについて解説します。
第一志望をあきらめずに済む
仮面浪人のメリットとして最も多く挙げられたのが、第一志望をあきらめずに再挑戦できたことでした。
一度は不合格という結果を受け入れつつも、「やれることはやり切りたい」「もう一度本気で挑戦したい」という気持ちを行動に移せたことで、進路に対する迷いや後悔がなくなったと感じる人が多く見られます。結果だけでなく、挑戦したという事実そのものが納得感につながったという声も印象的でした。
実際には、以下のような声が寄せられています。
本気で望む大学へ再挑戦できたことで、自分の進路に迷いや後悔がなくなった点が最も大きなメリットでした。(しゅうさん・2021年4月に愛知工業大学に合格)
進路に対する後悔を残さずに済んだことです。 挑戦したことで「もしやっていたら…」と考え続ける必要がなくなり、自分の選択に納得して大学生活をスタートできました。(カイさん・2022年4月に早稲田大学に合格)
自分の人生に後悔を残さないで済むから(kfoe1さん・2024年4月に関西大学に合格)
大学に在籍している安心感がある
仮面浪人の大きなメリットは、大学に在籍したまま再受験に挑戦できる点です。
仮に再受験がうまくいかなかった場合や、途中で仮面浪人をやめた場合でも、現在の大学に通い続けることができます。そのため、進学先が完全になくなってしまうリスクはありません。
現役の大学生という立場を保ちながら、もう一度受験に挑めることは、仮面浪人ならではの安心材料と言えるでしょう。
実際、仮面浪人経験者からも以下のような声が多く寄せられています。
「精神的なセーフティネット」があったことです。純粋な浪人生と違い、「ダメでも大学生という身分はある」という事実は、受験本番のプレッシャーをかなり和らげてくれました。全落ちの恐怖がない分、強気な出願ができました。(みこさん・2024年4月に上智大学に合格)
「メンタルの安定」です。 普通の浪人生と違い、「落ちても帰る場所(大学)がある」という安心感は絶大でした。現役時はプレッシャーで自滅しましたが、仮面浪人時は「最悪、今の大学で頑張ればいい」と開き直れたため、本番でも過度に緊張せず実力を発揮できました。(tatsuyaさん・2023年4月に北海道大学に合格)
大学の生活を体験できる
仮面浪人を選ぶメリットのひとつに、大学生活を実際に体験できることがあります。
講義を受けたり、サークル活動に参加したりする中で、実体験をもとに大学選びや進路を見直すきっかけになることもあります。その結果、本当に第一志望の大学や学部を目指すべきか、改めて考えられるでしょう。
また、大学での友人や教員との関わりを通じて、自分の進路について新たな視点を得られる場合もあります。
大学生の気分を味わえるので、モチベーションが高くなる(ひよこさん・2023年4月に神戸大学に合格)
学校生活でリフレッシュ出来ました。(ゆういさん・2021年4月に上智大学に合格)
図書館・授業など大学のリソースを利用できる
仮面浪人は、大学に在籍しているため、図書館や自習スペース、授業などの学習環境を活用できる点もメリットです。
特に大学図書館は、静かな自習環境が整っており、参考書や専門書も充実しています。自宅では集中しづらい人にとっては、勉強場所として大きな支えになるでしょう。
また、大学の授業の中には受験科目と関連する内容もあり、知識の補強や理解を深めるきっかけになる場合もあります。
生活リズムが一定に保ちやすい
仮面浪人は、大学の授業や予定があるため、生活リズムを一定に保ちやすいというメリットがあります。
毎日決まった時間に起きて外出する習慣ができることで、昼夜逆転や生活の乱れを防ぎやすくなります。浪人生活で起こりがちな不規則な生活に不安を感じている人にとっては、大きな利点でしょう。
安定した生活リズムは、長期間にわたる受験勉強を継続するうえでも重要な要素です。
仮面浪人のデメリット

ここでは、仮面浪人経験者50人へのアンケート結果をもとに、メリットだけでは見えにくい仮面浪人のデメリットや注意点について解説します。
時間確保が難しく勉強が続かない
仮面浪人の大きなデメリットとして、受験勉強の時間を確保しにくい点が挙げられます。
特に大学に通いながら仮面浪人をする場合、授業への出席や課題、試験対応が必要になります。さらにサークル活動やアルバイトを続けていると、勉強に使える時間は限られてしまいます。
一般的な浪人生と比べると、受験勉強に集中できる時間が少なくなりやすい点は、仮面浪人特有の注意点と言えるでしょう。
時間と体力の両立が最も大変でした。授業、課題、試験をこなしながら受験勉強をするため、常に余裕がなく、睡眠不足になることも多かったです。周囲が大学生活を楽しんでいる姿を見ると、孤独を感じることもありました。(アオさん・2024年4月に東北大学に合格)
大学の試験期間(1月後半)と入試直前期が重なったことです。単位を落とせないというプレッシャーの中、大学のレポート課題をこなしながら、赤本を解くスケジュール管理は体力的にも精神的にも限界に近い状態でした。(harukiさん・2021年4月に慶應義塾大学に合格)
精神的な孤独を感じる
仮面浪人では、精神的な孤独を感じやすい点も大きなデメリットとして挙げられます。
大学に在籍しているものの、友人が大学生活を楽しんでいる中で自分だけが受験勉強を優先する状況が続くと、気持ちの面でギャップを感じやすくなります。また、仮面浪人であることを周囲に打ち明けていない場合、悩みや不安を共有できず、一人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。
こうした状況が続くことで、焦りや不安、モチベーションの低下につながることもあります。実際には、以下のような声が寄せられています。
精神的な孤独感が強かったことです。友人は大学生活を楽しんでいる一方で、自分だけ勉強に専念する時間が多く、焦りや不安を感じることがありました。また、自由時間が少ないことでストレスがたまり、時折モチベーションが下がることもありました。(カケルさん・2023年4月に東京理科大学に合格)
誰も周りに仮面浪人がいなかったし隠してたから悩みが話せなかった(はなさん・2022年4月に愛知県立大学に合格)
大学生活の誘惑に流されやすい
仮面浪人は、大学に在籍している分、大学生活の誘惑に流されやすいというデメリットがあります。
友人からの誘いやサークル活動、イベントなどが身近にあることで、受験勉強よりも大学生活を優先してしまうケースも少なくありません。最初は両立するつもりでも、徐々に勉強時間が削られていくことがあります。
強い意志を持ってメリハリをつけなければ、受験勉強が後回しになりやすい点には注意が必要です。
学費・生活費など経済的負担が大きい
仮面浪人のデメリットのひとつに、受験にかかる費用が重なり、経済的負担が大きくなりやすい点があります。
仮面浪人では、大学の学費に加えて、予備校や塾の費用、受験料などが同時に必要になるケースが多く見られます。
そのため、通常の浪人と比べても支出が増えやすく、事前に家計への影響を考えておく必要があるでしょう。
友人関係が複雑になるリスクも
仮面浪人では、在籍している大学での人間関係に気を遣う場面が増えることがあります。
仮面浪人であることを友人に伝えるかどうかは、悩みやすいポイントのひとつです。別の大学を目指していることを知り、距離を感じたり、関係が気まずくなりましたりするケースも考えられます。そのため、仮面浪人であることをあえて話さずに過ごす人もいます。
一方で、受験勉強を優先するために誘いを断ったり、本音を話せなかったりする状況が続くと、精神的な負担が大きくなることもあります。将来、別の大学へ進学する可能性を考え、友人との距離感に迷う人も少なくありません。
こうした背景から、仮面浪人は勉強面だけでなく、人間関係やメンタル面にも影響が出やすい選択肢だと言えるでしょう。
大学の友人関係やサークル活動との距離感が生じ、孤独感や不安を感じることがあった。社会的な刺激が少なく、精神面で辛かった時期もある。(たけさん・2023年4月に東京大学に合格)
モチベーション的なこともあり、在籍中の人間関係が疎かにしてしまったこと(いちりんさん・2020年4月に同志社大学に合格)
合格者に聞いた仮面浪人を成功させるポイント

仮面浪人を成功させるには、どのような工夫が必要なのでしょうか。 ここでは、仮面浪人の末に第一志望へ合格した人たちが実践していた、具体的なポイントを紹介します。
大学の授業は午前中に組み、図書館などを利用
アンケートでは、「大学の授業はできるだけ午前中にまとめる」という声が多く寄せられました。
授業を午前中に集中させることで、午後以降の時間を受験勉強に充てやすくなります。また、自宅ではなく大学の図書館や自習スペースを活用することで、気持ちの切り替えがしやすく、学習時間を安定して確保できたという意見も目立ちました。
実際には、以下のような工夫が挙げられています。
原則授業は午前中に組む、午後は図書館で勉強、夜はアルバイト(けんとさん・2021年4月に中央大学に合格)
7:00 起床・朝学習
9:00~16:00 大学(授業の合間は図書館で自習)
17:00~18:00 移動(単語暗記)
19:00~23:00 自宅またはカフェで受験勉強
24:00 就寝 ※サークルには入らず、土日は朝から晩まで12時間以上勉強していました。
(仮面ライダーさん・2023年4月に早稲田大学に合格)
孤独を感じた時の対処法
仮面浪人では、勉強そのものよりも精神的な孤独にどう向き合うかが大きな課題になることがあります。特に、成績が伸び悩む時期や、大学の試験と受験勉強が重なるタイミングでは、不安や焦りを一人で抱え込みやすくなります。
合格者の声を見ていくと、孤独を完全になくそうとするのではなく、安心して本音を吐き出せる場所や相手を確保していたことが共通していました。
実際には、以下のような方法で気持ちを保っていた人がいます。
秋から冬にかけて、模試の成績が伸び悩み、同時に大学の期末テストも重なった時期が一番辛かったです。Twitter(現X)で同じ境遇の「仮面浪人垢」の人たちと繋がり、お互いに励まし合うことで乗り越えました。リアルでは誰にも言えなかったので、SNSが唯一の吐き出し口でした。(LLKさん・2023年4月に一橋大学に合格)
高校の同期と通話して乗り越えた(ひよこさん・2023年4月に神戸大学に合格)
大学生活で付きまとう誘惑への対策
仮面浪人を成功させた人の多くは、誘惑と戦うのではなく、最初から距離を置く工夫をしていました。意志の強さに頼るのではなく、誘惑が入り込まない環境を意図的につくっていた点が特徴です。
実際には、以下のような対策が取られていました。
最初から誘惑の多い環境に身を置かないことでした。サークルには入らず、飲み会や遊びの誘いも仮面浪人中は基本的に断っていました。(カイさん・2022年4月に早稲田大学に合格)
SNS(特にインスタグラム)のアプリを削除し、同級生の楽しそうな投稿を目に入れないようにしました。また、大学内では食堂やラウンジなどの人が集まる場所には近づかず、常に私語厳禁の図書館の個室ブースを利用して、物理的に誘惑を遮断しました。(Nenriさん・2022年4月に一橋大学に合格)
仮面浪人の成功率はどれくらい?

仮面浪人の成功率は低い
一般的に、仮面浪人の成功率は決して高くないと言われています。目安としては、10%前後、高く見積もっても20%程度とされることが多いです。
これは、大学の授業や人間関係と受験勉強を並行しなければならず、十分な勉強時間を確保できない人が多いことが主な理由と考えられます。また、途中でモチベーションが下がり、仮面浪人を断念してしまうケースも少なくありません。
そのため、仮面浪人は「誰でも成功できる選択肢」ではなく、強い覚悟と綿密な計画が求められる挑戦だと言えるでしょう。
休学して仮面浪人に臨んだ人の割合は14%
塾選が仮面浪人経験者50人を対象に行った調査では、「仮面浪人を始める際、在籍大学を休学しましたか?」という質問に対し、「はい」と回答した人は7人(14%)でした。

この結果から、多くの人は休学せず、大学に在籍したまま仮面浪人に取り組んでいたことが分かります。
実際には、以下のような声が寄せられています。
大学の授業と並行して勉強する時間を確保することは非常に困難だったため、1年間休学し、集中して受験対策に取り組むことにした。(たけさん・2023年4月に東京大学に合格・休学を選択)
仮面浪人が失敗した場合のリスクを下げたかったからです。学籍を残しておけば最低限の進路が確保でき、精神的にも安定して受験勉強に向き合えると考えました。(カイさん・2022年4月に早稲田大学に合格・休学せず)
休学すると、もし仮面浪人が失敗した場合に大学の同期と学年がずれてしまうのが嫌だったためです。また、大学の単位を極力取得しておくことで、次の大学に入学できなかったとしても卒業後の選択肢を狭めたくありませんでした。(S.Kさん・2023年4月に早稲田大学に合格・休学せず)
実際に仮面浪人をする前に!考えておくべきこと

ここでは、実際に仮面浪人に踏み切る前に整理しておきたいポイントを解説します。
本当に志望校に行きたい理由は何か
仮面浪人を考えるうえでまず大切なのは、「なぜその志望校に行きたいのか」を自分の中で明確にすることです。
「第一志望に落ちたのが悔しい」「周囲と比べてしまう」といった感情だけで決めてしまうと、長期間の受験勉強を続ける中で気持ちが揺らぎやすくなります。一方で、学びたい分野や将来の目標がはっきりしている場合は、困難な状況でも踏ん張りやすいでしょう。
仮面浪人は負担の大きい選択だからこそ、その志望校でなければならない理由を一度立ち止まって考えておくことが重要です。
仮面浪人を選んだ理由については、こういった声が上がりました。
第一志望であった神戸大学への進学を諦めきれず、後悔を残したくなかったからです。現役時代は実力不足を感じていたため、もう一年本気で挑戦したいと思いました。(タクさん・2024年4月に神戸大学に合格)
僅差落ちだったから(ひよこさん・2023年4月に神戸大学に合格)
一年間の生活を具体的にイメージできているか
仮面浪人を成功させるには、この一年をどのように過ごすのかを具体的に想像できているかが重要です。
大学の授業への出席頻度、受験勉強に充てる時間、アルバイトや人付き合いとのバランスなどを曖昧なままにすると、途中で計画が崩れやすくなります。特に「思ったより時間が取れなかった」というケースは少なくありません。
一日のスケジュールや一週間の流れをできるだけ具体的に描いたうえで、現実的に続けられるかを考えておく必要があります。
「実際に仮面浪人をする前に、最も時間をかけて考えるべきだったと思うことは何ですか?」という質問には、以下のような声が上がりました。
色々な時間のバランスについて考えるべきだった。(A.Sさん・2024年4月に法政大学に合格)
一年の勉強計画(なかのさん・2022年4月に法政大学に合格)
経済面(学費・生活費・予備校費)はクリアできるか
仮面浪人は、通常の大学生活や一般的な浪人と比べて、経済的な負担が大きくなりやすい選択肢です。そのため、事前にかかる費用を整理し、保護者とも具体的な金額を交えて話し合っておく必要があります。
仮面浪人で想定される主な費用は、以下のとおりです。
- 在籍している大学の入学金
- 在籍している大学の授業料・施設利用料
- 再受験先の大学の入学金
- 再受験先の大学の授業料・施設利用料
これらを把握せずに進めてしまうと、途中で経済的な理由から選択を見直さざるを得なくなる可能性もあります。現実的に支払い続けられるかどうかを、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、「仮面浪人期間中の学習にかかった費用(※学費を除く教材費・予備校費など)」については、10万円〜30万円と回答した人が26人、30万円〜60万円と回答した人が14人と、一定の出費が発生していることが分かりました。
家族や周囲とのコミュニケーションは取れているか
仮面浪人を進めるうえで、家族や身近な人とのコミュニケーションが取れているかは重要なポイントです。
特に保護者は、学費や生活費を負担する立場になることが多いため、事前に仮面浪人を選ぶ理由や一年間の見通しを共有しておく必要があります。十分な理解が得られないまま進めてしまうと、途中でトラブルになる可能性もあります。
また、周囲に相談できる相手がいるかどうかが大切です。孤立した状態で仮面浪人を続けるのは負担が大きいため、必要なときに頼れる環境を整えておきましょう。
今の大学に残る選択肢との比較
仮面浪人を選ぶ前に、今通っている大学にそのまま残る選択肢とも一度向き合っておくことが大切です。
大学での学びや環境、将来の進路を改めて考えてみると、「今の大学でも十分に目標を実現できる」と感じるケースもあります。一方で、どうしても志望校で学びたい理由が明確であれば、仮面浪人を選ぶ意味もはっきりするでしょう。
感情だけで判断するのではなく、仮面浪人をした場合と、今の大学に残った場合の将来像を比較したうえで決断することが重要です。
仮面浪人でよくある質問(FAQ)

仮面浪人が禁止されている大学はありますか?
基本的に、仮面浪人そのものを明確に禁止している大学はありません。
仮面浪人は、大学に申請や許可を出して行う制度ではなく、あくまで個人の進路選択のひとつです。そのため、「仮面浪人をしてはいけない」という規則が設けられているケースはほとんどありません。
ただし、大学ごとに出席要件や単位取得の条件は異なります。仮面浪人をする場合でも、在籍を続ける以上は、大学の規則や履修ルールを守る必要がある点には注意しておきましょう。
仮面浪人の場合、奨学金の扱いはどうなりますか?
仮面浪人の場合、奨学金の扱いは制度ごとに異なるため注意が必要です。主な違いを表にまとめました。
| 奨学金の種類 | 仮面浪人時の扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 日本学生支援機構(給付型) | 原則、停止される可能性が高い | 在籍大学・学籍が支給条件のため |
| 日本学生支援機構(貸与型) | 一度停止 → 再進学先で再申請できる場合あり | 条件は個人差あり |
| 大学独自の奨学金 | 条件を満たせば継続・受給できる場合あり | 学力・家計基準を要確認 |
日本学生支援機構の奨学金については、必ず事前に日本学生支援機構へ問い合わせることが重要です。また、大学独自の奨学金については、在籍大学や志望校の公式サイトで条件を確認しましょう。
まとめ 仮面浪人は覚悟と環境づくりが重要になる

仮面浪人は、大学に在籍しながら再受験に挑むという点で、精神面・時間面・環境面のすべてにおいて負担の大きい選択です。一方で、今回のアンケート結果や合格者の声からは、覚悟を持って環境を整えられた人にとっては、十分に成果を狙える選択肢であることも見えてきました。
成功した人に共通していたのは、強い意思だけで乗り切ろうとするのではなく、誘惑を遠ざける環境をつくり、孤独や不安と向き合う工夫をしていました。また、休学するかどうか、大学生活との距離感をどう取るかなど、自分に合ったスタイルを選択していたことも印象的でした。
仮面浪人に正解はありません。大切なのは、「なぜ再挑戦したいのか」「そのために一年間どう過ごすのか」を自分の中で明確にし、現実的に続けられる環境を用意することです。この記事が、仮面浪人を検討している人にとって、納得のいく進路選択をするための判断材料になれば幸いです。
アンケート調査概要
調査対象:過去5年以内に仮面浪人を経験したことがあるという方(有効回答数50名)
調査時期:2025年12月
調査機関:自社調査
調査方法:インターネットを使用した任意回答
調査レポート名:過去5年以内に仮面浪人を経験したことがあるという方へアンケート
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。