マナビノキで育つ探究学習の“好奇心”!〜合唱やダンスでも探究心は育つ!〜
今回取材をしたのは、子どもたちの「やりたい」を全部やる!というユニークなコンセプトで事業展開を広げる、鎌倉市のNPO法人マナビノキ。特定のカリキュラムを持たず、すべて子どもの興味関心・好奇心を学びの起点にして探究学習を行っています。
インタビューに応じてくださったのは、代表理事の末原絵美さん。予測が難しいこれからの社会を生きる子どもたちに必要な学びとは何かーマナビノキで実践されている探究プログラムの内容や、設立に込められた想いについてもじっくりとお話を伺いました。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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目次
今回取材した塾▶

| 塾名 | マナビノキ |
|---|---|
| 対象学年 | 小学1年〜6年※一部のプログラムは中高生も対象 |
| 住所 | 神奈川県鎌倉市浄明寺五丁目7−11 |
| プロフィール | 子どもも大人もみんなが「自分らしく」生きていける社会の実現と教育を目指し、2019年に設立された鎌倉市のNPO法人。「知りたい!やりたい!」という子どもたちの好奇心=マナビノタネを、探究型学習で育てる教育機関です。 個々にテーマを決めて自由研究型の学びに取り組む「マナビノキスクール」のほか、海・山・川で野外活動を行う「自然学校」、歌やダンス、ローカルマガジン制作など多彩な活動を展開しています。 |
| 塾の詳細ページ | https://www.manabinoki.org/ |
今回取材を受けてくださった方▶
マナビノキ 末原 絵美さん(NPO法人マナビノキ 代表理事)

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好奇心を起点にする学びを―マナビノキ設立の思い

-10年間の神奈川県公立小学校教諭としてのご経験も含め、講師歴20年。長きに渡って子どもと向き合ってこられた末原様が、マナビノキを立ち上げた背景にはどのような思いがあったのでしょうか。
決められたカリキュラムがある学校教育では、大人が子どもに“教える”という学びのスタイルになりがちです。近年では、学校現場でもなるべく子どもたちが興味関心を持って進められるよう工夫はされています。しかし、時間に限りのあるなかで、完全に枠をはずすのは難しいんですよね。
学校では「何年生で何をやる」ということが決まっています。でも、子どもは一人ひとり成長のスピードが違うので、今は学びたくない子もいれば、もっと学びたい子もいるわけです。
例えば、子どもの問いに対して、「5年生になったらやることだから、今はやらなくていいよ」と言ったりしますよね。もちろん悪気のない言葉なのですが、「もっと知りたい。やってみたい」と思うタイミングを逃すのは、すごくもったいないことです。そうするうちに、「言われたことだけやっていればいいんだ」と、子どもたちの学びへの意欲が失われてしまう。そんな危機感から、子どもたちの「知りたい!やりたい!」という好奇心からスタートする学びの場をつくりたいと考えたんです。

-学校ではできることに限りがあるため、学校の外での活動に目を向けられたのですね。マナビノキでは、どのような学習環境を整えていらっしゃるのですか。
マナビノキのベースにあるのは、大人が教えるのではなく、子どもが学びたいこと・やりたいことを大人がサポートしていくという考え方です。
大人が「正解」を持っている状態だと、子どもはその正解を当てにいく・効率的に正解を導く方向に思考やスキルが偏ってしまいます。しかし、予測不能な未来社会においては、正解がないなかで、自分なりの答えをを探しだす力が必要になるでしょう。私たち大人も今、「急速に成長を遂げたAIとどう付き合うか?」という“誰も答えを持っていない問い”に向き合っていますよね。同じように、誰も想像できないような出来事がこれからもきっと起こるはずです。
どのような未来が訪れても、子どもには自分や仲間が心から受け入れられるような「納得解(なっとくかい)」を見つけて欲しい―そんな思いで探究学習に特化した学びを行なっています。
自由研究、自然体験、合唱・ダンスまで。プログラムに共通する「探究のサイクル」

-では、ここからはマナビノキが提供しているプログラムについて話を聞かせてください。歌やダンス、地域誌の制作まで、非常に多岐に渡るプログラムを展開していますね。
子どもたちがやりたいことを全部やろうとしていたら、どんどん広がっていきました(笑)。
私たちの活動のスタートは、スクールの形式ではなくワークショップから。地域でのフィールドワークを通して、子どもたちが感じたことから問いを見つける週末限定の探究ワークショップが、マナビノキの始まりでした。
のちに、「ワークショップのような学びを放課後にも提供して欲しい」との要望を受けて、平日のアフタースクールを開講。放課後は野外活動が限定されるため、室内で取り組める自由研究型の学びにシフトしていったんです。
現在は主に5つのプログラムを実施しているほか、2025年4月からはZoomを使ったオンライン授業も行なっています。今後もマナビノキは、保護者の方や子どもたちの声に応じて、様々な学びの枝葉が伸びていくと思います。
-それぞれのプログラムについて、ご紹介いただけますでしょうか。
1.マナビノキスクール

一人ひとりがテーマを決めて取り組む「マイプロジェクト(マイプロ)」という自由研究型の学びを行なう放課後のアフタースクール。
日々の暮らしや学校で学んだことから「もっと知りたい!もっとやりたい!」という興味関心をスタート地点として、自分で調べながら考え、自分で進めていきます。困ったときには周りに相談しながら、最後はプロジェクトの成果を発表。みんなからフィードバックをもらいます。
[活動日]週1回・週2回・週3回・週4回のいずれか
2.マナビノキ自然学校

週末開催の「マナビノキ自然学校」は、自然のなかで体験的に学ぶ場所です。
季節ごとの生き物や植物を観察する「自然観察」、火おこしや野外調理、テント設営にチャレンジする「サバイバル体験」、マリンスポーツや登山を行なう「アクティビティ」といった3本の軸で構成。挑戦する気持ちや、仲間とのつながり、レジリエンスなどを身につけることを目的としています。
現在は月2回のワークショップ形式での開催ですが、2026年4月からは会員制の継続プログラムに変更する予定です。
[活動日]月2回
3.かまくらマナビノキ合唱団

「歌が好き!歌いたい!」という小中学生が結成した合唱団。歌を通して創造力や表現力、豊かな感性を養っていきます。
定期演奏会にも積極的に参加。何を歌うかを決めて、練習を重ねるなかで仲間との協働作業が生まれます。みんなで1つの曲をつくりだす、そのプロセスも探究学習のひとつです。
[活動日]週1回
4.マナビノKids Dance

合唱団と同じく、踊ることが好きな小学生が集まるダンスチーム。地域のイベントや発表の場では、踊りを通して周りの人々に笑顔と元気を届けています。
ダンスを通じて、表現力や想像力、自己肯定感、そして人とつながる力を育みます。
[活動日]週1回
5.COLOMAGA project「ことこと」

地域情報誌の編集活動を行なう、「キャリア×探究」の取り組み。今は中学生がメインですが、小学生の高学年から参加可能です。
地元在住のプロのエディター、カメラマン、ライター、イラストレーター、デザイナーといったクリエイターに教わりながら、自分たちの住む町を取材。自分たちで文章を書いたり、イラストを描いたりしながら、1冊のローカルマガジンを形にしていきます。
[活動日]4月〜10月 月1回程度※継続参加
-探究学習塾のなかでも、合唱団やダンススクールがあるのは珍しいですよね。
そうですね。私たちが提供するプログラムはすべて、探究型学習のサイクルを取り入れています。もし学習の場を机上に限定し、アウトプットを「模造紙にまとめてプレゼンすること」と決めてしまったらどうなるでしょうか。きっと、書くこと・話すことが苦手な子は学ぶことがつまらなくなってしまうでしょう。
探究型学習では、課題設定→情報収集→整理分析→まとめ・表現というプロセスがベースとなっています。これは、合唱・ダンスといった表現分野においても当てはまることです。
「何を歌いたい/踊りたいのか」をスタートに、目指すべき姿に向かって仲間と協働しながら準備をしてアウトプットする。自分がやりたいこと・なりたい自分を思い描き、その実現のために情報を集めて課題をクリアしていく学び方のプロセスに違いはありません。
大人が主導権を持たないことで生まれる探究の力

-マナビノキでは、子ども主体の学びをサポートするにあたって、どのようなコミュニケーションを大事にしていますか。
マナビノキのスタッフ全員に意識づけしているのは、「大人が答えを言わないこと」。スタッフには、答えを知っていても、あえてとぼけるようにしてもらっています。大事なのは、子どもが「なんでだろう?」と思う気持ちを引き出すための問いかけです。
理由は2つあります。一つは子どもが事実を調べるというプロセスを大切にしたいから。もう一つは、人によって正解が異なるような「本質的な問い」に向き合って自分の意見を持つ機会をつくって欲しいからです。
例えば、絶滅種の動物を保護するのは良いことなのか・悪いことなのか、人によって考え方は異なりますよね。命を守るのは正しい行為だと考える人もいれば、人間の飼育下に置くのはどうなのかと考える人もいるでしょう。
「本質的な問い」とは、このように子どもたちが悩むような問い、「どちらの言い分もありだけれど、自分はこう思う」と議論ができるような問いのことです。
-本質的な問いに向き合う経験を積むことで、正解のない問いへの「自分なりの納得解」を見つける練習になるのですね。
探究の根幹には、哲学的な一面があるんですよね。古くは孔子やソクラテスの時代からあるような「問答を重ねるなかで疑問を見つけていくこと」が、探究の基盤ともいえます。
マナビノキでは、子どもたちの好奇心から学びのテーマを決めていますが、「やりたいことはない」という子も結構いるんです。そんなときは「学校の帰りに何か見たことで気になったことない?」「季節の変化で気づいたことない?」と対話を重ねることで、マナビノタネを見つけてもらうように促しています。
-通っている生徒さんに、共通する特徴はありますか?
マナビノキには、「知りたい!やってみたい!」という好奇心旺盛な子、コツコツと何かに取り組むのが好きな子がたくさんいます。プロセスを重視する学び方・考え方を伝えているので、最初は正解を求めたり、失敗を怖がっていた子も徐々に変化していきます。仲間同士で応援し合う風土があるので、失敗を恐れずチャレンジを楽しめるようになる子が多いですね。
マナビノキの活動開始から5年ほど経った頃に子どもたちを見ていて気付いたのは、彼らにとって「継続」と「仲間」が大事な鍵を握るということです。1日だけのワークショップで探究に取り組んでも、「楽しかった」で終わってしまうけれど、継続することで思考が変わってきます。
また、同じ仲間と長い時間を過ごすことで、心が許せるようになってどんどん自己開示ができるようになるんですよね。来年度から「自然学校」を会員制の継続プログラムにすることを決めたのも、そんな子どもたちの姿を見てきたからです。
-どのプログラムも、異学年同士の交流が自然と生まれる環境なのでしょうか。
大人は主導権を握らない・評価をしないのが、マナビノキのスタッフの約束事。そうすると、おのずと高学年の子が下の子たちの面倒をよく見てくれるんです。「マイプロ」の発表も、何も言わなくても「今日発表したい子いる?」と上級生たちが声をかけて、ファシリテーターを務めてくれたり。家と学校のあいだのような雰囲気で、みんな仲がいいですね。
-お話を伺っていると、人付き合いが得意な優しい子どもが多い印象を持ちました。
通い始めたばかりの頃は、人に声をかけるのが怖くて、「助けて欲しい」と言えない内気な子どもも少なくありません。そのようなときも、大人はなるべく声をかけずに、しばらくは子どもの自発的な行動を見守ります。ほとんどの場合は、周りの子どもが助け船を出してくれて、1カ月もすればお互いに気兼ねなく声をかけ合えるようになっていますよ。
子どもには失敗を恐れずに「未来」にワクワクしてほしい

-マナビノキに来られる保護者の方は、子どもにどのような変化を期待していることが多いですか。
答えに対して点数をとるよりも、自らアイデアを出す力や新しいことにチャレンジする力を重んじている保護者の方が多いですね。起業家や編集者など、0から1を生み出すようなクリエイティブな職業の方も少なくありません。
社会に出ると何かを覚えることよりも、考える力や他者とコミュニケーションを取りながら情報を得る力、客観性を持って自分の意見を述べる力が求められます。大人になってからご自身が苦労した分、子どもには早くから実践で役立つスキルを学ぶ機会を持って欲しいと思っていらっしゃるようです。
-子どもたちの成長した姿は、保護者の方にも共有されているのでしょうか?
「日々の学びの記録」というテーマで、当日取り組んだことを子どもたちが自分で振り返り、そこに私たちが撮った写真とコメントをつけたノートをつくっているんです。
例えば、「縫い物で針に糸を通すのに30分もかかって大変だったけど、最後は成功して嬉しかった」という振り返りに対して、「粘り強く取り組んで偉かったね」とコメントしているような内容です。
保護者の方とは、月に1回このノートを共有して見ていただいています。「針に糸を通すのに30分かかった」という事実だけを聞くと、「え、それだけ?」と思ってしまいそうですが、子どもの想いやそのプロセスに関するコメントがあると、頑張って取り組んでいたことが伝わるんですよね。
-行動のプロセスを重視する考え方を、保護者が持ってくれることは子どもにとっても良いことですね。
そうですね。NPOを立ち上げた当初から「子どもに関わるすべての大人や社会全体に向けて、体験的に学ぶことの良さ・これから必要となる教育を広めていく」という理念を持っていました。日々のやり取りや保護者の方に向けた講義を通じて、「探究のサイクルを一緒に回していきましょう」という声かけを積極的にしています。
-マナビノキでの経験が、子どもの成長を大きく促す理由はどんなところにあるのでしょうか。
私が成長において欠かせないと思うのは、あえて「時間をかけること」です。今の時代、レスポンスが早いことに慣れてしまって、待てない人が増えていますよね。例えば、1つの工作をつくるにしても、作り方を要約した動画で見ると簡単そうでも実際にはすごく大変で時間がかかったりします。
目で見るだけでなく、時間をかけて自分で身をもって経験すること。それが、一番の成長の糧となるのではないでしょうか。
教員時代を振り返ると、あの頃の自分は精一杯、子どもたちに寄り添っているつもりだったけれど、やっぱりどこか時間に追われて急いでいたと思うんです。パッと正解を見つけて、自分の思考に子どもたちを近づけようとしていた気がします。
子どもの考えは、本当に多種多様で自由です。そして、じっくりと話を聞くと一人ひとりがちゃんと自分の考えを持っています。
学校の外に出て、「子どもたちはこんなにやりたいことがたくさんあるんだ」「こんなにもみんな考え方が違うんだ」と改めて気づいたときは、大きな衝撃でした。その衝撃が、今も私の原動力になっているかもしれません。
-最後に、長きに渡って教育に携わってきた末原様が望む、子どもが生きる「未来」についてお聞かせください。
未来は何が起こるかわからないという話をしましたが、子どもには「わからないからワクワクする、楽しみだな」と思って欲しいです。
マナビノキは、たくさんの人との関わり合いの中で枝葉を伸ばし、今後どんな形になるか私にもわかりません。でも、だからこそ楽しみでもあります。
同じように子どもにも、これからの自分の成長を不安に思わずにワクワクして欲しい。そして希望をもって「もっとこうしたい」と思う気持ちを持っていて欲しい。その気持ちさえあれば、壁にぶつかったとしても、楽しみながら乗り越えられると思うんですよね。
失敗したらそのときに考えればいいだけのことですから。みんなが明るい気持ちで社会をつくっていける未来であるといいなと思っています。
マナビノキへ通った生徒や保護者からの反響は?
😊保護者
✨本人/小学2年生
😊保護者/小学1年生・小学3年生
【取材後記】
インタビューで、末原さんは「探究」のキュウは「求」ではなく「究」であることから、「答えは求めるものではなく、自分で探して究めていくものなのだ」と子どもたちに伝えていると話してくれました。
子どもたちが自分の興味を起点に問いを立て、仲間と協働し、試行錯誤しながら自分ならではの「解」を探していく。マナビノキの活動は、改めて探究学習という学びの本質を思い出させてくれるものでした。
『塾選(ジュクセン)ジャーナル』編集部/※掲載内容は、2025年11月時点の情報です。
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