教育格差とは-生涯賃金に“1億円”の差!?親にできる5つの対策
教育格差は、特別な家庭だけの話ではありません。
収入、住んでいる地域、親の学歴や教育への関心―こうした環境の違いが、知らず知らずのうちに子どもの将来に影響を及ぼしています。
怖いのは、最初は小さな差でも、気づかないうちにどんどん積み重なってしまうこと。そして、高校・大学への進学先や、将来どんな仕事に就くか、どれくらいお金を稼げるか、さらには「自分はできる!」という自信にまで影響してしまう可能性もあります。
この記事では、教育格差の現状や原因、そしてお金をかけずに家庭ですぐできる対策について、わかりやすく解説します。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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目次
教育格差とは?家庭・地域・経済状況で何がどう変わるのか

教育格差とは、家庭の経済状況や住んでいる地域、家庭環境といった「子ども本人が変えられない環境」によって、子どもが得られる教育の質に差が生じ、学歴や将来の職業にまで影響を与えることを指します。
まずは教育格差の定義や、なぜ差が生まれてしまうのか、そのメカニズムを見ていきましょう。
見えづらい“差”の正体
日本国憲法第26条では「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」とあり、義務教育によって同じ学びの機会が子どもたち全員にあるのは事実です。
しかし、学校を一歩出た放課後や休日の過ごし方には、家庭ごとの事情が大きく反映されます。教育格差は、義務教育の外側で拡大していくのです。
塾・習い事・体験...「機会の差」が学力の差になる理由
高校進学や大学進学といった進路選択は個人の自由ですが、そこに至るまでのプロセスには「子ども本人が変えられない環境」が深く関わっています。
例えば経済的なゆとりがある家庭では、以下のような「学校外教育」に投資が可能です。
- 学習機会: 塾や予備校、家庭教師による個別指導
- ICT環境: タブレットやPCを用いた、個別に最適化された学習
- 体験活動: 国内外への旅行、キャンプ、美術館、博物館などの非日常体験
これらは単なる「学校の補習」や「思い出作り」にとどまりません。多様な体験は知的好奇心を刺激して非認知能力を高め、質の高い学習環境は基礎学力を底上げします。
一方で、経済的なゆとりがない家庭では、これらの機会が制限されがちです。一つひとつは小さな「機会の差」ですが、数年単位で積み重なることで、最終的な学歴や職業選択の自由度に大きな影響を及ぼすことになります。
データで見る教育格差の実態|世帯年収と居住地域による二大格差
目に見えにくい教育格差の問題は、客観的なデータを見ることでより鮮明になります。
「経済力と学力の相関」や「地域による格差」について、実際の調査結果を見てみましょう。

世帯年収が上がるとテストの点数も上がる?(学力調査の結果)
「経済力=学力」という構図は、データにおいても顕著に表れています。
下表はお茶の水女子大学が行った、家庭の社会経済的背景(※SES)と学力の関係に関する研究結果です。
※社会経済的背景(SES)とは、家庭所得・両親の学歴などを合成した指標のことである。以下の表はこの指標を四等分し、Lowest SES、Lower middle SES、Upper middle SES、Highest SESに分割して子どもの各教科の平均正答率を分析。
| SES(社会経済的背景) | 小6 国語A | 小6 算数A | 中3 国語A | 中3 数学A |
|---|---|---|---|---|
| Lowest(最下位層) | 53.9 | 68.6 | 70.7 | 54.4 |
| Lower middle(下位層) | 60.1 | 75.2 | 75.2 | 62.0 |
| Upper middle(上位層) | 63.9 | 79.2 | 78.6 | 67.5 |
| Highest(最上位層) | 72.7 | 85.4 | 83.6 | 75.5 |
参考:国立教育政策研究所「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)保護者に対する調査結果(概要)」
SES(家庭所得・両親の学歴などを合成した指標)が高くなればなるほど、各教科の平均正答率が比例して高くなっていることがわかります。特に中3数学においては、最下位層と最上位層で20ポイント以上の開きがあります。
月5万円以上の差も。「学校外教育費」の支出実態
学力の差を生む大きな要因の一つが、塾や習い事にかける「学校外教育支出」の差です。
国立教育政策研究所の調査によると、世帯年収によって支出額には明確な傾向が見られます。
- 年収1,000万円以上の世帯
中学3年生に対し、月に5万円以上の教育費をかけている家庭が約30%を占めます。 - 年収300万円未満の世帯
約30%の家庭が、学校外活動への支出が「0円(支出なし)」となっています。また、月5万円以上かけている家庭はわずか1%程度です。
高収入世帯ほど教育にお金をかけられるため、結果として子どもの学力が伸びやすく、逆に低収入世帯では学習サポートが手薄になりやすい構造が見て取れます。
参考:国立教育政策研究所「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究(成果報告書)」
地域による学力のばらつきと「選択肢」の格差
家庭の年収だけでなく、住んでいる「地域」も格差の一因です。
- 都市部(人口集中エリア)
塾や予備校、習い事の教室が多数あり、子どもの学力や個性に合わせて最適な環境を選べます。競争相手も多いため、切磋琢磨する環境が自然と整います。 - 地方・過疎地域
通える範囲に塾や予備校がない、あるいは選択肢が極端に少ないケースがあります。また、博物館や科学館といった文化施設へのアクセスが難しい場合もあり、知的好奇心を育む機会が得にくい傾向にあります。
教育格差が子どもの将来に与える影響|生涯賃金に1億円の差も
徐々に積み重なる教育格差は、子どもの将来にどのような影響を与えるのでしょうか。
学歴だけでなく、年収についても解説します。

家庭の収入別「大学進学率」の違い
教育費の差は、最終的な進路である大学進学率にも直結します。
以下の表は2020年における、世帯年収別の四年制大学進学率です。
| 年収 | 国公立大学への進学率 | 私立大学への進学率 | 四年制大学への進学率合計 |
|---|---|---|---|
| 0~275万円 | 12.3% | 28.5% | 40.8% |
| 275~388万円 | 11.9% | 28.6% | 40.5% |
| 389~688万円 | 15.5% | 36.5% | 52.0% |
| 689~863万円 | 19.1% | 42.8% | 61.9% |
| 864~1,100万円 | 20.6% | 48.8% | 69.4% |
| 1,100万円以上 | 19.2% | 56.2% | 75.4% |
参考:桜美林大学研究紀要.総合人間科学研究「修学支援新制度の効果検証」
年収275万円未満の世帯と1,100万円以上の世帯では、大学進学率に35ポイントもの差があります。
大学進学には入学金や授業料だけでなく、受験料や予備校代、一人暮らしの仕送りなど多額の費用がかかるため、経済力が進路選択の決定的な要因となっているのが現状です。
生涯賃金に約1億円の差が出る現実
教育格差は、将来の経済格差へと直結します。
最終学歴による生涯賃金(退職金含む)の差を見てみましょう。
- 中学校卒: 約2億2,280万円
- 高校卒: 約2億4,490万円
- 大学・大学院卒: 約3億2,030万円
参考:文部科学省「高校生等への修学支援に関する参考資料(8)」
あくまで統計上の数値ですが、高卒と大卒以上では生涯賃金に約7,500万円〜1億円近くの差が生じます。教育機会の損失は、将来子どもが手にする経済的な豊かさの損失にもつながりかねません。
家庭でできる教育格差対策!すぐ始められる5つのアクション
経済状況や住んでいる地域は変えられなくても、家庭でできる教育格差対策はあります。
お金をかけずに、今日からすぐに始められる5つのアクションを見ていきましょう。

① 学校任せにしない!「家庭内学習」を見直す
子どもの教育をすべて学校任せにしていると、差は開く一方です。まずは「家庭が学びの場である」という意識を持ちましょう。
高価な教材は必要ありません。日々の生活の中で「なぜ空は青いのかな?」「この野菜はどこから来たのかな?」といった問いかけを行うことが重要です。日常の疑問を一緒にスマホや図鑑で調べるプロセスそのものが、最高の探究学習になります。
② 習い事・塾の“投資効率”を考える
「友達がやっているから」という理由だけで漫然と通っている習い事はありませんか?
予算が限られているなら、選択と集中が必要です。
「この習い事は子どもの自己肯定感を高めているか?」「将来の選択肢を広げているか?」を冷静に分析しましょう。効果が薄いと感じたら、思い切って整理し、その分の予算を書籍代や体験活動に回すのも賢い戦略です。
③ 家庭での読書・ニュースを見る習慣を育てる
読書は、最もコストパフォーマンスの良い教育投資です。
図書館を利用すれば費用はかかりません。ポイントは「読みなさい」と命令するのではなく、親自身が本を読んでいる姿を見せること。
また、テレビのニュースを見ながら「あなたならどうする?」と意見を求めることで、社会への関心と思考力を養えます。これらは経済力に関係なく実践可能です。
④ ICTツール・無料学習サービスを活用する
現在は、無料でも質の高い学習サービスが溢れています。
YouTubeの教育チャンネルや、文部科学省の「たのしくまなび隊」、無料の学習アプリなどを活用すれば、塾に行けなくても良質なインプットが可能です。
ここでも親の関わりが重要です。「動画を見せて終わり」ではなく、「今の動画で何が面白かった?」と感想を聞くことで、定着率を高められます。
⑤ 地域の教育資源(図書館・公民館・無料講座)を探す
あなたの住む地域には、活用できる「無料の教育資源」がたくさん眠っています。
図書館の読み聞かせイベント、公民館の科学実験教室、大学の公開講座など、自治体の広報誌やHPをチェックしてみましょう。
これらは無料または格安で利用できることが多く、体験格差を埋める強力な武器になります。
知っておくべき支援制度(金銭的解決策)
「お金がないから」と諦める前に、公的な支援制度や民間のサポートを知っておくことが大切です。
所得制限ありの教育費支援制度(就学支援金・塾代助成など)
国や自治体には、教育費の負担を減らす制度があります。
- 高校授業料無償化(就学支援金): 公立・私立問わず、授業料の一部または全額が支援されます。
- 受験生チャレンジ支援貸付事業(東京都など): 中3・高3生を対象に、塾代や受験料を無償で貸し付ける制度(高校入学などで返済免除になる場合あり)。
- 自治体独自の塾代助成: 大阪市などの一部自治体では、月額1万円程度の塾代クーポンを支給しています。
お住まいの自治体の窓口で「教育費の支援制度はありますか?」と聞いてみましょう。
無償学習支援・居場所づくりを行うNPO法人の活用法
経済的に困難な家庭を支援する民間団体も増えています。
- チャンス・フォー・チルドレン: 学習や文化・スポーツ、体験学習などで利用できる「スタディクーポン」を提供。
- カタリバ: パソコンとWi-Fiを無償貸与し、オンラインで学習支援を行うプログラムなどを実施。
経済状況の違いや住んでいる地域を問わず、教育格差を広げるきっかけとなるのが「情報を知っているかどうか」です。
これまで紹介したように、自治体やNPOの中には教育格差の解消に役立つ制度やサービスを提供しているところがあります。しかし、そもそも情報自体を知らなければ利用できず、子どもの教育格差はますます広がってしまうでしょう。
利用できる制度やサービスの情報がわかるよう、常にアンテナを張っておき、利用のチャンスを逃さないようにすることが大切です。
教育格差についてのFAQ
最後に教育格差についてのよくある質問を3つ紹介します。
日本の教育格差世界ランキングで何位ですか?
教育格差そのもののランキングはありませんが、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の「公財政教育支出(国が教育にかけるお金)」の対GDP比は、加盟国の中でも最低レベル(37か国中36位)です。
これは「国があまり教育にお金を出してくれない=家庭が自分のお金でなんとかしなければならない」ことを意味しており、日本の教育格差が家庭の経済力に依存しやすい構造であることを示唆しています。
日本の教育格差には男女差がありますか?
残念ながら「ある」と言えます。
大学進学率全体では男女差は縮まっていますが、「難関大学」への進学に関しては男子の方が割合が高い傾向にあります。
これには親の意識も影響しており、調査によると「男子には高い学歴を期待するが、女子にはそれほど求めない」という無意識のバイアスが、進路選択に影響を与えていることが分かっています。
参照元:早稲田大学 研究活動 Research Activities「女子の進学選択に影響する「親の期待」」
体験格差とはなんですか?
体験格差とは、旅行や習い事、文化鑑賞といった「学校外での体験」の機会が、家庭の経済力によって不平等になることです。
学力テストの点数には直結しませんが、子どもの意欲や好奇心、自己肯定感といった「生きる力」に大きな影響を与えます。
詳細は下記の記事で解説しているため、ぜひ目を通してみてください。
まとめ:教育格差は「知ること」と「動くこと」である程度は埋められる
教育格差とは、家庭の経済状況や地域といった「変えられない環境」によって、子どもの学歴や将来の可能性に差が生まれてしまうことです。データを見れば、年収による学力差や進学率の差は明らかです。
しかし、保護者があきらめてしまえば、その差は埋められずに終わることに。
経済的な余裕がなくても、「家庭での対話」「読書習慣」「無料の教育資源の活用」「支援制度の利用」など、できることはたくさんあります。
まずは、今日からできる小さなアクションを一つずつ始めてみてください。その積み重ねが、10年後の子どもの未来を大きく変えるはずです。
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