総合型選抜とは?学校推薦型選抜や一般入試との違い、出願条件、日程、対策法など紹介


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塾選ジャーナル編集部
国公立大学や私立大学の入試形態の一つが、総合型選抜です。大学や学部・学科とのマッチングが重要視されるといわれていますが、具体的にはどのような内容なのでしょうか?
今回は総合型選抜の概要について、学校推薦型選抜や一般入試との違い、出願条件、日程、対策法などと一緒に解説します。
総合型選抜とは?AO入試・学校推薦型選抜・一般入試との違い
初めに総合型選抜の概要と、AO入試・学校推薦型選抜・一般入試との違いについて見ていきましょう。
総合型選抜とは?2021年にAO入試から名称が変更
総合型選抜は以前、AO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれていたものです。
2021年度の大学入試から、従来のAO入試に学力評価が加わり、総合型選抜に変わりました。文部科学省が発表している「令和3年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、国立大学の76.8%、公立大学の40.0%、私立大学の90.8%が実施していることがわかります。
後述するアドミッションポリシーに沿った人物の選抜が目的で、提出する書類のほか、面接、論文、プレゼンテーション、ディスカッションなどが課されます。時間をかけて合格者を選定することから、一般的に選考に要する時間が長いのが特徴です。
国公立大学の総合型選抜
国公立大学で課される総合型選抜の内容は、決して簡単ではありません。出願条件は学校推薦型選抜よりも緩やかですが、大学によっては「英検資格の保持者」や「全国コンテストの上位入賞者」など、厳しい条件が課されているところもあります。
また、試験内容も小論文や長文の志望理由書、自己推薦書の作成などのほか、セミナーやスクーリングなどに出席して、レポートを作成させるところもあるほどです。事前準備に時間がかかり、受験生の負担も大きくなるでしょう。
私立大学の総合型選抜
私立大学の総合型選抜の内容は、学校によって特徴が大きく異なります。難関大学では上記で解説した、国公立大学と同じような試験内容としているところが多いです。書類審査の時点で、基準に満たない生徒はふるい落とされることもあるでしょう。
難関大学以外でよく取り入られているのが、対話型の選抜方法です。何回かの面談・面接にパスすれば、合格できます。学力よりも人物像、学習意欲、志望動機、大学への適性などが重視されるのが特徴です。
学校推薦型選抜との違い
学校推薦型選抜と総合型選抜の主な違いは、次のようになっています。
学校推薦型選抜 | 総合型選抜 | |
---|---|---|
高校の推薦状 | 必要 | 不要 |
評価の基準 | 学業成績や課外活動実績など | 学業成績や課外活動実績などに加えて、アドミッションポリシーに合致しているか |
出願から合格発表までの期間 | 1カ月ほど | 学校推薦型選抜よりも長い |
実施期間 | 11月ごろ | 9月~翌年2月の間で、大学によって異なる |
最も大きな違いが、高校からの推薦状が必要かどうかです。学校推薦型選抜では高校の推薦状が必須ですが、総合型選抜では必要ありません。つまり、出願条件にさえ合致していれば、高校の推薦がなくても受験できるということです。
一般入試との違い
一般入試は基本的に、学力試験をもとに合否が決まります。ただし、国公立大学の後期日程などでは、面接を課しているところもあるでしょう。
出願要件は「高校を卒業した者」「卒業見込みの者」または「高校卒業と同等の学力を認められる者」などで、高校を卒業予定の高校生は全員が受験できます。試験の実施期間は毎年1月~3月ごろです。
自己推薦入試との違い
自己推薦入試も高校からの推薦状は必要ありません。総合型選抜との大きな違いの一つが、「これまでに何をしてきたのか」に重点が置かれることです。
総合型選抜では「大学で何を勉強したいのか」「将来はどのような職業に就きたいのか」など、これからに対する考えが評価されるのに対し、自己推薦入試では「高校時代に何をしてきたのか」「どのような実績を持っているのか」などが評価の対象となります。
試験は自己PR書などの書類と、面接のみとしているところも少なくありません。
総合型選抜におけるアドミッションポリシーとは?
アドミッションポリシーとは、各大学で入学者の受け入れ方針を示したものを指します。
学部や学科などで分けているところもあるでしょう。大学の校風や特色などを踏まえて、「どのような学生に入学してもらいたいか」が明確になっています。たとえば、「入学後の修学に必要な基礎学力と学修意欲を有する者」や「異知を融合化させて新しい価値を創造できる者」など、さまざまです。
前述したように、総合型選抜では「アドミッションポリシーに合致しているかどうか」が見られます。ポリシーに沿って志望理由書や小論文を書いたり、面接で受け答えをしたりできるよう、しっかりと内容を確認しておくことが欠かせません。一般的には大学のホームページ上に掲載されているので、チェックしてみましょう。
総合型選抜の選考方法|どんな試験内容がある?
総合型選抜の主な選考方法は、次の通りです。
- ・志望理由書や調査書などの書類選考
- ・面接
- ・小論文
- ・学力試験
- ・実技試験
- ・プレゼンテーション
- ・グループディスカッション
上記の選考方法の中から、各大学が独自に組み合わせて課されます。最も多いのは書類選考と面接、小論文の組み合わせです。
志望理由書には大学や学部・学科を志望した主な理由、理由を裏付ける過去の体験や考え、卒業後の目標などを記載します。調査書は高校で作られ、学業成績や生活態度、課外活動の記録などがされるでしょう。
面接では出願時に提出した書類にもとづいて、主にアドミッションポリシーに適しているかどうかがチェックされます。
小論文の内容はさまざまです。志望理由のほか、特定のテーマについて自分の考えを述べたり、資料や図書を読んだ上で論述したりするものもあります。
総合型選抜の出願条件
総合型選抜の出願条件も、学校によって異なります。どの大学や学部・学科にも共通しているのは、「アドミッションポリシーに賛同できるかどうか」です。
これまでに何度も述べてきたように、総合型選抜ではアドミッションポリシーに合致する生徒を集めるのが目的のため、ポリシーに賛同できることが絶対条件となります。
その他の主な出願条件は、次の通りです。
- ・現役生や、既卒生の場合は卒業から何年以内か
- ・特定の検定試験や資格を取得している
- ・コンクールでの入賞歴
- ・スポーツ系の大会における成績
- ・高校で所定の科目を履修している
- ・オープンキャンパスに参加している
- ・合格後に必ず入学する
- ・大学入学共通テストで、指定した教科・科目を受験する
- ・高校の評定平均が基準を上回っている
たとえば、令和4年度大阪大学の理学部[挑戦型]の総合型選抜の出願条件は、以下のようになっています。
1.高等学校等において、数学、物理学、化学、生物学、地学など基礎科学分野の学問・研究に強い興味を持ち、高い志を持ってそれらに自主的・意欲的に取り組むことができる者
2.理学部の志望する学科が定める令和4年度大学入学共通テストの受験を要する教科・科目を受験する者
3.合格した場合に、必ず入学することを確約する者
厳しい条件を課している大学がある一方で、比較的条件をクリアしやすい大学も少なくありません。全体的に見ると現在の学力よりも、入学したい強い意志や学習意欲、将来に対する考え方などが重視される傾向にあります。
総合型選抜の日程・スケジュール
総合型選抜の日程・スケジュールは次のようになっています。
項目 | 日程 |
---|---|
出願 | 9月~10月ごろ |
試験 | 10月~11月ごろ |
合格発表 | 11月中旬以降 |
上記は一例です。具体的な日程は大学によって異なるため、必ず各自で確認してください。出願に必要な書類は入学志願書や志願理由書、活動報告書、調査書、学修計画書などです。
試験は第1次選考と、第2次選考に分けられることが多いでしょう。第1次選考は書類審査です。出願時に提出された志望理由書や調査書にもとづいて、合否を判定します。第2次選考は上記でも解説した、小論文や面接、プレゼンテーション、グループディスカッションなどが課されます。
また、合格者には入学前教育として、何かしらの課題を課す大学が少なくありません。基礎学力の定着を目的として問題演習のほか、課題図書の読書など、大学によって内容はさまざまです。
課題に取り組まないと、入学後の成績に影響を与えたり、奨学金の対象外となったりする可能性もあります。合格発表から入学までは時間があるため、確実に取り組みましょう。
総合型選抜に評定平均値は関係ある?|評価対象は?
総合型選抜では、評定平均値を条件としていない大学が少なくありません。評定平均値とは高校における全科目の成績を足し、科目数で割って出した値のことです。対象となる期間は高校1年生の1学期から、高校3年生の1学期まで。小数点以下第2位は四捨五入されるため、4.0や4.3などと表せます。
評価の対象となるのは定期試験のほか、「真面目に授業を受けているか」「期限内に提出物を出しているか」などの授業態度も含まれます。
総合型選抜では学力よりもアドミッションポリシーに合致しているか、学習意欲は高いかなどに焦点が置かれることから、評定平均を選考内容に入れていない大学が多いです。
その反面、「調査書の全体の評定平均値4.3以上」「高等学校全期間の調査書の評定平均値が4.1 以上」など、細かく設定しているところもあります。評定平均はこれまでの積み重ねで決まるため、総合型選抜を考えている子どもは、できるだけ早い段階から対策しなければいけません。
総合型選抜は併願できる?
大学入試には主に、専願と併願の2種類の応募方法があります。専願とは受験する大学に合格した場合、必ず入学することを約束するものです。対して併願は複数の大学を受験して、合格した中から自由に進学先を決められるものを指します。
総合型選抜は基本的に併願できません。専願となるため、合格した場合は必ず入学する必要があります。専願としている主な理由が、「アドミッションポリシーに合った学生を募集したい」という大学側の想いと、「〇〇大学に入って、勉強をしたい」という学生側の想いをマッチングさせる入試形態のためです。特定の大学に入学したい気持ちが前提となる入試なので、多くの大学が専願となっています。
しかし、私立大学の中に併願を認めているところがあります。併願はできても、合格した場合は入学をしなければいけないところ、学部間での併願はできないところなど、具体的な条件はさまざまです。
総合型選抜のおすすめ対策
最後に総合型選抜で合格するための、おすすめの対策法について紹介します。
できるだけ早く志望校を決める
受験する大学にもよりますが、高校3年生以降に総合型選抜を受ける大学を選ぶのは遅いです。面接や小論文、プレゼンテーション、グループディスカッションなどの対策は、短期間でできるものではありません。
対策を始めてから成果が出るまでに時間がかかるため、できるだけ早く志望校を選びましょう。
学校の定期テストで高得点をマークしておく
評定平均が出願条件に課される場合、基準に達していなければ出願すらできません。高校1年生のときからの積み重ねが結果となるため、学校の定期テストでは常に高得点をマークできるように努力しましょう。
高校生活の中で取り組んだことを記録しておく
志望理由書や小論文などで、高校生活の中で取り組んだことの記述を求められるケースがあります。しかし、高校3年生になってから、2年前のことを思い出すのは大変です。記憶違いや抜けている部分があるかもしれません。
そのため、できれば高校1年生の段階から部活やボランティア活動などを主として、取り組んだことや頑張ったことを記録しておくとよいでしょう。
総合型選抜の対策におすすめの学習塾については、下記の記事で解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ
総合型選抜とは従来のAO入試に該当するもので、大学や学部・学科のアドミッションポリシーに合致する学生を集めるための入試形態です。志望理由書といった書類のほか、面接や小論文、プレゼンテーション、ディスカッションなどが課されます。
高校の推薦状は必要ないため、条件を満たせば誰でも出願できるのは大きな魅力といえるでしょう。
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