都立高校の総合学科とは？普通科との違いを現役塾講師が解説！
編集部
塾選ジャーナル編集部
ひのき進学教室 三軒茶屋校講師
大山雅司
都立高校には様々なタイプがありますが、大部分の学校が「普通科」です。そして「普通科」と比較される学科に「総合学科」があります。今回は、総合学科の特徴や普通科とは何が違うのか、どんな人が向いているかについて詳しく解説していきます。
総合学科とは？
都立高校の総合学科には、どのような特徴があるのでしょうか。3つの大きな特徴を紹介します。
総合学科の特徴
①単位制であり、いろいろな専門科目から自分で選択できる
総合学科は、国語や理科などの普通科目から情報や美術、国際関係などの専門科目まで、自分の興味・関心や進路希望に応じて幅広く学べる学科です。普通科との大きな違いは、「大学入試科目とは異なる多様な科目から自分で選択できること」です。
②高校1年に必修科目「産業社会と人間」がある
総合学科の高校1年生は必修科目を中心に学びますが、その中に「産業社会と人間」という科目があります。これは簡単に言うと、進路ガイダンスや自己分析で、自分の興味があることやそれに見合った進路・職業などを考える時間です。
③高校2年から自分で時間割を組み立てる
専門科目は25科目以上あり、この専門科目は分野ごとに「系列」に分かれています。系列は、どの高校もだいたい4～6つぐらいに分かれていて、例えば、情報システム系列、語学コミュニケーション系列、芸術美術系列などがあります。その系列を参考にしながら、 主に高校2年生以降は自分自身で時間割を組み立てていく形式になります。イメージだと「普通科」が大学進学に向けたコース料理が提供されるとして、「総合学科」は自分のキャリアを考えて選ぶバイキング形式と言えるでしょう。
総合学科と普通科の違い
都立高校にある学科は、元々「普通科」と「専門学科（工業科・商業科・農業科など）」の2つのみでした。普通科は大学進学が前提になっており、専門学科は就職を目指すものとして設置されていたのです。そして、1994年（平成6年）、その両方の要素を合わせ持つ第三の学科として新たに作られたのが「総合学科」です。
総合学科のメリットやデメリットは？
総合学科のメリット
・自分の興味・関心のある科目を選べる！
・幅広い専門知識を学べる！
総合学科は、必修科目以外は自分の興味・関心がある科目を選べたり、普通科では学ぶことのできない幅広い専門知識を学べたりするのが最大のメリットです。学校が決めた時間割ではなく、自分だけの時間割を作ることで、将来の夢がある人や目指す大学が決まっている人は、自分の進路に合わせた学習が進められます。
「自分の興味・関心を深めたり強みを伸ばせる」という意味では、「総合型選抜入試」と相性がいいともいえるでしょう。
総合型選抜入試は大学によって選考方法は異なりますが、一般的に志望理由書・調査書などの書類選考、面接、小論文によって選抜が行われます。主に問われるのは、自分の強みを生かして大学で何を学びたいか、です。そのため、高校1年生から自己分析をしたり、自分で専門科目を選択したりする総合学科は、強みを発揮しやすいともいえます。進路の選択肢のひとつとして覚えておくといいでしょう。
総合学科のデメリット
・計画的に履修しないと大学進学への影響も
学校ごとに選べる科目や系列が違うため、事前に何が学べるのか調べておくことが必要です。また、自分で時間割を組み立てられるのがメリットである一方、計画的に履修しないと大学進学に影響が出てしまう場合もあります。ですので、早いうちから自分の進路について考えなくてはなりません。
総合学科はどんな人が向いている？
総合学科は、普通科では学べない幅広い専門知識が学べるため、「色々なことに興味がある、学びたい」と思っている方におすすめします。
高校1年生のときに自分自身の適性と向き合い、高校2年生から自分で科目を選んで時間割を組み立てていくため、自分の選択がその先を大きく左右することになります。そこが魅力的だと感じる人は総合学科に向いていますが、逆に負担に思う方は、学校が基本的なカリキュラムが決まっている普通科のほうが向いているかもしれません。
また、将来やりたい分野がある人は、その系列がある総合学科の高校を目指すといいでしょう。総合学科の中には、美術・デザイン系の系列がある高校があります。美術系の都立高校は都立芸術高校・都立工芸高校などがありますが、例年志願倍率が高く、入学ハードルが高めです。そのため、総合学科の美術・デザイン系の系列がある高校も候補に含めてみることをおすすめします。
一方、普通科は進学を目指す人向けのカリキュラムを組む学校が多く、一般選抜入試で大学進学したい人にはおすすめです。一般教科を中心に、幅広い教養を身につけることを主な目標にしているため、まだ将来の進路が決まっていない人や、一般教科をまんべんなく学びたい人に適しています。
総合学科を設置している都立高校一覧
次に総合学科を設置している全日制の都立高校を紹介します。2025年2月時点では、以下の10校です。
| 晴海総合高校 |
| つばさ総合高校 |
| 杉並総合高校 |
| 若葉総合高校 |
| 青梅総合高校（定時制あり） |
| 葛飾総合高校 |
| 東久留米総合高校（定時制あり） |
| 世田谷総合高校 |
| 町田総合高校 |
| 王子総合高校 |
本記事では、参考として晴海総合高校と世田谷総合高校の特徴をピックアップして紹介します。
晴海総合高校 …
・進学校としての色を強め、2025年度は最終応募倍率1.67倍と高い人気
・総合学科の中では高水準の大学進学率
・推薦入試での進学割合が高く、一般入試での受験者は卒業生全体の約1割程度
世田谷総合高校 …
・2年次以降に18時間分の選択科目を設定するなど、自由度の高い学びが可能
・キャリア教育に力を入れ、「キャリアデザイン」という科目を設置。
・6つの系列（「社会・教養」「サイエンス・環境」「情報デザイン」「ライフデザイン」「国際・文化理解」「美術・ものづくり」）があり、それぞれの系列を参考にしながら授業を組み立てられる
総合高校を選ぶときの3つのチェックポイント
① 自分が学びたい内容と合っているか
総合学科では、学校ごとに異なる「系列」が設置されています。系列とは、専門的な学びを深めるための分野のことです。たとえば、情報・ビジネス系、福祉・医療系、芸術・デザイン系、国際系 など、学校ごとに強みとする分野が異なります。自分が学びたい内容と、学校が提供している系列が合っているかを確認しましょう。
確認すべきポイント
✓ 興味のある分野の系列があるか（例：IT分野を学びたいなら「情報システム系列」があるか）
✓ 系列の数と幅広さ（多様な選択肢があるか、それとも特定の分野に特化しているか）
✓ 自由選択科目の充実度（系列以外の科目も履修可能か）
例：
晴海総合高校 … 情報システム・国際ビジネス・芸術文化など 6系列 を設置
葛飾総合高校 … 医療・福祉・体育・美術・音楽など 専門分野が多彩
杉並総合高校…第二外国語（中国語か韓国語）が1年次に必修で国際交流活動も盛ん。
青梅総合高校…広大な敷地を活かした自然環境・農業・園芸系の科目が豊富。
② 進学・就職実績が目指す進路に合っているか
総合学科の卒業後の進路は 大学進学・専門学校進学・就職 など多岐にわたります。学校ごとに進学実績や就職先の傾向が異なるため、自分の目指す進路に合っているかを確認しましょう。
確認すべきポイント
✓ 大学進学率・専門学校進学率・就職率（自分の希望進路に合った実績か）
✓ 指定校推薦枠の充実度（大学進学を考えるなら、どの大学の指定校推薦があるか）
✓ 進路相談の機会が多いか
例：
晴海総合高校 … 大学進学率が高い（推薦入試が多め）
世田谷総合高校 … 芸術系・デザイン系の進学者が多い
若葉総合高校…看護系・芸術系・保育系を目指す生徒が多い。
自分が希望する進路に合った進学・就職支援があるかを確認しましょう。
③ 校風や学習スタイルが合っているか
総合学科の高校は、学校によって 自由度の高さや学習の雰囲気 が異なります。個別の選択科目が多く、自己管理が求められる学校もあれば、比較的サポートが手厚い学校もあります。
確認すべきポイント
✓ 自由度の高さ（自分でカリキュラムを組みたいか、ある程度決まっている方が良いか）
✓ サポート体制（先生のサポートが手厚いか、自主性が求められるか）
✓ 学校の雰囲気（文化祭や部活動が活発か、落ち着いた雰囲気か）
例：
世田谷総合高校 … 選択科目が多く、自由度が高い
王子総合高校 … 先生の個別指導が手厚い
青梅総合高校 … 広大で自然豊かな環境で学べる
学校説明会やオープンキャンパスに参加し、実際の雰囲気を確認するのがおすすめです。
総合学科から大学進学する際の注意点
これまでも紹介しましたが、総合学科は自分で専門科目を選択して時間割を組み立てていくため、受験に必要な科目の選択も自分でしなくてはなりません。そのため、普通科と異なる総合学科ならではの大学受験を見据えた準備が必要になります。
大学進学の傾向は？
下記のグラフのとおり、総合学科からの大学進学は生徒の半数以上になります。これは普通科と比較しても大きな差はありません。次いで専門学校が3割程度です。以前は「総合学科は大学受験に不利」と言われたこともありましたが、指定校推薦・総合型選抜入試など大学入学方法が多様化し、進学に力を入れている高校もあるため、不利ということはないでしょう。
大学進学を目指すときに注意することは？
大学進学を決めている場合、総合学科と普通科のシステムの違いは、入学前にしっかり理解しておきたいポイントです。
まず基本の流れですが、高校1年生のときに「産業社会と人間」という必修科目の中で、自分の適正や進路を考えます。そこで「この分野は重点的に学びたい」というのを見つけたうえで、高校2年生から最適な時間割を組み立てていきます。
大学進学を目指す場合、「“計画的”に時間割を組み立てること」ができれば問題ありません。ただ、この“計画的”というのは要注意です。仮に、自分が行きたい大学を見つけて推薦入試を目指した場合に、推薦条件の中の必須履修教科を取っていなかったため、推薦をあきらめざるを得ないという可能性もあるからです。そうならないために、高校1年生から2年生の間に、自分の適性を見たり情報収集をして、しっかり考えておく必要があります。
計画的な履修が進路の選択肢を広げる！
専門科目の分野である系列の名前は、大学の学部名と似ているものが多いです。あらかじめパンフレットなどを見て進みたい系列をイメージし、その系列に近い学部がある大学はどこか、そのために必要な科目は何か、調べておくのがおすすめです。また、途中で進路を変える可能性も考えて、興味のある科目も一緒に取っておくことも、その先の選択肢の幅を広げてくれるでしょう。
自分がわくわくするカリキュラムを選ぼう
総合学科は、自分の適性を見たり、さまざまな専門知識を学べたりするため、将来の進路選択の幅が広がります。まずは総合学科のカリキュラムを確認し、興味を引かれる系列や専門科目があるかをチェックしてみましょう。その「興味」が学習のモチベーションにつながり、進路を考えるうえで大切な要素になることもあります。メリットだけでなくデメリットも考慮しながら、自分に合った学科を選んでください。
➤総合学科の特徴や普通科との違い：詳しい内容は以下の参考動画もチェック！
※参考動画：【都立高校】総合高校の特徴や普通科との違いを解説
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選（ジュクセン）』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール
塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。
