エイスクールの探究学習をレポート!~子どもの個性に寄り添う、「余白」がある学び~


編集部
塾選ジャーナル編集部
今回取材をしたのは、子どもが「自ら考え、アウトプットすること」に特化した探究学習塾『エイスクール』。一人ひとりが「やりたいこと」を形にしていくアクティブラーニングの中で、0から1を生み出す創造の楽しさを味わいながら学ぶことができる場です。
エイスクールの探究学習にワクワクする理由や授業を通して培われる力とは?今回はエイスクールの“番頭役”として多くの子どもを見守ってきた、ディレクターの大軒さんにお話を伺いました。
今回取材した塾▶
塾名 | 探究学習塾エイスクール |
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対象学年 | 幼児(年中~)、小学生、中学生、高校生 |
住所 | 東京都文京区本郷4-1-7 近江屋第二ビル601 |
プロフィール | 幼児から社会人まで、幅広い年代に適応するオリジナルの探究プログラムを展開。小学生向けの通塾コースでは、経営者やクリエイターなど幅広い分野の本格的なおしごと体験を通じて、身につけた知識を活かして「アウトプットする」学びの場を提供しています。クラスは、ゲームやクイズ、グループワークなど、子どもが心から「楽しい!」と思えるようなワークショップ形式を取り入れた少人数制。テーブルごとに配置される大学生を中心としたメンターが、子ども一人ひとりと丁寧に関係を築きながら、興味関心を引き出す個別サポートを実践しています。 |
今回取材を受けてくださった方▶
エイスクール 大軒恵美子さん(ディレクター)
探究学習とは
探究学習とは、答えが一つに定まらない課題に対して、自ら問題を発見し、情報収集・分析・考察を行い、解決策を導き出す学習方法です。 従来の知識習得型の学習とは異なり、主体的・対話的な学びを重視し、論理的思考力や課題解決力を育成します。日本の教育では、高校の「総合的な探究の時間」などで導入され、大学入試や社会で求められるスキルの育成につながっています。
探究学習が求められる背景や、従来の学びとの違いについて以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
エイスクールの特色と教育方針
「0から1を生み出す」アウトプット型の探究学習とは?
-エイスクールが提供する「アウトプット型の探究学習」について、詳しくお聞かせください。
エイスクールでは、知識や技術のインプット(吸収)だけでなく、制作・表現・実践などのアウトプット(創造)や協働に重きを置いています。本来、学びはインプットがゴールではありません。インプットで得た情報をもとに、自ら考えて試行錯誤しながらアウトプットすることで、何かを生み出す力が身についていくものです。
私たちが大切にしているのは、子どもの「おもしろい!」「知りたい!」「やってみたい!」という心の動きです。なぜなら、自身の内発的な動機が学ぶ楽しさやワクワクにつながるからです。
-自ら試行錯誤することで「生み出す力」が身につくのですね。
そうですね。私たちが開発するプログラムの根底にあるのは、「やってみないと本質的なことはわからない」ということです。
例えば、『豆電球に電気をつける』仕組みを理解していても、実際にできるとは限りません。実際にやってみると、「導線のつなぎ方が甘くて電気がつかない」とか「電気はついたけど、光り方が違う」とか、さまざまな発見がありますよね。本来の学びとは、やってみて、失敗して試行錯誤して、またチャレンジする…その繰り返しの中で体得していくものだと考えています。行動することでしか得られない、新しい気付きや興味関心の種があるんですよね。
これは、大人がビジネススクールに通って経営学を学んだとして、では実際に経営者ができるかというとまた別の話であるように、社会に出てからも同じことが言えると思うんです。
-子どもの頃からアウトプット力を磨くことで、社会に出てから生き抜く力を身につけるというイメージでしょうか?
確かに、アウトプットする力を養うことは、社会に出た後の人生を助けてくれます。でも、私たちの教育理念としては、「学びというのは、自己肯定感や自信を与えてくれる喜びに満ちたものである」と知ってほしい、という想いの方が強いですね。学ぶことが楽しくなると、生きるのがもっと楽しくなるはずなんです。エイスクールでの経験を通して、スキルだけでなく自ら明るい未来を創造していく力を伸ばしてもらえたら嬉しいですね。
大事にしているのは、生徒一人ひとりと向き合う「余白」の設計
-学校の授業とエイスクールの授業とで、異なる点はありますか?
細かい点ではたくさんありますが、大きく異なる点は2つです。1つ目は、エイスクールのプログラムには「余白」があること。2つ目はそれと連動した「少人数クラス」であることです。
私たちは、一人ひとりの好きなこと・やりたいことを実現するためには、道筋を決めすぎずに余白を残しておく必要があると考えています。アウトプットをするのに、作るものが決まっていたら子どもの「創造性の入る余地」がなくなってしまいますよね。
例えば、建築模型を作る授業では、決められた設計で組み立てる練習はしますが、最終的には「オリジナルの建築をゼロから自分の頭で想像して、設計図をおこして模型として形にする」ところまでをやり切ります。どういうプロセスでどこに時間をかけて作りたいかは、子どもによって大きく異なるので、プログラムに「余白」が必要なんです。
その分、授業の進行やサポートは個別に最適化する必要があります。逆に言うと、学校のように先生1人で1クラス30人を見る座学ベースの授業だと、どうしてもできることが限られてしまうと思うんです。
-エイスクールの小学生コースの場合、何人ほどのクラスになるのですか?
小学生コースの場合は、いずれも多くて1クラス12〜16人程度、講師とは別に生徒4~5人が座るテーブルごとに大学生を中心としたメンターが1人つきます。
メンターの役割は、授業の進行をサポートするだけでなく、一人ひとりと向き合って学びの伴走をすることです。例えばチームでディスカッションする際は、個々の発言に具体的なフィードバックを返していきます。正解からはずれたとしても、「その考え方は面白いね」「その観点は良かったね」といった対話の中で、学ぶ意欲を失わないように配慮しながら、子どもの良いところを引き出すのもメンターの重要な役目の一つです。
-メンターがつくことのメリットには、他にどのようなことがありますか?
子どもは、メンターとの対話の積み重ねの中で「ここは苦手だけどここは得意かもしれない」という自分の良さに気付けたり、場合によっては弱みのカバーの仕方を自覚できたりします。自分の思考・行動を客観視して判断する力、いわゆる“メタ認知”ができるようになるのは、大きいですね。
子どもや保護者からも、「一人ひとりをちゃんと見てくれる担当者がいるのが嬉しい・心強い」というお声をよくいただきます。保護者には、授業前後に教室にいらっしゃった際に、メンターから授業中のお子さんの様子を話したり、希望者には年に数回講師との保護者面談の機会も設けたりと、お子さんの成長を一緒に見守るスタンスで関わらせていただいています。
-学校と家庭以外にも一緒に子どもの成長を見てくれる存在は、保護者にとっても心強いですね。
エイスクールには元教員の経歴を持つ講師もいるので、学校でのお悩みをご相談いただくこともよくあるようです。また中学受験のための勉強に疲れてしまって、集団学習の塾を辞めてエイスクールに通塾されるというケースも見られます。このケースでは、子どもだけでなく保護者も「どうすればいいのか」と悩まれていることも多いので、一緒に子どものケアをしながら「本来の個性」や「楽しいと思える学び」を引き出していきましょう、と話をしています。
エイスクールではどんな授業を受けられる?
エイスクールの「時代の変化に負けない力」を育てるプログラム
-では、ここからはエイスクールの具体的な授業内容についてお聞かせください。コースは幼児コースから社会人コースまで幅広いですが、どの年代の生徒さんが多いのでしょうか?
生徒のボリュームゾーンは、教室通塾の小学生コースです。小学生コースでは、「なりきりラボ®」「おしごと算数®」という2つのプログラムを提供しています。いずれも“おしごと”をテーマに参加型のアクティブラーニングに取り組む探究学習です。
「なりきりラボ®」は、本格的なおしごと体験を通じて子どもの視野を広げていくプログラムです。「この仕事の人はこんなことをやっています」ということを一方的にインプットするのではなく、「もし自分がそのおしごとをすることになったら何をするか?」を考えて実践しながら、「考える力」「表現する力」「創造する力」「伝える力」「行動する力」といった、人生の支えとなる5つの力を育んでいきます。
学ぶのは「このおしごとは何のためにあるんだろう?」「このおしごとをするにはどんな訓練が必要なんだろう?」「それはなぜだろう?」といった大人でも知りたくなるようなこと。大人がそのキャリアについて学ぶプロセスとそんなに大きな違いはありません。
クイズやゲーム、工作といった子どもが夢中になれるアプローチを取り入れながら、仕事の本質について「自分ごと」として学びます。
「おしごと算数®」は、算数を軸としたプログラムになります。特徴としてはシミュレーションゲームが多いことですね。
わかりやすいのは「コンビニ店長」のプログラムです。「自分がコンビニ店長だったらどうする?」という設定の中で、四則演算を学びます。「コンビニとレストランのサンドイッチにはどんな違いがあるだろう?」という値段の相場に対する感覚を養うためにフィールドワークに出かけたり、「明日の天気予報は雨です。どうする?」というシナリオを出しながら成績を競う商売ゲームをします。需要予測や在庫管理をしたりするなかで楽しみながら計算力を高めていきます。
他にも、立体図形の学びの単元を取り扱う「ファッションデザイナー」や「模型クリエイター」などのクリエイティブ職のプログラムも充実しています。
-「なりきりラボ®」「おしごと算数®」で学び方に違いはありますか?
「おしごと算数®」におけるシミュレーションゲームの多さを除くと、2つのプログラムの学び方に大きな違いはありません。導入時はクイズやゲームをしながら理解を深め、外に出るフィールドワークや個人で手を動かすミニワークやチームディスカッションをプログラムごとに要所で取り入れるのが、定番の学び方ですね。いずれも、授業は子どもが主体的に考えて行動するワークショップ形式で進んでいきます。
通塾コースの場合、小学1年生~3年生は週に1時間1コマで月4回、小学4年生~6年生と中高生コースは週に2時間1コマで月4回のペースで通っていただくペース配分です。
プログラムでこだわっているのは、その仕事の本質を伝えること。現代社会では、今ある仕事が数年後に同じように存在しているとも限りませんよね。もし、今ある仕事がなくなったとしても、「人に何かを伝える技術」「価値ある体験・サービスを考える力」といった本質は変わることではありません。大事なのは職業名ではなく、時代が変化しても役立つ力。“なりきり体験”を通して身につけてほしいのはそういった本質的な力です。
-受講する授業を迷う場合、おすすめはありますか?あるいは受講されている生徒数が多い授業などがあれば教えてください。
生徒数は同数くらいで、どちらがボリュームゾーンということはないですね。あえて言うならば、「なりきりラボ®」の方が探究としての網羅性が高いため、「算数が好きで興味関心がある」あるいは「算数の苦手を克服したい」というような理由がなければ、「なりきりラボ®」の方をおすすめしています。
エイスクールで身に付く力とは?
グループワークだからこそ身につく力、早期教育のメリットとは?
-小学生コースの場合、同じクラスに違う学年の子もいるのですか?
はい。小学生コースでは、1年生~3年生、4年生~6年生の3学年ごとの区切りを目安にクラス分けをしています。ただし、あくまで目安なので、その子の能力に合わせて越境する生徒もたくさんいますよ。
-学年が違う子と一緒に学ぶ機会というのも貴重ですよね。学年差のある子が同じクラスで学ぶことで良い相乗効果なども生まれるのでしょうか?
「おしごと算数®」のように、学校で習う単元が学年によって異なる要素のあるプログラムでは、あまりに学年差があると授業の進行が難しいので注意が必要ですが、それらに考慮できる範囲であれば子ども同士で良い相互作用をもたらすことが多いですね。
下の学年にとっては上の学年の子を見て背伸びすることで大きく成長しますし、上の学年の子は下の学年の子をリードして教えることで、言語化する力がぐんと向上します。これは、特に小学校低学年のクラスで顕著に見られる傾向です。
-学ぶ姿勢を身につけるには、探究学習を早いうちから始める方がいいのでしょうか?
人生の捉え方や物事の考え方は、小学校の高学年ぐらいになると概ね固まってきます。思春期からマインドセットや価値観を変えようとするのは、ときに困難を伴います。例えば小学1年生でも「失敗を恐れる子」は沢山います。真面目な子ほど、失敗への恐怖心が早く芽生えるんですよね。間違えることが怖くて行動することを躊躇するようになる前に、「とにかくやってみようよ」「失敗してもいい。トライすることが大事だよ」「君の良いところはたくさんあるよ」という自己肯定感につながる小さな成功体験を、小さなうちからたくさん経験させてあげたいですね。
幼い頃から家庭での遊びやお出かけといった日常生活の中で、探究的な姿勢をもって毎日を過ごすことは、すごく大事な習慣です。一方で、共働き世帯が増えている昨今、十分に子どもと触れ合う時間が取れないというお悩みや、子どもの可能性を広げるために、幅広い学びの機会を与えたいというニーズも増えてきました。必ずしも探究学習塾に通う必要はありませんが、そんなときにはスクールを上手く活用いただけるといいと思います。
-エイスクールに通っている子どもは、どんなタイプが多いのですか?
本当に十人十色で、学校でも優等生なんだろうなという子もいれば、学校では少し外れていそうに見える子もいます。ただ、「自分がやってみたい」という子が、すごく多いです。どんな子でも自分の興味関心に基づいて学ぶことが好きというのは共通項だと思うんですよね。自分なりに手を動かすのが好きだったり、作業に没頭するタイプだったりする子が多い傾向にありますね。
-実際のところ、内気すぎてクラスに馴染めない…という子は、あまりいないのでしょうか?
入塾前に同じ相談をいただくこともあるのですが、実際にシャイだからといって入塾後に問題になったことはありません。クラスで大きな声で発言するタイプではない子であっても、自分の考えは隣のメンターにちゃんと説明できるので、ただ表現の仕方が違うだけと考えています。
保護者の方からよくいただく言葉の一つに、「子どもを見守って認めてくれる“居場所”を提供してくれることがありがたい」という声があります。小さなコミュニティなので、「何を言っても受け止めてもらえる」という心理的安全性がある場所となっていることを評価いただく声は、とても多いですね。
エイスクールの卒業生に共通するのは、自分で未来を切り拓く力
-エイスクールで学んだ子どもに共通する「変化」などがあればお聞かせください。
短期的な変化については、子どもの個性や元々感じている課題感によっても異なるので、一概には言えません。ただ、2014年の開校から10年が経っているので、当時小学生だった生徒が今は社会人になっていたりするんです。その子たちの成長過程を見ていると、中学・高校・大学の学校選びや社会に出てからの進路について、自分の幸せのために自ら考えて未来を切り拓く力が強いと感じます。それは、偏差値の高い学校に行って大企業に就職して…ということではなく、自分の「好き」や「得意」をとことん突き詰めてポジティブに力強く進んでいく力です。
さまざまな紆余曲折や方向転換があっても、楽しみながらポジティブに挑戦している卒業生の姿を見ると、私もとても誇らしく思いますね。
-自分の進路を「なんとなく」で選択するのではなく、自分のことをよく理解して考えたうえで選択する力が身につくのですね。
-最後になりますが、子どもと対峙する中で、一番やりがいを感じるのはどんなときですか?
子どもが健やかに楽しそうに学んでいる姿を見るのは、やはり嬉しいです。あと、日々子どもに驚かされることって、すごくたくさんあるんです。大人にはない発想力で、自分には思いつかないようなことを子どもが教えてくれる…そういう新しい世界を知ることができるのが、一番の楽しみかもしれません。子どもの挑戦を新鮮な気持ちで見守りながら、教育する側も多くを学び刺激をもらえるのが、私たちの仕事の素晴らしいところだと感じています。
エイスクールでは、通塾コースの他に遠方で通うのが難しいという子のために春・夏・冬休みに開講する季節講習や少人数の体制はそのままにアレンジしたオンラインの通塾コースもあります。ぜひ多くの子どもに私たちの開発メソッドを生かした探究に触れる機会を持ってもらいたいですし、私自身も今以上にもっとたくさんの子どもに出会っていきたいですね。
エイスクールへ通った生徒や保護者からの反響は?
(小2 りつさん 保護者)
対話を大切にしてくれる講師との時間が大好き
子供の想像力を広げてくれる一番好きな場所
いくつか習い事をやっているなかで「エイスクールが一番好き!」ってよく言うんですよ。作るのが好きなので。でも、教えるのって難しいじゃないですか。僕は別にクリエイターじゃないから、こうしたらいいってあんまり言えないんですけど“作るためのいろんなきっかけを与えてくれる”“この子の想像力を広げてくれる”っていうところが僕は一番価値を感じています。
(小5 たけなりさん 保護者)
知識を得て、実際にやってみることを繰り返し
「なんでも、とりあえず試してみる」精神が育った
勉強じゃないですけど、知的好奇心というか、勉強することや仕事をすることにもつながるのかもしれないですけれど、(勉強や仕事は)人間がやりたい楽しいことなんだよという当たり前のことを子どもに気付かせる場なんだろうな、というところがいいんじゃないかなと思います。
どこが楽しいと思えるかは人それぞれですし。楽しいことって結局楽ではないので、乗り越えなきゃいけない何かがあるじゃないですか。その経験もやっぱりその教室でできる、友達、仲間と一緒に取り組める、挑戦できることがいいところなんじゃないでしょうか。
取材後記
今回の取材では、『エイスクール』の探究学習で身につく力を中心に、たくさんのお話を伺いました。特に印象的だったのは、仕事をするうえで必要なスキルの育成のみにとどまらない同塾が目指す「学び」のゴール設定です。学ぶ楽しさを知り、生きる楽しさに発展させていくこと。それができるようになれば、どんな時代であっても、自分の身を守ってくれる強みであり、強力な武器になるはずだと思いました。
塾選ジャーナル編集部/※掲載内容は、2025年2月時点の情報です。
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