都立高校入試2025を総まとめ|受検者数減の影響と来年への対策ポイントとは?


編集部
塾選ジャーナル編集部

ひのき進学教室 三軒茶屋校講師
大山雅司
2025年度の東京都立高校一般入試(第一次募集及び分割前期募集)が、2月21日(金)に終了しました。
今年の入試は、受検者数の減少など、例年とは異なる傾向が見られました。本記事では2025年度 都立高校入試の全体像を振り返ります。また、各科目の難易度や受検生の声をもとに問題内容も分析していくため、試験の見直しや次年度以降の受検対策などの参考としてください。
2025年度 都立高校入試の振り返り
早速、2025年度の都立高校入試を振り返っていきます。全体として出題傾向や難易度に加え、受検者の動向にも注目すべきポイントが見られました。なかでも特に大きな変化として挙げられるのが、受検者数が減少したこと。まずは受検者数の推移や倍率をもとに今年の入試の全体像を把握した上で、実際に出題された問題の傾向や難易度についても振り返っていきます。次年度の対策に活かせるよう、両面から分析していきましょう。
都立高校入試の受検者数が減少、その背景とは?
はじめに、2025年度における都立高校一般入試の受検者数や倍率などを見ていきます。
▼全日制普通科の受検者数と受検倍率
項目 | 2024年度 | 2025年度 |
---|---|---|
応募者数 | 35,137人 | 32,112人 |
受検者数 | 32,721人 | 29,856人 |
受検倍率 | 1.35倍 | 1.25倍 |
不受検者数 | 2,416人 | 2,256人 |
今年の都立高校入試では、応募者数が32,112人(前年は35,132人)、受検者数が29,856人(前年は32,781人)となり、どちらも前年度比で3,000人近く減少しました。これに伴い、受検倍率も1.25倍(前年1.35倍)と低下。そのため、多くの受検生にとって例年よりも合格のチャンスが広がった年だったと言えるでしょう。
また、出願したものの当日試験を受けなかった受検生数は2,256人(前年は2,416人)と減少しており、「そもそも、最初から私立単願に決めていて、都立高校の出願をしていない人が増えたのでは?」と考えられます。
背景には、東京都で先行している私立高校の授業料無償化の影響があると考えられます。学費の負担が軽減されたことで、「都立よりも私立」という選択肢を取る受検生が増えているのかもしれません。
2025年度 都立入試|教科別難易度分析
ここからは、各教科の出題内容や傾向をふまえながら、実際に大山先生が解いてみた体感の難易度や、大山先生のYoutubeで実施されたアンケート結果をもとに詳しく分析していきます。
教科(理科を除く) | 難易度の感想(大山先生) | 特徴 |
国語 | 易しい | 記述は解きやすく、作文も身近なテーマで書きやすい |
数学 | 平年並み(前年よりはやや難) | 証明や図形の応用問題で差がついた |
英語 | 難しい | 仮定法や読解で思考力が問われた |
社会 | やや易しい | 基礎中心だが記述で時間配分に影響も |
実際に都立高校入試を受検した生徒に「国語以外で難しかった教科について」アンケートへ回答してもらいました。(※国語については平均点上昇が予想されたため、国語以外でアンケートを取得)
教科 | 割合 |
理科 | 38% |
数学 | 28% |
社会 | 24% |
英語 | 7% |
(ひのき三軒茶屋 Youtube Live配信時のアンケート調査 2月21日 n=約200名)
国語以外では、理科の難易度が高かったと感じた生徒が38%、次いで数学が28%との結果でした。上記のアンケート結果も踏まえながら、教科ごとの問題を分析していきます。
国語:比較的易しく、平均点は上昇の見込み
国語は例年平均点が高い教科ですが、今年も易しい問題が多かったようです。記述問題があるものの、内容を読み取れば、難なく解けるものが中心でした。
作文は文章を読んだ後に「文化を受け継ぎ発展させること」をテーマとし、受検生の具体的な体験や見解を含めて、話す内容を200字以内でまとめるものでした。もしかすると、具体例を出すのに苦労した受検生がいたかもしれません。
文章中には「ここでの「文化」とは、模倣や教育などによって社会的に伝達される情報全般を指します。」と定義されており、この定義をつかめたかどうかがポイントです。日本文化や伝統文化に限定されたものではなく、例えば「部活動の練習方法を後輩へつなぐ」「委員会のやり方を改良する」など、幅広い視点で書けるものとわかります。
また、古文に関しては例年通りの形式で、現代語で書かれた対話文と、話題として挙げられている古典の原文、その訳文を比較しつつ読み、問題を解くという構成でした。古典に関してはそもそも現代語訳がついているため、訳したり細かく精読する必要がないことも、例年通りでした。
国語は過去問などでしっかりと復習をすれば、実力のつく良問が多いと個人的には思いますが、その反面、できている生徒とできていない生徒とで、差がつきにくいのが特徴です。昨年と比較すると平均点は上昇するだろうと思います。平均点は例年、6月末頃に公開されます。
数学:図形問題が一部難化、平均点は下がる見込み
数学は「前年よりやや難しくなった」との声が多くありました。
アンケート結果で特に話題となったのが「円を24等分して2点を選び、平均値と差の関係を証明する問題」です。普段あまり見ないタイプで証明させていく問題は、都立高校入試でよくあります。「形式が見慣れないものだったため、戸惑ってしまった」といった受検生も多かったのではないでしょうか。
2点の関係(小さい方の数字に12を足すと、もう片方の数字になる)さえ理解すれば、立式自体はさほど難しくなかったと思われます。
難問だったのは「図形の面積比を求める問題」です。「中点連結定理」や「相似の考え方」を駆使しながら複数の図形の性質を見抜く必要があり、試験時間内で解くのは難しかったのではないでしょうか。
また「空間にある三角形の面積を求める問題」では、高さを求められるかどうかで得点に差がつきました。
前年は平均点が高かった分、今年は下がる可能性が高いでしょう。
英語:仮定法までが出題、読解力で差がつく
英語は毎年少しずつ難しくなっているという傾向が続いており、今年も例外ではありませんでした。
リスニング後の最初の問題では、仮定法を絡めた設問が登場。「If we used that station」の文が仮定法にあたり、「事実とは異なる(=実際にはその駅は使わない)」というニュアンスがあることが分かると、すんなり正解が選べます。
英作文は書きやすく、難易度は低かったと思われます。帰国した留学生からのEメールに対し 「もっと練習したいこと」をテーマに書く問題で、受検生にとって馴染みやすい内容でした。内容や綴りが平易になるような話題を選んで書くと、書きやすいと思われます。
「学習指導要領改訂以降の新単元が増えてきた一方で、作文は書きやすかったため、全体の平均点は大きく変わらないのでは?」と思います。学習指導要領が変わったことで要求水準は上がってきていますが、同時に受検生全体のレベルも向上しているように感じます。ただし、要求水準を超えられない生徒が、都立受検の前段階で私立単願へ流れている可能性も否定できません。
理科:深い理解が必要で、苦戦者多数
理科については、大山先生が実施した受検生のアンケートでも「今年の試験で最も難しかった」という声が多くありました。全体的に、慎重さや正確性などが求められる問題が目立っていました。「イオン」や「遺伝」など、深い理解が求められる問題が出題され、さらに計算問題の難易度が上昇しています。
大問1と大問2は難化した内容だったため、スタートから戸惑った受検生も多かったのではないでしょうか。
多くの受検生が「途中で解くのを諦めた」と話していました。今年は、理科の平均点が下がる可能性が高いでしょう。
社会:基礎的な問題が中心も、記述がネックに
社会は「基礎知識があれば解ける問題が多かったが、記述が面倒だった」という印象です。全体としては、やや易しい問題内容だと感じました。
世界地理では、選択肢を2つに絞れるが、最後の決め手で迷うような問題が出題されています。たとえば「エジプトとオーストラリアの二択で迷い、ODA(政府開発援助)をヒントに判断する問題」などです。
また記述では「新しい鉄道駅ができることで、交通の利便性がどう変わるか」を説明する問題が出題され、「どこまで詳細に説明するべきかがわからなかった」という受検生がいたかもしれません。できるだけ詳細に書こうとすると時間がかかり、全体の時間配分がうまくできなくなってしまいます。
前年も「内容は簡単だったが、平均点は意外と上がらなかった」ため、今年も平均点は横ばいになる可能性が高いでしょう。
2025年度 都立高校入試まとめとアドバイス
2025年度における都立高校入試の特徴を、次のようにまとめました。
✓ 受検倍率が低下し、多くの受検生にとってはチャンスが広がったとも言える年
✓ 数学・理科は難化、国語は易化、英語と社会は昨年と同程度
✓ 受検生の平均点は、国語が上がり、数学・理科が下がると予想
上記はあくまでも、過去の平均点や出題された問題を分析した結果に基づくものです。
来年以降の都立高校入試 受検生へのアドバイス
よく、「社会は暗記教科だから直前でも伸びる」という意見も耳にしますが、直前の知識丸暗記だけでは太刀打ちできません。都立高校入試の社会に関しては、覚えた知識を踏まえて地図や図表を見ながら考えさせる傾向が強いためです。それ以前に、ある程度の基礎知識がないと過去問演習を行ったところで「何が分からないかが分からない」状態になってしまうでしょう。 また、理科も同様です。毎年平均点が大きく下がる、もしくは受検生が難しかったと述べるのが理科・社会のいずれかとなります。
中学3年生の夏には、中1~2年生の単元の総復習を完了し、秋以降は苦手な単元がある程度絞られている状態まで到達していれば、過去問演習の効果も出やすいでしょう。
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監修者プロフィール

塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。