中学生のスマホルール、みんなはどうしてる?決め方や注意点


編集部
塾選ジャーナル編集部

ひのき進学教室 三軒茶屋校講師
大山雅司
中学生がいるご家庭では、子どもの「スマホルール」を設けようか悩む方も多いのではないでしょうか。便利で生活に欠かせなくなっているスマホ。最近では中学生がスマホを持つことも珍しくはありません。ただ、使い方によっては学習に影響が出てしまう場合もあります。高校受験に向けてスマホとどう向き合えばいいのか、今回はスマホを持つときの最適なルールを解説します。
中学生のスマホルール みんなはどうしてる?
中学生のお子さんをもつご家庭では、スマホルールを設けているのでしょうか?大山先生のXを通して、実際に保護者の方々へ、「家庭でスマホのルールを設けているかどうか」のアンケートが実施されました。まずは、その結果からご紹介します。
中学生のスマホ 家庭内での利用ルール アンケート結果
「スマホの利用について家庭内でルールを設けてますか?」という質問に対して、「決めている」というご家庭が64. 1%、「決めていない。本人に任せている」というご家庭が25.1%。「そもそもスマホを持たせていない」というご家庭が10.8%、という結果でした。
実施媒体:X(@oyama_sancha) 実施:2025年2月 票数:494票
中学生のおよそ6割~7割が何かしら過程でスマホのルールを設けて、1/4ぐらいは本人に任せている、というのが現状のようです。
中学生はみんなスマホを持っている?どう使っている?
次に気になるのは、「中学生はそもそもどれくらいスマホを使っているの?」という点ではないでしょうか。「みんな持っているの?」「どのくらい使っているの?」と感じているご家庭も多いはず。最新のデータをもとに中学生のスマホ利用の実態を見てみましょう。
約8割以上がスマホでインターネットを使っている
親世代が中学校のときは、携帯電話を持っている人はクラスに1人か2人だったと思いますが、今やクラスのほとんどの生徒がスマホを持つ時代になりました。
中学生のインターネットの利用状況
インターネットを利用している | インターネットを利用するためにスマホを使っている | インターネットを利用する際は自分専用のスマホを使っている |
---|---|---|
98.1% | 89.1% | 95.3% |
引用先:令和6年度青少年のインターネット利用環境実態調査調査結果(速報)
内閣府の2024年の調査では、中学生の98.1%がインターネットを利用していて、利用の際にスマホを使っている人は89.1%、そのうち本人専用のスマホを使っている人は95.3%となっています。
中学生のインターネットの1日の利用時間(利用機器の合計/平日1日あたり)
平均利用時間 | 3時間以上使っている | 5時間以上使っている | |
---|---|---|---|
2022年 | 277.0分(約4時間37分) | 69.9% | 36.7% |
2023年 | 282.1分(約4時間42分) | 71.8% | 39.7% |
2024年 | 302.3分(約5時間2分) | 74.4% | 44.8% |
引用先:令和6年度青少年のインターネット利用環境実態調査調査結果(速報)
また、利用時間は年々長くなっていて、1日に5時間以上使っている人は、2022年は36.7%だったのが2024年には44.8%まで上がっています。平均利用時間も同じく30分以上増える結果となっています。これらから、中学生がスマホでインターネットにアクセスするのは当たり前で、年々利用時間が長時間化していることがわかります。
中学生はスマホの利用ルールを設けたほうが良いのかどうか、次は中学生がスマホを持つことにどのようなメリットとデメリットがあるのかを見ていきましょう。
中学生がスマホを持つメリット
まずは、中学生がスマホを持つメリットについて、学習面と学習面以外に分けて見ていきましょう。
学習面のメリット
① 学習アプリで手軽に勉強できる
英単語暗記、漢字練習、数学ドリルなど、スマホには中学生向けの学習アプリが豊富にあります。スキマ時間に手軽に使えるため、習慣化しやすいのが魅力です。
② 調べ学習がすぐにできる
辞書や百科事典がなくても、分からない言葉や歴史上の出来事などをすぐにネット検索できます。調べたいときにすぐ調べられることで、学びを止めずに済みます。
③ 動画でわかりやすく学べる
YouTubeなどには、教科ごとの解説動画や定期テスト対策の講義が多数あります。視覚・聴覚を使って学べるので、教科書だけでは理解しにくい内容も、動画であればクリアになるという人もいるでしょう。
④ デジタルノートやカレンダーで学習管理できる
スマホのカレンダーアプリを使えば、テスト日や提出物の管理も簡単。学習計画アプリやToDoリストで「いつ・何をするか」を見える化できます。
学習面以外のメリット
厚生労働省の「子どもの携帯電話等の利用に関する調査結果の概要 P.21」によると、携帯電話に対する評価の良い点として以下があげられていました。
中学生がスマホを持つデメリット
学習面のデメリット:長時間利用で成績が下がる傾向
① スマホと成績は相関あり!
スマホ利用のルールを設けるといっても、今やスマホが学習ツールにもなっていて、学習系の機能がかなり充実してきたこともあり、どのようなルールにするかを悩む家庭も多いと思います。前提として、「教育におけるデジタル技術の付加価値に関する確かなエビデンスはほとんどない(※)」と言われています。というのも、評価が下される前にデジタル技術が次々に進化するため、評価が追い付かない、というのが現状です。
(※)引用元『教育におけるテクノロジー』(UNESCO、2023)
一方でスマホを使い過ぎると成績が落ちる、ともよく言われます。本当のところどうなのか、スマホの利用時間と成績の相関関係についての研究を紹介します。
『スマホはどこまで脳を壊すか(朝日新書)』によると、勉強時間が長くて睡眠時間が長い人ほど偏差値が高い傾向が強いですが、「勉強時間も長くて睡眠もちゃんと取り、さらにスマホ利用が3時間以上」という条件になると、偏差値下がる傾向がまとめられていました。要は同じ勉強時間と睡眠を取ってたとしても、スマホ利用が長いというだけで成績が下がるという傾向が示されています。
② スマホは勉強の成果につながる“濃度”を下げる
勉強の成果は時間の長さだけでは決まらず、【時間×濃度】の掛け算です。同じ3時間勉強したとしても、寝不足でうとうとやっている3時間は成果につながりませんよね。それが「勉強の濃度が下がっている」という状態です。
スマホにも同じようなことが言えて、勉強中にスマホに意識が向いている、というだけで勉強の濃度は下がっていると言えるでしょう。スマホやデジタルデバイスが近くにあるだけで集中力が下がる、という研究結果も出ています。仮にスマホを使っていなかったとしても、スマホがそばにあるだけで「今はスマホ を使う時間じゃなくて勉強しなくちゃ」という意識に脳のリソースが消費される分、勉強への集中力が下がります。
普段スマホに接する時間が長い人ほど、その意識の向く度合いが上がってしまうのではないでしょうか。だからこそ、勉強時間が長くても勉強の濃度が下がって成果に結びつかないことは起こり得ると考えられます。
学習面以外のデメリット:便利な一方でトラブルなどの危険性あり
ここからはあくまで一般的な話になりますが、スマホは中学校生活に欠かせないもので便利である一方、使い方によっては成績への影響以外にもデメリットもあります。どんなデメリットがあるかをチェックしておきましょう。
② SNSなどのトラブルに巻き込まれる可能性がある
③ ネット被害を受ける可能性がある
① スマホ依存になる可能性がある
ネットや動画の視聴、ゲームが手軽に利用できる一方、次第にやめられなくなって依存する場合があります。スマホに夢中になりすぎると、スマホが手元にないと落ち着かずにイライラしたり、食事中や就寝時の布団の中でもスマホをいじったり、生活リズムが乱れることも。家族や友人との会話が減り、コミュニケーション能力の欠如につながる可能性も指摘されています。
② SNSなどのトラブルに巻き込まれる可能性がある
多くの中学生が日常的にSNSを利用していますが、SNSをきっかけとしたトラブルや問題に直面してしまうケースがあります。具体的には、何気なくSNSに投稿した写真から個人情報の流出、炎上、著作権や肖像権の侵害につながる危険もあります。また、SNSを通じていじめに発展してしまうこともあり得ます。「スマホ依存=SNSへの依存」に陥ってしまう可能性も大いにあります。
③ ネット被害を受ける可能性がある
有害サイトにアクセスをしてしまって、迷惑メールや不正請求がくる場合があります。そのほかにもオンラインゲームの高額課金や、アカウントを乗っ取られて被害に合うケースもあります。また、ネット上で知り合った人に実際に会って、事件やトラブルに巻き込まれるケースも年々増える傾向があります。
スマホはメリットも沢山ありますが、一方でデメリットもありますので、各ご家庭でルールを設けたうえで、上手に活用するのが良いでしょう。
中学生のスマホ ルールを作るときのポイント
では実際にどんなルールを設ければいいのかを考えていきましょう。ここで大切なのは、親が一方的にルールを押し付けるのではなく、まずルールの必要性を説明し、相談しながら一緒に決めていくことです。先に紹介したように、スマホにはデメリットがあり危険回避が重要であることなどをしっかり説明をして、納得した上でルールを設定することが大切です。
おすすめのスマホルールは「時間制限を設ける」こと
中学生のスマホルールは各家庭の状況によって変わりますが、ここでおすすめのルールを紹介します。
① 使用時間は1時間~2時間以内
② 自室には持ち込まない
①使用時間は1時間~2時間以内
まず、時間制限を設けて、使用時間は1~2時間以内にすること。この時間を超えてしまうと、成績に影響が出る可能性もあるでしょう。親御さんが子どものころ、テレビでバラエティやドラマを1時間ぐらい見ていた方も多いのではないでしょうか?それと同じイメージでスマホの使用時間を決める、とするとイメージがつきやすいかもしれません。
アイテムを使って強制的にスマホをシャットアウトするのもおすすめです。タイマーをセットしたボックスにスマホを入れると、その時間は取り出せなくアイテムが市販されていますので、そういったアイテムを上手に使って習慣化するのもいいでしょう。
②自室には持ち込まない
さらに大事なのが、スマホを自室に持ち込まないこと。スマホやデジタルデバイスが近くにあるだけで集中力が下がる、という話は前にしましたが、手元にあると気になってしまうし、つい時間制限外でも使ってしまうもの。だからこそ、勉強するスペースや自室には持ち込まず、親の目が届く場所でスマホを使用することをルールとするといいでしょう。
ルール作りと同時に大切な3つのこと
スマホのルールの内容も大事ですが、同時に覚えておきたい3つのことを紹介します。
② 保護者も子どもに配慮した使用を心がける
③ 定期的にルールを見直す
① 家族のしきたりとしてスマホのルールを設定する
スマホのルールは、勉強のためにはあった方がいいですが、その制限は勉強のためではなく、「家族のしきたり」として設定することをおすすめします。スマホを制限したらすぐに勉強をするかというと、そこは別問題になることが多いです。勉強のために制限するのではなく、生活をする上で守ること、としておくといいでしょう。
② 保護者も子どもに配慮した使用を心がける
お子さんにルールを課している中では、保護者の方も、ある程度気を遣いながら使用してあげると、お子さんもルールを守りやすいと思います。
③ 定期的にルールを見直す
ルールは、生活リズムは学習の取り組み方などを見て、定期的に見直してみてください。学年が上がるごとにルールを緩和する家庭も多いですので、進級や進学のタイミングで親子で話し合ってみるのもいいでしょう。
ルールづくりとは別の話になりますが、高校受験を見据えてスマホを持たない、というのも選択肢のひとつだと思います。勉強において、英語の発音を聞くなどスマホが必要な場面はありますが、そのときは親のスマホを借りることで十分に事足ります。高校受験の内容は、インターネットにアクセスせずとも、参考書などで十分勉強できる範囲です。
勉強に限定した話ならば、スマホを持たず必要なときだけ「貸す」という方法で、中学校生活を乗り切ることも十分できます。ただ一方、家族間のやりとりや、友達との交友関係で、スマホはあった方が便利、もしくは必須になっている場合もあるかと思いますので、その辺りの事情まで踏まえた上で検討してもらえたらと思います。
まとめ:家庭の状況に合わせたルール作りを
適正なルールづくりは、家庭の状況に合わせることが重要です。例えば、最初は厳しめのルールを設けて、守れるようになってきたら少しずつ柔軟にしていくこともできます。家庭ごとの価値観や生活環境に合わせて、定期的に親子でルールについて話し合い、必要に応じて変更や追加を行ってみてください。無理のない範囲で、子どもも親も納得して守れるルール作りが、上手にスマホと付き合うコツになるでしょう。
塾選ジャーナルでは、スマホを含めた「親子間の生活ルール」についての調査も実施しました。「遊びに行くときのルール」「お小遣いに関するルール」など。ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。
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塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール

塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。