高校受験の失敗を防ぐ!3つの心得と落とし穴|知っておきたい正しい対策とは?


編集部
塾選ジャーナル編集部

ひのき進学教室 三軒茶屋校講師
大山雅司
高校受験は、多くの中学生にとって人生初の大きな試練です。厳しい受験競争を乗り越えて志望校へ合格したときは、大きな嬉しさや喜びを感じられるでしょう。
一方で、準備不足や考え方の甘さから、思いもよらぬ不合格に直面してしまうケースも少なくありません。受験生本人はもちろん、保護者の方にとっても大きな不安のひとつです。「受験終了後も進路が見つからない」などの声を聞くと、高校受験に対して大きな不安を持ってしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、これから高校受験を目指す方へ向けて「第一志望校に合格できず、その後も進学先がなかなか決まらず、最終的には当初の予定になかった高校へ進学することになる」など不本意な事態を避けるための心得を紹介します。ぜひ高校受験対策の参考としてください。
高校受験で失敗しないための3つの心得と避けたい落とし穴
ネット上では「受験が終わったのに、進路がまだ決まっていない」といった声を目にすることがあります。そうした情報に触れて、不安を感じる受験生や保護者の方もいるかもしれません。
しかし、これから紹介する心得を押さえ、適切な対策を講じておけば、「すべり止めにも落ちてしまった」「進学先が決まらない」といった事態は避けられるはずです。
それでは、高校受験で意識しておきたい3つの心得を、よくある落とし穴とあわせて見ていきましょう。
以下で、それぞれの心得の内容を解説します。
① 幅広い演習で初見の問題にも対応できる力をつける
初見の問題にも対応できるよう、志望校の過去問だけでなく、幅広い問題に触れることが大切です。
✖ よくある落とし穴:過去問で“傾向と対策”をつかめば合格は間違い
「志望校の過去問を繰り返し解けば、傾向がつかめるから大丈夫!」――これは大きな落とし穴です。
なかには「志望校の傾向をつかみ、過去問演習を通じた対策だけで合格できる」と考えている生徒や保護者がいるのも事実。しかし、基礎学力や実力が足りていない子どもが、過去問演習のみで合格できるほど、高校受験は甘くありません。
以下は「過去問だけで合格する」と思っている受験生の失敗例です。
・志望校の過去問ばかりを解いているため、初見の問題に弱い
・特定の問題に慣れすぎて、本番で傾向と違った問題が出されたときに対応できない
・出題傾向の高い分野だけに勉強内容を絞ってしまい、基礎学力が不足する
志望校の過去問演習を繰り返すことで、一時的に得点は上がるかもしれません。確かに毎回同じような問題が出題されれば、合格できる可能性は高まるでしょう。
しかし、受験本番では、「初見の問題」や「これまでの傾向と違った問題」が出題されることがあります。過去問演習のみでは、初見の問題や傾向と違った問題に対する感覚・学力が養われず、問題が解けなくなってしまいます。
というより、本番の緊張感の中では、仮にこれまでと同じ傾向の問題であっても、受験生の目線では「今までにはない傾向だ」と感じ取りやすいもの。受験を終え、惜しくも合格を逃した生徒からよく聞く言葉が「今年は傾向が変わった」です。ですが、翌年に過去問集に掲載されているものを見ると、特段大きな傾向変化がないように感じられるケースがほとんどです。同じ問題であっても受験勉強で見る場合と、入試本番で見る場合とで受け取り方が異なるのは当然です。
また、「この学校は、この問題しか出ない」と思い込んで受験勉強をすることは、基礎学力不足につながります。その結果、他の高校の受験にも対応できずに不合格を重ねてしまう事態に陥りかねません。
実際に難関校へ合格している生徒は、志望校の問題だけでなく、より難易度の高い問題にも取り組みながら、応用力を鍛えています。
〇 正しい対策:出題傾向に偏りすぎず、応用力も鍛える
受験勉強は、以下の心得を意識して対策をするとよいでしょう。
・過去問は全ての単元の復習を終えた後、実力を測る目的で使用する
・初見問題に触れる機会を確保する
・志望校レベルの問題だけでなく、ワンランク上の問題にも挑戦する
例:日比谷高校を目指すなら、早慶・国立の問題にも取り組む
・予想問題集や他校の問題を解く習慣をつける
志望校へ合格するためには、志望校の過去問演習に囚われるのではなく、幅広い問題に触れるようにしましょう。過去問は、単元の履修が一通り終わってから使用し、それまでは問題集などでの学習を基本とすることをおすすめします。
また、志望校レベルの問題だけでなく、ワンランク上の問題に挑戦するのもおすすめです。例えば、「日比谷高校を目指している生徒が、早慶や国立、他の自校作成校の問題に取り組む」などです。
「日比谷高校に特化した受験勉強だけをしている生徒」と「日比谷高校だけでなく、早慶や国立の高校の問題演習もしている生徒」がいた場合、合格する可能性がより高いのは後者でしょう。上位校になればなるほど「これまで見たことのない初見の問題に、どれだけ食らいつけるか」が合格のカギとなります。
② 偏差値を「今の位置」として正しく理解する
偏差値を積み上げ式でなく「現在地」として正しく捉えることも大切です。
✖ よくある落とし穴:「偏差値が高い=安全圏」は誤解
たとえば「今は偏差値55だけれど、次の模試で60になれば、この高校は確実に受かる」など、「偏差値が上がれば安全圏」といった考え方は誤解です。偏差値を「ポイントカードのように積み上げ式のもの」と考えている方は注意しましょう。
偏差値はあくまでも、そのテスト限りの「相対評価」であり、「積み上がるもの」ではありません。たまたま1回の模試で良い成績を取っただけで、「自分の実力がそのレベルになった」と思い込むのは危険です。
・1回の模試の偏差値を過信し、実力以上の学校を受験する
・すべり止めを甘く見て、「どこにも受からない」事態に陥る
・偏差値だけを見て学校を選び、自分に合わない学校を選択
偏差値は、1回の模試だけで正確にわかるものではありません。「1回の模試だけにおける、今の立ち位置」といえます。
そのため、1回の模試の偏差値を過信して実力以上の学校を受験したり、すべり止めの高校を甘く見たりすると、「どこにも受からない」といった事態に陥る可能性があります。
また偏差値だけを見て志望校を選ぶと、自分に合わない学校を選択してしまうかもしれません。学校が合っているかどうかは偏差値だけでなく、教育方針や校風、カリキュラム、大学への進学実績といった他の要素も求められます。
〇 正しい対策:偏差値は目安、最終判断は併願校の戦略次第
偏差値との向き合い方の心得は、次の6つです。
・直近の模試の結果だけでなく、過去3回の模試の変化を参考にする
・自分の位置を把握し、継続的に実力を伸ばす努力をする
・「合格確実」な学校を確保する
偏差値は、あくまでも「現在地」として捉えましょう。1回の模試でたまたま良い偏差値だったからといって、正確な実力を反映しているとはいえません。
直近の模試の結果だけでなく、過去3回の模試の変化を参考にしながら、継続的に実力を伸ばしていく努力が必要です。前回の模試よりも立ち位置が上昇、ないしは維持ができているかどうかを基準に考えると、自分の状態が正しく認識できます。
また、安全策をとることも大切です。第一志望校に合格するかどうかは、最後の合格発表までわかりません。わからない中で、子ども自身が目指したいところを目指せるよう、現実的な安全策を周りが考えてあげましょう。
安全策のひとつが、私立高校が定める基準に達している生徒を、私立高校が一般入試で優遇してくれる併願優遇制度です。主に第一志望の公立高校が不合格となった際に入学することを条件に、私立高校入試において優遇措置を受けられます。
併願優遇制度を利用し、確実な押さえ校となっている場合は1校で十分です。ただし、もし何かしらの事情で併願優遇制度を利用できない(内申点が不足しているなど)の場合は、オープン受験となるため、試験当日の体調不良などの可能性も加味した上で、合格確実な高校を1~2校は確保しておく必要があるでしょう。
③塾+学校の先生の両方を活用する
最後の心得は、塾だけでなく学校の先生も頼ることです。
✖ よくある落とし穴:「塾に任せきり」で情報不足も
「塾があるから大丈夫」「塾の先生にだけ相談すれば十分」と考え、中学校の先生を軽視するのは非常に危険です。
・学校の情報を軽視し、安全策を講じずに不合格
・塾の情報だけに頼り、受験の選択肢を狭める
併願優遇といった制度において、最終的に高校とやり取りをするのは塾の先生ではなく中学校の先生です。そのため、学校からの呼びかけをご家庭側からすべてシャットアウトしてしまうと、受験に関する手立てが不足してしまう場合があります。
また学校の情報を軽視したため、安全策を講じられずに不合格となったケースもあります。中学校の先生は、毎年「多種多様なすべての生徒の進路を無事確保すること」を使命にしている方々です。講じられる安全策の豊富さや、押さえ校のレパートリーにおいては、中学校の先生は大きな強みを持っています。
学校の先生や情報を軽視して、塾の情報だけを頼ってしまうと、受験の選択肢を狭めてしまうでしょう。
〇 正しい対策:学校ならではの情報・支援も活用する
塾だけでなく、学校の先生にも積極的に相談しましょう。もし何かしらの不満を持っていたとしても、保護者の方からシャットアウトするのではなく、ある程度良好な関係を保っておくことが大切です。
また、学校と塾の情報をバランスよく活用することも重要です。今後の努力次第で目指せる目標校に関しては、学校の先生と塾の講師とのあいだで、意見が違うことがあります。それぞれの指導経験や見方などが違うため、意見が分かれるのは当然です。
しかし、押さえ校に関しては、意見の対立はあまり起きません。先で述べたように、安全策の豊富さや押さえ校について、中学校の先生は多くの情報を持っているため、先生の意見に耳を傾けるとよいでしょう。
万が一、進学先が確保できていない場合の選択肢とは
もし第一志望校だけでなく、押さえ校にも合格できなかった場合は、どうすればよいのでしょうか。
受験後に進学先が確保できていない場合の対処法を紹介します。
高校の二次募集を探す
高校受験が終わった後でも、一部の公立高校や私立高校では 「二次募集(追加募集)」 を行うことがあります。
二次募集とは
定員割れが発生した学校、もしくは、都立高校の場合では予め後期分割枠として入学枠を残している学校が追加で生徒を募集する制度。一般入試が終わった 2月~3月頃 に実施されることが多いです。
また、都立高校の場合は二次募集だけでなく、三次募集・四次募集を実施する場合もあるでしょう。再び高校を受験できるチャンスとなりますが、二次募集の定員はさほど多くはありません。行きたい高校で募集があるとは限らない点にも、注意が必要です。
二次募集をする高校は毎年変わるため、できるだけ早く各自治体のホームページなどで確認しましょう。
通信制高校などの選択肢も視野に
2つ目の打ち手は、全日制の高校ではなく「通信制の学校を選ぶ」こと。通信制高校とは、通信教育で学習する学校のことです。基本的に毎日通学しない学校が多く、自宅学習がメインになるのが特徴です。全日制の高校と同じく、卒業の要件を満たせば高校卒業資格が得られます。
ただし、現状の制度においては通信制高校から全日制高校への転学が難しいことを踏まえると、通信制高校で3年間学ぶことが本当に自分に適しているかは慎重に見定める必要があります。
上記以外に「浪人をする」という選択肢もありますが、あまり推奨できません。
進学先が決まらない状況に至った原因は「すべり止めの高校を甘く見ていた」「自分の実力以上の学校を受験していた」など、正しい情報の不足と認識のずれだと考えられます。浪人を選択しても根本的な原因の解決にはならないため、進学に向けての打ち手としてはおすすめできません。
詳しくは以下の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
まとめ:高校受験は「考え方」で結果が変わる!
高校受験は人生の大きな分岐点。正しい方法と考え方で挑みましょう。紹介した3つの心得を守りながら受験勉強を進めていけば、高校受験の落とし穴に陥ることはないでしょう。
✅ 傾向と対策だけに頼らず、総合的な実力をつける
✅ 偏差値を「現在地」と考え、模試1回の結果に惑わされない
✅ 学校の先生との関係をシャットアウトしない
これから高校受験を目指す皆さんは、万全の準備をして、志望校合格を勝ち取ってください。
また、「高校受験失敗=人生終了」ではありません。どのような環境で学ぶのが自分にとって最適なのかを考え、前向きに次の選択をしていきましょう。
➤参考動画:【高校入試】その考え方があぶない。
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執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール

塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。