日比谷高校と西高校、都立最難関2校を高校受験のプロが徹底比較|志望校の決め手がわかる!


ひのき進学教室 三軒茶屋校講師
大山雅司
東大を目指すなら日比谷?個性を伸ばすなら西?
都立最難関の「日比谷高校」と「西高校」。実はこの2校、同じ進学指導重点校ではありますが、教育方針や生徒の雰囲気はまったく異なります。
この記事では、高校選びに迷う中学3年生や保護者の方に向けて、日比谷高校・西高校の特徴や学びの環境、向いている生徒のタイプを詳しく解説します。
日比谷高校と西高校の共通点:進学指導重点校である
まずはじめに、共通点から見ていきましょう。
日比谷高校・西高校の共通点は、どちらも東京都から「進学指導重点校」に指定されており、東京都の公立高校の中でも最難関高校に位置付けられていることです。
進学指導重点校とは
「進学指導重点校」は、東京都教育委員会が2001年に創設した制度。都立高校のうち大学進学実績向上を図るために、特に組織的・計画的な進学指導を行う高校を指定しています。
2025年時点で指定を受けているのは7校。日比谷高校・西高校・国立高校・八王子東高校・戸山高校・青山高校・立川高校です。進学指導重点校は、東京都からの予算や人材支援を受けながら、最難関大学進学を見据えた特色ある教育プログラムを展開しているのが特徴です。
なかでも日比谷高校と西高校は、東京中の最優秀層の高校生が集まる高校であり、長年都立トップの名門校として君臨してきました。
しかし、この2校の個性は、まさに「対極」です。
日比谷高校と西高校の違い①校風
2校の校風の特徴を端的な言葉で表すと「リーダーとしての誇り」を強く持つのが日比谷高校、「個性重視」が西高校と言えるでしょう。
日比谷高校:リーダーとしての誇り
まず、日比谷高校はその立地が象徴的で、最寄り駅のひとつに永田町があります。国会議事堂、議員会館という国家中枢のほど近くにある、実にこれから国を背負って立つリーダーが育つ環境らしい立地と思えます。
学習活動においてもSSH(スーパーサイエンスハイスクール)・GE-NET20の指定を受けつつ、国家予算、東京都の予算がふんだんに投入されています。
※SSH・GE-NET20については後述します。
というのも、日比谷高校はただ単に“頭がいい生徒が集まる公立高校”などでは決してなく、いわずと知れた東京都の公立トップ校であり、同時に全国の公立高校に対する旗艦校(旗振り役)としての役割があります。
つまり、日比谷高校の一挙手一投足、動向には東京都の公教育の威信がかかっているわけで、逆にここに予算を投入しないで一体どこに投入するのでしょう。
日比谷高校のホームページやパンフレットにも「リーダー」という文字が随所に現れているのを見る限り、こうした旗艦校としての役割、東京のトップクラスの生徒を集める高校としての立ち位置は明確に意識されていることでしょう。
西高校:個性重視
対して、西高校は東京都の地図を見れば分かりますが、日比谷高校とは別の意味で東京の中心地(地図上で)にあり、23区からも、多摩地区からも多くの生徒が集まってきます。
多様な人々が集まるその様子は、まさに”個性のるつぼ”。長年、「自主自律」「個性尊重」を掲げ、「リーダー」という言葉を象徴的に掲げる日比谷高校に対するカウンター的存在として長年、存在感を放ってきました。
「リーダーを育てる」ことを伝統的な方向性としてきたのが日比谷高校だとすれば、「どのような個性も受け入れる」ことを伝統としてきたのが西高校です。
西高校の校風を表すうえで象徴的なアイテムがあります。それは、新入生に向けて在校生の手により配布される「飛翔」という冊子。
この冊子は、卒業生が、出会うことのない新入生に向けて制作したもので、西高校に関するあらゆる情報(校舎内外の紹介、新入生への実用的なアドバイス、生徒からみた先生評)をまとめて紹介した通称「西高のバイブル」。なんと約300ページにもわたります。
毎年、この冊子の制作のために有志団体が結成され、貴重な受験勉強の時間を割きながら、すべて生徒たちの手だけで制作するという伝統が脈々と受け継がれています。そしてその伝統を高校が容認しているところにも西高校らしさを感じます。
日比谷高校と西高校の違い②大学合格実績
日比谷高校と西高校は大学合格実績においても、傾向が異なります。2025年最新の2校の大学合格実績を見ていきましょう。
2025年度合格実績(現役のみ、延べ合格者数)
大学名 | 日比谷高校 | 西高校 |
---|---|---|
東京大 | 65 | 10 |
東京一科※1 | 103 | 42 |
旧帝大※2
東大京大を除く |
12 | 22 |
国公立医学部 | 23 | 3 |
国公立計 | 172 | 112 |
早稲田 | 184 | 88 |
慶應 | 100 | 51 |
私立医学部 | 45 | 不明 |
※1 東京一科 東大・京大・一橋・東京科学大(旧東工大+旧医科歯科大)の合計
※2 旧帝大 北海道大・東北大・名古屋大・大阪大・九州大の合計
日比谷高校:東大など、群を抜く合格実績数
合格実績数を見ると、全進学指導重点校のなかでも日比谷高校は群を抜いています。特に東大現役65名、既卒生16名の合計81名は前年度も大きく上回る数値で、中高一貫校も含めた全国の進学校の中で5位と大躍進した年でした。
年度 | 東大合格者数 | |
---|---|---|
現役 | 既卒 | |
2023年 | 52名 | 8名 |
2024年 | 48名 | 15名 |
2025年 | 65名 | 16名 |
昨年度と比較しても、東大志向が高かったことがうかがえます。
ここ数年の合格実績を見ても、一時期は東大合格者が一桁になり、「都立凋落」と揶揄されていた時代を越えて、日比谷高校は進学校として完全に復活を果たしたと言ってよいでしょう。
もし、この記事を読んでいる中学3年生が「とにかく東大に行きたい。そのために自分の高校生活は捧げられる」とまで考えているなら、とりあえず日比谷高校を目指せば良いのではないかなと思います。
誤解がないように言うと、別に日比谷高校でなくとも東大を目指す生徒はいますし、他の高校では授業の質が足りないという話では決してありません。
現在は高校側から、ことさら「東大」を強調されるというわけではありません。むしろ近年では、「東大だけをゴールにしないでほしい」というメッセージが強くなってきた印象です。
ただ、これに関しては「現状、ことさら高校側から強調せずとも東大合格者数を確保できるような体制になってきた」という自負の裏返しでもあるようにも感じられます。
重要なポイントは、「集まる生徒の意識の高さ」。やはり、日比谷高校は、勉強に対してモチベーションが高い生徒が集まる印象が強いです。
人数で冷静に考えれば、およそクラスの5人に1人は東大に現役合格しているということは、目指している生徒はそれ以上にいるわけですし、「高校受験で最も偏差値の高い公立高校合格という山を越えました、となると次に目指すのは?」となれば…最難関大学を意識する生徒が多くなるのは必然と言えます。
このように、入学した時点で最難関大学を意識している生徒の母数が圧倒的に多いのが日比谷高校の強み。高校1年生時点から、周囲の勉強への意識が自然と高い環境に身を置けるという点は、日比谷高校の持つ強力なメリットであると言えるでしょう。
帰国生も多いために英語のレベルもかなり高く、少なくとも英語に関してで言えば、中高一貫系の上位進学校以上にハイレベルな環境と言っても差し支えがないでしょう。
NIKKEIリスキリングで現校長がインタビューで話しているように、通塾率も高く、大学受験に対する意識が早い時期から高い生徒が多い印象です。
西高校:京大進学数が関東圏の進学校最多
西高校は、例年、国公立の中で京大への進学が最も多いです(現役13名、既卒生7名)。これは、京大・西高校ともにアメリカンフットボール部が盛んであることや、個性が尊重される風土など共通点が多いことによる伝統的なものでもあります。ちなみに、現役浪人を合わせて京大合格者20人という数字は、関東圏の進学校のなかで最多です。
また、日比谷高校では特に東大志向が強いのに対して、西高校は京大・一橋・旧帝大の中の北海道大と東北大を目指す生徒が多いことが、それぞれ特徴として挙げられます。
入学した時点で、みんなが「自分も頑張れば難関大を目指せる」という思いを胸に切磋琢磨できるムードが強いのが日比谷高校だとすれば、進路に関しても「人それぞれ」を突き詰めていったのが西高校だと言えます。
受験に限らず、「周囲や全体のムードから受ける影響自体がわずらわしく感じてしまう」または「自分のことはあくまで自分次第でありたい」という意識が強い生徒ほど、西高校の校風はマッチします。
ここから、各校の教育への取り組みを具体的に見ながら、それぞれの個性を紐解いていきます。
日比谷高校と西高校の違い③教育方針
日比谷高校:グローバル・リーダーを育成
① 教育の軸は「全科目教養主義」
日比谷高校の軸としてよく語られるのが「全科目教養主義」です。文理問わず、大学受験科目関係なく広く学びを深めるというのがその趣旨です。
都立高校の他の進学指導重点校も同様のスタンスではありますが、毎年、大学受験結果が注目される高校でありながら「我々は受験予備校ではない」というスタンスを明確にしているという点で、この言葉を掲げる意味は他校以上に大きいでしょう。
全科目教養主義がよく表れているのがカリキュラムです。
・1年次の必修科目に「地学基礎」
・2年次の必修科目に「日本史探究」「世界史探究」
まず、1年次の必修科目のなかに「地学基礎」が含まれます。昨今、都立上位校では2年次には文理を分けず、全員が共通の科目を履修するモデルが一般化しています。
その点では、日比谷高校も他の高校も同様ですが、他校の場合「地学基礎」は選択科目として設置し、理系選択者のみが学ぶケースが多いです。(進学指導重点校の中では、他に戸山高校・立川高校が地学1年次必修となっています。)
また、日比谷高校のように、「日本史探究」「世界史探究」が文理問わず2年次の必修科目となっているケースも珍しく、近年のカリキュラム構成の中でも“文理関係なく広く学ばせたい”という意識が強く出ている教育課程だと言えます。
② SSH・GE-NET20の指定校
国の事業であるSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)や、東京都の事業であるGE-NET20の指定校である点も、日比谷高校の特色の中で重要な要素です。
文部科学省が指定する「先進的な科学技術、理科・数学教育を通じて」「将来社会を牽引する科学技術人材を育成するための取組」で、指定校には予算が投入される代わりに、毎年の成果報告が求められます。
日比谷高校の場合は、1年次に必修科目として「理数探究基礎」が設置され、レポート課題などに取り組みます。より高度に学びたい生徒は、2年次以降もSSH関連の科目が選択できるような構成になっています。
「グローバル人材育成に係る取組の充実を図るため、先進的な取組を推進する学校20校」として東京都からの指定を受けている高校を指します。日比谷高校の場合は、将来の進路を見据えた「グローバルリーダーを輩出する」という意識が色濃く出た内容になっています。具体的には、ボストン・ニューヨークへの海外派遣研修、韓国の姉妹校との交流、大学や研究所、大使館、企業と連携した研修や講演会などが挙げられます。
近年、「東大だけでなく海外大学も視野に」という姿勢を見せている日比谷高校ですが、日比谷高校にとって、GE-NET20はその象徴となる取り組みだと言えるでしょう。
③ 第2外国語も履修可能
選択科目になりますが、第二外国語として「ドイツ語」「フランス語」「中国語」「ハングル」を2年次に履修できます。都立高校で第二外国語が選択できる高校は珍しく、そのなかでも選択できる言語の種類が多いのが特徴です。
日比谷高校を語る上でポイントになるのは「全教科教養主義」のカリキュラム。特筆すべきは、必ずしも大学受験で実績を出すこと"だけ"に最適化されたカリキュラムにはなっていないという点です。
大学受験だけに最適化するのであれば、理科4基礎すべてを全員に必修させるよりも、3科目程度にとどめ、早い段階で発展科目まで履修したほうが受験に対するペースとしては有利です。というより、進学校としてはそちらのほうがスタンダードですし、2年次に「日本史探究」「世界史探究」を全員に履修させるのは、特に理系志望者にはオーバーワークにも見えます。実際には「理科基礎」科目の中で、「発展」の内容まで含めながら授業が進行されていることも考えられますが、その場合、文系志望者にとって負荷が大きいとも考えられます。
また、SSHに関しても、「1年次レポートが全員に課される」という点で、他の高校よりも受験以外での学習負荷が高いと言えます。
特に理系科目の方がカリキュラム進度の影響を受けやすい点も踏まえると、中高一貫校系進学校の速習カリキュラムに対して「全科目教養主義」が大学受験においてディスアドバンテージなっている可能性は否定できません。逆をいえば、それでも例年、東大合格者数で全国公立校トップの座を維持しているところに日比谷生の能力の高さが伺えます。
日比谷高校の通塾率の高さは、在校生自身が学校の学習に加える形で自分に必要な教科の進度を補っていると考えることもできるでしょう。
このあたり、東大生を育てるのでなく、「将来のグローバル・リーダーを育てるための全科目教養主義」という日比谷の誇りがうかがえる部分ではありますが、学校から与えられるものをすべて完璧にこなそうとしてしまうと、オーバーワークになりがちな点には注意が必要です。
実際、課題量や予習量も他の進学指導重点校と比較しても多く、日比谷生の多くは高校1年生の間で苦労しながら、徐々に要領よくこなしていく術を身につけていくそうです。
西高校:自己実現のための大学進学
日比谷高校が最難関大学(東大)を目指すムードが強いなかで、西高校において大学受験は「自己実現のため」にあるもので、基本的に進路に関しては「個の自主性」に委ねられている側面が強いです。
① 学習活動の選択肢が豊富
もちろん学習機会が不足しているわけではなく、日比谷高校と同様GE-NET20指定としての活動(ハーバード大学での研修、インドネシア姉妹校交流)があり、理数研究校指定としての取り組み(三宅島での野外実習)など、日比谷高校と比較しても遜色のないほどの幅広い活動に取り組むことができます。
第二外国語では自由選択科目としてドイツ語・フランス語・中国語が履修可能です。
「大学受験に限らず、幅広く学んでもらう」という意味では、西高校も日比谷高校と同様のスタンスだと言えるでしょう。
また、西高校独自の教育活動として、「年間25冊の読書を3年間続ける読書指導」が挙げられます。
ですが、ここに関しては「推奨」とあるだけで、特に具体的な取組みなどがホームページなどからは見えてこないため、実際にどの程度の生徒が年間25冊の読書を達成しているのかは不明です。
② 浪人生が多いのも、もはや伝統
西高校の特徴として、かつては学年の半数近くが浪人する“四年制高校”と言われてきました。もはや浪人生の多さは脈々と受け継がれる伝統の一部と化していましたが、近年だとどうでしょうか。参考までに他の進学重点校とも比較していきましょう。
高校名 | 卒業生のうち進学準備・他の割合 (2022年度) |
---|---|
日比谷高校 | 322名中79名(25%) |
西高校 | 314名中115名(37%) |
国立高校 | 307名中95名(31%) |
戸山高校 | 320名中91名(28%) |
青山高校 | 281名中67名(24%) |
八王子東高校 | 307名中95名(31%) |
立川高校 | 315名中71名(23%) |
参照元:2024年版『高校受験案内』
近年では、さすがの西高校でも現役志向が高まっている様子がうかがえます。それでも、全進学指導重点校のなかではトップの割合を占めているあたりが、己の信念を貫く気風の強い西高生らしさを感じるところです。
③ 大学合格数の数値目標がない
都立高校であれば、どの都立高校のホームページにも「学校経営計画」があり、そこに学校運営上の具体的な目標が記されます。
多くの都立高校で大学受験合格の数値目標が掲げられていますが、西高校の令和7年度の経営計画を見る限り、具体的な大学への合格数の数値目標がありませんでした。
代わりの進路に関する目標としては、「生徒の進路情報・進路指導満足度90%の維持」「自習室利用の維持」「チューター利用の増加」など、なんともふわっとした目標にとどまった記述でした(ちなみ日比谷高校の場合は、難関4国立大学及び国公立医学部医学科の現役合格者115人以上などが令和7年度の目標数値)。
ただ、これも西高校らしく、高校側が掲げる目標に合わせて生徒を縛りたくない、という高校側の進路指導におけるスタンスだとも感じられます。
④「文武二道」の精神
西高校が最もこだわりを見せるのが「文武二道」という言葉です。「文武両道」すなわち文(学問)と武(行事や部活動や課外活動)の「両立」ではなく、両方の道を「究めて」ほしいという願いが込められているらしいです。
文(学問)に関しては、主に高校が提供する「授業で勝負」。武に関しては、生徒たち自身が受け継いできた多種多様な活動や、行事では記念祭・体育祭・年二回のクラスマッチなど盛り上がる場面は多くあるため、そのなかから「自分の個性に合うものを見つけて、極めてほしい」という高校の在り方が集約された言葉だと言えるでしょう。
「どのような個性も受け入れる」―教育方針にも表れたその風土が西高校の最大の魅力であると考えます。
近年の西高校の話題で言えば、令和6年度より、西高校の校長先生が日比谷高校に異動になりました。都立高校において校長先生の権限は比較的強く、「校長が変われば高校が変わる」と言われるほどです。
実際、校長先生が変わって以降、校風が大きく変化した高校もあります。さて、日比谷高校・西高校の両校はどうでしょうか。
結論から言えば、校風として大きな変化が今後起こるとは考えにくく、入学後に思っていた校風と変わってしまうという心配はしなくともよいでしょう。
それぞれの高校が持つ個性は、多くの生徒がこれまで受け継いできた伝統や、高校が持つ役割に裏打ちされたものであり、各ホームページ上の校長先生の文章を見ても、大枠では各校が培っている伝統を受け継ぎ、その上で発展させていくように感じられます。
あえて述べるとすれば、日比谷高校の校長先生へのインタビュー記事や経営計画書を見る限りでは、日比谷高校においてはグローバル事業により力を入れていく方針なのではないかなと推測しています。
現状ではグローバル事業への参加が希望者のみに限定されがちですが、中期的には全生徒に何かしらの形で参加ができるような形に展開を図ることを目標に、海外大へも視野が広がるような方向性を目指していくのではないかなと考えられます。
日比谷高校と西高校の違い④部活動など
日比谷高校:勉強だけじゃない日比谷生の姿
ここまでほとんど、日比谷高校では勉強に関する内容ばかりになってしまいましたが、もちろん、勉強だけでなく、行事にも積極的に取り組んでいます。象徴的な行事が星稜祭で、全クラスが演劇を行います。その他部活動や、有志団体による発表などがあります。
高校受験時に通っていた塾に星稜祭のポスターを届けに来た教え生徒の様子や、星稜祭の準備に励む話を聞く限り、日比谷生も生徒それぞれがしっかりと青春時代を満喫しており、「日比谷に行ったら勉強ばっかりになりそう」という心配はしなくてもいいと思えます。
ただ、日比谷高校の特徴として紹介する内容がどうしても勉強よりになってしまうのは、
・大学受験の合格実績
・生徒の学業に対する意識レベルの高さ
・学習活動のレベルの高さと網羅性
においては、都立上位校のなかでも日比谷高校が群を抜いており、高校生活にそれらを求めているなら、日比谷高校を選ぶのがまず間違いないと言えるからです。
「次世代のリーダーになる、そのための素養を得る機会のうち、高校が与えられるものは全て高品質で提供する」
それが日比谷高校の誇りであり、その教育活動の幅広さは、さながら何でも揃った「幕の内弁当」と形容してもよいでしょう。
ここまでの説明で瞳が輝くなら、きっとあなたは日比谷高校向きです。
目指せる限り目指してください。逆に「違うな…」と感じるなら西高校向きなのかもしれません。
西高校:部活動・サークル活動が豊富
生徒自身が自分の個性を尊重し、生徒自身が欲しいものを見つけるために、自由と余白を与えるスタンスを持つのが西高校です。
校則はほぼなく、生活に関してはほとんどすべてが学生に委ねられます。行事運営に関してもほとんどすべてが学生に委ねられており、先生側は極力干渉をしないスタンスが貫かれています。
最も象徴的なのが「部活動・サークル活動の豊富さ」です。生徒によっては、複数の団体を兼部しながら、様々な生徒と交流ができます。
参考までに「都立合格ドットコム」内の口コミのひとつを紹介します。
“2024年に西高に通っているものです。西高の魅力の一つは公式部活だけで50近く、サークルや非公式団体を含めるといくつあるのか、不明なくらいあるところです。例えば、ディベート部では理論の組み立て方を学べたり、生物部では野外活動でさまざまな場所に足を運び、実際に生き物を観察したり、ベトリナという非公式団体は無駄なことに勤しんだり?しています。また、これらの部活をたくさん兼部して、上記のようなさまざまな経験をできるのも魅力の一つだと思います。私は8部活兼部しています。部活の数と同様、色んな人がいてとても楽しいですよ。”
まさに多様性を絵に描いたような校風だと言えるでしょう。
さらに、新規団体の創設も容易で、仲間さえ見つければ独自にサークルを立ち上げることができます。
居場所がないなら作ればいい。「どんな個性でも居場所がある」というのは、生徒達が作り、受け継いできた団体の豊富さが土壌になっています。
日比谷高校と西高校:どんな生徒が向いている?
これまで紹介した日比谷高校と西高校のそれぞれの強みを表にしてまとめました。
項目 | 日比谷高校 | 西高校 |
---|---|---|
① 校風 | - 「リーダーとしての誇り」を重視 - 国会議事堂そばの旗艦校として公教育の象徴 - SSH・GE-NET20指定で科学・国際リーダー育成 - 全科目教養主義で幅広い探究学習を展開 |
- 「個性尊重」「自主自律」を校訓に掲げる - 制服なし・緩やかな校則で自己表現を尊重 - 生徒制作の300ページ冊子「飛翔」で伝統継承 - 「文武二道」を掲げ、学問と活動双方を究める |
② 大学合格実績 | - 東大合格者数が全国公立トップ5(2025年度) | ・難関国立・旧帝大への進学者多数 ・京大合格者数が関東最多(2025年度) |
③ 教育方針 | - 全科目教養主義 - SSH:理数探究基礎(レポート・研究選択科目) - GE-NET20:海外派遣・国際連携プログラム推進 - 第二外語(独・仏・中・韓)を履修可 |
- 自主性重視の選択学習:GE-NET20・理数研究校の研修(ハーバード・三宅島野外実習) - 「自己実現」を後押し - 「文武二道」を掲げ、学問と課外活動双方を究める |
④ 部活動など | - 象徴的行事「星稜祭」:全クラス演劇を実施 - その他部活動や有志団体による発表あり |
- 公式部活だけで50近く、非公式サークルも多数(口コミ「私は8部活兼部」) - 部活動・サークルの兼部自由 - 行事運営も生徒主体で企画・運営 |
あくまでも私の意見ですが、それぞれの高校に向いている生徒は以下があげられます。
▶ 日比谷高校が向いているタイプ
「仲間と切磋琢磨しながら高い山を目指したい、その環境がほしい」
・とにかく東大など最難関大学を目指し、高い志と覚悟を持って切磋琢磨したい
・周囲のモチベーションが高い環境で、自らの学習意欲をさらに引き上げたい
・公教育の旗艦校で学びの質と幅を求めたい
・探究型学習(SSH・GE-NET20)や全科目教養主義のカリキュラムを通じて、自分の視野を広げたい
・高い学習負荷にも耐えつつ、要領を身につけて成果を出す自律力がある
▶ 西高校が向いているタイプ
「自分だけが持つ個性を大切に磨いていきたい」
・制服や校則に縛られず、自分らしい個性を第一に学校生活を送りたい
・公式の部活だけでなく、多彩なサークルを兼部しながら自由に活動を楽しみたい
・「自己実現」を重視し、受験も自分のペースと志望に合わせて取り組みたい
・多様な進路選択肢の中から、自分に合う目標を自分で設定したい
・学問だけでなく「文武二道」の精神のもと、課外活動も存分に極めたい
日比谷高校と西高校の所在地・生徒数・応募倍率
さいごに、各高校の所在地など基本情報を紹介します。
高校名 | 日比谷高校 | 西高校 |
---|---|---|
所在地 | 東京都千代田区永田町2-16-1 | 東京都杉並区宮前4-21-32 |
最寄り駅(例) | 永田町駅 徒歩8分 赤坂見附駅 徒歩8分 溜池山王・国会議事堂前駅 徒歩7分 |
久我山駅 徒歩10分 荻窪駅からバス→「宮前4丁目」徒歩3分 西荻窪駅からバス→「西高校正門前」下車すぐ |
生徒数(令和6年度時点) | 960名 | 944名 |
推薦選抜応募倍率(2025) | 3.17 | 2.77 |
一般選抜受検倍率(2025) | 1.57 | 1.31 |
参照元:東京都立日比谷高等学校ホームページ/東京都立西高校ホームページ/東京都教育委員会ホームページ
まとめ:志望高校を考えることは自分を考えること
ここまで見てきた通り、最上位校の2校だけをピックアップしても、その個性は対極にあると言えます。
公立高校でありながら、様々な個性が乱立しているのが都立高校の魅力であり、実際に高校見学に足を運び、説明を聞いたり在校生の様子を肌で感じながら、今後の3年間、ひいては自分自身について思いを巡らせ、自分は何に惹かれるのかを考えることが、高校受験における勉強だけではない大切な側面になります。
実際に足を運び、それぞれの校風を肌で感じながら、よりよい高校選びをしていただけたらと思います。
監修者プロフィール

塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。