大学受験|志望校が決まらない高校生。やりたいことが見つからない我が子をどうサポートする?


編集部
塾選ジャーナル編集部

東大卒講師・ドラゴン桜公式noteマガジン編集長
青戸一之先生
うちの子の志望校が決まらない…。子どもの進路選択に独り焦る親が意識すべき3つのポイント
「うちの子、志望校がなかなか決まらない…。このままで大丈夫?」そんな不安を感じている保護者の方は多いのではないでしょうか。大学受験を控えた高校生なら、「どこに進学するか」だけでなく、「そもそも何を学びたいか」「将来どうなりたいか」という問いにも向き合う必要があります。
この記事では、志望校を決める適切なタイミングと、子どもの進路選びをサポートするために親ができること、逆に避けたい接し方について、大学受験指導のプロ・青戸一之先生に話を聞きました。
志望校が決まらない…高校生の進路選び、どうサポートする?
【CASE 019】中学年生・女子
性格:
落ち着いているタイプ。感情をあまり表に出さない。
【今回のお悩み】
ペンネーム:mayuri さん(高校2年生 保護者)
娘の友達はみんな、大学受験に向けた志望先を出している中、志望先がまだ明確に定まらない娘。漠然と大学に行きたいという気持ちだけで、これを学びたいという強い思いがないように感じます。そのためか、勉強のモチベーションが上がらず、最近は成績も下降気味…。「やりたいこと」を見つけるにはどうすればいいのでしょうか?
やりたいことは、「好きなこと×得意なこと」で考えて。将来のイメージには情報収集も大事。
高校生の時点で明確に「やりたいこと」が決まっている子は、ほんの一握り
志望校に合わせた受験対策をするために、志望校決定は早ければ早いほうが望ましいです。なぜなら、目標がはっきり決まることで、「自分がどれくらい勉強しなければいけないか」「どんな勉強をするべきか」が明確になり、モチベーションが格段に変わってくるからです。
ただ、心にとめておいていただきたいのは、高校生の時点で自分が大学で勉強したいことや将来の夢が決まっている子は稀である、ということです。例えば、進学校では「周りが東大を目指しているから自分も…」という子もいますし、志望校を決めていたとしても「何をしたいか」の部分は見えていない子もたくさんいます。
志望校をなかなか決められない大きな要因のひとつに、情報不足が挙げられます。高校生が、世の中の仕組みや大学で学んだことが社会でどう役立つか、具体的なイメージを持つのは簡単なことではありません。
実際、私も社会に出てから、初めて知ったことがたくさんあります。大人になって、知識を得たり経験を積んだりする中で、「学生時代にもっとこういうことを勉強しておけばよかった」と思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
だからこそ、遅くとも高校3年生の1学期には志望校を決めておきたいところですが、それまではじっくり悩んで当たり前。同級生が早々に志望校を決めているからといって焦る必要はありません。まずは、情報を集めて視野を広げましょう。そのうえで、「自分で決めた」という実感を持てることが何より大切です。
志望校を決めるための3ステップ
どうすれば主体的な目的とともに志望校を絞っていけるのでしょうか? ここでは、3つのステップに分けて解説していきます。高校3年生の1学期の時点で志望校が絞れていない場合も、この3つのステップを焦らずに踏んでみてください。
(1)「情報」を集めて視野を広げる
世の中にはどんな仕事があるのか、どんな大学や学部からその仕事にアプローチできるのか。視野を広げるための情報を集めましょう。まず、参考になる書籍を2冊紹介します。
1冊目は、学生向けに世の中にどんな仕事があるのかを網羅的に図鑑としてわかりやすくまとめられている、『おしごと年鑑』(朝日学生新聞社)という書籍です。こちらは、年に1回発行されています。
もう1冊は、私たちがまとめた『東大生が教える 13歳からの学部選び』(星海社新書)です。本書では、中学生・高校生向けに大学でどんな勉強ができるのか、学部ごとの特徴や将来の進路にどのようにつながるかを紹介しています。
こういった本を通して知識を得るのもいいですし、もし相談できる部活の先輩などがいれば「大学でどんなことを勉強していますか?」「どうしてこの学部にしたんですか?」と直接話を聞くのもリアルな声として参考になるでしょう。身近に体験談を聞ける先輩がいない場合は、学校や塾の先生の教え子の体験談を聞くのも方法のひとつです。
(2)「好きなこと×得意なこと」の視点で考える
自分のやりたいことを探すには、「好きなこと」と「得意なこと」の掛け算で考えましょう。得意なことは、これから増やすこともできるので「好きなこと」を主軸に置くと考えやすくなります。
また、得意は努力で伸ばせますし、苦手も勉強で克服できます。興味があることなら、苦手でも無理なく努力を続けやすくなります。文理選択も、成績より「やってみたいこと」から逆算しましょう。そのほうが、自分に合った進路に近づけます。
(3)やりたいことが学べる大学・学部の情報を集め、志望校を絞る
一言で「○○学部」といっても、学ぶカリキュラムや卒業後の進路や選択肢は様々です。大学のカリキュラムや進路実績などの情報を集めてみましょう。その中から、自分のやりたいこと・学びたいことにマッチする学部のある学校に絞り込んでいきます。
オープンキャンパスで、在校生が受験生向けにガイダンスをするところも多いので、実際に受験するか否かは別にして、足を運んでみてもいいでしょう。
親は「応援するスタンス」が吉。指示型ではなく、提案型のコミュニケーションが大切
志望校選びでは、子どものやりたいことを聞いて応援するスタンスが理想的です。「金銭面から私立大学への進学は難しい」というような家庭の事情があれば、その旨をきちんと伝える必要はありますが、まずは本人の希望をベースに考えてあげましょう。
反対に避けるべきことは、「この大学にしなさい」「将来のことを考えて理系にしたほうがいい」といった「指示型」のコミュニケーションです。もし、お子さんが自分でも何がしたいかわからないようであれば、
「昔から動物に関する本を読むのが好きだったよね」
「人と関わる仕事がしたいなら、こういう選択肢もあるんじゃない?」
など、さりげなく気が付かせるような提案をするといいでしょう。提案にとどめること
で、自分の意志で選ぶ余地が生まれます。
どうしても決めきれずに親からのアドバイスで進路を決める場合は、留意が必要です。そのときは丸く収まったように見えても、進学後に思い描いていたイメージと違ったときに「親が決めた進路だからだ」という他責的な後悔につながりかねないからです。そうならないためにも「提案型のコミュニケーション」で、能動的な志望先選びを引き出すアプローチを心がけましょう。
正解はひとつじゃない!子どものペースを信じて見守ってあげましょう。
子どもの性格によっても、「一緒に考えてほしい」という子もいれば、「まずは自分でじっくり考えたい」という子もいます。志望校や進路について会話をするときは、一方的に意見を押しつけるのではなく、お子さんの反応をよく観察しながら、その子に合った接し方を見つけていくことが大切です。
周囲の友達より決断が遅くても、焦る必要はありません。まずは「大丈夫。あなたなら最後はちゃんと決められるよ」と、子どものペースを信じて温かく見守る姿勢が、何よりのサポートになるでしょう。そのうえで、子どもの気持ちに寄り添いながら、必要な情報を丁寧に伝えていくことが支えになります。
成功へ導く賢者からの金言!
進路は、迷って当然のこと。
「自分で決めた」という実感が将来の糧になる!
※塾選調べ:
対象:大学受験をする予定の子どもをもつ保護者50名にアンケートを実施
期間:2025年3月5日~12日実施
執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール

1983年生まれ、鳥取県出身。地元の進学校の高校を卒業後、フリーター生活を経て25歳で塾講師に転身。26歳から塾の教室長としてマネジメント業を行う傍ら、学習指導にも並行して携わる。29歳の時に入塾してきた東大志望の子を不合格にしてしまったことで、自身の学力不足と、大学受験の経験が欠如していることによる影響を痛感し、30歳で東大受験決意。塾講師の仕事をしながら1日3時間の勉強により33歳で合格。在学中も学習指導の仕事に携わり、現在は卒業してキャリア15年目のプロ家庭教師・塾講師を行う傍ら、ドラゴン桜noteマガジンの編集長を務める。 著書に『あなたの人生をダメにする勉強法 「ドラゴン桜」式最強タイパ勉強法で結果が変わる』(日本能率協会マネジメントセンター)、『家庭教師の技術』(星海社)がある。