開成中学校合格。「子どもだけが頑張る受験」をやめて家族で机に向かった日々 親たちの中学受験体験記 Vol.8


編集部
塾選ジャーナル編集部
“子どもだけに頑張らせない。” そんな思いから、親も資格勉強を始め、家族で机に向かう時間を大切にした中学受験。特別に受験志向だったわけではない息子が、塾に通う中で自然と挑戦を決めたのは開成中学校でした。成績は安定していても、どこか受験生らしくない姿に戸惑いも感じながら、家族で共に努力した日々を振り返ります。

【保護者プロフィール】
お名前 | 間宮 麻友(仮名) |
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お住まい | 東京都北区 |
年齢 | 37歳 |
職業 | 会社員 |
性格 | 柔軟な考え方と冷静でブレない判断軸を持つ芯の強さがある。 |
家族構成 | 夫、長男(中学2年生)、長女(中学1年生) |
【中学受験を行った子どものプロフィール】
子どもの名前 | 間宮 優晴(仮名) |
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性別 | 男子 |
現在通っている学校名 | 開成中学校 |
現在の学年 | 中学2年生 |
受験期に通っていた塾 | 早稲田アカデミー |
得意科目 | 算数 |
苦手科目 | 社会・国語 |
性格 | 物静かで集中力が高い。 手先が器用で折り紙が好き。 |
偏差値 | 学習開始時期の偏差値60 受験時期の偏差値65~70 |
受験結果 | 開成中学校 合格 早稲田中学校 合格 本郷中学校 合格 巣鴨中学校 合格 栄東中学校 合格 |
受験専門の塾への入塾をきっかけに自然と決めた中学受験
―最初に、中学受験をすることにしたきっかけを聞かせてください。どのような経緯で中学受験を考え始めたのでしょうか?
うちの子はもともと勉強が嫌いではなかったんです。小学低学年の頃に公文教室や学研教室に行きたいと言われていたのですが、学校の勉強につまずくことがなかったので特に通わせることもなくて。ただ、小学4年生のタイミングで「塾に行こうか」という話になって、たまたま入ったのが中学受験専門の塾だった、というのがきっかけです。
―中学受験を最初から強く意識していたわけではなかったんですね。
はい。受験の可能性もあることは念頭に置いていましたが、「絶対に中学受験をさせるんだ」とまでは思っていなかったです。ただ、もし本人が希望するようであれば、小学5年生や6年生から受験勉強を始めるのでは遅いかなと思って、小学4年生から塾に通わせました。
―受験しようと明確に決めたのは、塾に入ってから息子さんからのご希望でしたか?
塾に入ると周りがみんな受験する子ばかりなので、自然な流れで。息子自身も中学受験をするのが当たり前のこととして、おのずと「自分も受験するんだ」という気持ちになっていきました。本格的に受験を意識し始めたのは小学5年生の中頃からですね。
―ご両親としても、地元の公立中学よりも私立中学のほうが進学先として望ましいというお気持ちはあったのでしょうか?
息子には私立が合いそうかなという印象はありました。というのも、小学校の勉強だけでは物足りなさを感じて少し退屈している様子だったので、知的好奇心を満たすために塾に通わせたという側面もあって。受験校に公立・私立のこだわりはありませんでしたが、地元の公立中学では、小学校と同じように退屈してしまうのではないか? という懸念もありました。
受験校は偏差値をベースに校風との相性を重視。第一志望は開成中学
―受験を見据えてから、志望校はどのように絞り込んでいきましたか?
隔週で塾のテストがあって偏差値が出るので、安全校と呼ばれる偏差値帯とちょっと上の偏差値帯、その両方のバランスを見ながら選定していきました。あとは、自宅からの距離や学校の教育方針・カリキュラムなどを見ながら、子どもと相談しながら…という感じです。文化祭や見学会など、息子が実際に足を運んで学校の様子を見にいける機会は活用しつつ、学校説明会は私だけで参加することが多かったです。
―息子さんからはどのような希望が挙がりましたか?
私服は面倒くさいから制服があったほうがいいとか、部活はたくさんあるほうが楽しそうとか、そういう生活面のことですね。教育方針については特に気にしていなかったみたいです。
―第一志望、第二志望…といった志望校の順番はどのように決めていったのでしょうか?
志望校の順番は偏差値を見ながら狙える範囲内で、学力の高い順で決めていきました。「狙える学校の中で一番上」が第一志望という感じでした。
―進学した開成中学校は男子校ですが、最初ご両親は共学校を勧めていたそうですね。
私も夫も共学出身だったので、男子校・女子校があまりピンと来ていなかったんです。でも検討を進めていく中で、中学生くらいだと男の子よりも女の子のほうが大人びていて強いイメージがあって。うちの子は至ってマイペースで前に出ていくタイプではないので、男子校のほうが合っているかなと感じました。男の子同士のほうが、マイナーな趣味などに共感し合えるんじゃないかなと思ったんです。
塾と家庭の両輪で学力アップ!家ではみんなで頑張る時間を意識
―次に息子さんの受験準備についてお聞きします。塾にはどれくらいのペースで通っていたのですか?
塾に通わせ始めたのは、正確には小学3年生の3月からです。自宅からの距離や進学校の実績などを見て、早稲田アカデミーに決めました。体験授業を受けて本人にも合っていそうだったので。小学4年生は週2回、小学5年生は週3回、小学6年生の9月以降は授業のコマ数を増やし受験対策をしていきました。
―入塾して学力面での伸びは効果として実感できましたか?
入塾当時は60前後だった偏差値が小学4年生の後半以降は65〜70程度を安定してキープできていました。苦手科目だった社会は、妹も交えながら問題の出し合いをして、最終的に得意科目になりました。私も覚えないといけなくて大変でしたが、効果はあったと思います。あとは、塾の指導のおかげで学力は着実についていった印象です。本人も学校の勉強より楽しそうにしていたので、「もっと早く通わせてもよかったかな」と思ったこともありました。
受験対策としては早稲田アカデミー、特に難関校対策がしっかりしていて、9月以降の土日に開講していた学校別の対策授業は合格のポイントになったと思います。5年生のうちから隔週でテストがあったので、受験に対する訓練にもなりました。実際何回かは簡単なイージーミスで点数を大幅に落としたりしたこともあったので、テストでの時間配分を含めて、本番に向けて本人も気をつけるべき点を意識することができたようです。小学6年生の後半にもなると、ほぼ毎日通塾していたので塾の送迎は少し大変でしたが、どの授業も受講してよかったと思っています。
―息子さんは勉強時間が増えることに抵抗はなさそうでしたか?
授業のコマ数が増えること自体には何も言いませんでした。ただ、宿題の量が増える分だけ、家での学習時間も長くなるため時間のやりくりは大変だったと思います。基本的には塾と学校の宿題で手一杯という感じでした。
小学4年生で塾に通い始めた頃は、まだ家での勉強習慣がなかったので、「宿題を一緒にやってみようか」と声をかけて、一緒に問題を解いたりもしましたね。もし小さい頃から本人が望むように公文教室などに通わせていて勉強習慣が身についていたら、もっとスムーズだったかもしれないなと思ったりもしましたね。
―家での勉強を習慣化するためのサポートをしていたんですね。ほかに、家庭での勉強環境を整えるために工夫していたことはありますか?
家での勉強は、いつもダイニングテーブルでやらせるようにしていたんです。息子が勉強しているときはテレビを消して、なるべく静かな環境にするよう心がけていました。本人はテレビを見ながら勉強したいタイプだったんですけど、やっぱりそれだと集中できないので。息子の勉強時間は、年子の娘も一緒に勉強したり、隣で本を読んだりする時間にしていましたね。
―お母様ご自身も、お子さんの勉強時間には読書や資格勉強などをされていたそうですね。
子どもだけに「勉強しなさい」と言って子ども部屋に入れて…というのはかわいそうで。それよりも家族みんなで頑張っているほうが子どもにとっても納得感が持てるのかなと、意図的に私も資格のための勉強を始めました。
―同じ空間で一緒に頑張るという環境づくり、とても素敵ですね。ちょっとわからない問題があったときも、お母様にすぐ聞ける雰囲気でお子さんも心強かったのでは?
中学受験の勉強は難しいので、質問をされたときは一生懸命スマホで調べたりしていました(笑)。
―お話を伺っていると、上手に声かけをしながら一歩一歩着実に受験に向けて歩みを進めていかれた印象です。受験のサポートをする中で、お母様が苦労したのはどんなことがありましたか?
小学6年生の10月頃まで、家では本人のやる気をあまり感じられなかったんです。普通にゲームをしたり、テレビを見たりしてゴロゴロしていて…。私のイメージする受験生とは違ったというか。「小学生だから、こういうものなのかな」とも思いましたけど、長男で初めての受験ということもあり正解がわからずちょっとモヤモヤしたことはありました。幸い成績面が安定していたので、悩みとしては少なかったかもしれないです。
―息子さんのやる気を引き出すために何か工夫されたことはありますか?
学校に「行きたい」と思ってもらうのが重要だと思っていたので、志望校だけでなく、具体的な生活イメージが湧くようにいろんな学校の情報を見せるようにしていました。部活の話や、「入学してからどんなことをしたい?」という話をすると生き生きと目を輝かせて、受験に対して前向きになっていた印象はありましたね。
単語帳に記した「ベストを尽くして」の言葉。結果はすべて合格!
―ここから受験本番について伺っていきます。受験した5校の本命・滑り止めの位置づけを教えてください。
志望校に関しては、私の中で「これでいいのだろうか」「受かると思っていても落ちてしまったらどうしよう」という葛藤はありました。塾の先生のご意見を伺って「この成績なら大丈夫ですよ」と言っていただいたり、夫や自分の両親に話を聞いてもらったりしながら不安を解消していった感じです。
最終的には、本郷、巣鴨、栄東は滑り止め、開成、早稲田を本命として受験する5校を決めました。私は、滑り止め校には受かるだろうと予想していたので、数を減らしてもいいのではないかと考えていたのですが、息子が保守的なタイプで「絶対に受かるところを受けておきたい」というので3校受験することにしたんです。
結果としては5校すべてから合格をいただくことができたのですが、日程の早い栄東は1月に先行して合格をいただいていたので、2月の受験には少し気持ちの余裕を持って臨むことができました。
―本命校・開成中学校の受験当日、お子さんのご様子はいかがでしたか?
普段あまり緊張しないタイプなんですが、あとで聞くと、やっぱり2月受験の初日となる日は緊張したそうです。この日は午前中が開成、午後が巣鴨というW受験の日でした。朝送って行ったときには特に緊張している様子は見られませんでしたが、開成のテストが昼をまたぐので1日が長く、2校受けるのは体力的に大変だったと思います。
2月1日開成と巣鴨を受験した後、2月2日に本郷、2月3日早稲田と3連続で、早稲田の受験が終わるまで開成の結果がわからないので、5校すべてを受け続ける必要があったんです。息子にとってはハードな3日間だっただろうなと。
―受験本番を迎えるにあたって、お母様としてはどのようなお気持ちでしたか?
とにかく寝坊だけはしないようにとは思っていました。多分、子どもより私のほうが緊張していたんじゃないかなと思います。直前の模試では、開成は50%、それ以外は80%判定ということで合格可能性は高く出ていましたが、第一子で初めての受験だったので模試の数字をどの程度信頼していいのか、当日何か起こらないか、やっぱり心配でしたね。安心しきることはできませんでした。
―当日、お子さんにはどのような言葉をかけましたか?
受験直前に暗記物を詰め込んで勉強した時期があって、アナログな方法ですけど単語帳を家族みんなで作ったんですよ。その最後のページに「全力を尽くしてね」というようなメッセージを書いて、「最後に読んでね」と渡しました。それ以外は特に声かけはしていないです。最後は合格するかしないかよりも、「力を出し切ってベストを尽くしてほしい」という思いでした。
―結果として不合格ゼロ、すばらしいですね。
私としては、とにかく無事に終わってホッとしたことを覚えています。
―合格発表が出たとき、お子さんやご家族の反応はいかがでしたか?
2月3日の早稲田受験の日が開成の合格発表の日だったのですが、ちょうど私の母が家に来ていたので、家族みんなでご飯を食べに行ってお祝いして、合格通知をいただきに行きました。息子は普段そんなに感情を表に出さない物静かなタイプですが、本命校に合格したときはキラキラした表情をしていました。そんな息子の姿を見て私もとてもうれしかったです。
―改めて、中学受験を終えてお母様としては「受験してよかった」と感じていますか?
今は、本当によい経験になったと思っています。受験勉強で得た知識が生きていて、日常生活の中でも例えばニュースを理解できるようになるなど、息子の興味関心と勉強がつながっているなと感じることが増えました。また、学校から自主的に勉強することの大切さを説かれていることもあり、今では私が口を出さずとも自分から進んで勉強するようになり、成長を感じる場面が多々あります。
また、開成中学にはちょっと変わった個性的な子がたくさんいて、気が合う友達もできました。何よりも本人が楽しみながら生き生きと中学生活を謳歌している姿を見ると、心から中学受験をしてよかったと思います。
取材後記
初めての中学受験を、今は比較的穏やかに振り返る間宮さん。子どものペースを尊重しながら寄り添う、お母様の柔軟なサポートが印象に残る取材でした。取材の最後に、お子さんが勉強への抵抗が少なかった理由を尋ねると、小さい頃に興味を持って集中し始めたタイミングで、図鑑や本などを惜しみなく与えてきたことが功を奏したのだそう。押しつけるのではなく好奇心が動いた瞬間を見逃さずに応える。それが、学びを自然に好きになる力につながっていくのだと学びました。中学受験は、家庭の中で育まれた“学ぶ土壌”が花開く場でもあるのかもしれません。
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