小山台高校・駒場高校・三田高校を徹底比較|高校受験のプロが本音で解説!【2025年最新】

都立高校の中でも、共通問題を採用する一般選抜で高い偏差値を誇る「小山台高校」「駒場高校」「三田高校」。いずれも都心に近く、通学のしやすさや安定した進学実績から、毎年多くの受験生に人気の高校です。
この3校は、都立共通問題校の中でもトップクラスに位置し、志望校選びの際によく比較されます。
ただし、同じ偏差値帯に見えても、進学実績や校風、教育方針には明確な違いがあります。
たとえば―
「英語力を活かして私立文系を目指したい」
「国公立の理系に進みたい」
「部活と勉強、どちらも本気で取り組みたい」
といった志望動機によっても、子どもにあった高校は異なります。
本記事では、高校受験のプロが、3校の進学傾向や教育の特色、校風の違いをわかりやすく解説。志望校選びに迷っている中学生や保護者の方は、ぜひ参考にしてください

編集部
塾選ジャーナル編集部
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。

監修者
大山雅司
塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。

小山台高校・駒場高校・三田高校の3つの共通点
まずは小山台高校、駒場高校、三田高校の3つの共通点から紹介します。
共通点① 都心からアクセス抜群の立地
三田高校は港区、小山台高校は品川区、駒場高校は目黒区にあり、共に23区内で、都心からアクセスがしやすい地域にあります。
三田高校と小山台高校は旧第1学区に区分され、駒場高校は旧第2学区に区分されます。立地もランク帯も近いことから、志望校選びの際に比較検討がよくされる3校です。
共通点② 一般選抜が共通問題校で偏差値トップランク
一般選抜において共通試験を課す高校であり、問題自体の難易度が独自作成校の高校よりも低いため、志望する中学生が多くなることも特徴。なかでも三田高校、小山台高校、駒場高校の3校は偏差値ランクがトップクラスに位置し、例年、一般入試では高内申、かつ当日筆記試験で高得点の戦いになります。
「共通問題校」と「独自作成校」とは?
都立高校入試では、一部の都立高校
①進学指導重点校(日比谷、西、国立、戸山、青山、八王子東、立川)
②進学重視型単位制(新宿、国分寺、墨田川)
③国際高校※英語のみ
で、一般選抜において英語・数学・国語の3科目が高校独自の問題になります。理科・社会については共通問題校と同様の問題になります。
上記の高校は独自作成校と呼ばれ、その入試問題の難易度の高さから、それ以外の高校とは異なる入試対策が必要になります。
上記以外の高校は、高校のランク帯を問わず共通の問題が課されます。それらの高校は「共通問題校」と呼称されます。
小山台、駒場、三田は「共通問題校の中のトップクラス」であるため、合格のためには当日点で高得点を取る必要があります。
共通点③ 東京都による進学指導指定校
この3校の共通する特徴として、東京都による進学指導における指定を受けている点も挙げられます。
小山台高校、駒場高校:進学指導特別推進校
三田高校:進学指導推進校
例年80名以上の国公立大学現役合格者を出している小山台高校、難関私立大学への合格者が多い三田高校、最難関大学や国公立への合格者を今年大きく伸ばした駒場高校など、進学への取組みも注目される立ち位置にあります。
進学指導(特別)推進校とは?
東京都教育委員会から「進学対策に組織的、計画的に取り組む学校」として、「進学指導重点校」「進学指導特別推進校」「進学指導推進校」が指定されます。
進学指導重点校:日比谷、西、国立、八王子東、戸山、青山、立川
進学指導特別推進校:小山台、駒場、新宿、町田、国分寺、国際、小松川
進学指導推進校:三田、豊多摩、竹早、北園、墨田川、城東、武蔵野北、小金井北、江北、江戸川、日野台、調布北、多摩科学技術、上野、昭和
指定期間は5年であり、その間の進学実績や取組みにより、その後の指定が定められます。
進学指導特別推進校が「進学指導重点校に次ぐ大学合格実績をあげる学校」として、進学指導推進校は「進学指導特別推進校に次ぐ大学合格実績をあげる学校の中から」指定されるため、単純に考えれば、進学実績は
進学指導重点校 > 進学指導特別推進校 > 進学指導推進校
の順であると考えられますが、実際には地域性や、都内全体のバランスも考慮した上で指定されるため、特別推進校の中でも重点校に匹敵する進学実績を出す高校もあれば、推進校のなかで特別推進校に並ぶ進学実績の高校もあります。
大学合格実績は3校とも難関大が現実的に狙える
次に、2025年度の大学合格実績を見ながら3校の傾向を見ていきます。
まず、これら3校に進学しながら、国公立大学や、早慶上理などの最難関私大を目指すことは現実的に可能な目標であると考えて良いでしょう。最新合格実績も見ながら各校の進学の傾向を紹介します。
のべ合格者数(現役2025)
小山台高校 | 駒場高校 | 三田高校 | |
---|---|---|---|
東京一科※1 | 6名 | 7名 | 4名 |
旧帝大※2 | 7名 | 8名 | 1名 |
国公立全体※3 | 82名 | 75名 | 47名 |
早慶上理 | 121名 | 98名 | 119名 |
GMARCH | 312名 | 289名 | 361名 |
※1 東京一科 東大・京大・一橋・東京科学大(旧東工大+旧医科歯科大)の合計
※2 旧帝大 北海道大・東北大・名古屋大・大阪大・九州大の合計
※3 大学校を含む
小山台高校は理系・国公立進学に定評あり
小山台高校において特筆すべきは、東大、京大、一橋、東京科学大(東京工業大と東京医科歯科大が合併)すべてに合格者が出ていることでしょう。国公立大学への進学者数も特別推進校の中で多い高校ですが、近年ではさらに最難関大学に挑戦する生徒が増えている印象が強いです。
また、三田高校と比較して入学時点から理系志望者が集まりやすく、理系進学が強いことも挙げられます。国公立大学進学者が多いことや、東京理科大の現役合格数が41名と他二校と比べて多いこともその裏付けとなります。
駒場高校は2025年に進学実績が飛躍
2025年に大きく進学実績を伸ばしたのが駒場高校でした。東京大学で1名の合格、一橋大学に3名、東京科学大に3名、国公立大学全体で70名、早慶上理が現役98、既卒を合わせると125という数字は大躍進と言えるでしょう。
伝統的にスポーツ校として都立高校のなかで人気は高かったのですが、進学実績の面で伸び悩み、数年前までは倍率も下降傾向にありました。
そこから、前任の小澤校長先生が都立青山高校から着任して以降、「難関大合格」を明確に目標として掲げ「チーム難関」を結成、全体での課題量の調整、進路指導の改善を行うなど、主に教育面での改革を推進していきました。
2025年は、そうした一連の改革の成果が花開いた年であったと見てよいでしょう。
三田高校は英語教育に強く、私立文系志向が高め
3校の中で、国公立大学への進学が少なく、早慶上理への進学が多いのが都立三田高校です。早慶上理現役合格119名という数字は対卒業生数比で特別推進校である小山台、駒場を凌ぎ、重点校に迫る勢いです。
これは英語教育に特に力を入れている教育方針や、その校風に惹かれて入学する生徒が多いことから伝統的に英語が強く、それを武器に私立大学文系学部を目指す生徒が多いことが影響しているでしょう。
ちなみに、都立三田高校は公式ホームページ上に合格実績だけでなく進学実績まで公表しています。
三田高校の進学実績:
国公立:43名/早慶上理:53名/GMARCH:78名
国公立進学者数は他の2校と比較すると少ない点、早慶上理ーGMARCHの進学者のボリュームの大きい点からも、三田高校の私大傾向の高さが伺えます。
3校の中では進学実績が公表されていたのは三田高校のみでしたが、他2校については、「国公立大学進学は三田高校より多く、およそ2倍」「早慶上理に関しては、三田高校が割合が高い」という点を押さえれば、およその進学割合のイメージがしやすいと思います。
校風は3校それぞれの異なる魅力
ここまで大学合格実績を見てきましたが、なんといっても「校風」に3校の趣の違いを見ることができます。それぞれ特徴的な部分を見ていきましょう。
小山台高校はOB・OG含めた強い結束力と母校愛
小山台高校の大きな特徴は、チームとしての結束力の強さと、生徒たちの深い母校愛にあります。
例えば、部活動は「班活(はんかつ)」と呼ばれ、運動会の応援は学校行事の中でも最大の見どころ。体育の授業には「小山台体操」という独自の演目もあり、他校にはない文化が息づいています。
定時制が併設されているため、部活動の時間は限られていますが、そのなかで効率的に練習を重ね、成果を上げている点も特徴です。
※2028年に定時制廃止が決まっていますので、廃止以降は部活動の時間が変更になる可能性があります。
口コミサイト「都立合格ドットコム」では、在校生が自ら「小山台教信者」と名乗る投稿も見られます。それだけ強い愛着と誇りを持って学校生活を送っている証です。
また、在校生から実際に「古き良き昭和を感じさせる校風」という声を聞くこともあります。都立高校のなかでも、ここまで生徒たちが自発的に結束力を語る高校は珍しく、小山台高校の校風の象徴と言えるでしょう。
そして、小山台高校の行事のなかで特に盛り上がりを見せるのが、「運動会」と「合唱コンクール」です。
特に運動会の応援合戦が小山台高校最大の名物。その様子を目にして志望する生徒もいるほどです。運動会の競技練習の時間も長く、当日の学校全体の熱気も非常に高いです。
合唱コンクールでは全クラスが自由曲に加えて校歌を合唱します。ということはつまり、合唱コンクール内では何度も小山台高校の校歌を聴くことになります。そしてコンクールの最後、締めとして全校生徒で再び校歌を大合唱します。
パンフレットの写真では全生徒が肩を組みながら合唱している様子が写されていますが、歌っているのはおそらく校歌でしょう。
母校愛は卒業してからも健在で、同窓会菊桜会(会員は3万人を超す)からの支援が手厚いそうです。
創立100年を記念して制作された動画「小山台style2」も、菊桜会の支援によるもの。ドローン撮影を駆使したオープニング映像の時点で圧巻で、およそ公立高校が作るPRビデオとは思えないほど高いクオリティに仕上がっています。
駒場高校はハイレベルな文武両道
多くの部活動が全国大会出場レベルを目指している高校であり、運動設備が都立随一に豊富。「保健体育科」が設置されているなど、特に運動部での高いレベルの活動を期待して入学する生徒も多くいるのが駒場高校です。
高校自体の校則は、私服通学も可能である点を踏まえると三田高校以上に自由な内容であるものの、運動部によっては部則=部の内部での決まり、が存在するため、ある程度規律と落ち着きのある校風に仕上がっている印象です。
小山台高校のように部活動上の時間制限も少ないため、放課後にはしっかりと部活動に勤しむ生徒が多く、切磋琢磨し合いながら何事にも全力で挑む校風が基盤にあります。行事においても体育祭、水泳大会、球技大会など運動系が多めであることも特徴的です。
また、駒場高校を訪れた人が皆一様に口にするのが、「生徒がしっかりと挨拶をしてくれる」ということ。これは高校側からの指導ではなく、生徒自身による自然な伝統として引き継がれていることも印象的です。
「指導者や社会各方面で活躍し得る資質の向上をはかること」を目的に都立駒場高校に設置されています。9専攻から構成され、入学試験においては推薦、一般選抜両方において実技検査が課されます。
9専攻:陸上競技、体操競技、水泳、サッカー、柔道、剣道、女子バレーボール、男子バスケットボール、女子バスケットボール
保健体育科の生徒は各部活動において中心的な役割になることも多く、保健体育科が募集を行ってる部活動は特に本気度が高い部活動と捉えてよいでしょう。
運動が苦手でも大丈夫?
運動部のイメージが強い駒場高校ですが、実は部活動参加人数を見ると
1位 サッカー部 151名
2位 KMC(軽音学部)117名
3位 駒場フィルハーモニーオーケストラ部 85名
で、音楽系部活動の参加者も多いことがわかります。
文化部の種類も豊富で実績も高く、運動系以外の部活動で活動しながら青春を過ごす生徒も多くいます。必ずしも運動が得意でなくとも、高校生活を満喫することができるでしょう。
三田高校は自由で穏やかな校風
三田高校の特徴として、他2校と比較して女子の占める割合が高いことがあげられます。2024年時点では男子4:女子6の割合でした。また、学年別で見ると、若い年次のほうが女子比率が高くなります。これは男女合同定員化の影響といえるでしょう。
校風は、生徒の自主性を重んじる方針で、比較的自由。校則としては制服着用が義務であることと、髪染めがNGな程度で、自由な雰囲気が確保されています。
他2校が主に部活動(特に運動部)に対する熱量が高いのに対し、三田高校では多くの部活動が程よい熱量を持って取り組んでいる印象です。
行事数も多く、どれも生徒主体で運営が行われるため、「部活に行事に勉強に、メリハリをつけながらバランスよく青春を謳歌したい」という生徒に向いている校風と言えるでしょう。
比較対象となる小山台高校、駒場高校において最も盛り上がりを見せる行事が運動会であることや、運動部的な活発さを求める生徒の多くが小山台、駒場を多く志願する分、三田高校には体育会系的な雰囲気よりも「自由さ」や「穏やかさ」を求めて入学する生徒が多い印象です。
敷地内にある山が「おセンチ山」と呼ばれ、生徒に愛されるパワースポットとして紹介されているあたりは何とも、のどやかな印象があります。
生徒自身に聞いても「生徒同士の仲が良い」という声が多いですが、その仲の良さは、小山台高校でいう「一致団結」の気質とも、駒場高校でいう「切磋琢磨」ともまた異なり、「和気藹々」とした雰囲気と表現するのが最も近いでしょう。その雰囲気のなかで行事ごとにまとまりながら自主的に運営していく青春感が三田高校の魅力です。
盛んな部活動を比較
部活動を目的に高校選びをしたいという方も多くいると思います。ここで、公式ホームページやパンフレット上で掲載されている実績や、ネット上で見られる評判などを総合して、各校特に有名な部活動を一部まとめていきます。
三田高校 | 小山台高校 | 駒場高校 | |
---|---|---|---|
有名な部活動 (実績があることや、「盛んである」と評判のある部活動の一例) |
・ダンス部 ・弓道部 ・卓球部 ・アメフト部 など |
・野球班 ・ブラスバンド班 ・ダンス班 ・ラグビー班 など |
・サッカー部 ・陸上競技部 ・バスケットボール部(男女) ・水泳部 ・剣道部 ・柔道部 ・硬式テニス部 ・KMC(軽音学部) ・駒場フィルハーモニーオーケストラ部 ・百人一首部 など |
小山台高校は班活動が盛んで活発
小山台高校は班活動が盛んで、活発に行われている印象です。小山台高校の令和8年度入学者用学校案内によると、運動班は野球班など16班、文化班はブラスバンド班など13班が活動。加入率は延べ100%を超えるなど、活発さが見て取れます。
野球班は21世紀枠で甲子園出場の年があり、最近では文化班でも都の最優秀賞などの受賞者がいるようです。
駒場高校は多岐にわたる部活動に実績
駒場高校は実績を残している部活動が多岐にわたり、それぞれが高いレベルでの活動を行っていることが伺えます。特に部員数的に大所帯なのが、サッカー部、陸上競技部、水泳部、KMC、駒場フィルハーモニーオーケストラ部などで、文化部においても全国大会出場などの実績を持つ部活動が多くあります。
三田高校はダンス部と弓道部が有名
三田高校は特にダンス部と弓道部が強豪校として有名。珍しい部活動としてワンダーフォーゲル部(登山部)が挙げられます。
部活動のなかで最も盛んなのがダンス部で、2023年日本高校ダンス部選手権で準優勝という快挙を成し遂げました。2024年はHIGH SCHOOL DANCE COMPETITIONの全国決勝大会に出場するなど、毎年全国レベルでの活躍をしているダンス強豪校として有名です。
学習内容や立地・設備を比較
ここまで校風面での3校の特徴を述べていきました。校風以外にも3校それぞれ異なる強みを持っています。主に学習内容や立地・設備の面で、生徒から選ばれるポイントを見ていきましょう。
小山台高校は国公立・理系大学への進学
小山台高校も伝統的に国公立、理系進学に強いことや駅から近いアクセスの良さが特徴として挙げられます。
国公立・理系大学への進学者が多い
東京科学大(旧東工大)のキャンパスが近く、かつては東工大合格者数が多かったことから、伝統的に国公立、理系に強いイメージがあります。
直近のパンフレットや広報では理系色は抑え気味で、むしろ国際教育の推進に力を入れている印象がありますが、年に数回実施の「理科講義実験」など、SSH指定や東京都の指定ではなく学校独自に理系教育に力を注いできた名残が垣間見られます。
三田高校が私大文系進学者が多いイメージが強い分、小山台高校に理系志望者が多く集まること、また2年次まで教科選択なしで統一の科目を学ぶカリキュラムが影響して、学年のなかでの国公立志望者の割合も自然と高まります。
大学入学共通テスト5(6)教科7科目受験者は学年で200名にのぼり、進学指導重点校の選定基準が「5教科7科目で受験する者の在籍者に占める割合が、おおむね6割以上」となっていることからも、進学指導重点校クラスに国公立志向が高いことが伺えます。(小山台高校の生徒数は320名程度であり、60%を超えている)
いまだに特に理系の国公立志望者にとっては志を同じくする仲間が見つけやすい環境であるとはいえるでしょう。
小山台教育財団
また、前述した菊桜会とは別に、公益財団法人小山台教育財団からの助成も受けています。財団のサポートによって、現在小山台高校で行われる主な国際交流活動(英国への海外体験派遣やドイツとの交換交流派遣など)が展開されています。
圧倒的な駅近
武蔵小山駅、徒歩0分という驚異的な立地。エスカレーターを上がって地上に出ると、右手にすぐ校庭が見えます。おそらく全国でも駅からの距離が最も近い高校として挙げられるでしょう。この距離であれば雨の日に傘を忘れてもどうにかなるはず。
駒場高校は圧倒的な設備の充実度と進学指導改革
駒場高校の強みとして、圧倒的な設備の充実度が第一に挙げられています。そして数年前から進学指導の改革を進め、その成果が見え始めているという今後の期待感も近年の倍率上昇の要因となっていると考えられます。
都立随一の設備
まず、校舎の敷地面積がものすごく広いことが特徴です。敷地面積41,610㎡。都心にある高校とは思えないほどの広さで、さらに保健体育科が設置されていることから、人工芝のグラウンド、専用陸上競技場、テニスコート4面、トレーニングルーム、開閉式ドームを備えた温水プールまで、運動設備で言えば都立の中でも随一の充実度を誇ります。
さらに、かつて芸術科が併置されていたことから、旧芸術高校の一部施設として音楽専用ホールが利用されています。
難関大学への門を開く
伝統的にスポーツ校としてのイメージが強く出ていた駒場高校ですが、その反面、進学実績では伸び悩みを見せ、同じ進学指導特別推進校の新宿、小山台、国分寺に進学実績の伸びでは後れをとっていた印象でした。
しかし、前任の校長先生が着任後、「駒場高校は、あくまで“進学指導”特別推進校である」という認識に立ち返り進学指導面での改革を進めました。(着任後に校長先生と対談をさせて頂きました動画もご覧ください)。
ただ、改革初年度(令和5年)の経営報告では必ずしも順風満帆ではなかった現状もうかがい知ることができます。以下は公式ホームページに掲載されている経営報告の文言の一部です。
「進路指導の駒場スタンダードの策定も予定していた令和5年末までには完遂できず、年度末までかかってしまうなど、改革のスピード感が重要であることを教職員に浸透させることが十分できなかった。
上位層を育てることで学校全体の進学に向けた機運を醸成する取組として「チーム難関」を6回開催したが、3年生の参加はゼロ、1、2年生も10名から20名の参加にとどまった。協力者は増えており、次年度は一層力を入れて取り組む必要がある。」
苦渋がにじみ出ているこれらの記述は、組織としての学校改革の困難さを改めて感じさせます。
その中でも、改革への期待感から一般受検倍率は
(R4)1.70
(R5)1.76
と上昇を見せ、今年度の進学実績においては前述の通り国公立大学進学において躍進を見せました。
小澤校長先生が掲げ続けた改革の機運と、駒場生が本来持つポテンシャルの高さが結びついた成果だと見ることができるでしょう。今年度から新たな校長先生(元小山台高校校長)へとバトンが引き継がれましたが、現在でも教育面をリードする主幹教諭は6名全員が改革期を担った若手中堅であり、今後の発展にも注目が集まります。
三田高校は 英語教育・国際理解教育が充実
三田高校は立地面での優秀さが際立っている点と、3校のなかで特に英語教育、国際理解教育を充実させている点が特徴的です。
英語・国際理解教育が強い
三田高校は3校の中でも英語教育・国際理解教育に重きを置いています。これはユネスコスクールとして指定されて以降の長く続く伝統で、学習活動の中にも多くこのスタンスが見受けられます。
東京都の指定の中でもGENET-20、東京都国際交流リーディング校、海外学校間交流推進校、と国際理解教育関連の指定を多く受けており、国際教育について牽引する立ち位置にいることが伺えます。
具体的な活動内容として、「三田ESSPA」と呼称される長期休業中の語学研修(希望者対象)があり、福島県のブリティッシュ・ヒルズにおける2泊3日の語学研修や、春休みの7泊8日のボストン研修などが実施されています。
留学生の受け入れや海外学校との交流も盛んに行われ、また帰国生の受入れも積極的に行っている都立高校のひとつであり、学年全体で60名ほどの海外帰国生が在籍しているそうです。
通常授業においても英語の時間数が一年次6単位、二年次7単位と他の高校より多く、(他校を見ると二年次までで11単位のケースが多い)英語への力の入れ具合が分かります。
このような方針から入学前から英語が得意で、その力を活かしたいと考えて志望する生徒が多くなり、最終的な結果として難関私立大学への合格に結びついていると考えてよいでしょう。
第二外国語が履修可能
語学系に力を入れている高校らしく、1年次に選択科目で第二外国語が履修可能です。選択可能な言語はドイツ語、フランス語、中国語です。
都心ながら落ち着いた学習環境
三田高校は港区に所在し、都心にありながら落ち着いた学習環境です。
アクセスについても、
・JR山手線 京浜東北線「田町」駅下車徒歩13分
・都営大江戸線 「赤羽橋」駅下車徒歩5分
・都営三田線「芝公園」駅下車徒歩7分
・都営浅草線「三田」駅下車徒歩12分
・東京メトロ南北線「麻布十番」駅下車徒歩10分
と複数の路線で駅から近く、多方面からアクセス可能です。
合格するために必要な学力
ここまで、3校の校風や特徴などを見ていきました。では、今回取り上げている3校に合格するためには、どの程度の学力が必要でしょうか。
内申点オール4+αが目安
私は、この3校を目指す生徒には「目指すうえでは最低でもオール4、その上で5がいくつかある状態が望ましい」と伝えています。
前述する通り、これら3校は共通問題校の中の偏差値トップクラスであり、オール5に近い生徒が目指すことも珍しくありません。
オール5付近の生徒になると当日点も高いケースが多く、その中で合格を勝ち取るにはオール4は最低でも必要な内申点ラインだと考えて良いと思います。
当日テストでハイスコア
逆に内申点がいくら高くても、当日点が低い場合は不合格になってしまうのもこの3校です。共通試験であるため、独自作成校と比較して問題の難易度が低く、5教科平均で90点台をたたき出す受検生も少なくありません。
そのなかの戦いでは一つの教科が大きく失敗すると、途端に合格が難しくなるため、試験直前期では「5教科満遍なく得点が取れる」「苦手教科がない」状態が必要になります。
男女合同定員の影響が強く出る
都立高校入試では令和6年度以降、男女別の定員が完全に撤廃され、すべての都立高校が男女合同定員になりました。
その影響を特に強く受けていると考えられるのが、三田高校・駒場高校です。2校とも、かつて東京府立時代に女学校であったことから伝統的に女子の人気が高くなりやすく、またこれらのランク帯を志望する生徒に女子が多いことから、男女別定員の時点では、男子に対して女子の倍率が高くなりがちでした。
具体的な数値は明らかにはなっていませんが、男女合同定員化以降、女子の合格者が増加し、男子の合格者が減少しているのではと考えられます。
男女合同定員化とは?
都立高校では長年、普通科において公立中に通う男女の生徒数に応じて、高校ごと男女別の定員を設け選抜を行っていましたが、2021年に別定員の影響で男女間に合格点の開きがあることが報じられました。
そのことをうけて2022年以降、男女別定員を段階的に廃止していくことが決定され、2024年の入試から完全合同定員となりました。
推薦における内申比率
三田高校と駒場高校に関しては、男女合同定員化以降、推薦入試の内申点の比率を下げているという点も要注意です。
駒場高校:調査書360/個人面接180/小論文360
(R7年度入試時点)今後変更の可能性はあります。
通常は調査書:個人面接(集団討論)+小論文が1:1の得点比率になる高校が多いなか、この2校は調査書(=内申点)の割合を下げています。
おそらく男女合同定員化の影響で推薦合格者が高内申者に限定されてしまうことを避けるための措置であろうと考えられます。裏を返せば推薦において、受検者の多くが高内申点帯であるということが読み取れます。
どんな生徒が向いている?
ここまで3校を様々な角度から紹介してきました。各校、特徴を整理した上で、どのような生徒が向いているのかをまとめました。
高校名 | 小山台高校 | 駒場高校 | 三田高校 |
---|---|---|---|
校風 | ・チーム感が強く一致団結の気風。 ・独特な文化が多い。 |
・高い文武両道を実現するために切磋琢磨。 ・保体科がある。 |
・自由で穏やか、和気藹々とした雰囲気。 |
進学 | ・国公立、理系進学が強い。 | ・難関大合格を目指す取組み。 | ・私大上位(早慶上理、GMARCH)が多い。 |
教育方針 | ・全科目満遍なく履修。 ・伝統的に理科実験講義を行っている。 |
・全科目満遍なく履修。 | ・英語・国際理解教育が強い。 ・第二外国語履修可能(ドイツ語、フランス語、中国語) |
行事 | ・運動会/合唱コンクールが特に盛り上がる。 | ・運動会/球技大会など運動系の行事が多め。 | ・白珠祭(文化祭)が盛り上がる。 ・行事は生徒が自主的に運営 |
その他 | ・駅から徒歩0分。 | ・設備が充実している。 | ・アクセス、立地の良さ。 |
小山台高校に向いている生徒
「一致団結の気風に入りたい」
「満遍なく学んで国公立大学に進学したい」
駒場高校に向いている生徒
「充実した設備で思う存分、部活動がしたい」
「高いレベルで文武両道をする青春に憧れる」
三田高校に向いている生徒
「英語が得意で高校生活で活かしたい」
「自由で和気藹々としたムードの中で生活したい」
このように同ランク帯の3校であっても、それぞれの文化・特徴が異なります。高校のパンフレットを見るだけではなく、実際に高校見学などに足を運ぶことで、自分に合うか合わないかを肌で感じ取るのがおすすめです。
所在地・生徒数・応募倍率
最後に、各高校の所在地など基本情報を紹介します。
高校名 | 小山台高校 | 駒場高校 | 三田高校 |
---|---|---|---|
所在地 | 東京都品川区小山3-3-32 | 東京都目黒区大橋 2-18-1 | 東京都港区三田1丁目4番46号 |
最寄り駅(例) | 東急目黒線「武蔵小山」駅から徒歩0分 | 京王井の頭線「駒場東大前」から徒歩7分 東急田園都市線「池尻大橋」から徒歩7分 渋谷から東急バス51「松見坂上」徒歩0分 |
JR山手線 京浜東北線「田町」駅から徒歩13分 都営大江戸線 「赤羽橋」駅から徒歩5分 都営三田線「芝公園」駅から徒歩7分 都営浅草線「三田」駅から徒歩12分 東京メトロ南北線「麻布十番」駅から徒歩10分 都営バス「赤羽橋」から徒歩5分 |
生徒数(令和6年度時点) | 956名 | 普通科:908名 保体科:124名 |
856名 |
推薦選抜応募倍率 (2025) |
2.67 | 普通科:4.07 保体科:5.00 |
4.08 |
一般選抜受検倍率 (2025) |
1.36 | 普通科:1.79 保体科:2.21 |
1.60 |
まとめ:3校それぞれの魅力を見極めて、自分に合った高校選びを
本記事では、都心でアクセス良好・共通問題校・偏差値トップクラスという共通点を持つ小山台高校・駒場高校・三田高校について、進学実績や校風、学びの特色を比較してきました。
いずれも都立高校のなかで高い人気と実力を誇る名門校ですが、それぞれに異なる強みがあります。
受検校を選ぶ際は、単に偏差値だけで判断せず、自分の性格や将来の目標、学びたい内容と照らし合わせることが大切です。この記事が、志望校選びの一助となれば幸いです。
※参考動画:
駒場高校の校長先生と大山先生の対談
ぴったりの塾が見つかる 学習塾検索サイト『塾選』
全国の高校情報受検と学校情報
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監修者プロフィール

塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。