法学部では何を学ぶ?就職事情や向いてる人も徹底解説

「法学部って、弁護士になる人だけが行く学部じゃないの?」
そう思っている方は多いかもしれません。しかし、法学部では、法律の知識だけでなく、物事を論理的に考える力や、人と対話しながら問題を解決する思考力・判断力を身につけることができます。
進路も法律の専門家だけでなく、公務員や企業の企画・営業職など、幅広い選択肢があるのが特徴です。
この記事では、法学部で学ぶ内容、卒業後にどんな仕事に就けるのか、そしてどんな人に向いているのかを、わかりやすく解説していきます。

編集部
塾選ジャーナル編集部
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法学部とは?何を学ぶ?
法学部は、社会のルールである「法律」について幅広く学ぶ学部です。社会生活を送る上で必要不可欠な法律の知識を身につけるとともに、論理的思考力や問題解決能力を養います。
法学部で学ぶ内容
法学部で学ぶ内容は、大きく分けて基本六法と基礎法学に分類されます。
基本六法
憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の6つの法律のことを指し、様々な法律の基礎となります。この基礎を身につけたうえで、その他の幅広い法律を学びます。
憲法: 国の最高法規として国家権力を制限し、国民の基本的人権を保障します。三権分立、国民主権、法の支配などの基本原理と、表現の自由、選挙権、人身の自由などの人権について学びます。
民法: 個人間の権利や義務に関する基本的なルールをまとめた法律です。契約、不動産の売買、損害賠償、相続、離婚など普段の生活に関わる幅広い分野を扱っています。
刑法: 何が犯罪で、どのような刑罰が科されるかを定めた法律です。殺人、窃盗、詐欺などの個別犯罪の成立要件と、懲役、罰金などの刑罰について学びます。
商法: 企業活動や商取引に関する法律で、民法の特別法にあたります。会社の設立・運営、株式制度、手形・小切手、商業登記など、ビジネスの基本的なルールを学びます。
民事訴訟法: 民事紛争を裁判所で解決するための手続きを定めた法律です。裁判の申し立てから判決が出るまでの流れ、証拠の使い方、判決の効果などについて学びます。
刑事訴訟法: 犯罪事件を処理するための手続きを決めた法律です。警察の捜査、検察の起訴、裁判、刑の執行という流れと、容疑者・被告人の権利について学びます。
基礎法学分野
法哲学: 「正義とは何か」「なぜ法律に従うべきなのか」といった、法律の根本的な意味や背景を考える分野です。
たとえば、法律とは人が作るルールなのか、それとも自然にあるべき“正しさ”に従うものなのか──といった問いを通じて、「法とは何か」という本質に迫ります。
法社会学: 法律と社会の関わりを、実際の社会の動きを通して研究する分野です。法律が社会にどんな影響を与えるのか、また社会の変化が法律にどう関わるのかを分析します。
法制史: 法律の成り立ちや変遷を、歴史の流れに沿って学ぶ分野です。日本の法律が誕生した背景や、外国の法律を取り入れてきた経緯などを学び、法律がどう発展してきたかを理解します。
比較法: 世界のさまざまな法制度を比べて学ぶ分野です。英米法と大陸法の違い、アジアの法律制度などを通じて、国ごとの法制度の違いや共通点を学び、国際的な視野を広げます。
これらの学びを通じて、物事を筋道立てて考える論理的思考力、大量の法律文書を読み解く読解力、自分の考えを論理的に表現する文章表現力、討論やディベートを通じた説得力を身につけます。
法学部を構成する学科の種類
法学部には、大学によって複数の学科が設けられている場合があり、代表的なものとして「法律学科」「政治学科」「法政策学科」などがあります。
さらに、こうしたスタンダードな学科に加えて、専門性の高いユニークな学科を展開している大学もあります。たとえば日本大学法学部では、「法律学科」のほかに「政治経済学科」「新聞学科」「経営法学科」「公共政策学科」が設置されており、法律を軸に、政治・経済・メディア・経営といった分野を横断的に学べる環境が整っています。
また、立教大学の「国際ビジネス法学科」では、多くの授業が英語で行われており、グローバルなビジネス法務に特化した実践的な学びが可能です。
そのほかにも、神奈川大学の「自治行政学科」では、法律と地域社会との関わりに重点を置き、環境問題や地域福祉、まちづくりといった実践的なテーマを通じて、地方行政に貢献する力を育てるカリキュラムが整備されています。
このように、法学部といっても学科ごとに学べる内容や将来の進路は大きく異なり、自分の関心や目標に合わせて多様な選択ができるのが大きな魅力です。
法学部での勉強のおもしろさは?
法学部の学びには、他の学部にはない独特の魅力があります。
社会問題を論理的に読み解くおもしろさ
法学部では、実際に起こった事件や社会問題を題材に、法律の視点から「どうすれば解決できるか」を考えていきます。たとえば、契約トラブルが起きたとき、当事者それぞれの立場に立って、どんな法律が根拠になるかを検討し、公平で納得できる解決策を導き出します。
このような学びは、単なる暗記ではなく、論理的に考えながら、社会にとって何が正しいかを探る知的なパズルのようなおもしろさがあります。
複雑な問題に対して、自分の考えで「答え」を導く経験は、学問としてのやりがいにもつながります。
身近な出来事が“法律の目”で見えてくるおもしろさ
法律は、私たちの日常生活と深く関わっています。
たとえば、コンビニで物を買うのは「売買契約」、アパートを借りるのは「賃貸借契約」、アルバイトをするのは「雇用契約」にあたります。こうした身近な行動にも、実はさまざまな法律が関係しています。
学んだ法律知識を自分の生活に活かすことができるのも、法学部ならではの魅力です。
正解のない問題に挑む楽しさ
法学では、常にひとつの正解があるわけではありません。同じ出来事でも、どの法律をどう解釈するか、どの価値を重視するかによって、結論が変わることがあります。
たとえば、SNSで誰かの顔写真や実名をさらして批判する投稿や、ニュースで容疑者の顔が報道されるケースでは、「表現の自由」と「プライバシーの権利」がぶつかることがあります。
どちらを優先すべきかは、絶対的な正解があるわけではなく、時代や社会の価値観によっても変わります。
法学部では、こうした正解のない問題に向き合うことで、多角的に物事を考える力が身につきます。
裁判のロジックを読み解く“推理”のおもしろさ
過去の裁判例を読みながら、裁判官がどんな事実に注目し、どのような理由で結論を出したかを考える「判例研究」には、まるで推理小説のようなおもしろさがあります。
事件の背景には複雑な人間関係や社会問題が絡んでいることも多く、法律の勉強が単なる条文の暗記ではなく、現実に根ざした“生きた学問”であることを実感できます。
リアルな法の現場に触れる楽しさ
多くの法学部では、弁護士や裁判官による特別講義、法廷の傍聴、法律事務所でのインターンシップなど、実際の法律の現場とふれあう機会が豊富に用意されています。
リアルな法務の現場を体験することで、教科書だけでは得られない気づきや学びが得られ、法律の世界への理解が一層深まります。
法学部で学ぶメリットや役に立つ場面
法学部と聞くと、弁護士や裁判官など法律の専門職を目指す人のための学部というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし実際には、一般企業や官公庁、国際機関など、幅広い進路に活かせる“実践的な学び”が詰まった学部です。
法律の知識は、仕事にも日常生活にも“武器”になる
法学部で身につける法律の知識は、弁護士などの専門職だけでなく、あらゆる仕事や日常生活で役立ちます。
たとえば、社会に出ると誰もが契約書にサインする機会があります。取引先との契約、保険の加入、不動産の賃貸契約など、その内容を正しく読み解き、リスクを見極めることは自分を守るうえでとても大切です。契約書の仕組みを理解していれば、有利な条件で交渉できる場面も増えるでしょう。
また、コンプライアンス(法令遵守)が重視される現代においては、法律の視点を持って行動できること自体が信頼につながります。労働時間の管理、個人情報の扱いなど、小さな判断ミスが企業全体のリスクになることもあります。
そうした法的リスクに早く気づき、トラブルを防ぐ視点を持つことは大きな強みになります。
論理的思考力が身につく
法学部では、「なぜそう考えるのか」を筋道立てて説明する練習を繰り返します。感情に流されず、根拠をもって冷静に話す力は、資料作成、プレゼンなど、社会に出てからのあらゆる場面で役立ちます。
「論理的に話す力」は特別な場面だけでなく、たとえば会議で自分の意見を通したいときや、誤解を避けて人に説明するときなど、日常的にも求められる力です。
法学部での学びを通して、そうした実践的な“考える力”が自然と身につきます。
複雑な問題に向き合う力が鍛えられる
法律には、「どちらが正しい」とは一概に言えない、判断の難しい問題が多くあります。
これは、日常生活でも同じです。たとえば、職場でのトラブルや家庭での話し合いでも、どちらか一方が完全に正しいとは言い切れないことが多いのではないでしょうか。
法学部では、こうした複雑な問題を整理し、どうすればより良い解決につながるかを考える訓練を重ねます。問題の本質を見極め、優先順位をつけて冷静に判断する力は、どんな職種や立場でも必要とされる力です。
伝わる文章を書く力、読み解く力が磨かれる
法学部で鍛えられる精密な文書作成能力と高い読解力は、報告書の作成、契約書のチェック、法的文書の理解など、様々な場面で活かすことができます。
特に、あいまいな表現を避けて相手に誤解を与えない文章を書く力や、複雑な文書の要点を正確に読み取る力は、社会に出てからも非常に役立つスキルです。
世界のルールを理解し、国際感覚が育つ
法学部では、国際法や外国の法律を学ぶことで、国や地域ごとのルールの違いを理解する力が身につきます。たとえば、海外にビジネス展開をする企業や国際的な取引の現場では、各国の法制度の違いを正しく把握し、対応できることが大きな強みになります。
将来、グローバルに活躍したい方にとっては、国際的な視野を広げられる貴重な学びです。
法学部で学んだことが実際に役に立った場面の体験談
法学部出身者の皆さんにご協力いただいたアンケート調査の結果をもとに、「法学部で学んだ知識やスキルが実際に役立った場面」についてご紹介します。
契約・取引の場面で法律の知識が役に立った
「クライアントとの契約書を確認するときに、民法や商法の基本を理解しているおかげで、安心して内容をチェックし、交渉に臨めます。また、Webアプリの開発時には、個人情報保護法の知識がプライバシーポリシーの提案にとても役立っています。」(早稲田大学法学部出身・IT企業勤務)
労務の仕事で法律の知識が役に立った
「総務の仕事に携わるようになってから、労務関係で法律の基礎知識が求められる場面が多くありました。そのたびに、法学部で学んだ知識がとても役に立っていると実感しています。」(北海道大学法学部出身・小売・流通企業勤務)
日常生活のトラブル対応で法律の知識が役立った
「家族が、わかりにくい広告や誘導により意図せず商品を購入してしまうトラブルに巻き込まれました。そのとき、民法や消費者法の知識があったおかげで、すぐにカード会社へ連絡するようアドバイスでき、無事に契約を取り消すことができました。」(慶應義塾大学法学部出身・専業主婦)
法学部の卒業生の就職事情!何になれる?
法学部を卒業した人の進路は、弁護士や裁判官などの法曹界はもちろんのこと、企業の法務部門や公務員、民間企業の一般職、さらには国際機関やNPOなど、多彩な分野で活躍しています。
ここでは、実際のアンケートデータをもとに、法学部卒業生がどのような職業に就いているのか、法学部の経験がどのように活かされているのかを詳しく見ていきましょう。
法学部の人気就職先ランキング!
法学部出身者のリアルな進路を、アンケート結果をもとにランキングでご紹介します。
1位:金融業界
法学部で人気の就職先第1位は、「金融業界」です。
銀行や証券、保険などを扱う金融の仕事では、金融商品取引法や銀行法、保険法など、多くの法律が関わってきます。たとえば、新しい金融商品を販売する際の説明内容や、顧客の資産をどう扱うかなど、法律に基づいた適切な対応が求められる場面が多くあります。
法学部で学ぶ契約やリスク管理の知識は、顧客との信頼関係を築くための武器となり、コンプライアンス(法令遵守)を徹底する企業でも評価されやすいポイントです。
特に最近では、詐欺防止やマネーロンダリング対策などへの対応が求められており、法律の基礎があることで、責任ある仕事を任されやすくなります。
2位:小売・流通業界
法学部で人気の就職先第2位は、「小売・流通業界」です。
店舗やECサイトなどを通じて消費者と直接関わるこの業界では、商品の表示方法、返品対応、契約条件など、法律に関わる場面が数多くあります。特に「消費者保護法」や「商法」の知識は、トラブルを未然に防ぎ、安心して買い物してもらうための重要な土台となります。
消費者目線と法律の両方を理解している人材は、販売・企画・管理部門など幅広い場面で活躍しています。
3位:専門士業系(※弁護士・司法書士)
法学部で人気の就職先第3位は、「専門士業系」です。
弁護士や司法書士といった士業は、法学部で学んだことが最も直接的に活かせる専門職のひとつです。六法全書や判例を読み解く力は、実務でも欠かせないスキルであり、法学部での学びがそのまま職業に結びつくのが大きな魅力です。「法律を専門にする仕事に就きたい」と考えている人には特におすすめの進路です。
※弁護士を目指す場合、大学を卒業したあとに「法科大学院(ロースクール)」に進むのが一般的なルートです。これは、裁判官や弁護士といった“法律のプロ”を育てる専門的な大学院で、2004年に新しくできた制度です。
法律の勉強が初めての人(未修者)は3年間、大学の法学部などで学んだ人(既修者)は2年間通うのが基本です。授業では、理論と実務の両方をバランスよく学び、模擬裁判やディスカッションなど実践的な内容も充実しています。
また、法科大学院に通わずに「予備試験」という難関試験に合格することで、司法試験を受ける道もあります。司法試験に合格したあとは、約1年間の「司法修習」を経て、弁護士の資格を得ます。
4位:ソフトウェア・通信(IT業界)
法学部で人気の就職先第4位は、「ソフトウェア・通信(IT業界)」です。
社会のデジタル化が進むなかで、IT業界では個人情報の管理や契約・規約の作成など、法的コンプライアンスの重要性が高まっています。法律の知識を持つ人材へのニーズが高まり、法学部出身者が活躍するフィールドもどんどん広がっています。
5位:官公庁・公社・団体
法学部で人気の就職先第5位は、「官公庁・公社・団体(公務員)」です。
国家公務員や地方公務員の採用試験では、行政法や民法、憲法といった法律科目が多く出題されるため、法学部での学びがそのまま試験対策に直結します。また、採用後の実務でも、法律の知識は欠かせません。
たとえば、条例や行政文書の作成、市民からの相談対応など、公務の多くの場面で法的な判断力が求められます。
「法律に強い行政職」は、変化する社会課題に対応するうえでも、今後ますます重要な存在となっていくでしょう。
法学部卒業の女子の就職先として人気なのは?
アンケート調査をもとに、女性の法学部卒業生に支持されている就職先トップ3をご紹介します。
1位: 官公庁・公社・団体(公務員)
2位: 金融業界
3位: 小売・流通業界
法学部出身の女性に特に人気が高いのは、官公庁・公社・団体などの公務員です。
公務員は、男女の給与格差が比較的小さく、産休・育休、時短勤務といったワークライフバランスを支える制度が整っていることから、将来を見据えて安定した働き方を望む女性に選ばれています。
また、法学部で学ぶ憲法・行政法・民法などの知識が、公務員試験の主要科目と重なるため、試験対策においても大きなアドバンテージになります。 「学びを活かせる」×「働きやすさ」という2つの理由から、法学部女子の就職先として高い人気を誇っています。
法学部の就職体験談
アンケートに寄せられた声から、法学部での学びが実際の仕事でどう活かされているのかをご紹介します。
【IT業界に就職した早稲田大学法学部卒・男性の体験談】
就職活動でのメリット
「論理的思考力や法律の専門知識をアピールできたことが大きかったです。新卒でIT企業のシステムエンジニア職を目指したとき、面接で『契約書や仕様書の確認で、法律の知識を活かして正確な仕事ができる』と話したところ、面接官から『その視点は貴重だね』と言ってもらえました。」
実際の業務での活用
「クライアントとの契約書を確認するとき、民法や商法の基本が頭にあるので、内容をしっかり理解したうえで安心して交渉ができます。また、個人情報保護法の知識は、Webアプリ開発時にプライバシーポリシーを提案する際にとても役立っています。GDPR(EU一般データ保護規則)など国際的なルールにも、法学部での基礎知識があることでスムーズに対応できています。」
キャリアへの影響
「IT業界は技術の変化が激しい一方で、法的なコンプライアンスの重要性は年々高まっています。法学部出身ということで、技術チームと法務チームの橋渡し役を任されることが多くなり、キャリアの選択肢が広がっていると感じます。」
【公務員に就職した日本大学法学部卒・女性の体験談】
就職活動でのメリット:
「公務員試験では法律分野からも多くの出題があったため、ほぼ勉強しなくても法律分野については回答できました。公務員試験は受けた試験区分について全て合格を頂きましたが、法律分野の点数が高かったことが最大の要因だと思います。特に、憲法、民法、行政法は法学部での学習がそのまま活かせました。」
実際の業務での活用
「公務員として条例を作るときに、その書き方や言い回しなどについて悩むことなくスムーズに作業を進めることができました。また、市民からの法的な相談を受ける際も、基本的な法律知識があることで適切なアドバイスができています。」
社会貢献への実感
「法学部で学んだ『社会正義』や『公共の福祉』といった概念が、実際の行政の現場で生きていると感じます。住民の皆さんの生活を法的な側面から支えられることにやりがいを感じています。」
【専門士業系に就職した南山大学法学部卒・男性の体験談】
就職活動でのメリット:
「法学部で培った論理的思考力と正確な文章力は、就職活動で高く評価されました。面接での的確な受け答えや、説得力のある自己PR書類の作成に役立ち、多様な業界で自身の強みをアピールできました。」
実際の業務での活用:
「仕事が法律の専門職ということもあり、学部で培った知識が基礎となっていると感じます。基礎知識は学部での講義で身につけたものなので、実務で必要となるスキルの入り口はまさに学部での学びだったと思います。特に、判例の読み方や条文の解釈方法は、今でも毎日使っています。」
継続学習の重要性
「法律は常に改正されるので、学部で学んだことが全てではありませんが、基礎がしっかりしていることで新しい法律への対応も早くできます。法学部での学習は『学び方を学ぶ』場所だったと実感しています。」
法学部に向いているのはどんな人?
法学部の学びは、「ただ法律を覚えるだけ」ではありません。複雑な問題を深く考え、論理的に整理しながら、自分なりの答えを導き出す力が求められます。
ここでは、法学部に向いている人の特徴や考え方の傾向を、わかりやすくご紹介します。「自分に合ってるかも?」と思ったら、進路選びの参考にしてみてください。
法学部に向いてる?を簡単診断
以下のチェックリストで、あなたが法学部に向いているかどうかを診断してみましょう。
当てはまる項目が多いほど、法学部での学びと相性が良いかもしれません。
判定結果
15-20個該当
法学部に非常に向いています。法学部での学習を通じて大きく成長し、将来様々な分野で活躍できる可能性が高いでしょう。
10-14個該当
法学部に向いています。興味のある分野を深めることで、充実した大学生活を送れるでしょう。
5-9個該当
適性はありますが、他の選択肢も検討してみましょう。
0-4個該当
他の学部も含めて幅広く検討することをおすすめします。自分の興味・関心がより強い分野を探してみてください。
診断のポイント
法学部で特に大切なのは、論理的に考える力、文章を正確に読み解く力、自分の考えをわかりやすく伝える力の3つです。
さらに、「社会のルールってどう決まってるの?」「正義って何だろう?」といったことに関心を持ち、じっくり学び続ける姿勢も大きな強みになります。
これらのポイントに多く当てはまるなら、法学部での学びを通じて大きく成長できる可能性が高いでしょう。
ただし、これはあくまで目安です。少しでも興味があるなら、オープンキャンパスや模擬講義などを通して、リアルな学びの雰囲気を体験してみるのがおすすめです。
法学部によくある志望理由
アンケート調査をもとに、実際に法学部に進学した先輩たちのリアルな志望理由をご紹介します。どんなきっかけで法学部を選んだのか、進路選びの参考にしてみてください。
法律に関わる仕事にあこがれて
「高校生のとき、親戚が家の賃貸トラブルに巻き込まれたのを見て、法律の知識は大切だと実感しました。その経験から法曹を目指そうと思い、法学部に進学しました」(日本大学法学部卒・女性)
「司法の仕事に就きたくて法学部を選びました。資格を取りたい、知識を身につけたいという思いもありました」(日本大学法学部卒・女性)
「行政書士になりたくて、専門的に法律を学びたいと思ったのがきっかけです」(創価大学法学部卒・男性)
将来のキャリアを見据えて
「法律の仕事にこだわっていたわけではないけれど、就職で役に立つと思って選びました。」(早稲田大学法学部卒・男性)
「進学する学部に悩んでいたとき、文系の中で将来役に立ちそうな分野を考えて法学部を選びました」(北海道大学法学部卒・女性)
「法学部を出ていれば、就職のときに有利になると思ったからです」(早稲田大学法学部卒・男性)
労働や年金受給など法律自体が暮らしに直結する知っておいて損のない情報であり、将来、法律にかかわる仕事がしたかったから。(近畿大学法学部・女性)
法律そのものに興味を持ったから
「社会問題の根本を法から理解し公正な制度づくりに関わりたくて法学部を選びました。高校の模擬裁判で法の力を実感し、将来の仕事に活かせると思ったからです。」(青山学院大学大学院法学研究科卒・男性)
「高校時代に新聞部に所属していたことがきっかけで、社会問題や事件に関心を持つようになり、その背景にある法律や制度に興味を抱くようになったから」(東北大学法学部卒・女性)
「オープンキャンパスで模擬講義を受けたことで、講義が面白い先生がいて、その先生の講義を受けたいと思った」(南山大学法学部卒・男性)
ニュースや新聞を通して社会問題や政治に興味を持ち、制度の仕組みをもっと深く知りたいと思ったのがきっかけです。法律がどう人の暮らしや社会の秩序を支えているのかに関心を持ちました。(中央大学法学部卒・男性)
これらの志望理由を参考に、自分がなぜ法学部に興味を持ったのかを明確にすることで、入学後のモチベーション維持にもつながります。
「やめとけ」の声もある理由!法学部をおすすめしない人は?
法学部は将来の選択肢も広く、論理的思考力が身につく学部として人気がありますが、一方で「やめとけ」「向いていなかった」と感じた卒業生の声もあります。
実際のアンケートから、法学部をおすすめしない理由を3つご紹介します。
1. 勉強が難しく、負担が大きい
「法律を本気で学びたい気持ちがないと厳しいです。判例や条文の暗記量が多く、試験一発勝負の科目も多いので、他学部よりも自由な時間が取りづらいです。」(青山学院大学法学部卒・男性)
「覚えることも考えることも多く、専門性が高い分、興味がなければ授業が苦痛に感じます。ハマれる人にはいいけど、そうでないとキツいと思います。」(東海大学法学部卒・女性)
「私の大学では通年単位が多くて、1科目落とすだけでも進級が厳しくなることがありました。本気で法律を学ぶ覚悟がないと続けるのが大変です。」(近畿大学法学部卒・女性)
2. 法律専門職を目指さないなら、学びに対する“コスパ”は低め?
「士業や公務員を目指すなら良いけど、民間志望だと他の学部より潰しが利きづらい印象です。他学部でも法律は学べるので、広く将来を考えるならそちらの方がよいかも。」(駒澤大学法学部卒・女性)
「法律に関係のない業界に進む場合、法学部の肩書が特に強みになることは少なかったです。」(摂南大学法学部卒・男性)
「今の時代、法律以外に注力した方がキャリアや生活の自由度が高くなると感じます。」(福岡大学法学部卒・女性)
3. 学生生活が楽しみにくい
「新聞や社会問題にも日頃からアンテナを張っておく必要があり、かなり大変です。」(法政大学法学部卒・女性)
「自分の大学では法学部は女性が少なく、異性との出会いが少なかったのが残念でした。学校によると思いますが、出会い重視なら別の学部の方が良いかも。」(摂南大学法学部卒・男性)
「単位取得がしにくくて留年者も多く、他学部よりプライベートを楽しめなかったように思います。」(龍谷大学法学部卒・男性)
おすすめしない人の特徴
アンケートで寄せられた意見を踏まえると、次のような人には法学部はあまりおすすめできないと言えそうです。
明確な目標や興味がない人
なんとなく進学を考えていると、法律という専門的な分野の学習を続けるのが難しく感じることがあります。
暗記や継続学習が苦手な人
法律の学びは、コツコツと積み重ねる努力が必要です。継続が苦手な人には大変かもしれません。
多様な学生生活を求める人
勉強以外の活動に多くの時間を使いたい場合、法学部の専門的な学習と両立が難しく感じられることがあります。
即戦力スキルを重視する人
プログラミングや語学など、社会に出てすぐに役立つ具体的なスキル習得を望む人には、法学部の学びはやや異なるかもしれません。
自分の興味を大切に
これまで紹介した声はあくまで個人の体験や考えに基づくものです。法学部で充実した学生生活を送り、その学びを活かしてさまざまな分野で活躍している卒業生もたくさんいます。
大切なのは自分が本当に興味を持てることや、やってみたいことに素直に向き合うことです。
法学部の学びは専門的でありながら幅広く、自分の関心に合った分野や目標を見つけることができれば、学生生活はきっと充実したものになりますし、その経験は将来にもつながっていきます。
「おすすめしない」という意見も、法学部の特徴を踏まえたひとつのアドバイスとして受け止めつつ、最終的には自分の気持ちを大切に、納得のいく進路を選ぶことが何より大事です。
おすすめの法学部がある大学ランキングTOP3
法学部への進学を検討している方に向けて、学習レベル・研究実績・進路実績・出願方法の豊富さなどを総合的に評価し、おすすめの大学を国公立・私立に分けてご紹介します。
法学部が強い!おすすめの私立大学TOP3
1位:慶應義塾大学 法学部
慶應義塾大学法学部は、法律学科と政治学科の2学科を設置しつつ、両学科の科目を横断的に学べる柔軟なカリキュラムが魅力です。法科大学院(ロースクール)は2024年司法試験で合格者数・合格率ともに全国1位(合格率59.35%)を記録しており、学部生にとって法曹を目指す強力な基盤となっています。
学部時代からロースクール教員の指導を受けられる体制が整っており、論理的思考力と実践的な法知識が着実に身につきます。OB・OGネットワークや就職支援も非常に充実しており、法律系はもちろん、金融、メディア、外資コンサルなど幅広い分野で高い就職実績を誇ります。
専門性と教養の両方を重視し、国際的な活躍も視野に入れた人材育成を行う点が特長です。
2位:早稲田大学 法学部
早稲田大学法学部は、1882年に創設された私立大学最古の法学部として知られ、長い歴史と伝統があります。法律学科・政治学科の区分がなく、学生全員が幅広く法律を学べるカリキュラムを採用しており、学びの柔軟性が高いのが特長です。
司法試験や国家公務員試験などの合格者数は全国トップクラスで、「日本の法律家の約7人に1人は早稲田出身」と言われるほど法曹界に多くの人材を輩出しています。卒業生の約85%が一般企業や官公庁に就職し、進路の幅も広く、多様な業界で活躍しています。
自由闊達な校風のもと、勉学だけでなく課外活動にも力を入れられる環境が整っており、多様な価値観に触れながら成長できる学びの場です。
3位:中央大学 法学部
中央大学法学部は、1885年に設立された英吉利法律学校を前身とし、「法科の中央」と称される法学教育の名門校です。司法試験合格者数では私大トップクラスの実績を持ち、特に旧司法試験時代には20年連続で合格者数全国1位を記録した歴史があります。
現在も法職講座などの支援体制が充実しており、学部1年次から質の高い司法試験対策をスタートできるのが大きな強みです。
2023年には東京都心・茗荷谷キャンパスへ移転し、法律実務の現場に近い環境での実践的な学びがさらに充実しました。全国に広がる強力な法曹ネットワーク「中央大学法曹会」も学生・卒業生を支えています。司法を目指す学生にとって極めて実利的かつ伝統ある環境です。
法学部が強い!おすすめの国立大学TOP3
1位:東京大学 法学部
東京大学法学部は、法学と政治学を統合的に学べる国内トップクラスの学部です。全ての学生が憲法や民法、政治学を必修で学び、法律だけでなく政治の視点から社会の問題を考える力を養います。
法律の仕組みだけでなく、その背景にある考え方や社会の成り立ちについても幅広く学べるのが特長です。教授陣には各分野で日本の法学界をリードする研究者が揃い、理論と実務の双方を高水準で学べる環境が整っています。
進路面でも中央省庁や司法分野への実績は群を抜き、国家公務員試験や司法試験でも全国トップクラス。IARU加盟校として国際連携も盛んで、交換留学や英語プログラムも整備されています。
知的探究と実践力を兼ね備えた人材を育てる場として非常に優れた環境です。
2位:京都大学 法学部
京都大学法学部は、「自由の学風」のもと、学生の主体性を重視した柔軟な教育が魅力です。
法律学と政治学を自由に組み合わせて履修できるカリキュラムに加え、進路を限定せず幅広く学べるカリキュラムや「キャップ制」という制度により、計画的かつ深い学びが実現します。
教授陣には、東大と双璧をなす民法・刑法・憲法など各分野で法律学界に大きな影響を与える一流の研究者や実務家が在籍し、法律改正の実務に関与する教授の授業を学部段階から受けられる点も大きな特徴です。
3回生以降のゼミでは自由な討論を通じて、論理的思考力と表現力を鍛えることができます。蔵書数70万冊を超える図書室や、官界・法曹・学界に広がる有信会の同窓ネットワークも学びを支えます。
深く考え、自ら道を切り開きたい学生にとって、最良の環境です。
3位:一橋大学 法学部
一橋大学法学部は、法律学と国際関係学を融合して学べる全国でも珍しい教育体系を採用しています。国内外の法制度と国際社会の動きを一体的に学ぶことで、複雑化するグローバル社会に対応できる力を養います。
学年に縛られない柔軟な履修体系が整っており、他学部の科目も積極的に履修可能。3年次から始まるゼミは1クラス7名程度の少人数制で、教員との距離も近く、密度の高い議論と指導を通じて専門知識を深められます。
交換留学や短期海外研修も活発で、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどとの連携校が充実しています。法科大学院への進学実績も優れており、司法試験合格率は全国でも上位。法曹・国際関係・行政といった多様な進路で活躍する人材を数多く輩出しています。
法学部のその他の注目大学
TOP3以外にも、「この大学ならでは」の制度や学びのスタイルで存在感を放つ法学部もあります。
名古屋大学 法学部
名古屋大学法学部は、法曹志望者向けに「法曹養成プログラム(5年一貫コース)」を導入し、学部3年から大学院2年まで最短で司法試験合格を目指せる制度が整っています。
少人数ゼミによる指導と、必修を最小限にした自由度の高いカリキュラムにより、自主的かつ柔軟な学びが可能です。さらに、日中韓3大学連携による「キャンパス・アジア」プログラムを展開しており、東アジア法の比較や海外研修を通じて国際的な法的素養を養える点も大きな特長です。
明治大学 法学部
明治大学法学部は、司法試験・公務員試験の支援に特化した「国家試験指導センター」を学内に設置。専任スタッフによる個別相談や模試、講座がすべて無料で受けられるほか、法曹志望者向けには独自の「法職講座」も充実しています。
さらに、全国に展開する明治大学法曹会との連携により、法律事務所インターンやOBOGによる進路相談、実務家講義など実践的支援も豊富。都心立地を活かし、裁判所・官庁での現場体験も積みやすい環境です。
同志社大学 法学部
同志社大学法学部では、実際の企業で法務の仕事を体験できる「リーガル・フィールドワーク」という実習があります。契約書のチェックや社内ルールづくりの現場を知ることで、学んだ法律を実際にどう使うかを肌で感じられます。
コースは法曹・公務員・企業法務など目的別に分かれていて、自分の将来に合わせた学び方ができるのも魅力。2024年の司法試験では全国9位の合格者数を記録し、関西の私大の中でも実績はトップクラスです。
京都の落ち着いた環境で、じっくり法律を学びたい人にぴったりです。
明治学院大学 法学部
明治学院大学法学部の特徴のひとつは、国際法教育に力を入れている点です。
グローバル法学科では、2年次秋学期に全員が4〜5か月間、イギリス・アイルランド・オーストラリア・カナダのいずれかへ留学し、現地の大学で法律を学ぶほか、法律事務所や国際機関の訪問などを通じた実践的な学びを行います。
国際法や比較法、EU法など多彩な分野を専門とする教員による指導のもと、グローバルな視点と法的思考力、異文化への理解を養うカリキュラムが整えられています。
まとめ
法学部は、論理的に考える力や問題解決力を育み、さまざまな分野で活躍できる人材を育てる学部です。法曹界はもちろん、公務員やIT業界、金融業界をはじめとした一般企業など、多彩な進路があり、学んだ知識は日常生活でも大いに役立ちます。
一方で専門性が高く、コツコツと学び続ける姿勢が求められる分野でもあります。だからこそ、明確な目的意識や興味を持って学ぶことが、充実した学生生活と将来のキャリアにつながります。
この記事で紹介した情報を参考に、ご自身の興味・関心や将来の目標と照らし合わせながら、法学部への進学を検討してみてください。
法学部での学びは、社会のルールを理解し、論理的に考える力を身につける貴重な経験になります。興味を持った方は、ぜひオープンキャンパスや模擬講義に参加して、実際の学びの雰囲気を体験してみましょう。
アンケート調査概要
調査対象:法学部出身の20代~40代(有効回答数50名)
調査時期:2025年7月
調査機関:自社調査
調査方法:インターネットを使用した任意回答
調査レポート名:「法学部卒業生の大学時代の学びの活用状況」についての調査
※掲載しているグラフや内容を引用する場合は「塾選ジャーナル調べ:「法学部卒業生の大学時代の学びの活用状況」についての調査と明記し、『塾選ジャーナル』の記事(https://bestjuku.com/shingaku/s-article/28170/)へのリンク設置をお願いします。
執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。