国立大学の学費は4年間で約250万円!私立大学との差から支援制度・生活費まで詳しく解説

「国立大学って安いって聞くけど、実際いくらかかるの?」「私立とどのくらい差があるの?」
子どもの進学を控える保護者や、自分で進路を検討する高校生にとって、学費や生活費、支援制度の正しい情報は進学先を選ぶうえでとても重要です。
国立大学に4年間通う場合、学費の総額は約250万円ですが、それ以外にも生活費や学業に必要な備品代などがかかります。
このページでは、国立大学の入学金や授業料の基本から、生活費や奨学金制度、学部別の費用差、無償化制度の条件までやさしく解説します。

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国立大学の学費はいくら?
入学金や授業料など、国立大学へ進学するためにはある程度まとまった額の学費が必要です。
国立大学の入学金と授業料は文部科学省が標準額を定めており、社会の経済情勢に応じて適時見直されます。入学金は2002年以降、授業料は2005年以降は改定されていません。
標準額はあくまでも文部科学省が示したモデル金額で、実際には各国立大学で標準額の120%を上限に、入学金と授業料を改定できます。
以下で国立大学の入学金や授業料といった学費、学費以外に納入する費用などを紹介します。
国立大学の入学金はいくら?
2023年における国立大学の入学金は、文部科学省が定めた標準額によると28万2,000円です。
2024年以降の標準額は文部科学省などの公式ホームページで公表されていませんが、複数の国立大学の学費を見る限り変わっていません。
国立大学の授業料(年間・4年間)はいくら?
2023年における国立大学の授業料は、文部科学省が定めた標準額によると年53万5,800円です。4年間通った場合の授業料の総額は、214万3,200円となります。
出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」を参照し作図
出典:東京学芸大学「学費(令和7年度)」
出典:筑波大学「入学料・授業料・奨学金」
出典:東北大学「入学料及び授業料等納付額・納付方法」
学費以外に納入する費用は?
国立大学では学費以外に、大学へ直接納入する費用は基本的にありません。実験費や実習費なども授業料に含まれていますが、一部の理系学部では授業料とは別に徴収されるケースもあります。
それ以外では、学生保険料や同窓会の会費などを徴収しているところもあるでしょう。
受験料や教科書代、パソコンの購入費、生活費などは別途かかります。教科書は1冊3,000~5,000円ほどするため、1年間で5万円以上になることもあるでしょう。
授業料を上げた国立大学はどこ?
国立大学の授業料は文部科学省が設定した標準額の120%を上限に、各大学で改定できます。
●授業料を上げた国立大学一覧
大学名 | 授業料(年) |
---|---|
東京大学 | 642,960円 |
一橋大学 | 642,960円 |
東京農工大学 | 642,960円 |
千葉大学 | 642,960円 |
東京藝術大学 | 642,960円 |
東京科学大学(理工系) | 635,400円 |
東京科学大学(医歯系) | 642,960円 |
参考:東京大学「授業料改定及び学生支援の拡充について」/一橋大学「授業料について」/東京農工大学「授業料・入学料等」/千葉大学「令和7年度授業料等についてのお知らせ(学部・大学院生)」/東京藝術大学「入学料等(美術学部・大学院美術研究科)」/東京科学大学「検定料・学費・入学金」
世界最高水準の学びを目的に、東京大学が2025年度入学生から授業料を年64万2,960円に値上げする予定です。
国立大学と私立大学で学費はどれくらい違う?
「国立大学が第一志望だけど、私立大学も併願しようか迷っている」といった場合、私立大学の学費も気になるのではないでしょうか。
続いては、国立大学と私立大学の学費がどれくらい違うのかを紹介します。
国立と私立、学費4年間の比較(文系・理系・医歯系)
私立大学の入学金や授業料といった学費は、大学や学部・学科ごとによって大きく異なります。国立大学では文部科学省が標準額を提示していますが、私立大学では大学ごとに学費の金額を設定できるためです。
また文系・理系・医歯系にもよって、大まかな金額も変わってくるでしょう。
●国立大学と私立大学の4年間における学費の目安
項目 | 国立大学 | 私立大学 | ||
---|---|---|---|---|
文系 | 理系 | 医歯系 | ||
入学金 | 282,000円 | 223,867円 | 234,756円 | 1,077,425円 |
授業料 (年間) |
545,800円 | 827,135円 | 1,162,738円 | 2,863,713円 |
施設設備費 (年間) |
- | 143,838円 | 132,956円 | 880,566円 |
4年間の合計 (医歯系は6年間) |
2,465,200円 (3,556,800円) |
4,107,759円 | 5,417,532円 | 23,543,099円 |
出典:文部科学省「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」を参照し作成。
私立大学の文系は国立大学よりも約150万円、理系では約300万円多くかかります。医歯系は修業年限が6年間で、年間の授業料と施設設備費が高くなっているため、約1,950万円多くかかります。
なお公立大学の学費は、大学が所属している都道府県や市ごとに決められているのが特徴です。文部科学省の「国公私立大学の授業料等の推移」によると、2023年における公立大学の入学金の平均額は37万4,371円、授業料の平均額は年53万6,191円でした。
理系・医歯系学部だと差はさらに拡大
私立大学の理系・医歯系学部だと、国立大学との差はさらに拡大します。
費用が高くなる理由としては「実験や実習に必要な設備や器具、材料などにお金がかかる」「実験や実習をする際に、生徒一人ひとりに対応できるだけの教員を雇用する必要がある」といったことが挙げられるでしょう。
また医歯系では大学病院を併設している場合、病院の経営費用に学費を充てているところもあります。
国立大学を選ぶメリット・デメリット
国立大学を選ぶメリットは、何といっても学費を安く抑えられることです。
文部科学省の「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によると、4年間の学費は私立大学よりも150万円以上も安くなっています。学費を安く抑えられるため、家計の負担を大きく減らせるでしょう。
また受験勉強を通じて、幅広い学力が身につくのもメリットです。受験科目数は原則として大学入学共通テストで6教科8科目、二次試験でも1~4教科ほどが課されます。
デメリットは、受験勉強の負担が大きいことです。受験科目数が多いので、必然的に勉強量が増えます。その分、計画的に勉強を進めていく必要があるでしょう。
入試の回数が少ない点も、国立大学を選ぶデメリットとして挙げられます。国立大学は前期日程と後期日程の、最大で2回しか受験のチャンスがありません。また大学によっては、後期日程がないところもあります。
学部別に見る学費の違い【文系・理系・医系学部】
国立大学の学費は文部科学省が標準額を定めているものの、各国立大学で標準額の120%を上限に改定できます。
そのため、同じ国立大学でも、学部によって学費に差がある場合もあるでしょう。
文系・理系・医系学部など、学部別に学費の違いを解説します。
理系と文系で学費は違う?
理系と文系で、学費に大きな違いはありません。
理工系学部の場合
理系学部では実験・実習科目が多いものの、実験費や実習費なども基本的には授業料に含まれています。ただし、理系学部では専門性の高い教科書を使うため、教科書代が高くつく可能性があります。
文部科学省の標準額よりも授業料を高く設定している大学もありますが、物価高騰による光熱費・人件費・設備維持などのコスト増加が主な要因です。
医系学部の場合
医学部や歯学部、薬学部の医系学部では修業年限が6年のため、修業年限4年の学部と比べてトータルの費用が高くなります。
例えば入学金が28万2,000円、授業料が年54万5,800円だった場合、4年間の合計は246万5,200円です。6年間では合計355万6,800円のため、4年間の合計よりも100万円近く高くなります。
また大学によっては授業料とは別に、後援会費や同窓会費、災害傷害保険料などを徴収しているところがあります。同じ国立大学内でも、医学部ではほかの学部と比べて、費用が高くなる場合もあるでしょう。
学費以外にかかる生活費
大学生活を送るために必要なのは、学費だけではありません。実家から通う場合にも生活費がかかり、一人暮らしをする場合にはより大きな費用が必要となるでしょう。
そのため、大学進学を考える際は、学費以外にかかる生活費にも目を向ける必要があります。
入学初年度にかかる初期費用の目安と、月々かかる生活費の内訳・目安を紹介します。
入学初年度にかかる費用
例えばアパートなどで一人暮らしをする場合は、次のような初期費用が必要です。
項目 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
敷金 | 大家といった貸主に預けるもので、退去時にクリーニング代や修理代などが差し引かれる | 家賃1カ月分 |
礼金 | 部屋を貸してくれたお礼として貸主に払うもの | 家賃1カ月分 |
仲介手数料 | 賃貸契約の仲介をした不動産会社へ、報酬として支払うもの | 家賃1カ月分+税 |
前家賃 | 翌月分の家賃 | 家賃1カ月分 |
火災保険料 | 多くの賃貸住宅で加入が求められる | 年1万5,000~2万円 |
物件によっては敷金が1カ月分以上だったり、礼金がなかったりするでしょう。
また課題の作成やオンライン授業ではパソコンが必須です。持っていない場合は、パソコンの購入費用も考える必要があります。
スペックにもよりますが、7万~10万円くらいを準備しておけば大丈夫です。
月々かかる生活費の内訳と目安
次の表は大学生の1年間にかかる生活費の目安です。
項目 | 金額 | |
---|---|---|
下宿やアパートから通学 | 自宅から通学 | |
食費 | 271,400円 | 94,100円 |
住居・光熱費 | 480,500円 | - |
保健衛生費 | 49,800円 | 42,300円 |
娯楽・し好費 | 136,500円 | 135,400円 |
その他の日常費 | 161,200円 | 153,600円 |
合計 | 1,099,400円 | 425,400円 |
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「令和4年度 学生生活調査結果」
一人暮らしをしている大学生の1年間の支出合計は109万9,400円、1カ月で約9万2,000円。自宅から通っている大学生では、1年間の支出合計が42万5,400円、1カ月で約3万5,000円でした。両者には2倍以上の差があることがわかります。
調査は全国の大学生を対象としているため、住んでいる地域によって費用に差があるでしょう。
学費が払えないかも? 利用できる支援制度
家計の状況によっては「学費が払えないかもしれない」「何か支援してもらえる制度があれば」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
利用できる支援制度を3つ紹介します。
奨学金制度【給付型・貸与型】
奨学金には給付型と貸与型の2種類があり、国・大学・自治体・企業といった様々な団体で、それぞれ独自の支援をしています。
最も知られているのが、JASSO(日本学生支援機構)の奨学金です。文部科学省が管轄する独立行政法人で、給付型と貸与型のどちらもあります。
給付型は返済不要なので、将来の心配をせずに受給できるでしょう。貸与型は無利子型の第一種と有利子型の第二種に分かれ、学力や家計を基準に決定されます。
また自治体や企業では、次のような奨学金を提供しています。
- 採用人数:23名(指定大学あり)
- 申込期間:-
- 支給期間:大学を卒業するまで
- 支給金額:各大学の修学費(全額)と生活費として月10万円
- 採用人数:約10名
- 申込期間:大学が指定する期間内
- 支給期間:正規の修業年限が終了するまで
- 支給金額:月3万8,000円
- 採用人数:約55名
- 申込期間:8~10月
- 支給期間:最長4年間
- 支給金額:月5万円
どの団体の奨学金にも学力条件や所得条件などがあり、詳細はそれぞれで異なります。
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高等教育の修学支援新制度
高等教育の修学支援新制度は、大学・短大・専門学校といった高等教育機関への進学時に利用できる制度です。高等教育の無償化と呼ばれることもあるでしょう。
住民税非課税世帯〜年収460万円の世帯を対象に、大学の入学金と授業料を減免するほか、返済不要の給付型奨学金もセットで支給されます(所得制限額は家族構成や支援額などによって変動)。
授業料の免除・減額制度
一部の国立大学では、独自の授業料の免除・減免制度があります。
例えば岩手大学では、学部の4年生を対象にした授業料免除制度を設置。1〜3年次の成績によって対象者を選出し、4年次後期の授業料を全額免除してもらえます。
また静岡大学でも、成績優秀者に対する授業料免除制度があります。「前学期までのGPAの値が原則3.30以上、かつ、各基準の修得単位以上であり、優秀な人物として認められる者として、学部長等から推薦があった者」が対象です。
国立大学の学費についてよくある質問
最後に、国立大学の学費についてよくある質問を紹介します。
国立大学の学費にクレジットカードは使えますか?
内閣府の「国立大学における授業料・入学金・検定料の納付方法についての調査結果」によると、クレジットカードでの支払いに対応している大学数は入学金で24校(28%)、授業料で3校(3%)でした。
特に授業料では、クレジットカード払いに対応していない大学が多くなっています。
地方と都心部で国立大学の学費は違いますか?
基本的には地方と都心部で、国立大学の学費に違いはありません。しかし、近年は都心部にある一部の国立大学で、授業料の値上げが行われています。
国立大学の学費が免除される年収はいくらですか?
2025年度より高等教育の修学支援新制度が拡充し、扶養する子どもが3人以上いる世帯では、所得基準なしで授業料70万円、入学金26万円が無償になります。
ただし、対象となる大学は一定の要件を満たした学校のみです。対象大学は文部科学省 「高等教育の修学支援新制度の対象機関(確認大学等)」で確認できます。
まとめ 国立大学の学費と支援制度を理解して、納得の進路選びを
文部科学省が示した標準額によると、国立大学の学費は入学金が28万2,000円、授業料が年間で54万5,800円(年)、4年間の総額は242万5,200円です。実験費や実習費なども授業料に含まれているところが多く、それ以上の金額を大学へ直接納入するケースは少ないです。
国立大学の学費は、標準額の120%を上限に改定できるため、最近は授業料を値上げする大学も増えています。
国立大学は私立大学と比べて学費の安さが魅力ですが、生活費もかかる点に注意が必要です。特に一人暮らしをする場合、下宿代やアパート代などが大きな出費となります。
「学費を払えないかも」と思ったときは、奨学金制度や高等教育の修学支援新制度などが使えないかを確認してみましょう。
今回紹介した情報を参考にしながら、それぞれが納得できる進路を選んでください。
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