大学受験|急に部屋にこもるようになった高1男子。その理由と親の見守り方とは?
「最近、子どもが話してくれない」「部屋にこもる時間が増えた」──そんな変化に戸惑う親御さんは少なくありません。
高校生になると、自立心の芽生えや思春期特有の心理変化が起こります。親も子どもとどう距離を取ればいいのか悩む時期です。
今回は、東京大学卒で15年以上にわたり受験指導を行ってきた家庭教師・青戸一之先生にお話を伺いました。青戸先生は、数多くの高校生やご家庭を支えてきた経験から、親子の関わり方や子どものモチベーションづくりにも精通しています。
多くの生徒の「やる気の波」や「家庭での変化」を見てきた立場から、部屋にこもる高校生の心理と、親ができる見守り方について教えていただきました。
編集部
塾選ジャーナル編集部
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者
青戸一之先生
1983年生まれ、鳥取県出身。地元の進学校の高校を卒業後、フリーター生活を経て25歳で塾講師に転身。26歳から塾の教室長としてマネジメント業を行う傍ら、学習指導にも並行して携わる。29歳の時に入塾してきた東大志望の子を不合格にしてしまったことで、自身の学力不足と、大学受験の経験が欠如していることによる影響を痛感し、30歳で東大受験決意。塾講師の仕事をしながら1日3時間の勉強により33歳で合格。在学中も学習指導の仕事に携わり、現在は卒業してキャリア15年目のプロ家庭教師・塾講師を行う傍ら、ドラゴン桜noteマガジンの編集長を務める。 著書に『あなたの人生をダメにする勉強法 「ドラゴン桜」式最強タイパ勉強法で結果が変わる』(日本能率協会マネジメントセンター)、『家庭教師の技術』(星海社)がある。
話してくれない高校生の子どもに、不安と寂しさを感じる

【CASE 044】高校1年生・男子
性格:
勉強が大嫌い。自分に自信がない。
【今回のお悩み】
ペンネーム:KKさん(高校1年生 保護者)
勉強アレルギーで勉強すると頭が痛くなると言う子ども。なかなか受験勉強が進まないため、第一志望校に合格するか不安です。高校に入ってからのことを考えて、受験する高校のレベルを落とすように話をしましたが、それは嫌だと言います。娘に受験の現実を理解し勉強してもらうには、どうすればいい?
なぜ高校生が部屋にこもるのか?思春期特有の心理背景
思春期の子どもが部屋にこもるのは、心理的な成長の一環と考えられます。成長の過程で自然に起こること、どんなご家庭でも起こり得ることだと理解することが、子どもへ寄り添うための第一歩です。
部屋にこもる子どもの心理背景について、もう少し詳しく見ていきましょう。
自立心の芽生えにより、親と距離を置きたくなる
思春期になると、子どもは少しずつ親から離れ、“自分だけの時間”を大切にするようになります。
こもっている部屋は、そのための安心できる場所。外の世界で受ける刺激やストレスを整理し、心を落ち着ける“避難所”のような役割を果たしているのです。
思春期は、自分の価値観や考えをつくり始める時期です。「自分のことは自分で決めたい」「親にはわかってもらえない」という思いを持つ子どももいます。「親は自分と違う」と感じるようになり、親の意見や価値観と距離を置きたくなるのです。
環境の変化による戸惑いと、進路についての不安
中学から高校へ進学すると、生活リズムや学習内容、交友関係など、環境が大きく変わります。新しいクラスや部活動、人間関係の中で自分の居場所を探すことに戸惑いを感じる子どもも少なくありません。
部屋にこもる理由は心の成長だけでなく、学校生活の変化といった外的な要素が関係していることもあります。
例えば高1の冬は、高2で文系・理系のどちらを選ぶかを決める時期。初めて「自分の進路」について考え始める子どもも多いでしょう。
とはいえ、この段階ではまだ将来の方向をはっきり決められる高校生は多くありません。
周りの友達が進路を決め始めるのを見て、「自分だけ取り残されているのでは」と不安を感じることもあります。
「自分はどうしたいのか」「何を選べばいいのか」と考えても答えが出ず、うまく言葉にできないまま、気持ちを抱え込んでしまうのです。
話してくれない高校生に悩む親へ。親ができる声かけと関わり方
急に変化する子どもの対応に、親として心配する気持ちはよくわかります。「話してくれさえすれば、いくらでも相談に乗るのに…」と、歯がゆい思いを抱くかもしれませんね。しかし思春期という難しい時期だからこそ、親はどっしり構えて様子を見るのが一番です。
干渉するようなコミュニケーションは避ける
「スマホばっかり触って」「ちゃんと勉強しているの?」「成績はどうなの?」といった、問い詰めるような声かけは控えましょう。
思春期の子どもは、「自分のことは、自分で考えたい」という気持ちが強いもの。そのため「監視はしないで」「干渉や詮索をされたくない」と過剰に反応する傾向があります。むやみに刺激しないよう、まずはそっと見守る姿勢が大切です。
日常を変えないこと。それだけで安心感につながる
あえて親のほうから距離を置く必要はありません。「今日食べたいものある?」「明日の朝早いんだったら起こしてあげるよ」といった普段どおりの会話をしてあげてください。
ポイントは、いつもどおりの接し方を変えないこと。日常が変わらないだけでも、子どもにとっては安心感につながります。
明確な不調のサインが出ていたら、声をかける
食欲が落ちている、睡眠リズムが乱れている、顔色が良くないなど、明らかな不調が見られたら、それはSOS信号です。そのときは、「大丈夫?」「何か困っていることない?」と声をかけてあげてください。
明らかな不調のサインがなければ、まずは様子を見るのが基本。無理に情報を引き出そうとするのではなく、子どもが話したくなったときに受け止められるような雰囲気をつくることが大事です。
「勉強しなくなったらどうしよう」という不安は自然なこと
このまま勉強に身が入らなかったらどうなるのか、そんな心配をする親御さんもいるでしょう。
しかし、思春期には一時的に勉強に集中できない時期を経験する子どもが多く、それは怠けではなく心の成長のサインです。
心や環境の変化に順応しようとする途中で、やる気が一時的に落ちることは珍しくありません。
無理にやる気を引き出そうとするより、まずは安心して過ごせる環境を整えてあげましょう。
焦って勉強を促すよりも、今は心を整える時間と考えてみてください。
気持ちが落ち着けば、自然と「自分のために頑張ろう」という意欲が戻ってきます。
また学校での進路希望調査や模試の判定結果などをきっかけに、子どもの興味がありそうな大学のオープンキャンパスや学校祭の日程を一緒に調べてみるのもおすすめです。
実際にキャンパスに足を運ぶと、紙やネットで情報を集めるよりも、「自分が大学で学ぶイメージ」がぐっと具体的に湧きやすくなります。こうしたイベントで開かれる大学教授の講演会は、将来の受験生にとって親しみやすく、興味を引くテーマが多いもの。
自分の目で大学のリアルに触れることで、「勉強する意味」や「将来の自分」について考える良いきっかけになります。
安心できる環境づくりが、親が子どもにできる最大のサポート
もし子どもが悩んでいそうであれば、学校からのお知らせなど、日常のちょっとした話題を会話のきっかけにしてみましょう。進路や学校の出来事、好きなことなど、何でもかまいません。
結論をせかすのではなく、「そういえば小さい頃、理科の実験が好きだったよね」など、思い出をさりげなく話題にするだけでも、安心感につながります。
子どもが部屋にこもるのは、自分でも整理しきれない不安や葛藤を整理する時間が欲しいから。親はいつもどおりの生活リズムを守ってあげるだけで、子どもにとっては大きな助けになります。
部屋で一人になる時間も成長過程の一つと捉え、自分のペースで進んでいけるよう見守ってあげてください。
成功へ導く賢者からの金言!

一人になりたいと思うことは自然なこと。
追及よりも、安心できる居場所づくりをしてあげよう
※塾選調べ:
対象:大学受験に関してのお悩みを持つ保護者50名にアンケートを実施
期間:2025年9月1日~8日実施
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール
1983年生まれ、鳥取県出身。地元の進学校の高校を卒業後、フリーター生活を経て25歳で塾講師に転身。26歳から塾の教室長としてマネジメント業を行う傍ら、学習指導にも並行して携わる。29歳の時に入塾してきた東大志望の子を不合格にしてしまったことで、自身の学力不足と、大学受験の経験が欠如していることによる影響を痛感し、30歳で東大受験決意。塾講師の仕事をしながら1日3時間の勉強により33歳で合格。在学中も学習指導の仕事に携わり、現在は卒業してキャリア15年目のプロ家庭教師・塾講師を行う傍ら、ドラゴン桜noteマガジンの編集長を務める。 著書に『あなたの人生をダメにする勉強法 「ドラゴン桜」式最強タイパ勉強法で結果が変わる』(日本能率協会マネジメントセンター)、『家庭教師の技術』(星海社)がある。
