受験倍率とは?倍率と合格率の関係性についても解説!
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塾選ジャーナル編集部
中学受験や高校受験、大学受験などで志望校選びをする際、よく目にするのが倍率です。受験生の中には倍率を参考にして、どの学校を受験しようか決める子どもがいるかもしれません。「倍率が高いと、何となく合格しにくい」といったイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。
今回は受験倍率の概要や倍率と合格率との関係性、中学・高校・大学受験における平均倍率などについて解説します。
中学受験や高校受験、大学受験で見かける「倍率」とは?
中学受験や高校受験、大学受験などで必ず見かける倍率とは、受験における競争の激しさを数値で表したものです。1.5倍や2.0倍、4.0倍といった数値がありますが、簡単に説明すると「〇人の受験生の中で、1人が合格する」といえます。
たとえば、倍率が2.0倍だった場合は「2人の受験生の中で、1人が合格する」、倍率が4.0倍だった場合は「4人の受験生の中で、1人が合格する」という意味です。つまり、倍率が高ければ高いほど、合格する確率が下がることを示しています。
倍率の計算は難しくありません。「受験する子どもの数÷募集定員」の計算式で求められます。たとえば募集定員が100人のところに受験希望者が150人集まった場合、「150÷100」の計算式で、倍率は1.5倍となります。
3つの倍率:「志願倍率」「受験倍率」「実質倍率」
受験倍率や倍率などは、ひとくくりに同じものと捉えている人が多いかもしれません。しかし、正確には違いがあります。
倍率は大きく「志願倍率」「受験倍率」「実質倍率」の3つに分けられ、それぞれが持つ意味合いが異なるので注意しましょう。特に倍率を志望校選びの参考材料とする場合、参考にする倍率の種類を間違えると、正確に判断できなくなる可能性もあります。
志願倍率とは?
志願倍率は出願倍率や、応募倍率と呼ばれることもあります。受験に志願・出願した人数を、募集定員で割った数のことです。募集定員が50人の学校に300人の志願者・出願者がいた場合、「300÷50」の計算式で、倍率は6.0倍となります。
出願をしただけで、実際には試験を受けない子どもも出てくるでしょう。たとえば、国公立大学の後期日程に出願をしたものの、前期日程で合格をした高校生の中には、後期の試験を欠席することも少なくありません。
そのため、志願倍率は実際の入試状況を正確に反映していないといえます。受験前に、志望校のレベルを測る材料のひとつとして捉えておくとよいでしょう。
受験倍率とは?
受験倍率は実際に入試を受けた子どもの数を、募集定員で割って計算されます。そのため、受験が終わった後に判明する数値です。
たとえば、募集定員が50人の学校の入試を200人が受けた場合、「200÷50」の計算式で、受験倍率は4.0倍となります。
実質倍率とは?
実質倍率は受験者数を、合格者の人数で割って求められます。そのため、入学試験が完全に終了し、合格発表が出るまでは明らかになりません。たとえば、200人の子どもが受験をして250人が合格した場合、「200÷250」の計算式を用いると、実質倍率は0.8倍となります。
国公立校受験では、志願倍率から実質倍率までの動きは大きくありません。対して私立校の場合は、志願倍率と実質倍率との間で、大きな差が生じることは普通です。
私立の中学校や高校、大学を受験する子どもの中には、複数の学校をかけ持ちしていることも少なくありません。特定の学校に合格しても、入学を辞退するケースはたくさんあります。学校側は毎年の受験データから、「何人くらいの合格者が辞退する」ことを知っているので、あらかじめ募集定員よりも多くの合格者を出すのです。
倍率と合格率の関係性
受験を考えている学校の倍率が高いと、「合格できないかもしれない」と不安に感じることもあるでしょう。倍率が高いと、合格率も低くなってしまうのでしょうか。
結論を述べると、倍率と合格率には必ずしもつながりがあるとはいえません。受験では各学校で「合格最低ライン」を設定していることが多く、最低ラインをクリアできるかどうかが、合格のカギを握っているといえるためです。
また、受験生のすべてが自分と同じようなレベルにあるとも限りません。記念受験やまぐれの合格を期待する、チャレンジ受験をする子どももいるでしょう。そのため、倍率が高かったとしても、必ずしも自分の合格率が下がるとはいえないのです。
倍率が高まることで合格最低ラインも上昇する可能性があるものの、さほど気にする必要はありません。倍率が急上昇していれば話は別ですが、倍率の高さは例年のこと。倍率のことを不安に感じるよりも、合格に必要な最低点をいかに超えるかどうかの方が大切です。
志願先変更により倍率は変動する
都道府県の中には公立高校受験において、出願してから1度だけ、志願先を変更できる制度を設けているところがあります。最初の出願が終わると学校ごとの志願倍率が示され、倍率や併願校の合格状況などを見て、志願先を変更する子どもは珍しくありません。
注意したい点が、志願倍率の高さを理由として出願先を変更することです。たとえば、レベルがほとんど変わらないA高校とB高校の2つがあったとします。最初に志願したA高校の志願倍率が1.8倍、B高校の志願倍率が1.2倍だったため、A高校から倍率がより低いB高校へ志願先を変更。
しかし、その後の志願倍率をチェックしたところ、A高校は1.3倍、B高校は1.4倍と逆転していたケースも実際に考えられます。
「倍率が低い学校の方が、合格率が高まる」などと、同じ考えを持った子どもたちが、こぞって志願先を変更するためです。そのため、「倍率が高いから」という理由のみで、安易に志願先を変更することには注意しなければいけません。変更したことによって、より合格率が下がってしまうこともあるでしょう。
志願先変更の判断は非常に難しいため、必ず受験に精通している学校の先生や、塾の講師などに相談してください。前述したように、倍率が高かったとしても、合格最低ラインを超えられる学力を身につけておくことで、倍率に左右されずに合格を勝ち取れるようになります。
倍率が1より低いと必ず受かるのか?
先で説明したように、倍率とは「〇人の受験生の中で、1人が合格する」ことを示すもの。気になるのが、倍率が1未満の場合です。
たとえば、募集定員50人の学校の受験者が30人だった場合、倍率は0.6となります。高校受験や大学受験では、倍率が1より低い学校も実際に見受けられます。この場合は1人以上、つまり、受験生は全員が合格することと理論上示していますが、果たして本当なのでしょうか?
学校にもよりますが、受験したからといって必ずしも合格するとは限りません。たとえ受験者数が募集定員に達していなくても、合格最低ラインを超えなければ不合格とする学校があるためです。
そのため、出願した学校の倍率が1より低くても、安堵してはいけません。合格最低ラインをしっかり超えられるように、入試本番まで受験勉強を続けるようにしてください。
倍率が低い=合格しやすいとはいえない
倍率が低い=合格しやすいとは、必ずしもいえません。たとえば、A中学の倍率が1.2倍、B中学の倍率が1.5倍だったとします。
倍率だけを見ると、B中学よりもA中学の方が低く、より合格しやすいと思うかもしれません。2つの学校の偏差値が同レベルだった場合は、確かにA中学の合格確率の方が高くなるでしょう。しかし、A中学の偏差値がB中学よりも高かった場合は、B中学の方が合格しやすいといえます。
倍率が関係してくるのは、自分の実力に見合った学校を受験するときです。合格最低ラインを超えている学校を受験する場合は、倍率が高くても合格の可能性が高くなります。反対に、倍率が低い学校でも、学力が合格最低ラインギリギリの場合は安心できません。
中・高・大学受験の平均的な倍率とは?
最後に中学受験と高校受験、大学受験における、平均的な倍率を紹介します。
中学受験の平均的な倍率
以下は2015年における、東京都の中学受験の実質倍率です。
男子校・女子校・共学校別
種類別 | 実質倍率 |
---|---|
男子校 | 2.5倍 |
女子校 | 1.9倍 |
共学校 | 2.4倍 |
国立・私立・中高一貫別
種類別 | 実質倍率 |
---|---|
国立 | 4.1倍 |
私立 | 2.0倍 |
中高一貫 | 6.0倍 |
女子校よりも男子校や共学校、また、私立よりも国立や中高一貫校の実質倍率が高いことがわかります。
最近の傾向としては、受験者数の増加が挙げられます。男子校や女子校だった私立中学が共学になったり、これまでにはなかったタイプの入試を課す学校が表れ、受験生への門戸が広がったりしたことが要因です。難関校では受験者数の増減はあまりないものの、中堅校以下では増減の幅が大きく、今後も共学化や新しいコース設置といった、学校改革が進むものと思われます。
中高一貫校は、依然として人気が高いです。私立中学の中には公立中高一貫校の入試スタイルを導入しているところもあり、併願する子どもを集めようとする傾向もみられています。
高校受験の平均的な倍率
東京都立高校の2022年度一般入試における、男女別の実質倍率は次の通りです。
男女別 | 実質倍率 |
---|---|
男子 | 1.39倍 |
女子 | 1.4倍 |
男子の実質倍率は4年前から低下が続いていましたが、2022年度の一般入試では上昇しました。女子は隔年で上下しており、2022年度は前年よりも0.01倍上昇しました(2021年度は1.39倍)。
実質倍率が低下しなかったことの要因として考えられるのが、高校の募集定員を増やさなかったことです。東京都への人口流入により、2021年からの10年間は、中学校の卒業生が増加すると予測がありましたが、2022年度の入試では募集定員の増加がありませんでした。また、私立高校の推薦入試の基準が上昇したことで、公立高校を受験する子どもが増えたことも考えられます。
大学受験の平均的な倍率
2021年度入試における国立大学と公立大学、私立大学別の実質倍率は次の通りです。
種類別 | 実質倍率 |
---|---|
国立大学 | 3.8倍 |
公立大学 | 4.4倍 |
私立大学 | 3.1倍 |
国立大学と公立大学、私立大学、いずれも前年の実質倍率よりも下がっています。
国公立大学では経済・経営・商、国際・国際関係、外国語関係の学部で倍率の低下が目立ちました。新型コロナウイルスの影響から観光業が打撃を受けたり、海外留学が難しくなったりしたことが、特に国際・国際関係、外国語関係の学部に影響を与えたものと考えられます。
反対に、社会・社会福祉、医療・看護、家政・生活科学などは倍率がアップしました。医療・看護の場合は、医療への関心が高まったことが要因といえるでしょう。
私立大学では難関校から低倍率校まで、多くの大学で倍率が下がりました。新型コロナウイルスによる家計不安、また、超地元志向から大都市にある私立大学の敬遠などが理由と思われます。
学部系統別では文系学部で倍率ダウンが見られたものの、医療系学部では倍率ダウンは比較的小さく、理系の資格志向復活が予測できるでしょう。
まとめ
中学受験や高校受験、大学受験で目にする倍率は、主に志願倍率と受験倍率、実質倍率の3つに分けられます。それぞれが持つ意味合いや示しているものは異なるため、中身を正確に理解することが大切です。
受験先を決める上で倍率は参考材料のひとつとなりますが、あくまでも大切なのは合格最低ラインをクリアすること。たとえば、倍率が高かったとしても合格最低ラインをクリアしていれば、合格する確率が高まります。必要以上に倍率にとらわれず、学力を高めていく努力を最優先に考えましょう。
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