医学部浪人とは?50人の経験者に聞いて分かった!合格をつかみ取るポイント
「どうしても医学部に行きたくて浪人を考えているけれど、実際の成功率はどれくらいなのだろう?」このような疑問や不安を抱えている人は、多いのではないでしょうか。
文部科学省のデータによると、平成30年度の医学部医学科入学者選抜において、現役生(18歳以下)の合格割合は男性15%、女性11%にとどまっています。つまり、医学部合格者の約7〜8割は浪人生であり、医学部受験において浪人は決して珍しい選択ではありません。
参考:医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査の結果速報について(文部科学省)(平成30年9月4日公表)(2025年12月15日閲覧)
この記事では、医学部浪人を経験した50人へのアンケート調査をもとに、医学部浪人のリアルな実態を徹底解説します。
医学部浪人を検討している人にとって、進路を判断するための材料となる情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
編集部
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目次
医学部の浪人率は本当に高い

医学部の浪人率は約7〜8割
文部科学省のデータによると、平成30年度の医学部医学科入学者選抜において、現役生(18歳以下)の合格割合は男性15%、女性11%にとどまっています。つまり、医学部合格者の約7〜8割は浪人生であり、医学部受験において浪人は決して珍しい選択ではありません。
参考:医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査の結果速報について(文部科学省)(平成30年9月4日公表)(2025年12月15日閲覧)
現役合格が難しいからこそ、一度不合格を経験したうえで課題を見直し、浪人期間を活用して合格を目指す受験生が非常に多いのです。
また医学部受験は他学部と比べて試験科目が多く、求められる学力水準も高いため、現役時点で完成度の高い学力を身につけること自体が難しいという側面もあります。そのため浪人を経て学力を積み上げることは、医学部合格に向けた現実的な選択肢の一つだといえるでしょう。
医学部の合格率には厳しい現実がある
医学部医学科の合格率は、他学部と比べても非常に低い水準にあります。文部科学省が公表しているデータによると、令和7年度の医学部医学科(男女合計)の合格率は11.4%とされており、受験生のおよそ9割が不合格を経験している計算になります。
参考:令和7年度医学部(医学科)の⼊学者選抜における男⼥別合格率について(文部科学省)(2025年12月15日閲覧)
このように合格率が低いため、医学部受験では一度の受験で合格できないケースが珍しくありません。実際、不合格となった受験生の多くが浪人を選択し、翌年以降も医学部合格を目指して再挑戦しています。
その結果、現役生に高卒生(浪人生)が加わる構造となり、医学部受験では毎年高い競争率が続いています。この「積み上がる受験者構造」こそが、医学部受験が難関とされる大きな要因の一つです。
医学部浪人で成功率を上げるには?合格した人がやっていたこと

ここでは、医学部浪人を経て実際に合格を勝ち取った人の声をもとに、医学部浪人で成功率を上げるために重要なポイントを紹介します。
医学部受験は、闇雲に勉強時間を増やせば結果が出るものではありません。合格した人たちは、浪人期間を通して「何を・いつ・どのように勉強するか」を明確にし、戦略的に受験対策を進めていました。
まずは、多くの合格者が共通して実践していた代表的な取り組みから見ていきましょう。
過去問研究に着手して、出題傾向をつかんだ
医学部浪人で合格した人の多くが挙げていたのが、過去問研究への着手です。
過去問に目を通すことで、志望校で頻出の分野や問題の難易度、出題形式、そして合格に必要な得点感覚を具体的に把握できたといいます。
特に医学部受験では、大学ごとに出題傾向や重視される科目が大きく異なるため、過去問を通じて「その大学が何を求めているのか」を理解できたことが、勉強の方向性を定めるうえで大きな助けになったという声が多く見られました。
実際の合格者からは、次のような体験談が寄せられています。
志望校の「過去問研究」です。日本大学や併願していた埼玉医科大学の過去問を10年分解き、「似たような出題形式」や「捨て問のパターン」を徹底的に分析しました。大学ごとのクセを見抜いたことが合格の鍵でした。(MKOさん・2浪の末、2023年4月に日本大学医学部に合格)
過去問演習の徹底です。志望校の過去問を解き、解説を熟読するだけでなく、間違えた問題や関連分野の基礎知識をすべて洗い出し、完璧に理解するまで繰り返す学習法を実践しました。特に記述式の答案作成練習は、予備校の添削を最大限に活用しました。(Fさん・3浪の末、2023年4月に北海道大学医学部に合格)
弱点科目を最優先で潰していた
医学部浪人で合格した人に共通していたもう一つのポイントが、弱点科目を後回しにせず、最優先で対策していたことです。
浪人生活では、つい得意科目や好きな科目に時間をかけてしまいがちですが、合格者の多くは「合格を遠ざけている原因がどこにあるか」を冷静に分析していました。そのうえで、点数が安定しない科目や、足を引っ張っている分野に重点的に時間を割いていたといいます。
特に医学部受験では、1科目でも大きな弱点があると総合点で不利になりやすく、「全科目で一定以上の得点を取ること」が重要になります。そのため、合格した人ほど「苦手を放置しない」姿勢を徹底していました。
不得意な科目を集中的につぶしていく(KKさん・1浪の末、2021年4月に香川大学医学部に合格)
苦手分野を克服することです(katoさん・1浪の末、2022年4月に神戸大学医学部に合格)
マイルールのもと勉強を習慣づけた
医学部浪人で合格した人の多くに共通していたのが、自分なりのマイルールを決め、勉強を習慣として定着させていたことです。
朝型の生活を意識し、毎日ほぼ同じ時間帯に勉強を始めることで、自然と集中しやすい状態をつくっていたという声が多く見られました。「やる気があるかどうか」に左右されず、決めた時間になったら机に向かうという姿勢が、浪人生活を安定させるポイントになっていたようです。
また勉強を特別なものとして構えるのではなく、生活の一部として組み込むことで、無理なく継続できたという意見もありました。
実際の合格者からは、次のような体験談が寄せられています。
朝から頑張って机に座って勉強(みみさん・1浪の末、2022年4月に長崎大学医学部に合格)
朝の勉強で30分だけ単語を覚えると言う時間を自分の中で作った(りゅうちゃみさん・1浪の末、2024年4月に大阪大学医学部に合格)
毎日しっかり寝て、早朝4時から勉強する方法が自分に合ってました。(okomeさん・1浪の末、2024年4月に京都大学医学部に合格)
孤独感への対処法を考えた
医学部浪人では、学習面だけでなく精神面のケアも成功率を左右する重要な要素になります。アンケートでは、医学部浪人を経験した人のうち、「孤独感を少しでも感じた」と回答した人が35人に上りました。
浪人生活は周囲と比較しやすく、思うように成績が伸びない時期には、不安や孤独感を強く感じやすくなります。そのため、合格した人の多くは、孤独感を完全になくそうとするのではなく、どう向き合い、どう発散するかをあらかじめ考えていた点が共通していました。
実際の合格者からは、次のような声が寄せられています。
予備校の教務スタッフやチューターに、週に1度は不安を吐き出す面談の時間を設けてもらいました。また、日曜の夜だけは好きなラジオを聴きながら散歩をする時間を確保し、意識的にリフレッシュを行いました。(MKOさん・2浪の末、2023年4月に日本大学医学部に合格)
気分転換にバイク乗ったりしてました(zousanさん・1浪の末、2023年4月に大阪大学医学部に合格)
実際に医学部浪人をする前に!考えておくべきこと

ここでは、医学部浪人を始める前に必ず整理しておきたいポイントについて解説します。
浪人は時間も費用もかかる選択だからこそ、事前の自己分析がその後の結果を大きく左右します。
自分がなぜ医学部を目指しているのかを再確認する
医学部浪人を選択する前に、まず考えておきたいのが、自分がなぜ医学部を目指しているのかという原点です。
医学部受験は長期戦になりやすく、浪人期間中には成績の停滞や精神的な負担に直面する場面も少なくありません。そのようなときに目指す理由があいまいだと、途中で気持ちが揺らいでしまう可能性があります。
昔から医師になりたいという思いが強く、他の学部が視野に入ることはほとんどありませんでした。人の役に立てる仕事に就きたいという気持ちと、医学への興味がずっとあったため、自然と医学部一本に決めていました。(hitさん・1浪の末、2020年4月に三重大学医学部に合格)
努力の結果が実力として明確に求められる分野だと考えたため(しんさん・2浪の末、2022年4月に昭和大学医学部に合格)
スケジュールを確立できるかどうか
医学部浪人を始める前に、自分が1年間の学習スケジュールを継続的に回せるかどうかを考えておくことは非常に重要です。
医学部受験は短期集中では成果が出にくく、日々の積み重ねが結果を左右します。そのため合格した人の多くは、気分や体調に左右されにくい安定した学習スケジュールをあらかじめ意識していました。
実際に合格した人のスケジュール例を見てみましょう。
朝8時に予備校に行き、22時の閉館まで滞在していました。
午前中(3時間):数学・物理の重い記述問題
午後(4時間):講義受講と復習
夕方以降(4時間):英語長文、化学の暗記、小論文対策1日の総学習時間は約11~12時間です。日曜日は模試がない限り、復習中心で8時間程度に抑えて体力調整をしていました。(YKさん・2浪の末、2024年4月に昭和大学医学部に合格)
総学習時間は週に約80時間。平日は13時間、土曜日は10時間、日曜日は5時間勉強しました。
科目の配分は、苦手な理科と数学に比重を置き、英語と国語は毎日継続して触れるようにしました。(ケイさん・1浪の末、2024年4月に慶應義塾大学医学部に合格)
医学部以外の第2志望をどう考えるか
医学部浪人を経て合格した人へのアンケートでは、医学部以外の第2志望をあらかじめ考えていた人が26人に上りました。
第2志望を考えることは、医学部を諦めるための準備ではなく、万が一の場合に備えた現実的なリスク管理といえます。進路の選択肢を整理しておくことで、浪人生活を長期的な視点で捉えやすくなり、結果として医学部合格に集中しやすくなるケースも少なくありません。
実際の合格者からは、次のような声が寄せられています。
関西大学 化学生命工学部を第2志望として考えていました。医学部が難しい場合でも、理系分野で専門性を高められる進路を確保したかったからです。(ユウさん・2浪の末、2024年4月に近畿大学医学部に合格)
名古屋市立大学薬学部。医療に関わる仕事をしたい気持ちが強かったため。(とんとんさん・1浪の末、2023年4月に名古屋大学医学部に合格)
浪人期間の上限はどれくらいか
医学部浪人を経験し医学部に合格した人へのアンケートでは、浪人を始める前に「何年まで挑戦するか」をある程度決めていた人が35人に上りました。
浪人期間の上限を決めることは、諦めのラインを引くことではなく、受験に本気で向き合うための前提条件といえるでしょう。
あらかじめ自分なりの基準を持っておくことが、医学部浪人を乗り切るうえで重要になります。
実際の合格者からは、次のような声が寄せられています。
家族と話し合い、経済的負担や精神的な限界を考えて「1浪まで」と決めました。(とんとんさん・1浪の末、2023年4月に名古屋大学医学部に合格)
医学部受験は「多浪の沼」にハマりやすいと聞いていたからです。親とも話し合い、「2浪までは学費の高い医学部専門予備校に通わせてあげるが、それでダメなら医学部は諦めて他学部へ行く」という明確なラインを引くことで、自分を追い込みました。ダラダラ続けるのが一番怖かったです。(くみさん・2浪の末、2023年4月に昭和大学医学部に合格)
医学部浪人の成功率はどれくらい?専門予備校に通う必要はある?
ここでは、医学部浪人の成功率について解説します。
医学部浪人の成功率は一般的に低い
医学部受験は、全学部の中でも特に合格率が低い試験として知られています。受験者数に対して募集人数が限られており、大学ごとに高い学力水準が求められるため、浪人をしても簡単に合格できるわけではないのが現実です。
医学部受験は、
- 現役では学力が完成しきらない
- 大学ごとの対策に時間がかかる
- 一度の失敗で諦めず、再挑戦する文化がある
といった背景から、複数回の挑戦を前提に受験に臨む人も少なくないのです。
次の項目では、医学部浪人で合格した人が、実際にどのくらいの浪人回数を経て合格しているのかについて、詳しく見ていきます。
医学部浪人での合格は1浪が多い
今回のアンケートで、浪人を経て医学部に合格した人の内訳を見ると、1浪が23人、2浪が12人という結果になりました。このことから、合格者の約9割が1〜2浪で医学部に合格していることがわかります。

この結果からも、医学部浪人では1年、もしくは2年の浪人期間で結果を出しているケースが多いといえるでしょう。
一方で、浪人期間が長くなるほど、学習面だけでなく精神面や生活面での負担も大きくなる傾向があります。
そのため、浪人を検討する際には、1〜2浪を一つの目安として戦略を立てることが、現実的な選択肢の一つだと考えられます。
医学部浪人は予備校費用がかかる
今回のアンケートでは、医学部浪人を選んだ人のうち、半数以上にあたる29人が医学部専門予備校に通っていたという結果になりました。
費用面を見ると、200〜400万円と回答した人が13人、400万円以上と回答した人が7人に上っており、医学部浪人では予備校費用が大きな負担になるケースが多いことがわかります。
医学部専門予備校に通うことを決めた人からは、次のような声が寄せられています。
医学部受験は科目数が多く、配点バランスや大学ごとの出題傾向の違いが大きいため、専門的な指導が必要だと感じました。医学部専門予備校は情報量が豊富で、個別の弱点を徹底的に分析してくれる点が魅力でした。また、同じ目標を持つ仲間が多く、勉強のモチベーション維持にも役立ちました。(みつきさん・1浪の末、2024年4月に国公立大学の医学部に合格)
医学部入試は情報戦の要素が強く、独学では限界を感じていました。過去問分析や大学別対策、面接・小論文対策まで一括でサポートしてもらえる点に魅力を感じ、医学部専門予備校を選びました。(ユウさん・2浪の末、2024年4月に近畿大学医学部に合格)
このように、医学部専門予備校は費用が高額になりやすい一方で、情報量や指導体制、学習環境を重視して選ばれていることがうかがえます。医学部浪人を検討する際には、合格可能性だけでなく、どこまで費用をかけられるのかという現実的な視点も欠かせません。
浪人して医学部に合格した人の体験記

ここでは、塾選に寄せられた、浪人を経て医学部に合格した人の体験記を紹介します。実際に合格をつかんだ受験生本人や保護者の声から、どのような勉強法や姿勢が合格につながったのかを見ていきましょう。
浪人は1年と決め、最後までやり切った覚悟が合格につながった
弘前大学医学部に合格した受験生の中には、浪人期間を1年と決めて挑戦したケースもあります。
高卒生から学習開始時の偏差値60の受験生の保護者の弘前大学医学部の合格体験記には、以下のような記述があります。
ニックネーム:母親(40代)
この体験談からも分かるように、浪人期間の上限を明確に決めたうえで、日々の学習に全力で向き合ったことが、合格につながった大きな要因だといえます。
環境を変えた浪人生活が、人としての成長と合格につながった
自治医科大学に合格した受験生の中には、浪人を機に生活環境を大きく変えた方もいます。
小6から学習開始時の偏差値70の受験生の保護者の自治医科大学の合格体験記には、以下のような記述があります。
ニックネーム:母親(50代)
この体験談からも分かるように、浪人期間において「学習環境」や「生活環境」を変えたことが、受験勉強だけでなく人としての成長につながったケースもあります。
まとめ 医学部浪人は覚悟が重要になる

医学部受験において、浪人は決して珍しい選択ではありません。文部科学省のデータやアンケート結果からもわかるように、医学部合格者の多くが浪人を経験しており、浪人そのものが不利になるわけではないのが実情です。
一方で医学部浪人は「時間をかければ必ず報われる」という単純なものでないというのも事実です。
合格した人たちは、過去問研究や弱点克服、学習習慣の確立といった戦略的な勉強に加え、スケジュール管理や孤独感への対処など、生活面・精神面の準備も怠っていませんでした。
医学部浪人に必要なのは、根性論ではなく、覚悟と現実的な判断力。覚悟とは「絶対に合格する」という気持ちだけでなく、途中で迷いや不安が生じたときに立ち返れる基準を持つことでもあります。
この記事で紹介したデータや体験談が、医学部浪人を検討している人にとって、納得のいく進路選択をするための一助となれば幸いです。
アンケート調査概要
調査対象:過去5年以内に医学部浪人を経験したことがあるという方(有効回答数50名)
調査時期:2025年12月
調査機関:自社調査
調査方法:インターネットを使用した任意回答
調査レポート名:過去5年以内に医学部浪人を経験したことがあるという方へアンケート
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。