私立高校無償化はずるい?!不公平に見える6つの理由
「私立高校まで無償化って、正直ずるくない?」
公立高校を目指して必死に勉強し、塾代や模試代をやりくりしてきた保護者ほど、こう感じてしまうのは無理もありません。ニュースでは「私立も授業料ゼロ」「高校無償化が拡大」といった言葉が並び、まるで“私立を選んだ家庭だけが得をする制度”に変わったかのように見えてしまうからです。
私立高校無償化は本当にずるいのか-本記事では「ずるい」と感じてしまう理由や、制度の仕組みをわかりやすく解説します。
編集部
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目次
私立高校無償化が「ずるい」と言われる6つの理由
私立高校無償化に「ずるい」「不公平」と感じるのには、6つの理由が考えられます。

理由① 公立高校を選んだ家庭が報われないと感じるから
最も多いのが、「公立を選んだ家庭ほど損をした気分になる」という声です。
経済的な理由から、
- 塾代を抑え
- 私立併願を減らし
- 必死に勉強して公立高校に進学した
という子どもは少なくありません。
その結果、
「節約して公立を選んだのに、私立に行った家庭の授業料まで税金で支援されるのは納得できない」
という感情が生まれます。家計を優先した判断が、結果的に不利に見えてしまうことで、「ずるい」という思いを強めています。
理由②「お金持ちが優遇されている」ように見えてしまうから
私立高校を選択できる時点で、一定の経済的余裕がある家庭が多いのも事実です。
そのため、
「本来なら自分たちで私立高校の学費を払えるはずの家庭まで、なぜ税金で負担するのか」
という疑問が生じます。
特に、公立高校に進学しながら家計に余裕がない家庭ほど、
- 本当に困っている家庭が後回しにされているのではないか
- 福祉や公立学校の改善の方が優先ではないか
という不満を抱きやすくなります。
私立高校無償化=お金持ちが優遇されているように見えてしまう構図が、不公平感を生んでいます。
理由③ 所得制限があるから
②とは逆に、所得制限で制度が適用外になった側からの「ずるい」です。
「残業をして年収を上げたら、支援がゼロになった。頑張って働いたのに...」
「税金を多く負担している層が、行政サービスから除外されるのは不公平では...?」
特に所得制限のボーダーライン上で適用外となってしまった場合は、こうした気持ちを感じやすいかもしれません。高校無償化は、2024年度まで所得制限があり、年収910万円以上の家庭は制度が適用されませんでした。2025年度は新たに「高校生等臨時支援金」が設けられ、基準額として年額11万8,800円が所得制限なしで支給されています。
※2026年度以降は国が検討中であり、未定です。
理由④ 住んでいる場所による上乗せ支援があるから
私立高校無償化は、国の制度に加えて自治体の上乗せ支援があります。象徴的なのが、東京都の私立高等学校等授業料軽減助成金です。
東京都では所得制限を撤廃し、私立高校の授業料支援を大幅に拡充しました。
その結果、
「同じ私立高校に通っているのに、県境を越えるだけで負担額が何十万円も違う」
という事態が生まれています。
理由⑤ 会社員の家庭ほど不利に感じやすいから
私立高校無償化の判定基準は「課税所得」です。
- サラリーマン家庭:給与がそのまま判定に反映
- 自営業家庭:経費計上で所得を圧縮可能
そのため、
「生活水準が高い自営業家庭が対象で、共働きサラリーマン家庭が対象外」
という逆転現象も起こり得ます。
理由⑥「無償化」という言葉に誤解があるから
「私立高校無償化」という言葉から、『私立高校の学費がすべてタダになるの?』と誤解する人も少なくありません。
実際に無償化されるのは授業料のみで、
- 施設費
- 教材費
- 修学旅行費
- 制服代
- ICT費用
などは別途必要です。「すべてが無料になる」という誤解から、「私立高校の学費まで税金で面倒を見るのか」という反感を生みやすくなっています。
私立高校無償化はずるい!そう思う前に知っておきたいこと
私立高校無償化は、言葉だけ聞くと「私立まで税金で?」とモヤモヤしやすい制度かもしれません。ただ、制度の全体像を整理してみると、「ずるい」と言い切れない理由も見えてきます。ここでは、制度の目的や、誤解されやすいポイントを確認してみましょう。

制度の目的は「教育格差」をなくすこと
「節約のために公立を選んだのに」という家庭からすると、私立高校の無償化は「ずるい」と感じることもあるでしょう。しかしながら、この制度の本来の目的を理解することも大切です。
制度の本来の目的は、家庭の経済状況によって進学先の選択肢が狭まることを防ぎ、子どもが「学びたい学校」を選べる環境をつくること=教育格差の是正にあります。私立高校無償化は、「学費が理由で私立高校を選択できなかった家庭」の選択肢を広げるための仕組み。教育のスタートラインを少しでも揃えるための制度なのです。
私立高校無償化の対象は「授業料」のみ-自己負担額は60万円以上違う
私立高校無償化といっても、自己負担額が公立高校と同じになるわけではありません。無償化の対象になるのはあくまで授業料のみ。塾選ジャーナルが東京都の私立高校と公立高校の自己負担額をシミュレーションしたところ、3年間で60万円以上の差がありました。※2025年時点
私立と公立で60万円以上の差が生まれる主な理由は、私立高校が授業料以外の部分に多くのコストをかけているためです。例えば、少人数クラス、ICT機器の整備、探究学習や英語教育の強化、手厚い進学指導などは、授業料とは別の「施設費」「教育充実費」「ICT費」として家庭が負担します。
自治体による上乗せ支援も一概にずるいとは言えない
国の制度に加え、自治体が独自の上乗せを行うことで、住む場所による格差を感じるケースがあるかもしれません。 自治体の上乗せ支援として代表的なのが、私立高等学校等授業料軽減助成金の所得制限を撤廃した東京都です。
▼東京都の「私立高等学校等授業料軽減助成金」

参照元:東京都「所得制限なく私立高校等の授業料支援が受けられます 6月20日からオンラインで申請開始」
- 川一本の格差: 「川を一本挟んだ埼玉・千葉・神奈川に住んでいるだけで、同じ高校に通っているのに自己負担額の差が出る」
- 地方からの視点: 「東京は企業が多く税収が潤沢だからできること。地方在住者からすれば、同じ日本国民なのに不公平すぎる」
高校の授業料だけを見れば、こうした不公平感を抱くのもうなずけます。
一方で生活にかかる支出の差で見るとどうでしょうか。特に、東京都では他地域と比べて、家賃相場の高さも際立ちます。例えば、2部屋の家賃相場を見ると、東京都と神奈川県の差額は13,808円。3年間で計算すると家賃の差額は約50万円です。
| 都道府県 | 2部屋(2DK・2LDK)の家賃相場 | 東京を100%とした場合の水準 |
|---|---|---|
| 東京都 | 90,250円 | 100% |
| 神奈川県 | 76,442円 | 86% |
| 千葉県 | 61,011円 | 76% |
| 埼玉県 | 64,864円 | 78% |
参照元:全国賃貸管理ビジネス協会 全国平均家賃による間取り別賃料の推移を基に作成
家賃は一例ですが、こうした生活全体の支出で見たときには、一概に上乗せ支援がずるいとは言い切れないことが分かります。
私立高校無償化制度は「過渡期」-今後も見直される可能性がある
私立高校無償化制度は、今の形で完全に固定された制度ではなく、これまでも段階的な見直しが行われてきました。実際に、2025年度には所得制限の緩和や新たな支援の仕組みが導入されており、2026年度以降についても、国は制度の在り方を継続的に検討していく方針を示しています。
▼これまでの高校無償化制度のあゆみ
| 対象年度 | 収入による制限 | 公立高校への支援 | 私立高校への支援 |
|---|---|---|---|
| 〜2024年度 | あり(年収910万円未満が対象) | 対象世帯は年11万8,800円まで支給(授業料相当額がカバーされる) | 年収910万円未満の世帯は年11万8,800円まで支給。さらに年収590万円未満の世帯は最大年39万6,000円まで支給 |
| 2025年度 | 一部あり | 収入に関係なく年11万8,800円が支給され、授業料は実質無償 | すべての世帯に年11万8,800円を支給(臨時支援措置)。年収590万円未満の世帯は従来どおり最大年39万6,000円まで支給 |
| 2026年度以降(予定) | 所得制限なし | すべての世帯に年11万8,800円を支給 | すべての世帯に最大年45万7,000円まで支給予定 |
制度全体としては、家庭の経済状況によって進路の選択肢が狭まらない方向へ少しずつ調整が続いている途中段階だと考えられます。私立高校無償化を「ずるい」と感じてしまう背景には、こうした過渡期ならではの分かりにくさもあるといえるでしょう。
損しない進路選びのために―私立高校無償化制度を冷静に活用するためのポイント

私立高校無償化をめぐって「ずるい」「不公平」と感じるのは、決しておかしなことではありません。大切なのは、制度の印象だけで進路を判断してしまわないことです。後悔しないために、保護者が押さえておきたいポイントを整理します。
① 授業料ではなく「3年間の総額」で比較する
無償化の対象は授業料のみで、施設費・教材費・修学旅行費・ICT費などは別途かかります。私立高校と公立高校を比べる際は、「1年あたり」ではなく「3年間で家庭が実際に支払う総額」で比較することが重要。学校説明会や募集要項で、年間の納付金や諸費用を必ず確認しましょう。
② 自治体の上乗せ支援を必ず確認する
国の制度に加えて、都道府県や市区町村が独自の支援を行っている場合があります。同じ私立高校でも、住んでいる地域によって実際の自己負担額が変わることがあるため、自治体の公式サイトや学校からの案内で最新情報をチェックしておくことが大切です。
③ 進学先を選ぶ「理由」をお金以外の面でも整理する
私立高校には少人数制やICT活用、探究学習、進学サポートの手厚さなどの特徴がある学校もありますが、一方で、学習環境のレベルが高い公立高校も数多く存在します。「その学校の学力層や校風が子どもに合っているか」「どんな3年間を過ごせるか」という観点で、公立・私立をフラットに比較することが、後悔しない進路選びにつながります。
④ 制度は今後も変わることを前提に考える
高校無償化制度は、これまでも何度も見直されてきました。2026年度以降も制度が変更される可能性があります。現時点の情報だけで判断せず、学校や自治体、文部科学省の最新情報を定期的に確認しながら進路を考えることが重要です。
⑤ 支援を受けるために必ず申請をする
私立高校無償化は「自動的に適用される制度」ではありません。国の就学支援金や自治体の上乗せ支援は、保護者が期限内に申請してはじめて支給されます。申請書の提出忘れなどがあると、本来受けられるはずの支援が受けられなくなってしまいます。
私立高校無償化 ずるいについてのよくある質問(FAQ)
Q. 私立高校無償化のデメリットはなんですか?
私立高校無償化制度は授業料負担を軽減しますが、いくつかのデメリットあります。まず、制度の対象となるのは、授業料のみという点。施設費・教材費・修学旅行費・制服費などは引き続き自己負担になります。初年度には入学金や制服代などの諸費用がかさむこともあります。
また、制度は段階的に見直しが進んでおり、現行制度が最終形ではありません。自治体によって支援内容や申請手続きも変わります。住んでいる地域で負担額が異なることも「デメリット」と感じられるポイントです。
Q.世帯年収1200万円の場合、高校無償化制度を受けられますか?
2025年度時点では、国の高校無償化制度(=高等学校等就学支援金制度)による基準は世帯年収約910万円未満(課税所得ベース)が支援対象です。2025年度は、対象外となった世帯への救済として別途「高校生等臨時支援金」が設けられ、申請すれば年額最大11万8,800円の支援を受けられる仕組みがあります。
2026年度からは制度の見直しが進み、私立高校への授業料支援の所得制限を撤廃、すべての世帯が支援を受けられる方向で制度が整えられる予定です。
Q. 共働きと片働きで有利不利はありますか?
一般的に「片働き」の方が有利になりやすい仕組みです。 同じ世帯年収1,000万円でも、「夫1,000万・妻0」の家庭は配偶者控除等が適用され課税所得が下がりますが、「夫500万・妻500万」の共働き家庭は控除が少なくなり、判定額が高くなる(不利になる)傾向があります。
Q.結局、私立と公立はどちらが得ですか?
「どちらが得か」は、授業料だけでなく、3年間の総額(施設費・教材費・行事費など)と、学校の教育内容や校風を含めて判断する必要があります。学校選びで重視すべきポイントは「その学校で子どもがどんな3年間を過ごせるか」です。
まとめ:高校無償化制度は最新の情報収集を
この記事では、私立高校無償化を「ずるい」と感じる6つの理由を解説しました。「ずるい」という声が出るのは、制度そのものよりも、“自分の家庭だけが損をしているように感じる状況”が起きやすいためです。
一方で、高校無償化制度は、家庭の経済状況によって進路の選択肢が狭まることを防ぎ、教育格差の是正に一定の役割を持つ政策でもあります。大切なのは、「ずるい/ずるくない」で結論を出すことではなく、自分の家庭にとってどう影響する制度なのかを冷静に把握すること。2026年度に向けて制度が見直される可能性もあるため、次のポイントは早めに押さえるのがおすすめです。
- 対象になる条件(所得要件・学校種別・自治体の上乗せ)
- 申請の要否と手続き時期(いつ・どこで・何が必要か)
- 授業料以外にかかる費用(教材費・制服・修学旅行・ICTなど)
学校・自治体の案内や公式発表など、最新情報をこまめチェックしましょう。
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