2か月の短期決戦で三田学園中学校に合格!塾を辞めさせた後悔が母の生き方をも変えた|親たちの中学受験体験記 Vol.26
塾をやめてから中学受験を決断。しかも入試本番まではたったの2か月でした。異例の超短期決戦で見事合格へと導くことができたのはなぜか?
今回お話を伺ったのは、発達障害の疑いや学級崩壊、経済的な事情による塾の退会、その後の素行悪化など、いくつもの壁に直面してきたお母様です。想定外の中学受験を通じて、困難を成長のチャンスに変え、自身も新たな気づきを得たという中学受験体験を紹介します。
編集部
塾選ジャーナル編集部
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
目次
【保護者プロフィール】
| お名前 | 中村 麻衣(仮名) |
|---|---|
| お住まい | 兵庫県 |
| 年齢 | 45歳 |
| 職業 | 会社員 |
| 性格 | 楽観的で少し短気、勉強は基本的には自主性重視で口出ししたくないタイプ |
| 家族構成 | 4人家族(父・母・長男(中学1年生)・次男) |
【中学受験を行った子どものプロフィール】
| 子どもの名前 | 中村 悠真(仮名) |
|---|---|
| 性別 | 男子 |
| 現在通っている学校名 | 三田学園中学校 |
| 現在の学年 | 中学2年生(2025年1月受験) |
| 受験時にしていた習い事 | なし ※小6夏前まで エディック・創造学園に通塾 |
| 得意科目 | 国語 |
| 苦手科目 | 社会・理科 |
| 性格 | 社交的で人懐っこく積極的、インドア系の遊びが好き。友人に流されやすい。 |
| 偏差値 | - ※偏差値が出る模試の受験経験なし |
| 受験結果 | 三田学園中学校 前期A日程 3教科型 合格(第一志望) |
中学受験のきっかけは、息子の素行。律する目的で与えた中学受験の問題集

―最初に、お子さんの中学受験を考え始めた理由・きっかけを聞かせてください。
他の家庭と比べると特殊かもしれませんが、入試の2、3か月前まで中学受験はまったく考えていませんでした。
きっかけは、息子が通っていた小学校が荒れ始めたことです。コロナ禍の頃に起きた担任不在化の影響もあって、息子のクラスは崩壊しかけていました。子どもたちの素行も不安定なところがあり、このまま一緒に公立の中学校に進学させたくない……そう思うようになったんです。
―それは大変でしたね。息子さんにも影響があったんですか?
小学6年生の夏前、それまで通っていた学習塾をやめてから影響が出始めました。
小学校の成績が良かったので、家計への負担を減らすために学習塾をやめさせたんです。そしたら息子の交友関係が変わってしまって。
以前は学習塾に通う真面目な友達と放課後も遊んでいましたが、塾をやめてから素行に難のあるグループとつるむようになって、問題を起こしてしまったんです。
やはり環境は大事なんだと家族で考えて悩み、思い切って隣の学区に引っ越そうと決めたのが小学6年生の10、11月頃ですかね。後に受験することになる三田学園中学校は、新居の近くでした。
進学実績が評判なのも知っていましたし、「いっそ私立中学校に通う方がいいのかも……」と中学受験を意識することもありました。
―息子さんご自身は中学受験に前向きでしたか?
息子は学習塾をやめてから、暇になったせいか、トラブルに巻き込まれることが何度かありました。そこで夫が息子を律する目的で、中学受験用の問題集を与えたんです。すると意外にも集中して取り組むようになりました。しだいに正答率も上がってきたんです。
すると、学習塾時代の仲良しが三田学園中学を目指していることもあり、引っ越し先が決まった頃になって、息子も「中学受験がしたい」と言うようになりました。
それから猛勉強するようになり、過去問でも8割取れるようになって、息子の頑張りを無駄にはできないと感じて慌てて出願しました。
\ギリギリのタイミングで中学受験に踏み切ったきっかけ/

療育も考えた幼少期から、学習塾で変わるまで。“2か月で合格”を支えた土台づくり
―2か月の超短期決戦で合格できた背景には、それ以前に何か積み重ねてきたものがあったのでしょうか?
そうですね。夫が教育熱心なこともあり、幼稚園くらいからドリルなどで家庭学習の習慣はつけていました。ただ息子は理解が早いほうではなく、親が教えることでお互いにストレスになっていたんです。
親の言うことだと息子も素直に聞かないし、こちらも「何でこんなこともわからないの!」 って感情的になってしまうこともありました。
あまりにも学習に時間がかかるので、小学1、2年生くらいまでは療育が必要なのかもと思ったくらいです。専門の医療機関に相談に行ったら、症状というほどではないから、学習塾などでサポートしてもらうのがよいのではとアドバイスをもらいました。
―そこから学習塾に通うようになったのですね。
はい。コロナ禍で担任不在になってしまい、授業がまともに受けられなくなったことも重なって、小学3年生から塾に通うようにしました。
息子の特性を考えて個別指導塾にするかも迷いましたが、エディック・創造学園という兵庫県でも評判の良い集団指導塾を選びました。講師陣のアプローチがよかったのか、きちんと座って授業が受けられるようになったのがよかったです。
「きちんと座って……?」と思われるかもしれませんが、小学校のクラスが崩壊しかけていたので、それだけの進歩でもホッとしたんです。
―学習塾では何科目を受講されていたんですか?
小学3年生から算数と国語、小学4年生からは算数、国語、理科、英語です。
中学受験を目指していたわけではありませんが、理科は実験がメインだったり、国語も多読で読解力をつけたり、特長的な学習システムを持つ学習塾です。小学生のうちは思考力や好奇心を育んだり、学習習慣を身につける感じでした。
やはり塾だと息子も素直に学ぶ姿勢になりますし、講師の方々の手厚い指導もあったので勉強が得意になり、塾の成績も上位でした。
―療育を検討していた頃には想像できなかったような成長ぶりでしょうか?
はい、想像できないくらい成長しましたね。学習塾でしっかり学習習慣と基礎学力を身に付けたからこそ、たった2か月でも合格できたんだと思います。
\“2か月で合格”を実現できた理由/

塾をやめさせた後悔、そして「働いて選択肢を広げる」という新しい答え
―そんな成績も伸びていた学習塾を、小6の夏前に経済的な理由でやめたとのことでしたが、その時のことをもう少し詳しく教えていただけますか?
夏前の季節講習代や頻繁にあるテスト代が負担で、高校受験もだいぶ先だからと一度、やめることにしたんです。
実は学習塾をやめるとき、息子は泣いて嫌がったんです。それでも家計の負担を考えると続けさせてあげられませんでした。
―お母様としてもつらい決断ですよね。
つらかったです。息子が泣いている姿を見て、お金のことで子どもの学ぶ場所を奪ってしまっているんだと感じました。
それまでの私は、息子が学校や塾から帰ってきたときに玄関で出迎えてあげられることが、子どものためには一番大事だと信じていました。5歳下に次男もいますし、そうした思いもあって出産後はずっと専業主婦をしてきたんです。
でも息子が泣いた日から、ずっと引っかかっていたんですよね。「家にいること」が本当に子どものためになっているのかって。
―その気持ちが、また働き始めるきっかけになったのでしょうか。
はい。私が働いて家計に余裕ができれば、子どもたちの選択肢がもっと広がるんじゃないかと。いつも玄関で出迎えることはできなくなるけれど、その代わりに息子が望む環境を用意してあげられる。そう考えて夏休み中にパートではなく、フルタイムの仕事に就職しました。
だから、11月頃から息子が中学受験のために猛勉強するようになったとき、迷うことなく「頑張れ!」と背中を押すことができたんです。もし以前の私のままだったら、受験費用や学費の心配が先に立って、あの2か月を全力で応援することはできなかったと思います。
\中学受験を通じて、母親が変われたきっかけ/

塾をやめて本格化した中学受験。残り2か月で取り組んだ勉強法とは?

―ここからは中学受験を決意してからの2か月間、怒涛の受験勉強についてお話を聞かせてください。
本当にもう、超短期決戦です。その時は塾にも行ってないですし、学校見学すらできませんでした。
11月半ばの直前模試だけは間に合って、その試験会場が三田学園中学校だったので、かろうじて学校の雰囲気は感じることができましたね。
あとは私も夫もずっと地元・兵庫県三田市で暮らしているので、三田学園中学校について多少のことは知っていました。昔と比べて進学実績がかなり良くなっていると聞いていたので、なんとか通わせてあげたいと思いました。
―具体的にはどのような教材で受験勉強をしましたか?
夫がネットから良さそうな問題集をダウンロードしたり、市販の教材、たとえば『中学入試 自由自在問題集』(受験研究社)を買ったり。それを息子に渡しました。
11月の模試結果はC判定で残り2か月という状況です。すべてを丁寧に勉強する時間はもうありません。少しでも効率を上げようと、私と夫で過去問から入試に出そうな単元を予想し、絶対にできた方がいいと感じた箇所を選別しました。
―苦手科目は社会とのことですが、どのように対策しましたか?
息子の興味が薄いこともあって、暗記が上手くいきませんでした。模試でも34人中の34位という成績。いきなり受けた模試なので当然ですが、「社会は間に合わない……」と悟って諦めました。
入試は4科目か3科目かで選べたので、算数、国語、理科の3科目受験をすることにしました。
―受験科目を算数、国語、理科に絞ってからは順調でしたか?
理科は「社会よりはマシ」というレベルでしたね。小学校のテストはきちんとできていましたが、定着するほど勉強していないから、もう忘れてしまっているんです。私と夫で過去問から学習すべき単元を絞って、年が明けてから急いで詰め込みました。
算数は立体図形でつまずきましたが、私はもともとCADを使った仕事をしていたので、パソコンで空間図形の解説ができます。2Dの図形を3Dにして、息子でもイメージできるようサポートしてあげました。
―1日の勉強時間はどのくらいでしたか?
受験を決断する前は1日2時間くらい。受験勉強を始めてからは平日4~5時間、休日は朝から晩までしていました。食事と入浴以外はずっと勉強していて、いつも問題集を持ち歩いていました。
わずか2か月ですが息子の集中力には驚きました。
―中学受験の勉強はご夫婦で教えていたんですよね? 昔みたいに息子さんは嫌がりませんでしたか?
学習塾に通うようになってから理解が早くなったこともあり、親のサポートを嫌がらなくなっていました。夫は在宅勤務ができるので、息子がつまずいたらいつでも教えることができますし、私も帰宅してから、夫と交代で教えるようにしていました。
どの単元も同じように勉強していると間に合わないので、夫婦で進捗を確認して、重要な単元は理解できるまで繰り返し解かせていました。
\短い期間で志望校に合格できた勉強のポイント/

併願なしの一発勝負。ひたすら過去問に向き合う日々

―本番に向けてどのような受験日程だったのでしょうか?
自宅から通学可能な地域で、他に私立中学校はありません。だから併願校はなし。三田学園中学校だけ受験しました。もし不合格だった場合は、引っ越した先の学区にある公立中学校に進学させるつもりでした。
三田学園中学校の入試は全部で3回受けることができますが、受けるのは前期A日程の1回だけと決めていました。息子は1回だけでも挑戦さえすれば、結果がどうであれスッキリするだろうと。
それに2回目、3回目の試験は定員が少なく、上位クラスで落ちた受験生も再挑戦する場です。難易度もグッと上がるので、そこは割り切りました。
―入試本番の日は、どのように送り出されましたか?
模試も1回しか経験していないので、基本的な注意点を当日の朝に伝えました。受験票は持ったよね、時間配分を間違っちゃダメだよとか。
―合格に結びついたポイントは、どんなところにあると思いますか?
過去問を繰り返し解いたことです。8割正解できるまで繰り返しましたから。三田学園中学だけでなく、もう少しレベルが高い中学校の過去問も5年分、何度も解き直したのは良かったと思います。
―受験生活中に勉強以外で心掛けていたことは?
とにかく時間がありませんから、息子の受験勉強が最優先です。その前提で1日のスケジュールも作成しましたし、夫婦交代で息子の猛勉強に付き合いました。
テレビなども消して気が散らないようにもして。次男は5歳も下なので急にテレビを取り上げても理解ができず、イヤホンをして動画を見せるなどして、なんとかやり過ごしました。短い期間でしたが、家族が一丸となってサポートしました。
―いちばん大変だったこと、苦労された点は?
直前の12月に引っ越したので、前後2週間に加えて、年明けにインフルエンザで1週間、勉強ができなかったことです。2か月しか受験勉強できないのに、親子でかなり焦りました。
―振り返って「やっておけば良かった」と思うことはありましたか?
とにかくこんな状況ですから、もっと早くに中学受験することを決めれば良かったです。息子の集中力が続く期間で考えると、せめて半年前には決めておくべきでした。
\受験直前から本番にかけて意識したポイント/

予定外の中学受験がもたらした達成感と、これからのこと
―怒涛の中学受験を通して、息子さんに何か変化はありましたか?
息子があんなに達成感を得られた経験は初めてだったと思います。
必死に努力すれば、きちんと報われることを実感できたので、将来、いざというときに頑張れる子になってくれたのではないでしょうか。

―希望通り三田学園中学校には入れたわけですが、息子さんの学校生活はいかがですか?
受験のモチベーションになっていた学習塾の友達たちとも一緒に入学できましたし、入学後にも気の合う友達がたくさんできました。部活も週4、5日活動していて、バランスのよい学校生活を送っています。
学習面でいうと、三田学園はサポートが手厚いです。公立より授業の進度も早く内容も高度で、特に数学は教え方に定評があります。入学してから、息子もかなり実力が伸びたと思います。
学校内には学習塾のTOMASがサポートする自習支援室もあるので、塾に通わなくても学校の中で学びを深められるのがいいですね。
―お母様ご自身にとって、この中学受験はどんな経験でしたか?
振り返ると、息子のためにしたことが、私自身を変えてくれた気がします。
塾をやめさせたときは、お金のことで子どもの可能性を狭めてしまったと自分を責めました。でもその後悔があったから、また仕事に復帰する決断もできました。あの2か月、夫と交代で毎晩勉強を教えながら、家族ってこうやって変わっていくんだなと感じていました。
予定外の中学受験でしたが、親がびっくりするほど息子は頑張ってくれましたし、家族も一致団結してサポートしたので、絆も深まったように思います。
\中学受験が家族にもたらした好影響/

取材後記
発達障害かもと悩んだときや、小学校が学級崩壊しかけたとき、塾をやめさせたとき、そして息子の素行が悪くなってしまったとき。中村さんご一家は何度も壁にぶつかりながら、そのたびにご夫婦で一緒に考え、行動を起こしてきました。
なかでも印象的だったのが、「子どものための選択」を重ねるなかで、お母様自身もまた変わっていったというお話です。毎日玄関で出迎えてあげる日々から、子どもの進路の選択肢を広げるために働きに出る日々へ。
その心境の変化があったからこそ、2か月という異例の短期決戦を迷わず走り切ることができたのだと思います。
困難に直面しても立ち止まらず、家族のかたちを柔軟に変えていける強さこそが、中村さんご一家の絆なのだと学ばせていただいた取材でした。
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。