学習塾と一言にいっても指導スタイルから、大きく個別指導と集団指導の2種類に分けられます。どちらも勉強をする場所であるものの、それぞれで特徴は異なるので注意しなければいけません。 これから塾を探そうと思っている人は個別指導と集団指導、どちらが子供に向いているかを考えましょう。学習効果を何倍にもアップさせることが可能です。 今回は個別指導と集団指導の違いについて、それぞれの特徴やメリット・デメリット、費用、そしてそれぞれに向いている子供を解説します。
目次
監修者/堀田 潤(ほった じゅん)
新卒でメガバンクに総合職として入社。教育を志して大手予備校に転職し、新規事業部門のマーケティング・編集業務に従事。その後、東京・埼玉・神奈川の集団塾・ 個別指導塾にて講師・教室長を歴任。延べ17年に及ぶ塾業界でのマーケティング・教育現場経験を経て2023年4月に独立。長年現場で多くの生徒や保護者たちと接してきた視点を活かし、1人ひとりに合った塾選びがサポートできるアドバイスを行っている。
これまで塾に通った経験がないと個別指導と集団指導と聞いても、いま一つ詳しい内容をイメージできないことでしょう。ここでは、それぞれの特徴とメリット・デメリットを紹介します。
監修者アドバイス
自分はどのようなスタイルだと頭に入りやすいかを事前に確かめておくと良いでしょう。例えば、講義を一方的に受けたほうが頭に入りやすいのか、周りに人がいたほうが競争意識を持って勉強できるのか、周りに人がいないほうがよくて、会話形式で先生と話していくほうが頭に入りやすいのか。自分の勉強しやすいスタイルを把握しておくと、個別指導と集団指導でどちらが自分に合っているか選びやすくなります。
まずは個別指導の特徴です。個別指導は近年急速に増えてきた指導形態で、たくさんのエリアで見かけます。名称の通り、生徒一人ひとりに合わせて学習指導をしてくれるのが大きな特徴です。
1クラスあたりの生徒数は塾やコースによってさまざま。生徒1人に対して講師が1人付く完全マンツーマンの他、生徒2~3人に対して講師が1人付くスタイルもあります。ただし、生徒複数人に対して講師が1人付くといっても、全員が同じ授業を受けるわけではありません。
一人の生徒が講師から解説を受けている間、他の生徒はそれぞれで問題演習に取り組みます。基本的には個別にカリキュラムが設定され、自分だけのカリキュラムで指導をしてもらえるものと理解して良いでしょう。
個別指導のメリットは、何といっても生徒一人ひとりの学習ニーズに合わせて勉強できることです。前述したように個人別に学習カリキュラムが作成されるため、オーダーメイドの学習指導を受けられます。
「教科書の内容を最初から復習をする」「問題集にたくさん取り組んで、学んだ知識を定着化させる」「苦手な数学を克服する」「難関高校受験に向けて、高度なレベルの問題集を仕上げる」など、基礎理解から苦手科目克服、そして受験対策まで非常に幅広いニーズに応えてくれるでしょう。一人の子供のためにだけ授業をしてくれるため、確実に理解をしてから次のステップに進めます。
また授業中は常に講師が近くにいることから、分からない箇所があったらすぐに質問できるのも大きな魅力。特に人見知りで、自分から進んで質問しにくい子供にピッタリです。一人ひとりの学習ペースや理解力、学力、性格などに合わせて勉強を教えてもらえます。
個別指導のデメリットは主に2つあります。
1つ目は仲間と切磋琢磨しにくいことです。講師1人に対して複数の生徒が指導を受けるスタイルであっても、前述したように指導内容は子供一人ひとり異なります。自分だけの学習内容・学習ペースで進んでいくため、どうしても他の生徒との関係性は薄くなりがちです。
子供の中には「あの子だけは負けたくない!」といった競争心から、勉強に意欲的に取り組むこともあるでしょう。しかし個別指導では競争心が生まれにくい可能性があります。
2つ目は費用です。一般的に個別指導は集団指導と比べて、費用が高く設定されています。
講師1人に対する人件費が、よりたくさんかかるためです。費用の高さから、指導回数を増やしたいと思っても、費用の関係から断念してしまう家庭も少なくありません。
監修者アドバイス
個別指導塾の場合は講師との相性も重要になりますので、合わない可能性があるというのもデメリットの1つになります。そのため、入塾を検討する場合は担当講師が合わないと感じたら変更できるのか、変更できるのであればどのような方法で変更依頼をするのかも事前に確認しておきましょう。
集団指導は複数の生徒が同じ教室に集まって、同じ授業を一緒に受ける指導スタイルです。クラス分けは塾によって異なるものの、一般的には学力別や志望校別となっています。
1クラスあたりの生徒数は塾・コースによって違いがあり、10人~15人程度の少人数制としているところもあれば、大教室にたくさんの生徒が集まる大人数制を導入しているところもあるのが特徴です。
授業は一定のカリキュラムに沿って形で行われ、個別指導とは違って生徒が授業カリキュラムに合わせて勉強を進めていくものと理解して良いでしょう。
集団指導を行っている塾では指導実績が豊富で、指導力の高い講師が指導をするケースが多く見られます。受験に関するノウハウもたくさん有しており、レベルの高い学習指導を受けられるメリットがあります。
そして同じような学力や目的を持った仲間と一緒に授業を受けることになるため、互いに切磋琢磨し合いながら勉強を進めていけるのも特徴ですね。モチベーションを保ちやすいでしょう。
また費用の面でも集団指導はメリットがあります。多くの集団指導を提供している学習塾では、個別指導と比べて料金がリーズナブル。家計に大きな負担をかけることなく、高いレベルの学習指導を受けられるのは魅力といえます。
集団指導のデメリットは、まず授業内容やカリキュラムが、子供に合わない可能性があることです。集団指導では授業ごとにカリキュラムが定まっています。そのため「すでに理解している学習項目を、また授業で受けることになる」「授業内容が難しくて付いていけない」など、子供によっては授業内容と上手くマッチしないこともあるでしょう。
特に苦手科目の克服はより丁寧な指導を必要としますが、集団指導では一人ひとりに合わせた対応が難しいため要望に応えられないかもしれません。また授業中に分からない箇所があっても他の生徒がいる手前、なかなか質問できない子供もいます。
理解不十分のまま授業が進んでしまうと、ますます授業に付いていけなくなるリスクも考えられます。
監修者アドバイス
集団指導塾の場合は講師に質問しづらいというのもデメリットの1つになります。そのため、入塾を検討する場合は講師に質問できる体制がしっかりしているかをよく確認しておく必要があります。塾のサイトやパンフレットに質問できる体制が載っているか確認するのはもちろんのこと、入塾面談の際に教室責任者に、実際に自分が質問するイメージができるまで確認しておきましょう。
次に、個別指導と集団指導の費用の比較について。小学生と中学生、そして高校生の3種類に分けて説明します。
小学生の場合は個別指導なのか集団指導なのかにプラスして、中学受験対策に重点をおく進学塾なのか、それとも学校の授業理解を目的とする補習塾なのかによって大きく費用は異なります。
【個別指導塾】の費用目安
個別指導を行っている進学塾の場合、月謝はだいたい33,000円~100,000円です。補習塾では月8,300円~25,000円ほどが相場となっています。
個別指導を受ける回数が多ければ多いほど、そして進学塾の場合は受験学年となる小学6年生になると費用が高くなりがちです。
【集団指導塾】の費用目安
集団指導の場合は進学塾で月20,000円~60,000円ほど、補習塾で月5,000円~15,000円ほどが料金相場です。個別指導と比べると、だいぶリーズナブルなことが分かりますね。
中学生も小学生と同じように個別指導と集団指導それぞれ、進学塾なのか補習塾なのかによって料金は異なってきます。
【個別指導塾】の費用目安
個別指導を行っている進学塾では、月々の授業料は50,000円~100,000円ほどです。
対して補習塾の場合は月8,300円~25,000円ほどとなっています。
小学生と同様、個別指導は受講回数が多ければ多いほど高くなり、また特に受験学年の中学3年生も高くなる傾向です。
【集団指導塾】の費用目安
集団指導では進学塾で月30,000~60,000円ほど、そして補習塾で月15,000円~30,000円ほどと理解しておけば良いでしょう。
最後は高校生です。高校生では進学塾と補習塾といった概念がほぼないため、個別指導と集団指導はそれぞれだけの費用相場となります。
【個別指導塾】の費用目安
高校生の個別指導では、月42,000円~83,000円ほどが平均相場です。
【集団指導塾】の費用目安
集団指導では月33,000円~58,000円ほどが、平均相場となっています。
個別指導と集団指導は、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらの指導スタイルが子供にピッタリ合うかどうかは、子供が抱えている学習ニーズや学習状況、勉強習慣、性格、そして塾に通う目的などによって変わってくるでしょう。
ここでは、個別指導と集団指導、それぞれどういう子供に向いているのかをご紹介していきます。
学校の授業に付いていけない、または基礎力が身に付いていない子供は、個別指導がおすすめです。集団型の塾に通っても学校の授業理解・基礎力定着ができていないため、授業に付いていけない可能性があります。
個別指導なら一人ひとりの学力に合わせて、必要とするところに立ち戻って勉強をスタートできますよ。同様の理由から、苦手科目を克服したい人にもおすすめです。
また部活動や習いごとが忙しく、まとまった勉強時間を確保できない子供にも個別指導は良いですね。多くの学習塾は子供のスケジュールに合わせて、指導時間を調整してくれます。
監修者アドバイス
基礎力も身に付いていて学校の授業にも付いていけてはいるが、推薦での入試を考えていて学校の成績をもっとアップさせたい子供にも個別指導が向いています。特に、学校の授業が特殊な場合は個別指導で自分だけのカリキュラムを作成してもらい、学習を進めていきましょう。
競争意識が強く働く子供は個別指導に向いていません。ライバルが存在することで「やるぞ!」と勉強のモチベーションにつながるため、他の生徒との関係性が薄くなりがちな個別指導は向いていないといえるでしょう。
集団指導に向いているのは学習の基礎力が身に付いており、意欲的に勉強ができる子供です。ある程度の基礎力が身に付いていれば、集団指導の塾でも十分授業に付いていけます。
また積極的に講師に質問をしたり、他の生徒と切磋琢磨し合あったりしながら学力を伸ばしていけるでしょう。
一方で基礎力が身に付いておらず、また勉強に対してのモチベーションが低い子供は集団指導に向いていません。授業に付いていけず、さらに学習意欲も下がっていく可能性があります。
まずは個別指導で子供の学力に合わせながら、丁寧に基礎力を身に付けるための指導を受けた方が効率的ですね。講師との密な関わりで成功体験をたくさん積み、モチベーションも上がっていくはずですよ。
「集団指導では授業内容に付いていけない科目がある」といった理由などから、個別指導と集団指導を併用したいと思っている人もいると思います。ここでは、併用する場合には、注意したいポイントについてご紹介します。
具体的に個別指導で何をしたいのか、目的を明確にすることが大事です。集団指導では上手く満たせないニーズを洗い出して、個別指導で対応してもらうようにしましょう。
「集団指導では知識のインプットをするので、個別指導では問題演習などのアウトプットをしたい」「英語だけ集団指導に付いていけないので、個別指導では前の学年に戻って勉強し直す」などです。
個別指導と集団指導を併用する場合、子供の意志を尊重することが大切です。2つの塾へ同時に通うのは、ほとんどの子供にとって大きな負担となります。そのため子供が併用することに対して納得しておらず、保護者の意向だけで2つの
塾に通うこととなると、満足いく結果は得られません。子供とじっくり話し合い、子供自身が納得してから併用するようにしてください。
またもし大きな規模を持つ集団型の学習塾の場合、グループ系列の個別型の学習塾を紹介される可能性が高いでしょう。
しかし同じグループ系列だからといって、必ずしも子供にピッタリ合うとは限りません。
大切なのは子供の学習ニーズを満たしてくれるかどうかです。複数の個別指導塾を比較・検討するようにしましょう。
個別指導と集団指導ではそれぞれに特徴、メリット・デメリット、そして費用が大きく異なります。どちらの指導スタイルが子供に合っているかどうかは、一人ひとりの状況によって変わるため、具体的な塾を選ぶ前にしっかりと検討しておきましょう。
もし2つの塾を併用する場合、子供の意志を尊重することが大切です。保護者の意向だけで併用を決めず、必ずお互いに納得した上で進めてくださいね。
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この記事を執筆した執筆者
塾選(ジュクセン)編集部です。実際に学習塾の運営経験がある者や大手メディアの編集経験がある者などで構成されています。塾選びにお悩みの保護者や学生の方に向けて有益な情報をお届けします。
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