ルーツは横浜国大の研究チーム。手とり足とり、40年前と変わらず子ども達に向き合う【国大Qゼミ】
編集部
塾選(ジュクセン)編集部
1981年に神奈川県で始まった『国大Qゼミ』。横浜市を中心に、鎌倉市、川崎市、横須賀市など現在は11教室を運営しています。『国大Qゼミ』の始まりは、横浜国大で幼児教育や野外教育の分野で活躍された故・伊藤忠彦教授の取り組みからだそう。その後、先生の想いを受け継ぐ形で教え子たちが会社を設立。学習塾事業を立ち上げたといいます。 今回は伊藤教授の教え子でもあり、現在は取締役を務める荒屋さんに『国大Qゼミ』の独自の取り組み、大切にしている想いについてお聞きしました。
▼プロフィール
荒屋 剛志(あらや つよし)株式会社理究 取締役 学習塾事業部統括責任者
横浜国立大学 教育学部卒。学生時代は『国大Qゼミ』のルーツでもある『どんちゃか村幼稚園』を立ち上げた故・伊藤忠彦教授の研究室に所属。その後、教育事業を手掛ける会社を設立し、自身も創業メンバーとして関わる。講師、教室長などの経験を経て現在は取締役。学習事業部統括責任者も務める。
12名の少人数制と担任制。手とり足とりしっかりサポート
——まずは『国大Qゼミ』について教えてください。
『国大Qゼミ』は、神奈川県を中心に11教室を運営している学習塾になります。対象は小学生から高卒生までと幅広く、子どもの成長に合わせた総合的な指導を行なっています。実は当塾のもともとの始まりは幼児教室。通っていた生徒の成長に合わせて「小学校の勉強も見てほしい」「中学校でも通いたい」との声をいただくようになり、『国大Qゼミ』が誕生しました。
現在通っている生徒の割合は、小学生・中学生が8割、高校生が残りの2割。指導方法については、創業当時は集団授業のみでしたが、こちらも生徒や保護者の方からのご要望を受けて個別指導もスタートさせています。
——生徒や保護者の方からの要望を受けて、現在の『国大Qゼミ』の体制になっていったんですね。
地域から求められる塾を目指す中で、創業当初から掲げているモットーの一つに「手とり足とりお世話塾」というものがあります。
“手とり足とり”といっても、これは先回りして、全てを手助けする話ではありません。学習に前向きでありながらも上手く成果につなげられていない子達に対して、「しっかりと目標を定め」「クリアするための適切な方法を教えていく」ことを徹底的にお世話するという意味。『国大Qゼミ』に通う生徒に対して、1人も取りこぼすことなく全力で応援することを約束しています。
——なるほど。集団授業において「12名の定員制」にしている理由でもありますか?
おっしゃる通りです。集団授業では1クラス12名の定員制としていて、宿題のチェックからテストフォローまで生徒一人ひとりに確実に目が行き届く環境を作っています。他にも各クラスにおいて「担任制」を導入することで、神奈川県の入試問題を熟知した担任と進路相談をしたり、面接の練習に取り組んだりと万全のフォロー体制を用意しています。
——きめ細やかなフォローが強みなんですね。
もし塾の授業を受けていく中で、ついていけなくなってきた、分からなくなってきた…という生徒に対しては、時間をかけてとことん付き合う。分かるまで指導する。これは創業当初から大事にしていることなんです。今でも、全ての教室で取り組んでいると自信を持って言えますね。
オリジナルテキストを自社グループで企画制作
——授業内容における強みもお聞かせください。
いくつかありますが、1つはオリジナルの教材を活用している点です。教材の企画開発を行なうグループ会社を設立し、中学受験の算数・理科などの教材制作を手がけています。正直なところを言えば、『国大Qゼミ』ぐらいの規模では、オリジナル教材の制作は効率が悪い話ではあるんです。けれど、ここは強い意志を持って取り組んだところでもあります。
——どういうことでしょう?
中学受験でいえば、過去には大手進学塾の教材を使用していました。ですが、そうするとどうしても、それぞれの生徒にフィットした授業ができません。難関中学合格を目的としたテキストですから、生徒によっては学力や志望校に合わない。やる必要がないけれど、やらざるを得なくなってくる…。そんな状況が生じてしまったんですね。
——オリジナル教材は、それを解決するためのものになりますか?
そうです。私たちが目指すのは「上位校の合格実績を増やすこと」ではありません。もちろんこれも重要な指標の一つではありますが、そこだけを追い求めるのは違うように思うんです。そうではなくて個々の学びの生産性を上げていくこと。『国大Qゼミ』では、“個別化された学習環境”を届けるべく、テキストはもちろんデジタル機器の活用も積極的に進めているところです。
——他にはどのような取り組みがありますか?
国語に力を入れてる点も強みの一つだと思います。
少し大きな話になってしまいますが、なぜ『国大Qゼミ』が国語力に力を入れているのかといえば、新・学習指導要綱で記載されている3つの力にも関係しています。ここに記載されているのは、自分の力で考える「思考力」、資料やデータから自分で判断する「判断力」、他人に対して伝えられる「表現力」。これまでのいわゆる「勉強」とは違っていて、「社会に出て通用する力」とも捉えられると思います。
——このような教育環境において、身に付けておくべきは「国語力」ということでしょうか?
そうです。大学入試における「共通テスト」を見てみると、納得がいきます。国語だけに限らず、数学・理科など全ての科目において文字が多く、文章が長いのです。その文章量に圧倒されてしまう学生もいるのではないでしょうか。その中で、法律文やグラフなどさまざまな資料やデータから分析し、判断する力が問われる問題が多くあるのも特徴です。
そして、「思考」「判断」「表現」を行なうための出発地点ともいえるのが「ことば」です。「ことば」が豊かであれば、論理や思考も豊かになる。ですから、文字から情報を得たり考えたりできる力、つまり「読む力」を幼い頃から存分に身に付けておくことが重要です。それゆえ、授業においても特に注力しているというわけです。
——なるほど。
『国大Qゼミ』の系列では小学生から中学生を対象にした『ことばの学校』も展開しています。これは、読書から国語力を育てるプログラムです。プロのナレーターによる朗読音声を聞きながら読んでいくので、読めない漢字があっても止まらずに読むことが可能です。読書速度もアップするので、読める分量や本の数が自然に増やせる仕組みになっているんです。
ルーツは、横浜国大・伊藤教授の研究ゼミ
——荒屋さんが『国大Qゼミ』に関わるようになった経緯について教えてください。
『国大Qゼミ』の名前の由来でもあるのですが、当塾の始まりは横浜国大の伊藤忠彦教授が始めた幼稚園にあります。その昔、大学生だった私も横浜国大に通っていて、伊藤先生の研究室に入ったのがきっかけでした。
伊藤教授は幼児教育や野外教育の実験的活動を精力的に実践された方で、教え子である私たちも伊藤先生の考えに賛同。当時から現在代表を務める米田も先生の取り組みを手伝っていて、野外キャンプや合宿など、みんなでワイワイと集まってサークルのような雰囲気で楽しくやっていました。その後、伊藤先生がお亡くなりになった後は、私たち教え子が中心となって会社を設立しようと、今でいう学生ベンチャー企業のような形でスタート。そこから3年ほど経って学習塾部門を立ち上げ『国大Qゼミ』が始まりました。
——今でも、伊藤先生の想いがしっかりと受け継がれているんですね。
そう思います。『国大Qゼミ』が大事にしているのは、一人ひとりの生徒が「自学者」になることです。私たちが考える「自学者」とは、自分で進んで学べる力を持った人です。何も分からない最初は手とり足とり教えていく必要があるけれど、やり方を教えることでいずれは自分で動けるようになる。全ては「自学者」を目的とした指導ですし、伊藤先生の考えが息づいたものだと捉えています。
——教育においても、非常に難しい部分です。
確かに漢字や掛け算のように、やったらやった分だけ…とすぐに効果が表れる話ではありません。膨大な時間がかかるし、手間がかかる話です。けれど、『国大Qゼミ』での時間を通じて、子どもたちが少しずつ変化していく。その様子を見れるのが私たちの何よりの喜びですし、今後もそういった生徒を一人でも多く増やしていけたらと考えています。
取材後記
今回取材に対応してくださったのは、取締役の荒屋さん。『国大Qゼミ』のルーツでもある横浜国大の伊藤教授の教え子として、教授の想いを受け継ぎ、創業当時から関わっていらっしゃる方です。そして、現在の『国大Qゼミ』の管理職には、同社の幼児教育から通われていた方も複数いるのだとか。横浜エリアを中心に40年に渡り教育事業を展開してきた同社には、創業当時からの想いがしっかりと守られているのだと感じました。
「入試攻略」や「受験対策」といった目の前の話だけでなく、子どもの「教育」について真剣に向き合ってきたからこそできる指導がある。そう感じられた取材でした。
【『塾選(ジュクセン)』編集部 有藤千夏】
※掲載内容は2022年9月時点の情報です。
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執筆者プロフィール
塾選(ジュクセン)編集部です。実際に学習塾の運営経験がある者や大手メディアの編集経験がある者などで構成されています。塾選びにお悩みの保護者や学生の方に向けて有益な情報をお届けします。