“対話”式授業で勉強が好きになる!集団と個別のハイブリッド【湘南ゼミナール】
編集部
塾選(ジュクセン)編集部
神奈川・千葉・埼玉・東京などの関東圏を中心に131教室を展開する『湘南ゼミナール』。小学生、中学生、高校生、それぞれ集団・個別のコースを用意し、生徒の性格に合った授業形式で通塾できる同塾ですが、特に小中部は「生徒の自律」を目指した指導が特長だといいます。学習習慣の手前の生活習慣を整え、学習時間を確保する日常生活へと改善していきます。 特に「QE授業」と呼ばれる独自の授業形式は、一方向的になってしまいがちな塾での受講スタイルを、生徒さんと講師、双方向のやりとりへと形を変えたオリジナルプログラム。受験への対策や学力の向上だけではなく、なぜ生徒さんの生活を提案するほどのことを行っているのか、小中部の事業部長である垣田さんに語ってもらいました。
▼プロフィール
垣田 正明(かきた まさあき)
大学生の頃、アルバイトの塾講師を経験し教育の可能性に目覚める。新卒で『湘南ゼミナール』に入社。教室のスタッフからキャリアをスタートし、学区ナンバーワン、神奈川旧6学区内のナンバーワンなどの実績を積み、現在は同塾の小中部事業部長を務める。
勉強の本番は“自宅”。しっかり自習できる素地を作る
——まずは塾の概要を教えて下さい。
小中部は集団形式で授業を行っています。小学生、中学生はまだ自分で設定した目標というよりもご両親や学校の先生に言われて行う勉強が主なことも多いので、まずは勉強の楽しさ、自分で学んでいくことができる自信をつけてもらうように意識しています。
——特長はどのような点でしょうか?
集団形式と聞くと、教室に数十人いて講師が来て授業を行っていくので個別の生徒さんへのサポートを懸念される方もおられるかもしれませんが、授業の後には必ず「個別フォローの時間」を設けているのが特長の一つですね。どの生徒さんがどれくらいついていけているか、どこでつまずいているかをその時間に確認し、そこでの情報は講師同士で連携し、生徒さん一人ひとりの状況を把握しながら指導を行っていますね。集団で授業を行いながらも個別に生徒さんをフォローしていく、ハイブリッドなかたちを取っています。
——講師の方々はどのような方が多いですか?
生徒さんのことを本当に考えている講師が多いです。小中学生の頃はまだ「宿題をやってこない」「遅刻グセがある」といった生徒さんも多いので、おおらかに対応しながら高圧的にならないような態度がとても重要です。宿題をやりなさい、遅刻はしちゃダメだとただ頭ごなしに言ってしまっては生徒さんのためにならないので、「なぜこの宿題をしてこないといけないのか」「なぜ遅刻するべきではないのか」など、注意している背景を丁寧に伝えられるようなおおらかな対応が求められるので、生徒さんのことを本当に考えられていて、の“変われる”可能性を信じている講師が多いと思います。
——まるで学校のような。
そうかもしれませんね(笑)。でも、特に小中学生にとって、生活習慣と学習習慣はとても密接なんです。宿題ができないと、学習計画を立てても計画通りに進められないし、遅刻をしていては内申にも影響します。塾でフォローすべきところではないのかもしれませんが、それが勉強の習慣を築くこと、将来に向けて生徒さん自身で努力することに繋がっているので、私たちはそこから向き合っているという経緯ですね。
何よりも目指しているのは「生徒さんの自律」です。受験に向けて自分で計画を立てて学習する、わからない部分を明確にして掘り下げる、などの受験に対する取り組みは、本気でやれば一生使える経験だと思うんです。本気で自分から勉強に取り組んで、もし志望校に受からなかったとしても、努力した経験は本人の財産になります。次の目標を見つけた時にすぐ取り組める素地はできるので、そのプロセスを伸ばしてあげられればと思っています。
対話形式のQE授業でインプット⇔アウトプットを繰り返す
——塾に通う生徒さんにはどのように教えているのでしょうか?
講師が生徒さんに教えて生徒さんがそれを覚えていくのが一般的だと思うのですが、湘南ゼミナールは少し違います。「QE授業」と呼んでいる授業形式で、テキストをあまり使わないのが特長です。一問一答形式で講師が出題し、生徒さんはそれに口頭で答えるスタイルを取っています。
——それはなぜでしょうか?
理由は様々ありますが、小学生だと特に、ただ黒板に向き合って座ることが得意でない生徒さんもいますし、聞くだけだと集中力が続かず、楽しくないからでしょうか。テキストと向き合い、講師が出題してノートを回収して採点…などといった形式をとることも出来ますが、それだと生徒さんの自律に繋がらないように思うんです。
講師と口頭で対話をしながら、その場で考え、自分から答えてみる。このライブ感もとても大事だと思います。生徒さんからすれば、自分が言った答えが合っていれば自信に繋がるし、講師からすれば、ちょっと難しい顔をしている生徒さんも見逃さずに済む、つまり誰かを置いてきぼりにせずに、理解しながら双方楽しく進めていくことができます。
——楽しく進められることがメリットでしょうか?
それも一つです。さらに、インプットだけで終わらないことも重要です。通常の授業形式だと授業の時間はインプットのみで、アウトプットは宿題…といった流れですが、QE形式はその場で何度もインプットとアウトプットを繰り返します。講師とのやりとりが主ですが、横の友達が理解できていないと気づけば、講師ではなく生徒さんから要点を教えてあげて…なんてこともできますよね。
学習においてはこのようにインプットとアウトプットを何度も繰り返して自分のものにしていくことが大切なので、ハイスピードでこの反復ができると勉強の定着率もいいんです。
——他にも独自の取り組みはありますか?
新学習指導要領になったことで、ただテストで90点以上を取っても通知表でオール5を目指すのは難しいと聞きます。なので、テスト対策だけでは不十分なんです。日常的な勉強への取り組み方、定期テストの振り返りの仕方ひとつとっても通知表に影響する時代になったので、態度も変えていかないとなりません。成績5を取って進学に繋げたい生徒さんに向けて「成績5の取り方」という冊子を独自に作成して必要な姿勢や行動を観点別に解説するサポートも行いますね。
また、学校で勉強は教えてくれても、勉強の方法を教えてくれることはそう多くありません。 そもそも勉強の方法がわからない生徒さんに向けて「勉強のやり方」も冊子にして配るなど、皆が塾の外でも活用してもらえるような配布物も用意しています。
本人が「ありたい姿」でいられるために
——あくまでも生徒さんの自主性を育てるための塾なんですね。
そのとおりです。先ほどお伝えした通知表においても、生徒さんのモチベーションのためにも、「自分から取り組む」ことはとても重要です。塾に来た時間だけ集中して勉強するのも一つの手だとは思いますが、塾の時間には考え方や勉強の効率的な進め方をじっくり学んで、それを元に問題に取り組んでもらう方が結果的に生徒さん本人のためになるのかなと思いますね。
——自主性が大事だと気づかれた出来事があったのでしょうか?
教室長だった頃の話で、ある三者面談の場で、生徒さん本人は偏差値が届かないトップ校に行きたいと希望していたのですが、お母様がそれを止めていて。果てはお母様から私のもとに「トップ校の名前は出さないでください」とまで言われるほどの熱量でした。ですが、生徒さん本人の意志は堅く、トップ校目指して頑張りたいと聞いたので、私は密かに応援しながら勉強をサポートしていました。
受験間近のある日、模試の自己採点を終えた時、その生徒さんが泣き崩れたんです。「ああこれは何て声をかけたらいいんだろう…」と思って近くにいくと、なんと余裕でトップ校の合格点に到達していました。たしか250点満点のテストで、合格のボーダーラインは232点。その子の点数は246点と、直前模試の結果としてあまりに充分な結果でした。
この出来事を通して、本人の意志さえあれば学力は伸びるし、本人が望んだ場所に行けるんだと私も勇気をもらいました。
——見事に…!垣田さんはどのような思いで生徒さんと向き合っておられますか?
私は生徒さんが「ありたい姿」に近づいていくために、どのようにサポートしていけるのかと日々考えています。進路面談の時も、トップ校のようなブランドが欲しいのか、それともそこで学びたい何かがあるのか、就きたい仕事に近いからなのか、など、まずは本人の希望をヒアリングして、私なりに言語化して伝えてあげることで、生徒さんにとって少しでも具体的な目標を持って、本人の意志で取り組んでもらえるようにお手伝いできればと。
——今後の目標を教えて下さい。
繰り返しになってしまうかもしれませんが、私は生徒さんの成績や学習能力がぐんぐん伸びていく実例をいくつも知っているので、その可能性を信じています。受験という夢へのプロセスに関わっていくことで、いかにいい変化を巻き起こせるか。夢や希望を一緒に言語化していくことが出来れば、そこまでのロードマップは生徒さんと作ることが出来るので、生徒さんも成長しやすくなる。勉強が出来ない、方法がわからない生徒さんでも一つ一つ丁寧に言葉にしていくことで行動も具体的に示してあげられるので、そうした生徒さんの成長を横から支え続けられるといいなと考えています。
取材後記
取材を終えて印象に残っているのは、教育への思いの深さでした。事業部長になられ、教壇から離れてしまった今も「隙さえあれば今でも教壇に立ちたい」と語られるほど、生徒さんと直にやりとりをするのが好きな垣田さん。集団形式で先生が多いにも関わらず、先生と日常的な会話をしたり、学校の卒業後にお礼を告げに来る生徒さんも少なくないそうで、双方向の授業が先生と生徒さんのいい関係を育んているのかもしれないと感じました。「粘り強く対話をしていくことで、どんな子でも勉強をきっと好きになれる」という言葉が力強く、生徒さんの受験のみならず人生までも見据えて向き合っておられる姿が垣間見えました。
【『ジュクセン』編集部 梶谷勇介】
※取材内容は2022年8月時点の情報です。
執筆者プロフィール
塾選(ジュクセン)編集部です。実際に学習塾の運営経験がある者や大手メディアの編集経験がある者などで構成されています。塾選びにお悩みの保護者や学生の方に向けて有益な情報をお届けします。