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現役塾講師が教える! 都立高校受験の「併願優遇」徹底解説

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ひのき進学教室 三軒茶屋校講師

大山雅司

「併願優遇制度」について、名前は知っていても具体的にどういった制度なのかピンとこないという方も多いのではないでしょうか。
併願優遇制度を活用すると、私立高校を「安全校」として確保できるため、受験の不安が軽くなるというメリットがあります。

今回の記事では、東京都内の私立高校が実施している併願優遇制度の仕組みを、初めての方にも分かりやすく解説します。

目次

併願優遇制度とは?

併願優遇は、「私立高校が定める基準」に達している生徒を高校側が一般入試時に優遇してくれる制度です。
志望する高校(主に第一志望である公立高校)が不合格になった場合に入学することを条件に、各私立高校が定めた基準を満たした生徒が一般入試において優遇措置を受けることができます。

併願優遇制度を利用するうえで外せないのが、その基準についてです。基準になるものとしては大きく、「内申点」と「加点項目」があります。高校によって具体的な基準が違うため、それぞれどんな内容なのかを順に説明します。

メインの基準になるのは内申点

併願優遇制度の基準としてまず第一になるのは内申点です。内申点はほとんどの場合、中学3年生の二学期までの成績で決定されます。併願優遇制度の利用は、後にご説明する加点項目も含めて高校側が求める基準を超えていることが前提なので、自分の内申点を踏まえる必要があります。
内申点が何点必要になるかは高校ごとに異なります。また、人気校ほど内申点基準が高く設定される傾向にあるほか、基準は毎年変動する場合もあるため、学校ごとに必ず最新の情報を確認しましょう。

加点項目は検定や部活動での功績

併願優遇制度が利用できる多くの私立高校では、内申点とは別に加点項目が設けられています。内申点が基準に達していない分を加点項目で補えます。

加点項目はさまざまなものがありますが、代表的なものに英検や漢検などの検定試験の資格、部活動での功績、皆勤などがあります。内申点が足りない場合でも加点項目によって併願優遇制度を利用できる可能性もあるので、中学校入学以降は英検などの検定試験は積極的に取り組むことをおすすめします。

併願優遇制度を活用する際は、各私立高校の基準をよく理解し、自分の成績や内申点が基準を満たしているか確認することがポイントです。併願優遇の制度は学校ごとに異なるため、情報は各学校の公式ページなどから直接確認しましょう。

併願優遇制度を利用するメリットは?デメリットはない?

先ほども説明した通り、併願優遇制度を利用すると一般入試での受験時に点数の加点などの優遇を受けられます。しかし、この制度も使い方によってはデメリットに感じる部分もあるので注意が必要です。

ここでは制度を利用した際に得られるメリット、デメリットについて説明します。

併願優遇制度を利用するメリット

併願優遇制度を利用する最大のメリットは、「押さえ校」を確保できることです。志望校選びでは「必ずここには合格できる」という押さえ校を決めることが大切ですが、多くの高校では併願優遇を活用することで、よほどのこと(それこそ当日試験会場に向かわないなど)がない限り、ほぼ合格ができるという状況になるため、より安心して第一志望校を目指すことができます。

また、押さえ校を確保しておくことで、都立高校が不合格となった場合でも進学先に困らずに済むため、受験生と保護者の精神的な負担を軽減させることができるでしょう。

併願優遇制度を利用するデメリット

特に併願優遇の条件に「本校が私立第一志望であること」が含まれる場合、これは言い換えると「都立高校に不合格であれば必ず本校に入学する」という約束のもとで優遇をしてもらう形になります。その場合においては、仮に他の私立高校をオープン入試で受けて合格しても、都立高校が不合格の場合は、併願優遇校への入学が優先となります。そのため、「私立第一志望」が条件である高校の併願優遇をとる場合は、もともとオープンで受けようと考えていた私立高校を受験プランから外す必要が出ることがあります。

併願優遇制度を利用するにはどうすればいい?

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併願優遇制度を利用する場合、各私立高校の学校説明会や個別相談への参加、中学校の担任への連絡というプロセスがいくつか存在します。ここでは併願優遇制度の活用に向けた具体的なプロセスと時期、それぞれどういったことを行えばよいかを解説します。

【7月下旬から11月】学校説明会や個別相談への参加


併願優遇制度を利用する際は、学校説明会や個別相談に参加してください。学校説明会は夏休み期間中である7月下旬から8月、個別相談は9月から11月にかけてがピークシーズンとなります。
学校によっては個別相談へ参加することが絶対条件になっている場合もあります。多くの私立高校が予約制を導入しているため、早めに各校の公式サイトでスケジュールを確認し事前申し込みをすることがおすすめです。

【12月】担任に併願優遇制度の希望を伝える


併願優遇制度の利用を希望する場合は、12月の進路面談で担任に伝えます。進路面談で制度の利用について話し合えるよう、それまでに併願優遇を利用したい私立高校を決め、情報を集めておきましょう。
その後、12月中に中学校の担任と私立高校の間で入試相談を実施。併願優遇を希望している生徒の優遇可否を確認します。

【1月下旬もしくは2月中旬頃】併願優遇制度を利用して入試を受ける

単願推薦の場合は1月下旬、併願優遇をもっての一般入試の場合は2月中旬に試験を受けます。併願優遇制度を利用した受験の場合、よほどのことがない限り入試得点に関わらず合格になる場合がほとんどです(優遇内容が加点のみの高校は別です)。
ただし、”確約”ではない以上、“合格に対して絶対の保証をしてもらえる”というものでもありません。併願優遇校であっても、あくまで試験会場では真剣勝負のつもりで試験に臨む姿勢が大切です。これは落ちる可能性があるかどうか以前に、“押さえ校という立場を受け入れてくれる”、”今後入学する可能性がある”高校に対する最低限の礼儀でもあるため、意識した上で入試に臨みましょう。

併願優遇制度を利用するには「個別相談」への参加が必要

個別相談とは、私立高校が生徒や保護者を対象に行う相談会です。ただ説明を聞ける機会と考える方もいるかもしれませんが、併願優遇制度を利用するのであれば欠かせない重要な機会です。学校によっては併願優遇制度を利用するには個別相談への参加が必須の場合もあるほか、基準や利用条件など細かい点を確認できる機会でもあります。以下で、個別相談の機会を上手に活用するためのポイントをおさえておきましょう。

個別相談は疑問点を解消するチャンス

個別相談は、併願優遇制度を利用したいと考えている学校の先生と直接話すことができる貴重な機会。そのため、各学校が設けている併願優遇制度の基準で分からない点があれば、この機会にしっかり確認を行いましょう。
例えば「部活動等で優秀な成果を上げている生徒」という基準について“優秀な成果”とはどのようなことを指すのかなど、文面では読み取り切れない部分を口頭ですり合わせることができます。それぞれの学校の基準を確認し、個別相談で聞きたいことを準備しておくとスムーズに話せるのでおすすめです。

個別相談で私立高校の併願条件を確認

併願優遇を適用する私立高校を選ぶ際は、その学校が他の私立高校との併願を許可しているかどうかを確認することも重要です。いくつかの私立高校では他校との併願を制限している場合があります。募集要項に記載がない場合もあるため、他の私立高校をオープン入試で受ける予定がある場合は個別相談の際にしっかり確認しておきましょう。

個別相談には何校出席してもOK

個別相談は、何校出席してもかまいません。併願優遇制度を利用する可能性がある学校は、すべて出席しておくことをおすすめします。

併願優遇制度は、学校ごとに基準や条件が異なります。次の章の「併願優遇制度についてのQ&A」も確認した上で準備を進めてください。

併願優遇制度についてのQ&A

併願優遇制度は受験生にとっても保護者にとっても、仕組みがわかりにくい点も多くあります。そのため「これで本当に大丈夫なの?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、よく寄せられる質問にお答えしながら、併願優遇制度のポイントを解説していきます。併願優遇制度についての理解を深めるために、ぜひ参考にしてみてください。

Q1 併願優遇で落ちることはありますか?

高校の制度次第ではあります。たとえば優遇の内容が“入試時に決められた得点が加点されるのみ”である場合です。その場合は、当日入試の得点次第では不合格になることもあります。ただし優遇内容が加点のみである場合や、入試結果次第で落ちる可能性がある場合は、募集要項にそれが分かるように記載がされている(いくらの加点なのかが明記されている)か、説明会や個別相談でその旨が説明されているはずです。

Q2 併願優遇を2校受けられますか?

併願優遇で出願できる高校は1校が原則なので、複数の高校を併願優遇で出願することは通常できません。ただし、例外もあります。たとえば「優遇内容が加点のみで、入試得点次第では不合格になる可能性がある」高校で、「他校の併願優遇と併せても構わない」と募集要項や説明会などで明示がされている場合です。
仮にこの高校をA高校とすると、少なくともA高校では他の私立高校の併願優遇と並行して併願優遇の利用が可能です。ただし、当然もう一方の併願優遇校(仮にB高校とする)においても条件の確認が必要で、こちらは最低でも「他私立併願が可能な高校」である必要があります。
もし仮にB高校の併願優遇条件が「私立第一志望であること」となっていた場合、都立高校は不合格、A高校には合格していた場合でも、B高校との約束(私立第一志望)が優先であるため、A高校に入学はできません。また、B高校が「他私立併願が可能な高校」である場合でも、事前にB高校の個別相談などで「A高校の併願優遇を並行して利用したい」旨を伝え、B高校側でも問題がないことを確認する必要があります。なぜかというと、最終的な併願優遇のやり取り自体は中学校と高校の間で行われるため、「A高校・B高校の両方の併願優遇制度を使うことを、双方の高校から承認されている」ことを中学校の先生に伝える必要があるからです。(このケースではA高校は可能であることが既に明示されているので、確認が必要なのはB高校になります)

Q3 併願優遇と推薦入試の違いは何ですか?

私立推薦には単願推薦と併願優遇の2種類がありますが、一般的に私立推薦入試と言うと単願推薦を指す場合が多いです(入試日程が一般入試とは別で設けられるため)。単願推薦は第一志望、すなわち合格した場合は必ず通うことを条件にしている入試形態です。単願推薦の場合、一般入試よりも先に単願推薦用の入試日程が設けられます。

Q4 併願優遇で都立に合格したらどうなりますか?

併願優遇は主に公立高校に対する第二志望以下の立ち位置で募集が行われるため、都立高校に合格した場合は併願優遇校での合格は辞退することになります。その際、電話連絡などは不要としている高校が多いかと思います。

Q5 併願優遇で合格したら辞退できませんか?

利用した併願優遇制度の内容次第です。併願優遇は主に公立高校に対する第二志望以下の立ち位置で募集することが多いので、公立高校に合格した場合は辞退しても問題がありません。また、「他私立への併願が可能」としている高校の場合は別の私立高校に合格したことが理由で辞退することも問題ありません。
ただし他私立併願不可(私立第一志望であることが条件)である高校の場合は、公立高校が不合格だった場合には入学する(辞退をしない)ことが前提です。もしオープン入試で他の私立高校を受ける予定の場合は、必ず他私立併願が可能である高校を併願優遇先として選ぶようにして下さい。

まとめ

併願優遇制度は、都立高校受験を控えた生徒にとって、非常に有効な選択肢です。この制度を賢く活用することで、無駄な受験を避け、第一志望校に集中した学習計画を立てることが可能になります。特に、精神的な安心感を得ることで、受験生は自信を持って試験に挑むことができるでしょう。
併願優遇の仕組みは複雑で、一見わかりにくい点も多くあります。特に、初めて受験を経験するご家庭や、都立高校を志望する生徒にとって、この制度の使い方や注意点についてしっかり理解しておくことは、合格への重要なステップとなります。
成功のためには、十分な情報収集と計画的な準備が欠かせません。私立高校との個別相談を通じて具体的な情報を得た上で、最適な併願校を選ぶことがおすすめです。併願優遇制度をしっかりと理解して計画的に活用し、悔いのない高校受験を行いましょう。

※参考動画:併願校の決め方を解説する【併願優遇】

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執筆者プロフィール

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大山雅司
ひのき進学教室 三軒茶屋校講師

塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。

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