偏差値とは?合格のために絶対知っておくべき計算方法や落とし穴


編集部
塾選ジャーナル編集部

ひのき進学教室 三軒茶屋校講師
大山雅司
偏差値とは、同じテストを受けた集団の中で、自分の学力がどの位置にあるのかを示す数値です。「偏差値=平均点と比べた成績の目安」と思われがちですが、実際には受験者全体の得点のばらつきも考慮して算出される評価方法です。
「偏差値って、そもそも何だろう?」「偏差値の正確な仕組みを知りたい」などと思っている方は多いのではないでしょうか。客観的な学力の評価に役立つのが偏差値ですが、どのような基準で評価しているのかを正しく理解している方は、意外に多くありません。
今回は、偏差値の計算の仕組みなどを難しい数式を使わずに解説します。ぜひ参考にしてください。
偏差値とは
偏差値とは、テストを受けた人の全体の中で自分がどの位置にいるかを示す「相対的な評価」です。
多くの方は偏差値に対して、以下のようなイメージを持っているのではないでしょうか。
たとえば、「平均点を取れば偏差値50」「偏差値60なら上位、70なら非常に優秀」「40はやや成績が低く、30は平均を大きく下回る」といった印象を持っている方も多いでしょう。
しかし、正確に表現すると、偏差値とは「テストごとの質を踏まえたうえでの、受験者全体における自分の点数の評価」といえます。「テストごとの質」とは、問題の難易度を表す平均点や、受験者が実際に取った得点のバラつきのことです。
つまり、偏差値は単なる得点ではなく、テストを受けた母集団全体の成績を考慮した「相対的な評価」といえます。
偏差値を知るメリット
偏差値を知る大きなメリットは、テストの得点や順位に影響されず、集団の中で自分の学力がどの位置にあるか(相対的な評価)がわかることです。
以下は、一般的な成績分布(正規分布)における偏差値と最上位からの割合です。
偏差値 | 最上位からの割合 |
---|---|
80~75 | 0.13%~0.62% |
74~70 | 0.81%~2.27% |
69~65 | 2.87%~6.68% |
64~60 | 8.07%~15.86% |
59~55 | 18.40%~30.85% |
54~50 | 34.45%~50% |
49~45 | 53.98%~69.14% |
44~40 | 72.57%~84.13% |
39~35 | 86.43%~93.32% |
34~30 | 94.52%~97.72% |
偏差値が変動する要素
偏差値は、
① 平均点と得点との差
② 標準偏差(得点のばらつき)
によって変動します。
標準偏差については、次で詳しく解説します。
標準偏差とは
標準偏差とは、得点のバラつきの大きさを表す指標です。集団の中で個々人が取った得点のバラつきが大きければ大きいほど、標準偏差は高くなります。そして、標準偏差が大きいほど、偏差値が低くなります。
つまり、標準偏差(バラつきの度合い)を考慮しないと、正しい比較ができないということです。
参考として、例えば、異なる2校に通うA君とBさんの定期テストの結果を比較してみましょう。
A君 :70点(受験者5名全員の平均点は60点) Bさん:80点(受験者5名全員の平均点は70点) |
A君とBさんのどちらも、定期テストの得点はトップでした。そして、平均点はA君の学校が60点、Bさんの学校は70点です。
A君とBさんのどちらも、「平均点との差は10点」です。平均点から10点の差があること自体に変わりはないため、この情報だけを見ると得点の高いBさんの方が優秀、となるでしょう。
しかし、それぞれのクラスメイトの得点は次のように異なっていました。
A君のクラスメイト4名 :56点・57点・58点・59点 Bさんのクラスメイト4名:60点・65点・70点・75点 |
A君のクラスメイトの得点は56点~59点に集中しており、A君が取った70点は、クラスメイトの点数よりも飛び抜けていたことがわかります。一方のBさんのクラスメイトの得点は、60点~75点の間で均等にバラけており、幅が広い状態です。
ここまでの内容をまとめると、次のとおりです。
項目 | A君 | Bさん |
---|---|---|
定期テストの得点 | 70点 | 80点 |
平均点 | 60点 | 70点 |
平均との差 | 10点 | 10点 |
クラスメイトの得点分布 |
56点・57点・58点・59点 ※56点~59点に集中している |
60点・65点・70点・75点 ※60点~75点の間で均等にバラけている |
両者の得点をクラスメイト全体の得点の中で見比べると、A君の「平均点+10点」はBさんの「平均点+10点」よりも、すごそうに見えます。
A君・Bさん両方の「平均点+10点」を正しく評価するのが、偏差値の基本的な考え方です。平均点との差がまったく同じでも、標準偏差(クラス全体の得点のバラつき)によって、偏差値は変わってきます。
偏差値はどうやって決まる?計算の仕組みをわかりやすく解説
では具体的に偏差値は、どのように計算するのでしょうか。以下で偏差値の計算方法を、A君・Bさんを例にわかりやすく解説します。
偏差値の計算の流れをわかりやすく解説
具体的な計算手順は次のとおりです。
1.一人ひとりの得点と平均との差を求める
まずは、一人ひとりの得点と平均との差を求めます。
【A君】
A君を含めたクラスメイトの得点と、平均(60点)との差は次のとおりです。
クラス全体の平均点は60点だったため、A君の平均との差は「+10点」です。
【Bさん】
Bさんを含めたクラスメイトの得点と、平均(70点)との差は次のとおりです。
クラス全体の平均点は70点だったため、Bさんの平均との差も「+10点」です。
「平均との差」計算結果
A君 :+10点
Bさん:+10点
2.「平均との差」を2乗し、合計する
一人ひとりの平均点との差を求めたら、次に「平均との差」を2乗して合計を出します。
1.で求めた平均との差にはマイナスの数値があるため、そのまま合計すると、マイナスとプラスが相殺されてしまいます。そのため、平均との差を2乗して合計します。
【A君】
平均との差を2乗したものを足すと、合計が130となります。
(16+9+4+1+100=130)
【Bさん】
平均との差を2乗したものを足すと、合計が250となります。
(100+25+0+25+100=250)
「平均との差」を2乗し、合計:計算結果
A君 :130
Bさん:250
3.「平均との差」を2乗した合計を人数で割り、「分散」を出す
次に「平均との差」を2乗した合計を、受験者全体の人数で割り「分散」を出します。
A君 :130(平均との差を2乗した合計)÷5(人数)=26
Bさん:250(平均との差を2乗した合計)÷5(人数)=50
この値が「分散」です。
「分散」:計算結果
A君 :26
Bさん:50
4.分散にルートをかけて、「標準偏差」を出す
分散は平均との差を2乗したものなので、そのままでは値が大きすぎます。そのため、ルートを掛けて、もう一度元に戻します。
A君 :√26=5.099…
Bさん:√50=7.071…
これが「標準偏差」です。
「標準偏差」:計算結果
A君 :5.099
Bさん:7.071
5.平均との差を標準偏差で割り、偏差値を求める
標準偏差を出したら、平均との差を標準偏差で割ります。
A君 :10(平均との差)÷5.099…(標準偏差)=1.96…
Bさん:10(平均との差)÷7.071…(標準偏差)=1.41…
上記で求められた1.96…と1.41…は、正確に言えばこれが「偏差値」です。ただ、皆さんが普段見ている偏差値の数字とは異なりますよね。実は皆さんが見ている偏差値の値は、これを見やすく加工したものになります。
見やすくするために、次の手順で計算します。
6.偏差値に10をかけて、さらに50を足す
偏差値に、まずは10をかけます。
A君 :1.96×10=19.6
Bさん :1.41×10=14.1
さらに50を足します。
A君 :19.6+50=69.6
Bさん :14.1+50=64.1
50を足すことで、普段皆さんが目にしている一般的な偏差値の数値となりました。最後に50を足す理由は、真ん中の成績の生徒が50であると、わかりやすいためです。
これらの計算の結果、A君とBさんの偏差値が求められました。
偏差値
A君 :69.6
Bさん:64.1
平均との差は2人とも「+10点」でしたが、A君のほうが偏差値が高かったことが分かります。
では、A君のほうが優秀なのかというと、そうとは限らないのが「偏差値の落とし穴」です。次で詳しく説明します。
偏差値の落とし穴:「異なる集団の偏差値比較はできない!」
偏差値には思わぬ落とし穴があるため、注意が必要です。
A君の偏差値は69.6、Bさんの偏差値は64.1だったため、偏差値だけを見ると、A君の方が優秀に思えます。しかし、実はA君とBさんの偏差値を比較しても、どちらが本当に優秀かは判断できません。
なぜなら、偏差値は同じ集団の中での相対評価であり、異なる母集団では比較できないためです。
たとえば、優秀な生徒が多く集まり、超難関といわれている進学校があるとします。その中で偏差値50の生徒は、一般的な学校では偏差値60以上の実力があるかもしれません。
逆に、学力層が幅広い学校で偏差値60の生徒が、進学校に通う偏差値60の生徒と同じレベルとは限らないでしょう。
つまり、違った母集団での偏差値は、比較に向かないということです。A君とBさんのどちらが優秀かは、同じテストを受けない限りは正確にわかりません。
まとめ:偏差値だけで志望校を決めないことが大切
学力の評価や志望校合格の可能性を測るのに役立つのが偏差値ですが、偏差値だけで志望校を決めないことが大切です。
偏差値の高い学校が、必ずしも子どもに合っているとは限りません。学校の雰囲気や校風、カリキュラムなど、志望校を決める要素は偏差値以外にもたくさんあります。
入試までの期間が十分にある場合は、今後の勉強への取り組み方によって、偏差値を合格ラインまで伸ばせる可能性もあります。そのため、今の偏差値だけを見て、志望校を選ぶのもおすすめできません。
偏差値は「最初の志望校決め」のときに、どのくらいの学校を目指したいのかを考えるうえで使うのが良いでしょう。
高校選びのポイントは以下記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。



➤偏差値って結局、何?:詳しい内容は以下の参考動画もチェック!
※参考動画:偏差値って結局、何?ー難しい数式なしで解説。
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塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
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塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。