高校の推薦入試とは?仕組み・試験内容・向いている子の特徴まで高校受験のプロが徹底解説!

「高校の推薦入試って、どんな仕組みになっているの?試験内容は?合格するのはどんなタイプの子?」
高校受験で推薦入試の受験を視野に入れている人の中には、こういった悩みを抱えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
推薦入試とは、学校の成績や態度などが一定基準を満たす生徒を、中学校が高校に推薦する入試制度です。一般入試と異なり、学力検査(筆記試験)が課されない場合も多く、面接や小論文などを通して合否が判断される傾向があります。
この記事では、高校における推薦入試の種類や特徴、試験内容について詳しく解説します。推薦入試に向いているタイプや、推薦をもらうためのポイントについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

編集部
塾選ジャーナル編集部
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。

監修者
大山雅司
塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。

高校の推薦入試とは?他の入試とどう違う?
推薦入試とは、出願基準を満たした生徒が、主に学校からの推薦を受けて出願する入試制度です。この方式では、学力試験の点数だけでなく、生徒の個性や能力、活動実績なども重視されます。
評価には、調査書や面接、小論文などが用いられるのが一般的です。学力以外の要素を含めた「人物重視の選抜」と言えます。
推薦入試がどのような立ち位置にあるのか、他の方式と比較しながら見ていきましょう。
公立高校の推薦入試とは?
公立高校の推薦入試は、いわゆる「学校推薦」による選抜方式であり、中学校長の推薦がなければ出願できないのが基本的な仕組みです。
多くの自治体では、推薦を出すための条件(推薦基準や推薦要件)を設けており、内申点や出席状況、生活態度などが評価対象に含まれます。
推薦入試では、学力検査が課されないケースが多く、合否は調査書・推薦書・面接・作文などでに基づいて判断されます。合格内定の時期は1月〜2月と、一般選抜よりも早く決まる点が特徴です。
ただし、都道府県によって制度には違いがあります。中学校長の推薦が不要な地域や、「推薦入学者選抜」と称しながら学力検査を行う高校も存在します。
そのため、出願を検討している高校や自治体の実施要項を、事前によく確認しておくことが重要です。
公立高校の推薦入試は「特色選抜」「自己推薦型入試」とどう違う?
一部の都道府県では、推薦入試に似た「自己推薦型入試」が実施されています。これは「特色選抜」や「前期選抜」といった名称で呼ばれることもあります。
自己推薦型入試は、学力だけでは評価しきれない生徒の個性や活動実績を重視する選抜方式です。
部活動やボランティア活動、資格取得などの実績が評価対象になる場合もあります。
この方式が通常のの推薦入試と大きく異なる点は、「中学校長の推薦が不要な点」と「学力検査が課されることがある点」です。
また、自己推薦型入試では志望理由書や自己PR文を生徒自身が作成する必要があります。
一方、通常の推薦入試では、中学校が推薦書を用意します。
ただし、都道府県によっては「特色選抜」と呼ばれていても、学校長の推薦が必要な場合もあり、「推薦選抜」であっても志望理由書や自己PR文を作成する必要がある自治体もあります。
このように、制度の名称と内容は各自治体が独自に定めているため、出願前に各自治体の入試要項を必ず確認しましょう。
私立高校の推薦入試とは?
私立高校でも、多くの学校で推薦入試が実施されています。
中学校長の推薦が必要な点は、公立と共通していますが、具体的な出願要件や試験内容は学校ごとに異なるので注意が必要です。
合否は、推薦書・調査書・面接に加えて、学校によっては学力試験や適性検査の結果で判断されます。
特に、3〜5教科の学力試験を課す学校もあるため、事前に各高校の募集要項を確認しておきましょう。
私立高校の推薦入試で特に注意したいのは、「専願」と「併願」の2つの方式がある点です。
出願前に違いを理解し、自分の進路希望に合った方式を選ぶことが大切です。
私立高校の推薦入試【専願】
「専願」は、その高校を第一志望とする生徒が受験できる方式です。
合格した場合は、必ず入学することが条件とされています。
合格後の辞退はできないため、進学の意思を固めてから出願しましょう。
私立高校の推薦入試【併願】
「併願」は、その私立高校を受験しつつ、他校の受験も予定している生徒向けの方式です。
公立高校を第一志望にしつつ、私立高校を「すべり止め」として受験するケースが多く見られます。
併願の場合であっても、推薦書の提出や一定の内申基準が必要とされる場合があります。
詳細な条件は学校ごとに異なるため、出願前に必ず確認しましょう。
公立高校の「推薦」と私立高校の「推薦」の違い まず、公立高校の「推薦」と、私立高校の「推薦」は制度も事情も異なるという点は押さえた方がいい部分です。 公立高校の場合、「専願」つまり「第一志望」であることが前提であり、各自治体が定めた方式によって、一般選抜では測れない生徒の能力を測りつつ、高校の求める生徒像と合致するかで選抜が行われる形が基本です。 東京都の公立高校の場合、第一志望にしている生徒の中で内申点や面接・小論文などに自信がある生徒が多く出願し、高校によっては5倍以上の高倍率になります。当然、不合格者も多く、不合格の場合は、多くの生徒が後に一般選抜で再チャレンジします。 私立高校の場合は「(主に内申点をもとに)進学先を確保する」という意味合いが強いです。進学を希望する私立高校で設けられている基準を越えている場合に「専願」を選び、学校長からの推薦を受けて、推薦入試を受けることで進学先が確定できるケースが一般的です。また、第一志望が不合格であった場合の進学先を確保しておくために利用するのが「併願(東京都の場合は併願優遇)」の制度になります。 ただし、私立の推薦であっても一部の私立高校などでは文字通りの選抜が行われ、不合格が出るケースもあるため、各高校の募集要項はしっかりと確認する必要があるでしょう。 (大山先生) |
高校の推薦入試で実施される試験内容は?
高校の推薦入試では、主に「面接」と「作文・小論文」の2つの試験が行われます。これらの内容は、学力では測れない人物面を評価するためのものです。
出願前には、試験内容や形式を確認し、しっかりと対策を立てておくことが重要です。
面接|個人形式や集団形式
推薦入試で最も一般的なのが「個人面接」です。1人の受験生に対して、1〜4人程度の試験官が対面で質問を行います。
面接では、以下のような定番の質問がよく出されます。
- どうしてうちの高校を志望したのですか?
- 中学生活で最も力を入れたことは何ですか?
- 得意・苦手な教科は何ですか?
- 中学校生活の一番の思い出は何ですか?
といった質問などです。
こうした質問にはある程度パターンがあるため、事前に回答を準備しておくと安心です。
面接では、言葉の内容だけでなく、自分の考えを自分の言葉で伝える力も見られています。緊張していても、しっかりと面接官に伝えられるよう、早い段階から練習を重ねておくとよいでしょう。
学校や家庭で何度も模擬面接を行っておくと、本番で落ち着いて対応しやすくなります。
学校によっては「集団面接」を行う場合もあります。この形式は、複数の受験生に対して、数人の試験官が同時に質問を行うのが特徴です。
質問は、全員が同じものを受ける場合と、それぞれに違う質問がされる場合があります。
他の受験生と意見が重なってしまうこともあるかもしれませんが、自分の言葉でしっかりと伝えることが大切です。
また、一般入試の面接よりも長く行われることがあるため、集中力の持続も必要です。よく聞かれる質問への回答をまとめるだけでなく、実際に声に出して練習しておきましょう。
高校受験のプロが語る「面接」のポイント よく「面接で嘘をついていいのか?」と聞かれますが、準備の時点から嘘100%で塗り固めるのは勧めません。僕自身が生徒によく伝えるのは、「1を100にするのはOK。けど0から1にはするな」です。 たとえば将来の夢といえるほどはっきり決まってないけど、今自分が興味ある分野について調べてみて、その知った分野に携わることをまず自分の目標として考えてみる。 「何を話したらいいかわかんないよ」という人は、面接の準備をきっかけにして自分の将来について、そして今の自分について考えるぐらいのつもりでいいと思います。 (大山先生) |
作文・小論文
推薦入試では、作文や小論文を課す学校も多く見られます。これらの試験では、学力検査では見えにくい「受験生の個性」や「思考の深さ」を評価します。
作文・小論文は、与えられたテーマに対してどう解釈し、どのような論理で考えを展開したかが問われる試験です。加えて、最終的にどんな結論に至ったか、どのように表現したかも重視されます。
評価のポイントは、論理的に筋道を立てて書けているかどうかです。また、相手に伝わるように分かりやすくまとめる表現力も重要視されています。
対策としては、何度も書いて練習を重ねることが大切です。練習で書いた文章は、必ず先生などの第三者に添削してもらいましょう。
添削された内容をもとに、自分の弱点を把握し、次回の改善につなげることが上達の鍵です。意識的に修正点を反映させていくことで、表現力は着実に伸ばせます。
高校受験のプロが語る「作文・小論文」のポイント まず自分の志望校がどんな小論文・作文をテーマで出しているのかを把握することが最初のステップです。たとえば東京都の公立高校の場合、教育委員会のホームページに過去のテーマ一覧があるので、自分の志望校の過去に出題されたテーマを見ることができます。高校によっては問題中に課題文や図表があり、一覧にはそこまで掲載されていませんが、各高校のホームページに行けば、図表や課題文まで含めて過去数年分掲載してくれている場合があります。志望校のテーマを把握した上で、まず一年分でも書いてみて大人に読んでもらい、そこから修正を重ねていくことが大切です。 (大山先生) |
実技試験(特別推薦の場合)
特別推薦では、実技試験が実施されることが多く、受験する分野によって、試験内容や評価のポイントが大きく異なる点に注意しましょう。
例えば、バスケットボールのスポーツ推薦では、ドリブルやシュートなどの技能が評価されます。
音楽科の場合は、聴音・ピアノ演奏などの実技を通して、基礎的な表現力や技術が問われます。
実技試験の形式は分野によってさまざまです。基礎体力を測るもの、専門的な技術を見るもの、あるいは実戦形式のパフォーマンスが求められる場合もあります。
また、屋外で行う競技では、天候によって内容が変更になることもあるため注意しておきましょう。試験当日のコンディションにも柔軟に対応できるように、日頃から準備しておくと安心です。
志望校がどのような実技試験を実施しているのか、事前にしっかりと確認しておきましょう。
高校の推薦入試の合否基準は?
推薦入試の合否は、次のような複数の要素をもとに総合的に判断されます。
- 調査書(内申点)
- 中学校長の推薦書、または志望理由書や自己PR書
- 面接
- 作文や小論文
- 実技試験
これらの要素は、学力だけでなく人物面や日頃の取り組み姿勢を評価するためのものです。
各項目をしっかりと理解したうえで、対策に取り組むことが大切です。
合否判定の割合は調査書が約50%を占める
推薦入試での合否における配点は、各高校や自治体の方針によって異なります。ただし、一般的には以下のような比率で評価されることが多いとされています。
- 調査書(内申点):約50%
- 面接:約25%
- 作文・小論文など:約25%
このように、調査書の比重が大きいため、日頃の授業態度や定期テストへの取り組みが重要になります。面接や作文の対策だけに偏らず、普段から提出部の管理や授業への取り組みにも気を配りましょう。
また、学校生活全体を通して誠実に取り組む姿勢も評価対象となります。推薦入試を見据える場合は、成績とともに生活面の意識づけも早めに始めておきましょう。
高校の推薦入試で落ちることはある?
高校の推薦入試で不合格になる可能性は、公立と私立では制度の性質が異なるため、一概に語れません。
公立高校と私立高校では推薦入試の目的や運営方法が異なるうえ、特に私立高校では推薦制度の内容や合格基準が学校ごとに大きく異なります。そのため、倍率や合格しやすさを一般的に語るのは難しいのが実情です。
ただし、どのような形態の推薦入試であっても「推薦=合格確約ではないという意識を持つことが大切です。推薦入試はあくまで選抜の一環であり、調査書や面接、小論文などを通して合否が判断されます。
確実な合格を保証する制度ではないため、油断せずに準備を怠らずに臨むことが大切です。
高校の推薦入試のメリットは?
推薦入試には、一般入試とは異なる多くのメリットがあります。ここでは、主な利点をいくつか紹介します。
受験勉強の負担が比較的少ない
推薦入試では、多くの高校で学力試験が課されません。このため、一般入試に比べて受験勉強の負担を抑えられます。
もちろん、面接や作文などの対策は必要です。それでも、3教科や5教科の学力試験対策に比べれば、準備の範囲は限定的です。
早い時期に試験が終わることも多く、精神的な負担も軽減される傾向にあります。受験ストレスを減らしたいと考えるご家庭にとって、大きな魅力となるでしょう。
一般入試よりも早く合否が決まる
推薦入試は、一般入試よりも早い時期に実施されます。そのため、合格が決まれば早い段階で受験が終了することになり、卒業までの時間を受験勉強以外の活動に充てることが可能です。
しっかりと意図と計画性を持ってさえいれば、進学後に向けた準備を進めることもできます。
試験一発勝負が苦手な人にもチャンスがある
推薦入試は、日頃の努力が評価されやすい入試方式です。そのため、当日の学力試験に不安がある生徒にもチャンスが広がります。
内申点や人物評価が重視されるため、日頃の努力がしっかり評価される仕組みです。中学生活で積み重ねた実績や態度が生かされる点は、推薦入試ならではといえるでしょう。
ただし、入学後の授業についていけるかどうかは別問題です。無理な志望校選びは、入学後に苦労する原因になることもあります。
チャレンジ校を選ぶ際は、本人の適性や学習習慣も踏まえ、慎重に判断することが大切です。
高校の推薦入試のデメリットは?
推薦入試には多くのメリットがありますが、一方で注意しておきたいデメリットも存在します。ここでは、代表的なデメリットを取り上げて解説します。
一般入試の準備も、同時に進めていく必要がある
特に公立高校の場合や、不合格者が出ることが前提になっている私立高校の場合は、推薦入試を受けたからといって、必ず合格できるとは限りません。
不合格だった場合に備えて、一般入試の対策も並行して進めておく必要があります。
推薦対策と一般入試対策を同時に行うことは、生徒にとって大きな負担になることもあります。
特に、面接や作文の練習と並行して、学力試験の勉強を続けるのは簡単ではありません。
また、推薦入試で不合格になると、自信をなくしてしまう生徒も少なくありません。
精神的なショックが、一般入試へのモチベーションに影響するケースもあります。
推薦を受ける際は、「万が一落ちた場合」も想定して、心構えと準備を整えておくことが大切です。
合格した後には周囲への配慮が必要
推薦入試に合格すると、クラスの中でひと足早く進路が決まることになります。一方で、まだ受験に向けて努力しているクラスメイトと温度差が生まれることもあるので注意しましょう。
本人にそのつもりがなくても、明るく振舞ったり喜びを表現したりすることで、周囲から「浮かれている」と受け取られるおそれもあります。
特に受験への緊張や不安を抱えて神経質になっている同級生にとっては、何気ない言動が気に障る場合もあるでしょう。
受験が終わっても、周囲への配慮を忘れない姿勢が求められます。卒業までの間、クラスの雰囲気を大切にする心がけが必要です。
「推薦=ラク」というイメージには注意! 特に東京都の公立高校における推薦入試は、「高校の求める生徒像」と合致しているか、その上でペーパー試験だけでは測りきれない能力などを小論文・作文・内申書などで測りながら行う選抜になります。都立高校の場合は各校倍率も高く、付け焼刃のテクニックで乗り切れるものではないので、それ相応の準備と訓練が必要になる点には注意が必要です。 (大山先生) |
高校の推薦入試に向いている子の特徴とは?
高校の推薦入試には、向いている生徒とそうでない生徒がいます。ここでは、推薦入試に適性がある生徒の特徴を紹介します。
自分自身やお子さんに当てはまるかどうか、参考にしてみてください。
内申点が高い
内申点の高い生徒は、推薦入試において大きなアドバンテージを持っています。先述のとおり、多くの高校では推薦入試の評価において、調査書(内申点)が約50%を占めます。
私立高校の場合は受験資格として一定の内申点が必要になるケースがほとんどです。このため、日頃から安定した成績を維持できている生徒は、推薦向きといえるでしょう。
コミュニケーション能力が高い
外交的で明るく、コミュニケーション能力の高い生徒も、推薦入試に向いています。推薦入試では学力試験がない場合が多く、面接や集団討論が選抜の中心となるからです。
明るくハキハキと受け答えができる生徒は、面接官に好印象を与えやすくなります。自分の意見をわかりやすく伝える力は、評価の大きなポイントです。
また、集団討論では、発言力や協調性、リーダーシップが試されます。積極的に発言できる生徒は、試験官の目にとどまりやすくなります。
面接や討論を通じて、自分の考えを自分の言葉で伝えられる力は、推薦入試において大きな武器です。人と関わることに前向きで、会話を通じて自己表現ができる生徒は、推薦入試に非常に向いているといえるでしょう。
試行錯誤することが得意
推薦入試では、作文や小論文など、正解が一つではない試験が行われることがあります。こうした課題には、考えながら答えを導く力と、根気強く取り組む姿勢が求められます。
特に作文や小論文の対策は、書いては修正し、また書き直すという繰り返しが基本です。
この過程を地道に積み重ねられる生徒は、得点につながる答案を作れる可能性が高まります。
また、先生からの添削を素直に受け止め、改善に活かせるかどうかも重要です。アドバイスを前向きに受け入れ、より良い表現を目指せる生徒は、推薦入試で力を発揮しやすいでしょう。
行動力がある
何事にも積極的に挑戦できる行動力のある生徒は、推薦入試に向いています。自ら動いて経験を積んだ実績は、面接や調査書で高く評価されることがあります。
例えば、大会での結果や役職経験などがあれば、評価材料として有利に働くでしょう。
今取り組んでいることがあるなら、その活動を継続し、何らかの成果につなげることが大切です。
行動し続ける姿勢そのものが、推薦入試で評価される力になります。
一般入試に自信がないが、成績は良い
志望校を目指して努力していても、「当日の学力試験が不安」という生徒も少なくありません。そんな人には、推薦入試という選択肢が向いている可能性があります。
私立高校の推薦入試では、学力試験を行わない高校も多くあるのです。そのため、筆記試験に自信がない場合でも、内申点や人物評価をもとに合格を目指すことができます。
日頃の成績が安定していて、かつ筆記試験に不安がある場合は、推薦入試の活用を前向きに検討する価値があります。
高校受験のプロが語る「推薦に強い子」 特に東京都の公立高校の推薦入試の場合、多くが入学後に各方面でリーダーシップを発揮できそうな子を確保したいという願いが強いように感じます。 (大山先生) |
高校の推薦入試に向いていない子の特徴とは?
推薦入試を検討するうえで、注意すべき向いていないタイプの特徴も押さえておきましょう。
推薦入試に適していないケースには、いくつかの共通点があります。
内申点が低い
推薦入試では、内申点が合否に大きく影響します。一般的に、評価全体の約50%を内申点が占めるとされており、成績が低い場合は不利になる点を押さえておきましょう。
また、地域や高校によっては、出願の条件として一定以上の内申点を求めるケースもあります。このため、内申点が足りない場合は、そもそも推薦を受けられないおそれもあるのです。
たとえ偏差値が高くても、内申点が基準を満たしていなければ推薦は難しいでしょう。推薦を希望する場合は、日頃から提出物や授業態度を含めて、内申点を意識した取り組みが求められます。
落ち込みやすく気持ちの切り替えが難しい
感情の切り替えが苦手な生徒にとって、推薦入試は負担が大きくなることがあります。推薦入試では、当然ながら不合格になるおそれもあるからです。
不合格となった場合は、すぐに一般入試に向けた準備を始める必要があります。しかし、気持ちの整理に時間がかかるタイプの生徒にとっては、それが大きな壁になることもあります。ショックを引きずってしまうと、一般入試への集中力にも影響しかねません。
こうした傾向がある場合は、推薦入試に挑戦するかどうかを慎重に検討することが大切です。自分に合った受験スタイルを選ぶためにも、性格や気質を踏まえた判断が求められます。
そもそも学力が高く、一般入試での合格が見込める
偏差値が高く、一般入試でも十分に合格が見込める生徒にとっては、推薦入試が必ずしも最適とは限りません。特に推薦入試が「専願」を前提とする場合、合格後はその高校に必ず進学する必要があります。
どうしてもその高校に行きたいという強い希望があるなら、推薦入試は有効な手段です。一方で、複数の高校を選択肢に入れている場合は、慎重な判断が求められます。
学力に自信があり、より上位の高校を目指せる可能性があるなら、一般入試を選んだ方が選択肢は広がります。その場合は、推薦入試にこだわらず、志望校の幅を持たせる受験計画を立てることが望ましいでしょう。
推薦入試で落ちる子に見られる特徴とは?どう対策すればいい?
ここまでで推薦入試に向いていない生徒の特徴を紹介しましたが、推薦入試が文字通りの「選抜」である場合、つまり不合格者が多く出るような推薦選抜において、不合格になりやすい要因と、その対策について解説します。
失敗を避けるためにも、事前に知っておきたいポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
調査書や内申点の不足
推薦入試では、内申点(調査書)の配点が最も高く設定されていることが一般的です。多くの高校で、内申点が評価全体の50%を占めるとされています。
残りの配点は、面接・集団討論が約25%、作文や小論文が約25%です。詳細な配点は各自治体や高校によって異なりますが、多くの場合、内申点が低い場合は、それだけで不利な状況に立たされるおそれがあります。
私立高校によっては、出願に必要な基準点が設定されていることもあるので注意しましょう。推薦入試を目指すなら、早い段階から内申点を意識して行動することが、最大の対策になります。
面接・作文の準備不足
推薦入試では、面接と作文・小論文の対策が合否を大きく左右します。準備が不十分なまま本番に臨んだ場合、評価が下がる原因となることがあるので注意です。
緊張からうまく話せなくなるケースも考えられます。
基本的に、明るく、はきはきと受け答えができることが望ましいです。本番でしっかりと受け答えができるようにする練習も準備の一環だととらえるべきでしょう。
また、時事問題や社会問題に関する質問が出ることもあります。そうした話題に対して答えられないと、準備不足とみなされるおそれがあります。
作文や小論文の失敗で多いのは、文字数不足です。小論文においては、最低でも指定文字の8割以上は書く必要があると考えてよいでしょう。
時間配分を誤ったり、構成を練りすぎて時間が足りなくなったりすると、文字数が届かず減点されてしまいます。
精神的な準備ができていない
推薦入試では、精神的な落ち着きや本番での対応力も重要な評価項目です。
しかし、ストレスに弱く緊張に飲まれてしまうと、本来の力を発揮できないことがあります。
面接で自分の考えをうまく言葉にできなかったり、作文で手が止まってしまったりするケースも見られます。こうしたパフォーマンスの低下が、結果として不合格につながることもあるのです。
緊張を完全に取り除くことはできなくても、慣れや準備によって軽減することは可能です。面接では想定質問への答えを何度も声に出して練習したり、小論文・作文ではさまざまなテーマに事前に取り組んだりすることで、自信を持って本番に臨めるようになります。
また、模擬面接や本番を想定した時間内作文などを通して、精神面の準備を整えておくことも大切です。「本番慣れ」が不安の軽減につながり、安定したパフォーマンスを支えてくれます。
失敗しないための具体的な対策
推薦入試で失敗しないためには、事前の準備と判断が非常に重要です。以下の4つの対策を意識しておくと、リスクを減らすことにつながります。
- 自分の向き不向きを見極める
- 無理に推薦を狙わない判断も大切
- 面接や作文は早めの準備がカギ
- 第2志望をどうするかも含めて受験プラン全体を考える
自分の向き不向きを見極める
推薦入試に向いているかどうかは、生徒一人ひとりで異なります。事前に内申点・性格・対策のしやすさなどを冷静に振り返りましょう。
無理に推薦を狙わない判断も大切
「推薦に向いていないかもしれない」と感じたら、あえて推薦を避ける選択肢もあります。自分に合った方法で受験することが、最終的な成功に近づく一歩になります。
面接や作文は早めの準備がカギ
面接や作文の対策は、短期間では不十分になることがあります。繰り返しの練習と客観的なフィードバックが、着実な力につながります。
第2志望をどうするかも含めて対策を考える
推薦選抜に不合格だった場合や、出願に足る内申が確保できなかった場合の備えとして、一般入試の準備や、場合によっては志願先変更の検討も同時に進めておく必要があります。第2志望をどうするかも含め、早めに受験全体の計画を立てておきましょう。
推薦においては「小論文・論文」に特に注意! 都立推薦においては、小論文・作文の準備が十分できていない子は合格が取れないケースが多いように感じます。対策の有無も含めて推薦入試の中では特に点差がつきやすい項目になります。 (大山先生) |
私立高校の推薦基準をこえるためには?
私立高校の推薦入試を受けるには、まず各高校が定めている基準を満たす必要があります。ここでは、基準を満たすために必要な日々の行動や心がけについて解説します。
授業にしっかり取り組み内申点を確保する
推薦をもらうには、内申点を安定して維持することが最も重要です。内申点は、定期テストの成績や提出物、授業態度などから総合的に評価されます。
テストや課題以外にも、発表などの「主体的な学習態度」も評価の対象になります。日ごろからしっかりと授業に取り組む姿勢を見せましょう。
また、定期テストでは、毎回きちんと計画を立て、準備して臨むことが求められます。良い成績を取り続けることで、内申点は安定し、推薦がもらえる可能性も高まります。
内申点が低いと、それだけで推薦の基準に達しないこともあります。授業内容を理解するためにも、普段から予習と復習を習慣づけておきましょう。
欠席や遅刻の日数を減らす
欠席や遅刻の日数を減らすことも重要です。出席日数が高校が定めた基準に満たない場合は推薦入試を受けられない場合があります。
そのため、体調管理を含め、規則正しい生活を心がけることが重要です。日頃から無理のないスケジュールで行動し、きちんと登校できるよう準備しておきましょう。
提出物の期限を守る
提出物の期限を守ることは、推薦を受けるうえで非常に重要です。指定された期日を過ぎてしまうと、理由にかかわらず評価が大きく下がることがあります。
期限を忘れないように、カレンダーに記入したり、スマートフォンのリマインダーを使ったりするなど、工夫を取り入れましょう。日常的に提出物の管理を習慣化することが、信頼につながります。
また、期限内に出していても、内容が不十分だと評価が下がる恐れがあります。例えば、課題の答えを丸写しにしたような内容は評価の対象になりにくいと考えておきましょう。
提出物は、知識を定着させるための学習の一環です。単なる「やること」ではなく、自分の理解を深める機会として丁寧に取り組むことが求められます。
しっかりと期限を守り、自分の言葉で考えて取り組むことが、最終的には内申点の確保にもつながります。
特別推薦の場合はスポーツなどに取り組む
特別推薦を目指す場合は、部活動や課外活動に積極的に取り組むことが重要です。大会やコンクールで入賞するなど、目に見える実績が評価されやすくなります。
文化活動の場合は、大きな大会での実績があれば、推薦を得やすくなります。できるだけ具体的な成果を残すことが、選抜でのアピール材料になります。
ただし、実績が優れていても、内申点が基準に満たない場合は、推薦を受けられないこともあります。多くの高校では、最低限の学力基準を設けている点に注意が必要です。
また、高校によっては、ボランティア活動や留学経験なども推薦基準の一部として評価されることがあります。特別推薦を希望する場合は、出願先の高校が公開している推薦条件を必ず確認しておきましょう。
高校の推薦入試の受験方法は?ステップごとに解説
推薦入試を受けるには、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、受験までの流れを順を追ってわかりやすく解説します。
推薦入試を検討している生徒は、各ステップをしっかり確認しておきましょう。
STEP1:先生に相談する
推薦入試を検討している場合は、まず担任の先生に相談することが第一歩です。推薦を受けるには多くの場合、、学校長の推薦が必要です。
推薦基準は学校ごとに異なるため、自己判断ではなく、必ず先生に確認するようにしてください。
推薦の意思を早めに伝えることで、内申点や生活態度を意識した行動が取りやすくなります。出願条件にギリギリで届かないと、推薦そのものが認められないので注意が必要です。
また、志望校によっては1年生からの成績を評価に含めることがあります。評価の対象時期や内容は、担任の先生や塾の先生と一緒に確認しておきましょう。
推薦入試に挑戦したいと思ったら、「推薦が可能かどうか」「基準を満たしているか」を最初にチェックするのが重要です。
推薦基準をクリアしていれば、次の準備段階に進むことができます。
STEP2:推薦書を記入してもらう
推薦入試で中学校長の推薦書が必要な場合は、担任の先生を通じて作成してもらいます。毎年決められた時期に進路に関する面談が組まれるケースが多いため、その場で依頼できるように、事前に高校ごとの説明会や個別相談などに足を運ぶ、受験プラン全体の見通しをまとめておくなどの準備をしておくことが大切です。
STEP3:指定があれば志望理由書なども記入
高校によっては、志望理由書や自己PR文の提出が求められることがあります。事前に志望校の募集要項を確認し、必要な書類を把握しておきましょう。
自己PR文には、志望理由や入学後に取り組みたいこと、将来の目標などを書くのが一般的です。加えて、中学校生活で頑張ったことや印象的な取り組みも記載しておくとよいでしょう。
作成した書類は、必ず先生に添削してもらうことが重要です。内容に誤りがある場合は修正を重ねて、より良いものに仕上げることができます。なお、添削は学校の先生だけでなく、塾の講師に依頼するのも一つの方法です。塾によっては、書き方の指導からサポートしてくれるところもあります。
また、提出期限には十分な余裕を持って完成させておきましょう。直前になると、修正やトラブルがあった際に出願に間に合わないリスクがあります。
STEP4:忘れずに出願する
推薦入試でも一般入試でも、出願手続きを行わなければ受験できません。公立高校の場合、出願書類は中学校から配布されるのが一般的です。
一方、私立高校では高校に直接問い合わせて取り寄せる必要があります。郵送対応の学校もありますが、下見を兼ねて直接取りに行くのも一つの方法です。
ただし、願書の配布期間や受付時間が決まっている場合があります。訪問する前に、必ず募集要項などで確認しておきましょう。
出願方法は「持参」か「郵送」のいずれかです。郵送の場合は「期限内必着」と指定されていることが多いため、余裕を持って準備することが大切です。また、事前にWeb上での登録が必要な高校もあります。
まとめ|推薦入試の仕組みを理解して自分に合う道を選ぼう
高校の推薦入試は、内申点や面接、作文、小論文などを通じて総合的に評価される入試方式です。
学力試験だけでは測れない力が見られるため、自分の得意分野を活かせるチャンスでもあります。
一方で、推薦には出願条件や配点の比率など、一般入試とは異なるルールもあります。
まずは仕組みをしっかり理解し、自分に合った入試方法かどうかを見極めることが大切です。
もし不安がある場合は、学校の先生や塾の講師に相談してみましょう。
早めに動くことで、推薦入試に向けた準備も着実に進められます。
推薦入試をうまく活用できれば、早期に進路を決めることができます。後悔のない選択ができるよう、情報収集と準備をしっかり進めていきましょう。
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監修者プロフィール

塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。