大学受験の自己PRの書き方!ゼロからでもアピールできる方法【例文付き】

「大学受験の自己PR、どうすればいいのかわからない……」と悩む受験生の方は多いのではないでしょうか。特に総合型選抜や学校推薦型選抜では、志望理由書と並び自己PR文(自己推薦書)が合否を左右する重要な要素となります。
本記事では、志望理由書に関する著書も持つ総合型選抜の専門家・福井先生の監修のもと、「大学受験の自己PR」の基本から、よくある失敗例、具体的な例文までを網羅的に解説。初めて書く方でも取り組みやすいよう、作成の手順や注意点も丁寧に紹介しています。
大学側に伝わる自己PRを作るために、ぜひ最後までご覧ください。

編集部
塾選ジャーナル編集部
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。

監修者
福井悠紀
1995年、大阪府生まれ。京都大学経済学部経済経営学科卒業。大学3年生次にAOIの創業に参画し創業当時から志望理由、面接、小論文の指導を行う。塾内の教材開発にも長年にわたり携わってきた。

自己PRは大学受験でなぜ必要?大学側は何を見ている?
特に総合型選抜や学校推薦型選抜では、自己PR文の質が合否に大きく影響します。
大学側は、自己PRを通じて「主体性」や「目的意識」、さらには「大学との適合性」などを見極めようとしています。
成績や偏差値だけでは判断できない人間性や将来性を評価するための材料として、自己PRは非常に重要なのです。
この章では、大学受験における自己PRの基本的な役割や、大学が注目しているポイントを解説します。
総合型選抜・学校推薦型選抜では自己PRが重要に!
自己PRとは、自分の長所や強みを言語化し、「大学が採るべき人物」であることを伝えるものです。
単なる自己紹介ではなく、大学の選考基準に沿って自分の価値を明確に示す役割があります。
総合型選抜や学校推薦型選抜では、学力以外の面も重視されます。大学が自己PRを求めるのは、受験生の人柄や経験、将来性などを多面的に評価するためです。
これまでの一般入試では、学科試験の点数が主な評価軸でした。しかし、現在では、多様な価値観を持つ学生を受け入れ、豊かな学びの場をつくることが重視されています。
自己PRを通じて、自分の経験や考え方を言語化できる力は、大学生活や卒業後にも役立ちます。そのため、表現力や主体性をアピールできる自己PRは、選考において非常に重要なのです。
大学側は「大学に合う人材かどうか」見ている
大学側は、自己PRを通して「この学生はうちの大学にふさわしいか」を判断しています。単に優秀な人材かどうかではなく、「大学との相性」が重視されるのです。
各大学には、「アドミッション・ポリシー」と呼ばれる学生受け入れ方針があります。これは、大学の教育理念や目的に基づいて定められており、「どのような学生を求めているか」が明記されています。
そのため、総合型選抜や学校推薦型選抜を受ける場合は、このアドミッション・ポリシーを必ず確認しましょう。そのうえで、自己PRを大学の方針と結びつけて構成することが、合格への近道となります。

福井先生
自己推薦書はあなたの「これまで」について書くものです。「これから」に主眼を置いた「志望理由書」とは別のものになります。あなたが持っているほかの人と違う強みは何かを具体的なエピソードで示しましょう。
なお、志望理由書の書き方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
大学受験の自己PRを書く前に!やっておきたい4つのステップ
自己PRを書く前に、自分の強みや経験を客観的に整理することが大切です。
以下の4つのステップを通じて、自分を効果的にアピールできる素材を洗い出しておきましょう。
ステップ①:自己分析
大学受験の自己PRに取り組む際、最初に行いたいのが自己分析です。これは、自分がどのような人間なのかを言語化するための大切なステップになります。
自己分析では、これまでの経験や行動を振り返り、長所・短所、価値観などを丁寧に洗い出します。例えば、部活動での継続的な努力や、苦手科目を克服しようとした姿勢など、具体的な出来事を思い返してみましょう。
大切なのは、何をしたかだけでなく、「なぜそうしたのか」「そこから何を得たのか」まで深掘りすることです。そうすることで、エピソードに説得力が生まれ、大学側にもあなたの人間性が伝わりやすくなります。
また、自己分析は面接対策としても非常に効果的です。あらかじめ自己分析を通じて自己PRの内容を整理しておくことで、書類と面接の内容に一貫性が生まれ、面接時にも自然な受け答えができるようになります。
自己分析は、ただ過去を振り返るだけの作業ではありません。自分の内面を見つめ直し、将来に向けた意志を明確にするプロセスでもあります。この土台がしっかりしていることで、言葉に信頼感が生まれるでしょう。
ステップ②:大学・学部のリサーチ
自己PRを作成する際には、志望する大学や学部について十分に調べておくことが不可欠です。自己分析だけでは、志望動機に具体性や説得力を持たせるのは難しいでしょう。
まずは、各大学が掲げるアドミッション・ポリシーを確認することが大切です。というのも、自己PRのゴールは自分がどのようにアドミッション・ポリシーに沿っているか伝えることだからです。そのうえで、自分の強みや価値観が、その大学の理念とどのように一致しているかを整理してみてください。
学部の授業内容やカリキュラム、取得できる資格や支援制度なども調査対象です。
これらが自分の将来目標とどうつながっているかを言語化できると、自己PRに深みが生まれます。
リサーチが不十分だと、「ほかの大学でも良いのではないか」という印象を与えるおそれがあります。その大学でなければならない理由を、自分の言葉でしっかりと説明できるように準備しておきましょう。
オープンキャンパスの体験談や、在学生・卒業生のインタビュー記事なども参考資料になります。具体的な情報に基づいた内容は、志望理由書や面接での発言にも説得力を持たせるカギになるのです。
ステップ③:自分の長所とアドミッション・ポリシーを結び付ける
自己PRをより効果的に仕上げるためには、アドミッション・ポリシーとの結び付きが重要です。
まずは、志望する大学や学部が掲げる「求める学生像」を正確に理解しましょう。
大学は、教育方針や重視する人物像をアドミッション・ポリシーとして公開しています。
この情報をもとに、自分の強みや経験が大学の理念や教育目標とどう重なるのかを整理してみてください。
例えば、「現代社会のさまざまな現象や問題について基本的な関心を持っていること」を求めている大学に対しては、探究活動や課題研究、ボランティア活動など、興味関心を行動に移した経験を具体的に示すと効果的です。
単なる実績の列挙ではなく、価値観や行動原理を明確にすることで、印象深い自己PRになります。
ステップ④:具体的なエピソードを提示
自己分析によって明らかにした強みは、具体的な体験とセットで伝えることが大切です。
抽象的な表現だけでは、自己PRに説得力を持たせることはできません。
例えば、部活動でチームをまとめた経験や、苦手科目を克服するための努力などが挙げられます。
こうした実体験を通じて、自分の強みがどのように発揮されたのかを示しましょう。
エピソードは、「状況(背景)」「行動」「結果」の3点を意識して整理すると伝わりやすくなります。
特に、なぜその行動をとったのか、行動の結果どのような学びを得たのかという考えを加えることで、内容に深みが生まれます。
読み手に印象づけるためには、自分の言葉でリアルに語ることが重要です。
自分自身を客観的に振り返りながら、ストーリーとして構成していきましょう。

福井先生
エピソードを書く際には、5W1Hを意識してできるだけ具体的に書きましょう。
5W1Hとは、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の英単語の頭文字をとった言葉です。この6つに基づいて情報を整理することで、正しく伝えることができます。
エピソードにもよりますが、どのような困難があったか、どのように工夫して解決したかということも合わせて書けると良いでしょう。
大学受験の自己PRを書くときの注意点は?
自己PRは、自分を魅力的に見せるための表現ですが、やみくもに書けば良いというものではありません。自分の伝えたいことが的確に届くようにするには、いくつかの注意点を意識する必要があります。
ここでは、大学受験の自己PRを書く際に気をつけたいポイントを解説します。基本的な構成や一貫性のある内容を心がけ、説得力のある文章を目指しましょう。
結論→具体例→展望の流れを守る
大学受験の自己PRは、文章構成が非常に重要です。基本の流れは「結論→具体例→展望」を意識して組み立てましょう。
まず冒頭で、「私の強みは〇〇です」などの結論を明確に述べます。文章の冒頭に結論を置くことで、読み手は内容を把握しやすくなり、その後に続くエピソードの理解もスムーズになります。
次に、自分の強みを証明する具体的な体験を一つ取り上げましょう。
複数の出来事を盛り込むよりも、一つの体験を深く掘り下げたほうが一貫性と説得力が増します。また、先生や友人に言われた言葉など第三者からの評価を補足することで、客観性が加わり、信頼性も高まります。
最後に、自分の強みを大学生活や将来の進路にどう活かしていきたいかを述べて文章を締めましょう。「だから私はこの大学で学びたい」という意思が伝わると、読み手の印象にも残りやすくなります。
長所だけを並べるのは避ける
自己PRでは、自分の長所をしっかり伝えることが大切ですが、強みばかりを一方的に並べるような書き方には注意が必要です。
大学の選考担当者が本当に知りたいのは、どんなスキルを持っているかだけではありません。その背景にある考え方や価値観、つまり「あなたがどのような人間なのか」が伝わっているかが大きな判断材料です。
例えば、「リーダーシップがあります」「協調性があります」といった長所を列挙するだけでは、印象に残りにくく、説得力にも欠けてしまいます。むしろ、自分の弱みや失敗も含めた具体的なエピソードの中で、長所が自然とにじみ出ている形が望ましいといえるでしょう。
また、自分を良く見せようとするあまり、自己主張が強すぎる印象になるのも避けたいところです。等身大の自分を意識しつつ、他者との関わりや、そこから得た学びを交えて表現することが、人間味のある自己PRにつながります。
アドミッション・ポリシーとのズレに注意
大学受験の自己PRでは、アドミッション・ポリシーと内容がズレてしまわないよう留意しましょう。どれほど熱意や強みがあっても、大学が求めていない方向性をアピールしてしまっては意味を持ちません。
例えば、「国際的に活躍するグローバル人材の育成」を掲げる大学に対して、「地元の地域貢献に専念したい」という内容の自己PRを提出するのは望ましくありません。その人の志が立派であっても、大学の教育方針との間にギャップが生まれてしまうからです。
このように、自己PRの内容がアドミッション・ポリシーと明確に一致しているかを確認することは、出願時の基本です。もしも、自分の将来像や価値観がどうしても一致しないと感じた場合は、その大学の志望自体を見直すことも必要かもしれません。
「自分がやりたいこと」だけではなく、「その大学で学ぶ必然性」が伝わるよう、方針と自分のビジョンが重なるポイントを丁寧に探しておきましょう。
できるだけ具体的な内容を心掛ける
自己PRは、自分を伝える大切な手段ですが、内容が抽象的すぎると、読み手には何も残りません。「協調性があります」「努力を惜しみません」といった表現だけでは、誰にでも書ける書類になってしまいます。
大学の担当者が知りたいのは、「その強みが実際の経験の中でどのように発揮されたのか」という具体的なエピソードです。
また、具体的な数字や状況、当時の自分の考えなどを含めると、読み手のイメージがより鮮明になります。「どこで」「どんな役割で」「何をしたか」を意識しながら構成すると、自己PRに深みが出てきます。
ほかの受験生と差をつけたいのであれば、「誰でも書ける内容」から一歩踏み込んだ、自分だけのリアルな体験を言語化することが大切です。
例文をそのまま用いるのはNG
大学受験の自己PRでは、例文を参考にすること自体は問題ありません。文章の構成や表現方法を学ぶうえで、他人の文章を読むことは効果的です。
しかし、例文をそのまま写して提出することは絶対に避けましょう。自分の体験ではない内容は、文章のどこかに違和感や矛盾が生じやすく、試験官にもすぐに見抜かれてしまいます。
特に、面接ではその文章の中身について深掘りされる可能性があります。内容が曖昧だったり、自分の言葉で説明できなかったりすると、信頼性を大きく損なうことになりかねません。
自己PRは、あくまでも自分自身の経験や価値観を伝えるものです。参考にするのは構いませんが、必ず自分の言葉で書き、自分のストーリーとして仕上げましょう。

福井先生
アドミッション・ポリシーの文言をそのまま引用して自己PRを作成するのは避けましょう。
具体的なエピソードを交えアドミッション・ポリシーにどのように合致しているかを説明するべきなのに、アドミッション・ポリシーの文言を丸写しで書いても意味がないためです
大学受験で効果的な自己PRのパターン【例文付き】
ここでは、大学受験の自己PRでよく使われるパターンを、アピールポイント別に例文付きで紹介します。テーマごとに構成の流れや表現のポイントを具体的に掲載しているため、出願準備の参考としてぜひご活用ください。
ただし、ここで紹介しているのはあくまで一般的なパターンです。
実際に文章を作成する際には、志望大学のアドミッション・ポリシーや、自分自身の経験・考えをしっかり反映させることが重要です。例文をそのまま使うのではなく、「自分の言葉で、自分のストーリーを伝える」ことを意識しましょう。
例文①:部活動のリーダー経験をアピール
私の強みは、周囲の意見を尊重しながらチームをまとめるリーダーシップである。
高校では、サッカー部の副キャプテンとして活動していた。3年次には、メンバー間の意見の対立が続き、チームの雰囲気が悪化する時期があった。
その際、私は「全員が納得できる目標をつくることが必要だ」と考え、部内ミーティングを自主的に提案した。メンバー一人ひとりに意見を聞き、目標や不満点を共有する場を設けたことで、次第に緊張がほぐれ、チームに一体感が生まれた。
結果として、県大会では過去最高のベスト8に進出し、最後の試合では、チームメイトから「あなたがまとめてくれたおかげでここまで来られた」と言ってもらえたことが印象に残っている。
大学では、この経験で培った対話力と調整力を活かし、ゼミ活動やグループワークなどでも積極的に貢献していくつもりである。また、学びの場においても、異なる考え方を尊重しながら意見をまとめる姿勢を大切にし、自分の視野をさらに広げていきたいと考えている。

福井先生
どのような意志を持って、解決のために行動したのかが具体的に書かれていて良いですね。なぜ、全員が納得できる目標づくりが重要だと考えたのかというあなたの価値観がかけるとより良い自己PRになるでしょう。
例文②:課外活動の実績をアピール
私は高校2年のときに、地域の商店街と連携したイベント企画にボランティアとして参加した。
当初はチラシ配りなどのサポート業務が中心であったが、イベント運営に関わる中で「商店街に若年層の来場者が少ない」という課題に気づき、自らその改善策を考えた。周囲の大人に相談しながら、InstagramやXで高校生に向けて各店舗の魅力を紹介するキャンペーン企画や、地元店舗での職業体験ワークショップなどを提案した。これらのアイデアをPowerPointでスライドにまとめ、商店街の会合でプレゼンを行い、企画書として提出した。
最終的にその案の一部が採用され、イベント当日は前年よりも多くの来場者が集まった。
終了後には、地元の店舗の方々から「若い視点がとても役立った」と声をかけてもらい、大きな達成感を得ることができた。
大学では、地域や社会に対して自ら関心を持ち、課題解決に関わる姿勢をさらに深めていくつもりである。フィールドワークや実習などにも積極的に参加し、実践的な力を身につけながら、社会とつながる学びを広げていきたいと考えている。

福井先生
自ら課題を見つけて、プレゼンをし、他の人を巻き込みながらアイディアの実現まで達成できたということを具体的なエピソードと共に示せているのが素晴らしいですね。若年層の来場者の増加になぜSNSが効果的だと考えたのかも詳しく書けるとより伝わりやすいと思います。
例文③:将来の目標と大学での学びを結び付けてアピール
私の強みは、自分の将来像を明確に持ち、それに向けて計画的に努力できる力である。
私は将来、発展途上国の教育支援に携わる仕事をしたいと考えている。
きっかけは、中学生の頃に参加した国際協力イベントで、教育を受けられない子どもたちの現状を知ったことである。
高校では国際問題に関する資料を自主的に読み進め、学校外でもNPOの講演会やボランティア活動に積極的に参加した。
また、英語力を高めるためにオンライン英会話を継続し、英検準1級を取得した。
これらの経験を通じて、教育の機会が個人の人生を左右する現実に触れ、自分が将来関わりたい分野が明確になった。
その目標を実現するためには、国際協力や教育政策を体系的に学べる環境が必要であると感じている。
貴学の国際学部では、教育・文化・政策の3つを横断的に学べるカリキュラムが整っており、私の目標に直結している。
大学では、現地調査や実地研修などにも積極的に取り組み、将来的には現場で実践できる知識と視野を広げていきたいと考えている

福井先生
目標に向けて、逆算して努力できている点が評価されるでしょう。出願書類で設問の関係上、将来像を具体的に述べられなかった場合などに効果的な書き方だと思います。きっかけの部分で、自分がなぜ教育支援に興味を持ったのかを深掘りできると努力の原動力が説明できて、よりよくなると思います。
例文④:長所に具体的なエピソードを盛り込んでアピール
途中で投げ出さず、自分に任されたことは必ずやり遂げようとする意識を常に持っている。
高校では図書委員を務め、3年時には学校全体で取り組む読書週間イベントの責任者を任された。
例年になく準備期間が短く、周囲の協力を得ながら全体をまとめる必要があったが、誰かに任せきりにせず、自分の役割以上のことにも積極的に取り組んだ。
特に企画運営や当日の進行表作成などでは、ミスが出ないよう何度も確認を重ねた。
開催後には担当の先生から「細かいところまで気を配ってくれて本当に助かった」と声をかけていただき、自分の責任感が形になったと実感した。
大学でも、自分の役割に責任を持って行動する姿勢を大切にしたいと考えている。
グループでの活動やゼミでの発表などでも、周囲に信頼される存在として取り組んでいくつもりである。
将来的には、どんな仕事に就いても「任されたことは必ずやり遂げる人」でありたいと考えている。

福井先生
性格や強みが表れているエピソードですね。面接のために、書類に書かなかったほかのエピソードも用意しておけると良いでしょう。アピールポイントが「責任感」と「細部までの確認」の二つに分かれている印象なので、どちらか一つに絞ると一貫性が生まれると思います。
これはNG!自分の魅力が伝わりづらい自己PR【改善例付き】
いくら熱意を込めて自己PRを書いても、評価されにくいパターンには一定の傾向があります。構成が不十分だったり、抽象的すぎたりすると、自分の魅力が正しく伝わらないおそれもあるのです。
ここでは、自己PRで避けたいNGパターンと、その改善ポイントを例文付きで紹介します。失敗例を知ることで、自分のPR文に足りない部分に気づくきっかけにもなります。
まずは、文章の構成としてありがちな失敗から見ていきましょう。
NG例文①:文章の羅列や箇条書きにとどまっている
私の長所は、協調性と積極性である。
文化祭ではクラスの出し物に参加した。
部活動では毎日練習に励んだ。
勉強においては、コツコツと努力することを大切にしている。
将来は、社会の役に立つ人間になりたいと考えている
具体的なエピソードがなく、すべてが表面的な事実の羅列にとどまっていると、自分の魅力が相手にうまく伝わりません。
「何をしたか」だけを並べても、その行動の背景や工夫、そこから得た学びが見えなければ、読み手はその人の魅力を具体的にイメージすることができないからです。
改善例は以下のようになります。
【改善例】
私の強みは、周囲と協力しながら積極的に行動し、目標に向かって粘り強く取り組めることである。
高校では文化祭の実行委員として、クラス企画のリーダーを務めた。
準備期間中は意見がまとまらず、雰囲気が悪くなりかけたこともあったが、私は全員の意見を一度聞いたうえで、共通点を見つけて企画を再構成した。
その結果、クラス内の協力体制が整い、本番当日には多くの来場者に楽しんでもらうことができた。
終了後、担任の先生から「あなたがまとめてくれたから成功した」と言葉をかけていただいたことが印象に残っている。
大学では、こうした経験で培った協調性や行動力を活かし、グループでの研究活動やプロジェクトにも積極的に貢献していきたいと考えている
NG例文②:長所だけをアピール
私は責任感が強く、真面目に物事に取り組むタイプである。
学校の課題には常に期限を守って提出し、グループワークでも積極的に役割を担ってきた。
友人からは「ちゃんとしている」と言われることが多く、自分でもその通りだと思っている。
将来もこの責任感を活かして、社会に貢献したいと考えている。
長所を伝える際は、単に良い面だけをアピールするのではなく、「それをどうやって発揮したのか」「どんな困難を乗り越えたのか」「その結果、自分はどう変化したのか」といった視点を加えることで、説得力が増します。
改善例は以下のようになります。
【改善例】
私の強みは、責任ある立場を自覚し、自分の役割を最後までやり遂げる力である。
高校では、図書委員として学年全体の貸出イベントの運営を任された。
開始直前に担当の先生が不在となり、準備や日程の見直しなどを委員のメンバーと自分たちだけで進める必要があった。
最初は混乱もあったが、私は全員に役割分担表を作成して共有し、毎朝の連絡確認を欠かさず行った。
当日を無事に迎えることができたときには、メンバーから「安心感があった」と言ってもらえたことが何よりうれしく、自信にもつながった。
大学でも、状況に応じて柔軟に行動しつつ、与えられた責任は必ず果たす姿勢を大切にしていきたいと考えている。
グループ活動やゼミなどでも、周囲を支える存在として信頼されるよう努めたいと考えている。
NG例文③:内容に具体性がない
私は努力を大切にしている。
これまでどんなことにも手を抜かず、真面目に取り組んできた。
高校生活では、勉強も部活動も全力で頑張ってきた。
このような姿勢を大学でも活かしていきたいと考えている。
自己PRで「真面目」「努力家」「協調性がある」といったありふれた表現を用いる場合は、それがどのような経験の中で発揮されたのかを具体的に描写することが大切です。
抽象的な言葉だけでは説得力に欠け、印象にも残りにくくなってしまいます。
エピソードを通じて、「なぜその長所を自覚するようになったのか」「どう行動し、何を学んだのか」を伝えることで、読み手にあなた自身の人間性や価値観がより深く伝わります。
改善例は以下のようになります。
【改善例】
私の強みは、地道な努力を継続し、結果につなげる力である。
高校2年生のとき、苦手であった英語を克服するために、1日30分の音読と単語の復習を毎日欠かさず続けた。
最初は成果が見えず、勉強方法を変えようかと悩んだこともあったが、「やると決めたことを継続する力も必要だ」と考え直し、自分に合った勉強スタイルを模索した。
その結果、模試では英語の偏差値が10以上伸び、英検準2級にも合格することができた。
努力が形になったことは自信につながり、他の教科にも前向きに取り組めるようになった。
大学でも、すぐに結果が出ないことにも粘り強く向き合い、自分のペースで力を積み重ねていきたいと考えている。
将来的には、その継続力を生かして、人の役に立つ仕事に就きたいと考えている。
NG例文④:内容に一貫性がない
私にはリーダーシップがある。
学校では図書委員を務め、日々の活動に真面目に取り組んできた。
また、部活動では周囲の人と協力しながら努力を重ねた。
将来は医療関係の仕事に就き、人の役に立ちたいと考えている。
この自己PRは、一文一文は前向きな内容ですが、文章全体としてのつながりや論理的な流れが見えづらく、何を伝えたいのかが曖昧になっています。自己PRでは、結論→具体例→展望の流れが自然につながることが重要です。
この一貫性があることで、読み手はその人の価値観や成長のプロセスを理解しやすくなり、印象にも残りやすくなります。
改善例は以下のようになります。
【改善例】
私の強みは、周囲の意見をまとめながら目標に向けて行動するリーダーシップである。
高校2年の文化祭では、クラス企画の実行チームの中心メンバーとして準備を進めた。
当初は方向性がまとまらず、準備も思うように進まない状況であったが、私は有志で小グループを立ち上げ、全員のアイデアを整理してスケジュールに落とし込む役割を担った。
進行が遅れそうな場面では、放課後に自主的に残って作業を進めたり、仲間に声をかけて役割を再分担したりと、細かい調整を重ねながら準備を進めた。
本番当日には、クラス全員が協力して一体感のある発表を実現することができ、「クラスでひとつのものを作り上げられた」という達成感を強く感じた。
終了後、担任の先生から「チームを動かす力がある」と声をかけていただいたことが印象に残っている。
大学では、この経験を活かし、グループワークやゼミ活動などでも周囲を支えながら前向きに取り組み、周囲と信頼関係を築ける人材として成長していきたいと考えている。

福井先生
自己PR書は志望理由書よりシンプルです。とはいえ、最初の下書きが「NG例」のようになってしまうのはごく普通のことです。
メモ書きのように断片的だったり具体性が足りなかったりしても、あとから整理して磨けば大丈夫です。「最初はうまくいかなくて当たり前」「書きながら強みが見えてくる」という感覚で、気負わずに書き進めてください。大切なのは、書き直しを恐れずブラッシュアップを重ねる姿勢です。
大学受験の自己PRについてよくある質問(FAQ)
ここでは、大学受験の自己PRに関して受験生がよく抱える疑問を解説します。
大学受験の自己PRは何を書くべきですか?
大学受験の自己PRでは、「どんな人間なのか」「どんな力を持っているのか」を読み手に伝えることが目的です。
以下のような要素を盛り込むことで、自分らしい自己PRを書きやすくなります。
- 自分の長所や性格的な強み
- 部活動や学校行事などでの取り組み
- 課外活動やボランティアでの実績
- 将来の目標やビジョン など
これらはあくまでも一例であり、「必ず実績が必要」というわけではありません。
大切なのは、どのような経験を通して自分が何を感じ、どう変化したのかという成長のプロセスを具体的に描くことです。
実績の大小にとらわれず、自分の経験の中から大学に伝えたい自分らしさを言葉にすることが、評価される自己PRにつながります。
自己PRに書けるようなことが何もないのですが、どうすれば良いですか?
「目立った実績がないから、自己PRに書けることが思いつかない」という悩みを抱えている人は多いかもしれません。しかし、自己PRは必ずしも「すごい成果」や「特別な体験」を書く必要はありません。
自己PRで大切なのは、どんな経験を通じて、どんな考え方や行動ができるようになったかというプロセスです。まずは、志望する大学のアドミッション・ポリシーをしっかり読み込み、大学側がどのような人物を求めているのかを理解しましょう。
そのうえで、自分のこれまでの学生生活を振り返ってみてください。部活動や学校行事、友人との関わり、日常の小さな挑戦でもかまいません。「自分なりに工夫したこと」「失敗から学んだこと」「地道に続けたこと」などに注目すると、自分らしさを表現できるエピソードが見つかるはずです。
一見平凡に思える経験も、自分の言葉で丁寧に振り返れば、個性のある自己PRに変わります。自分らしい視点を大切にしながら、大学との接点を意識して書き進めていきましょう。
自己PRで学校を呼ぶときは何といえばいいですか?
大学受験で自己PRや志望理由書を書く際、志望校を丁寧に表現する方法としては、「貴学(きがく)」または「貴校(きこう)」が一般的です。
また、口頭(面接)では「御校(おんこう)」が適切とされます。「貴学」は書き言葉なので、会話の中で使うとやや堅苦しく聞こえる場合がある点に注意しておきましょう。
大学の面接で「貴学」と呼ぶと減点されますか?
面接で「貴学」という表現を使うこと自体に問題はありません。面接官との会話では、丁寧で敬意を持った言葉遣いが重要です。しかし「貴学」を使うと、少し堅苦しく感じられる場合があります。そのため、口頭では「御校」を使うとよいでしょう。
過度に形式的になることなく、熱意を込めて自分の志望理由を伝えてください。自分らしく話し、リラックスした態度を見せることが、面接官に好印象を与えます。

福井先生
書きたいエピソードが複数あるのですが、どうすれば良いかという質問をよくいただきます。
まずは強みが最も際立つエピソードを一つ選んで書くのが基本です。いくつも盛り込むと構成が複雑化し、何を伝えたいのかがぼやけてしまいます。ただし、一つでは情報量が不足する場合や、二つのエピソードをどうしても取り上げたい場合は、二つにしても構いません。
その際は、それぞれのエピソードでどの強みをアピールしたいのかを整理してから書くようにしましょう。
まとめ|効果的な自己PRで自分の良さを最大限伝えよう
大学受験の自己PRは、ただ自分の長所や実績を並べるだけのものではありません。
大切なのは、「どのような経験を通じて、その強みが育まれたのか」「その強みを大学でどう活かしたいのか」という、自分なりのストーリーを論理的かつ具体的に伝えることです。
自己PRを書く際は以下のポイントを意識しましょう。
- 結論→具体例→展望の流れを守る
- 抽象的な表現にとどまらず、具体的なエピソードで裏付ける
- アドミッション・ポリシーと内容に一貫性を持たせる
- 例文の模倣ではなく、自分の言葉で語る
また、「書けることがない」と感じている人も、日常の中にある小さな行動や思いに目を向けてみてください。そこにこそ、自分らしさが表れるヒントが隠れています。
効果的な自己PRは、あなたの魅力を大学に伝える強力な手段になります。焦らず丁寧に、自分自身と向き合いながら、あなたにしか書けない自己PRを完成させてください。
執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール

1995年、大阪府生まれ。京都大学経済学部経済経営学科卒業。大学3年生次にAOIの創業に参画し創業当時から志望理由、面接、小論文の指導を行う。塾内の教材開発にも長年にわたり携わってきた。