志望校は“スーパーサイエンスハイスクール指定校”が良い?!高校受験のプロが解説!

「もっと理科を深く学びたい」「研究活動に挑戦してみたい」―そう考える高校生にとって魅力的な学びの場が、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)です。
スーパーサイエンスハイスクールは文部科学省が2002年に始めた制度で、全国の高校のうちわずか4.7%(※)だけが指定されています。指定校では大学レベルの研究や企業との連携、国際交流といった特別な学びに挑戦できます。
本記事では、スーパーサイエンスハイスクールの仕組みや目的、指定の種類、代表的な学校事例、メリット・デメリット、進学との関わりまで、わかりやすく解説。ぜひ志望校選びの参考にしてください。
※2025年8月時点

編集部
塾選ジャーナル編集部
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。

監修者
大山雅司
塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは、理数教育に力を入れている高校や中高一貫校を、文部科学省が指定して支援する制度です。2002年にスタートしました。
SSHに指定されると、数学・理科・情報・工学などの分野で、より発展的で探究的な学習ができるようになります。大学や企業と連携して、本格的な研究活動や課題解決型の学習(探究学習)にも取り組みます。
制度の始まりと背景
SSHは、1999年に始まった「若手科学者育成プログラム」の流れをくんでいます。この頃、日本では「理系離れ」や「理数系人材の不足」が社会問題となっており、理科・数学教育の強化が求められていました。
そのため、国は、より大きな枠組みで、体系的に理数教育を支援する仕組みとしてSSHを導入しました。
当初は年間7億円の予算からスタートしましたが、制度の発展とともに規模も拡大し、2024年度には年間20億円以上が投じられるまでになっています。
制度の目的
この制度の目的は、将来、科学技術分野で国際的に活躍できる人材を育てることです。
科学技術は世界中で進化を続けており、日本でも早い段階からその分野に関心を持ち、深く学ぶ若者を育てる必要があると考えられています。
指定の仕組み
SSHに指定される期間は、原則として5年間です。
文部科学省は、毎年全国の高校などから応募を受け付けており、書類審査などを通じて厳しく選考します。
新たに指定されるのは、毎年30〜50校程度です。
令和6年度(2024年度)時点では、全国にある高校4,774校のうち、SSHに指定されているのは225校。これは、全体のわずか4.7%で、SSHの選考自体にハードルがあり、指定校であることが「理系教育に力を入れている」という国からのお墨付きであるとも言えます。
指定校に求められていること
(参照元:国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業の図をもとに作成)
SSHに指定された学校では、普通の授業に加えて、理科や数学を使った課題研究に取り組むことが求められます。自分でテーマを考えて調べたり実験したりし、その成果をまとめて発表するのです。
また、大学や研究機関とつながり、本格的な研究に参加することもあります。さらに一部の学校では、海外の高校や地域と協力して課題解決に挑戦する役割も期待されています。まさに、未来の科学を担う人を育てる特別な学びの場なのです。
志望校はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)が良い?普通の高校とどう違う?
普通の高校との主な違いは、授業内容や研究機会、外部機関との連携の有無などに表れています。ここでは、その具体的なポイントを見ていきましょう。
1. 大学レベルに近い独自カリキュラムがある
SSHの最大の特徴は、学習指導要領の枠にとらわれず、特別なカリキュラムを作れることです。
授業では、物理・化学・生物・地学・数学・情報といった科目を、高校学習の枠を越えて学ぶことができます。単に知識を覚えるのではなく、仮説を立てて→実験し→データを分析し→発表するというサイクルを繰り返すのが特徴です。
また、多くのSSHでは課題研究や探究活動が中心になります。たとえば、
- 遺伝子解析や微生物培養など大学レベルの実験
- AIやロボット開発(自動走行や画像認識など)
- 宇宙分野の研究(小型衛星の設計や国際宇宙ステーションとのデータ共有)
こうした学びを通じて、自分で課題を見つけ、解決方法を考える力を身につけられます。
2. 大学・企業と連携した本格的な研究体験ができる
SSHのもう一つの大きな特徴は、大学や企業と直接つながって学べることです。
- 大学:研究室に入って実習をしたり、電子顕微鏡やスーパーコンピュータなどの先端機器を使ったりできる
- 企業:メーカーやIT企業で新素材の研究やロボット制御、病院で医療AIや臨床データ解析、エネルギー企業で再生可能エネルギーの研究などに参加できる
これらは「職場体験」ではなく、研究チームの一員として課題解決に関わる本格的な活動です。
また、一部のSSHでは海外の大学や国際研究機関との共同プロジェクトもあり、英語でプレゼンや議論を行うことで、科学力と同時に国際的なコミュニケーション力も育てます。
3. STEM/STEAM教育を取り入れて学びが広がる
SSHの教育は、世界的に広がっているSTEM教育(Science・Technology・Engineering・Mathematics)をベースにしています。STEM教育は「知識を覚えるだけ」ではなく、現実社会の問題に対し、科学的な問いを立て、それを技術や数学などの知識を統合させつつ解決する力を大事にする学び方です。
さらに最近は、STEMにArts(芸術やデザイン)を加えたSTEAM教育も取り入れています。これによって、科学的な知識+創造性を同時に育てることを目指しています。
具体例:
- 生物学の成果をポスターや映像にまとめて国際大会で発表
- ロボットコンテストで「性能」だけでなく「デザイン性」も評価対象に
- 地域課題(環境や防災)を科学+アートで解決方法を提案
こうした取り組みによって、SSHは単なる理系教育ではなく、課題解決力と創造力を兼ね備えた人材育成を進めています。

大山先生
将来、理系の分野で活躍したいと考えている中学生にとって、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)はとても魅力的な進路の一つ。SSH指定校の多くで、大学レベルの実験や研究を体験できるだけでなく、大学・企業などと一緒に学ぶ機会もあります。
さらに理系科目の力だけでなく、人前で発表する力や、世界に通じる視点が身につく機会も普通高校と比べて豊富と言えます。「知りたい」「やってみたい」という気持ちを大切に育ててくれる環境なので、特に理系科目を積極的に学びたい中学生にはぴったりの進路です。
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の分類
参照元:国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業 スーパーサイエンスハイスクールの表を元に作成
1. 基本の2種類の枠
SSHは大きく2種類の枠が設けられています。どのタイプに指定されたかによって、学校の取り組み内容が異なります。
① 基礎枠
理科・数学・技術など「自然科学」を中心とした先進的な教育を研究・実践し、未来の科学技術人材を育成します。多くのSSH校がこの枠に含まれます。
② 文理融合基礎枠
自然科学(理系)の知と、人文・社会科学(文系)の知を融合し、「総合的な知」を生み出す教育に取り組む枠です。社会課題に対応する力を育むことが目的です。
2. 活動のステージ「期」
さらに、SSH指定には「期」という区分もあり、その活動の深さや役割に応じて「期」で区分されます。
- 創成期(I期・II期):初めてSSHに選ばれた学校が「研究や体制づくり」を行う段階。指定期間は5年です。
- 発展期(III期・IV期):特色ある教育を育てて、それを地域や他校へ広げる段階。こちらも指定期間は5年です。
- リーディング期(先導的改革I・II期):これまでの成果をもとに、全国のSSHを「けん引」する存在として位置付けられます。指定期間は3年。
- 認定枠:長年の実績を評価され、「全国モデル校」として多様な教育活動の普及を担う枠。指定期間は5年です。
このように、「期」は学校のステージを示すもので、進行するごとに期待される役割が高まります。
3. 特別な取り組みを行う「重点枠」
基礎枠や文理融合基礎枠の上に、さらに特化した取り組みを行う場合に指定、追加支援が行われる枠があります。それは「科学技術人材育成重点枠(重点枠)」と呼ばれます。重点枠の場合は以下いずれかの取り組みをします。
- 広域連携
他校や地域へSSHの教育メソッドを広げる取り組みです。 - 海外連携
海外の学校や研究機関とオンラインなどで定常的な協力体制を築き、国際的な視点を育みます。 - 革新共創
NPOや企業と協働し、文理横断的に地域課題などに科学的アプローチを図る研究を進めます。 - 探究推進
優れた研究成果をさらに深化・広げる取り組みで、「早期ステップアップ制度」を活用する学校に限り申請可能です。 - 高大接続
高校と大学の連携により、一貫した科学研究教育の枠組みを共同で作り、将来のトップレベル人材育成を目指します。 - その他
上記にあてはまらない、特色ある取組を評価する枠。たとえば全国規模での共同研究などが該当します。
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校一覧(東京都)
一例として、東京都のSSH指定校がそれぞれどこに当てはまるのかを一覧で見てみましょう。2025年8月時点で東京都内の指定校は18校です。
学校名 | 指定年度 | 分類 | 期 | 重点枠 |
---|---|---|---|---|
東京都立戸山高等学校 | 平成31年度 | 基礎枠 | Ⅳ期 | ― |
東京都立科学技術高等学校 | 令和3年度 | 基礎枠 | Ⅲ期 | ― |
東京都立富士高等学校・附属中学校 | 令和3年度 | 基礎枠 | Ⅰ期 | ― |
東京都立小石川中等教育学校 | 令和4年度 | 基礎枠 | Ⅳ期 | ― |
東京都立多摩科学技術高等学校 | 令和4年度 | 基礎枠 | Ⅲ期 | 〇 社会との共創(令和5~8年度) |
東京都立日比谷高等学校 | 令和4年度 | 基礎枠 | Ⅳ期 | ― |
東京科学大学附属科学技術高等学校 | 令和4年度 | 基礎枠 | 認定枠 | ― |
東京都立立川高等学校 | 令和5年度 | 基礎枠 | Ⅱ期 | ― |
学校法人玉川学園 玉川学園高等部・中学部 | 令和5年度 | 基礎枠 | Ⅳ期 | ― |
学校法人中央大学 中央大学附属高等学校 | 令和5年度 | 基礎枠 | Ⅱ期 | ― |
学校法人豊島岡女子学園 豊島岡女子学園中学校・高等学校 | 令和5年度 | 基礎枠 | Ⅱ期 | ― |
お茶の水女子大学附属高等学校 | 令和6年度 | 基礎枠 | Ⅱ期 | ― |
東京学芸大学附属高等学校 | 令和6年度 | 基礎枠 | Ⅲ期 | ― |
学校法人山脇学園 山脇学園中学校・高等学校 | 令和6年度 | 基礎枠 | Ⅰ期 | ― |
東京学芸大学附属国際中等教育学校 | 令和6年度 | 文理融合基礎枠 | Ⅲ期 | ― |
東京都立国分寺高等学校 | 令和6年度 | 文理融合基礎枠 | Ⅰ期 | ― |
筑波大学附属駒場高等学校 | 令和6年度 | 基礎枠 | 認定枠 | ― |
学校法人東海大学 東海大学付属高輪台高等学校 | 令和6年度 | 基礎枠 | 認定枠 | ― |
参照元:国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業 令和7年度SSH指定校

大山先生
例えば、戸山高校は都立高校のなかでも最も早くスーパーサイエンスハイスクールの基礎枠に指定され、現在Ⅳ期です。理系教育に力を入れており、各学年2クラス分の「SSHクラス」が設置されています。
活動報告書内の資料や卒業生アンケートによると、SSHクラスを履修してから卒業し、大学生になったかつての在校生の約半数が大学院進学や研究職を視野に入れていると回答しており、卒業後の自己実現において戸山高校のSSHが礎になっていることが伺えます。
また、最近になって国分寺高校が文理融合基礎枠に指定されました。文理融合基礎枠は理系教科に偏らずに社会課題に対応する力を育むことが目的。公式ホームページからは「小笠原父島の生物と歴史を学ぶ」といった文理を融合したSSH活動を実施していることが分かります。
筑波大学附属駒場高等学校や東海大学付属高輪台高等学校はSSHのベテランともいえる「認定枠」に指定されています。
筑波大学附属高等学校ではSSH事業の一環として国際科学技術コンテストへの生徒の参加を支援しています。日本数学オリンピックでは例年受賞者を輩出。2025年は在校生が国際数学オリンピックへの日本代表選手として選出されています。
東海大学付属高輪台高等学校のSSHは、理系によらない文理融合教育に基づいた内容です。1年生ではSSHクラスに関わらず普通クラスにおいても「高校現代文明論」という独自教科を設置。環境問題や知的財産など、現代文明の諸問題に触れつつデータ収集やプレゼン手法を学び、探究活動の土台となるスキルを身に着けます。
参照元:戸山高校公式ホームページ/国分寺高校公式ホームページ/筑波大学附属高等学校公式ホームページ/東海大学付属高輪台高等学校
具体的にはどんなことを学べるの?実践事例
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された高校は、どこも同じプログラムを実施しているわけではありません。大きく分けると以下の5つに整理できます。文部科学省が公表している実践事例集から事例も併せて紹介します。
1. 大学や研究機関と連携した授業
SSHでは、大学や研究機関と連携し、高校だけでは難しい実験や研究に挑戦できます。
- 小石川中等教育学校(東京都)
東京農工大学やお茶の水女子大学と連携し、高度な実験に取り組んでいる。 - 札幌南高等学校(北海道)
北海道大学と連携して課題研究を実施し、大学の研究環境を活かした実験を行っている。
2. 専用の探究カリキュラムで研究スキルを磨く
SSH校では、探究活動を系統的に行うための専用カリキュラムが整備されています。
- 小石川中等教育学校(東京都)
「小石川フィロソフィー」という独自科目を設け、言語・数量・情報活用・課題探究を6年間にわたり学習。 - 筑波大学附属駒場中・高等学校(東京都)
「課題研究I・II」を必修化し、段階的に探究スキルを育成するカリキュラムを導入。
3. 教科をまたいだ学び(クロスカリキュラム)
SSHでは、理数科目を中心にしながらも、他教科を横断した学習が進められています。
- 小石川中等教育学校(東京都)
「小石川フィロソフィー」において、言語・数量・情報を関連づけ、探究課題と結びつけて教科横断的に学ぶ。 - 広島大学附属高等学校(広島県)
理科と社会を組み合わせた学習を展開し、地域課題を題材にした教科横断的な研究を実施。
4. 成果発表・全国大会でのプレゼン
SSHでは、生徒の研究成果を校内外で発表する機会が豊富に設けられています。
- 小石川中等教育学校(東京都)
生徒は課題研究を発表し、ルーブリックによる自己評価・教員評価を実施。 - 札幌南高等学校(北海道)
北海道大学での合同発表会や全国SSH生徒研究発表会に参加し、研究成果を外部に発表。
5. 国際的な体験や交流
一部のSSH校では、国際的な視点を取り入れた探究活動も進められています。

大山先生
このように、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)と一口に言っても、その取り組み内容や重点分野は学校ごとに大きく異なります。
大学との連携が強い学校、国際交流に力を入れている学校、独自の探究カリキュラムを持つ学校など、それぞれに特徴があります。
志望校を選ぶ際は、「どんな研究に挑戦できるか」「どんな力を伸ばせるか」「自分の興味と合っているか」を具体的に調べてみることが大切。学校説明会や文化祭での発表、公式ホームページの実績紹介なども参考になります。
自分の「好き」や「将来やってみたいこと」が実現できそうな環境を探すことが、後悔のない進路選びにつながります。
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)のメリットとデメリット
SSH指定校は、理系教育や探究的な学びを特に重視しています。「科学や研究に興味があるけど、実際にどんな良いことがあるの?」「逆に大変なことは?」と気になる人も多いでしょう。
ここでは、SSH指定校で得られるメリットとデメリットをわかりやすくまとめました。
メリット
1. 大学みたいな本格的な研究ができる
SSHでは「自分でテーマを決めて研究」する時間があり、大学や研究機関と共同した高度な実験など、本格的な探究が可能です。
2.海外研修に参加できる可能性が高まる
SSHでは国際理解教育として、SSHの活動が海外研修などとセットになっている高校が多いです。
3. 発表やプレゼンが得意になる
研究成果をクラスや全国の発表会で表現する機会が豊富です。繰り返すうちにプレゼン力や表現力が自然と鍛えられ、将来的にも強みになります。
4.大学での学びを考えるきっかけになる
SSH卒業生の6割が、「専攻分野の選択に関して影響を与えた」と回答しているように、SSHでの学びが後の大学での学びを考えることにつながっていることが伺えます。
参照元:文部科学省 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議
5. 同じ志を持つ仲間に出会える
探究を共に進める仲間が集まるため、お互いに刺激し合いながら学べる環境が整っています。
デメリット
1. とにかく忙しい!
特にSSH用クラスに所属した場合、普通の授業に加えて研究活動や発表の準備など、多岐にわたる活動が必要です。部活や受験勉強との両立は本当に大変。部活動よりもSSHが優先になる場合もあります。
※SSH用クラスが設置されているかは高校によって異なります。
2. 興味がないとつらいかも
理科・数学に強い関心がないと課題研究や実験が苦痛に思えることも。特にSSH用クラスが設置されていて、そちらに所属する場合、通常とは教育課程が変わるため、興味がなくなったから途中で参加をやめるといったことが難しい点は注意です。また、履修内容は学習指導要領外にまで及びます。内容が高度になり、ついていくことが難しくなるケースも考えられます。
3. 研究は必ずしも成功しない
成果が出るとは限らず、苦戦することも多いです。そういった経験で精神的にタフになる必要があります。
4. 文系に進みたい人には不向き
SSHのプログラムは理系中心で構成されているため、文系志望にとってはメリットが少なく感じる場合があります。

大山先生
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)には、最先端の学びや貴重な体験ができる大きな魅力がある一方で、求められる自主性や負担の大きさも事実です。「理系が得意だから」「頭がいい人が行くから」といった理由だけで選ぶと、後でギャップを感じてしまうこともあるでしょう。
「探究することが好きか」「忙しくても最後までやり遂げられそうか」など、自分の興味や学び方のスタイルに合っているかを見極めることも大切です。
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校は大学受験に有利?
SSH指定校での経験は、学校推薦型選抜や総合型選抜(AO入試)で大きな強みになります。たとえば、SSHで取り組んだ研究活動や探究活動は、志望理由書や面接で具体的なエピソードとして語ることができ、説得力ある自己PRにつながります。
もちろん、「SSHを卒業したから自動的に有利になる」というわけではありません。大切なのは、自分の活動をどのように表現し、志望学部や将来の目標と結びつけて活用できるかという点です。
文部科学省の調査によると、SSHの取り組みに参加した高校生の約7割が「成果を発表し、伝える力が向上した」と回答しており、大学入試でも評価されやすい力を磨けることがわかります。
参照元:文部科学省 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)⽀援事業の成果検証に関する調査結果を元に上位10項目を抜粋して作成
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に関するよくある質問【FAQ】
SSHと理数科・サイエンス部の違いはありますか?
理数科やサイエンス部は校内組織ですが、SSHは国の指定制度で、予算支援や大学連携などのスケールが異なります。
文系志望でもSSHに入学できますか?
可能です。SSHで培う論理的思考力や課題解決力は、文系分野でも十分に活用できます。例えば、経済学や社会学、法学などでも「データをもとに仮説を立てる力」や「自分の考えを発表する力」は強みになります。
ただし、SSHの活動は理数系の課題研究や実験が中心になるため、理科・数学に強い関心がないと負担に感じることがあります。進路が文系寄りでも、探究活動そのものに興味があるかどうかが重要です。
SSHは何年ごとに指定されますか?
原則5年ごとに更新審査があります。再指定を受けるには高い活動実績が必要です。
まとめ:SSHは理数系志望の中学生にとってチャンスの場
SSHは、全国の高校の中でもごく一部しか指定されない特別な制度で、理数系の学びを深めたい生徒にとって大きなチャンスの場です。大学や企業と連携した研究や、海外との交流、成果発表の機会など、普通の高校では得られない経験を通じて、科学的思考力やプレゼン力、国際的な視野を育むことができます。
SSHのメリットは、大学入試での強みになることや、将来の進学・就職に直結するスキルが磨ける点です。一方で、活動が忙しく、理数系に興味がないと負担に感じやすいという側面もあります。
大切なのは、「SSHに指定されているから有利」という単純なものではなく、自分がどんな探究活動をし、その経験をどう将来に活かすか です。もし「科学をもっと深く学びたい」「研究や発表に挑戦してみたい」という気持ちがあるなら、SSHはきっとその思いを後押ししてくれる環境になるでしょう。
執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール

塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。