アクティブラーニングとは? 保護者が知っておきたい“学びの本質”と、学校選びのポイント
アクティブラーニング(能動的学修)とは、正解のない問いについて、子どもが自分で考え、対話しながら学ぶ力を育てる授業方式です。主体性や思考力が伸びる一方で、子どものタイプによって向き不向きが分かれる特徴もあります。
「うちの子に合うの?」「メリットとデメリットは?」「受験に強くなる?」
多くの保護者が抱く疑問に対して、教育系専門メディアの視点から丁寧に答えていきます。
結論からいうと、アクティブラーニングは「合う子には有効な武器」になりますが、「合わない子には苦痛」になり得ます。 だからこそ表面的な理解のまま、アクティブラーニングを進路や学校選びの基準にすることはおすすめできません。
この記事では、アクティブラーニングの基本はもちろん、進路・学校選びで役に立つ「本気度の見抜き方」まで解説します。読み終える頃には、アクティブラーニングの有無や質が「うちの子に合いそうだ・合わなさそうだ」の判断基準が持てるようになっているはずです。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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目次
アクティブラーニングとは?

アクティブラーニングとは、一言でいうと「正解のない問いに積極的に挑む学び」です。親世代が受けてきた「正解を覚える勉強」とは、スタイルの異なる学びだと認識しましょう。
アクティブラーニングは、子どもが自分で考え、対話しながら学ぶ力を育てる授業方式です。文部科学省も重要視しており、2017年の学習指導要領改訂以降、全国で導入が進みました。
しかし、「従来の学びやグループワークと何が違うの?」と戸惑う声も少なくありません。まずは、親世代の授業との決定的な違いを押さえましょう。
参照:文部科学省「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善について」
アクティブラーニングと従来の学びとの違い
従来の授業は先生が正解を教え、生徒がそれを覚える「講義型」でした。これは知識を効率良くインプットするには最適ですが、「受け身」になりがちです。
一方アクティブラーニングでは、覚えた知識を「使うこと」を重視します。
例えば歴史なら、「鎌倉幕府の成立年」を暗記するのではなく、「なぜ頼朝は京都ではなく鎌倉を選んだのか?」など、明確な答えがない問いについて地図や資料を見ながら議論します。
「正解は一つじゃない」という前提で、自分の頭で結論を考え抜くプロセスを評価する点が最大の違いです。

アクティブラーニングとグループワークの違い
グループワークはあくまで「形式」のことであり、アクティブラーニングは「学びの質」に重きを置いています。
そのため、仮にグループワークが「誰か一人が答えを書いて、ほかの人は雑談している」ようなら、それは能動的な学びとはいえません。
本物のアクティブラーニングには、以下の3つのステップがあります。
①:個の思考:まず一人で自分の考えを持つ。
②:集団の対話:他者の意見を聞き、自分の考えと比べる。
③:個の振り返り:対話を経て、自分の考えを修正・発展させる。
つまり、「みんなで仲良くやる」のが目的ではなく、「自ら関心を抱き、他者の考えも借りて、自分の考えを深める」のがアクティブラーニングの本質です。
いつから始まった?導入の背景
「アクティブラーニングなんて一時的な流行でしょ?」と思う方もいるかもしれませんが、実はAI(人工知能)時代の到来に備えた変化です。
これまで重視されてきた「言われたことを正確にこなす力」の多くは、今後AIやロボットに取って代わられます。代わりに人間には、正解のない課題に対して周囲と協力して解決策をつくる力が求められます。
学校教育が「覚える勉強」から「考える勉強(=アクティブラーニング)」へと舵を切ったのは、子どもが大人になった時の「生きる力」を育てるためなのです。
アクティブラーニングのメリット

「うちの子にどんな良いことがあるの?」という視点で、具体的なメリットを見ていきましょう。最大のメリットは、社会に出てから最も役立つ「思考力・主体性・表現力」の3つが身につくことです。
- 思考力:「なぜ?」を考える習慣で、物事の本質をとらえる力がつく。
- 主体性:受け身では授業が進まないため、自分から動く姿勢がつく。
- 表現力:自分の意見をわかりやすく伝え、相手の話を聞く力が伸びる。
実際、文部科学省のレポート(令和6年度)でも、「主体的・対話的で深い学び」の授業を受けている子どもは、テストの正答率や自己肯定感が高いというデータが出ています。
参照:文部科学省「令和6年度全国学力・学習状況調査の質問調査の結果について」
アクティブラーニングのデメリット

良いところだけでなく、デメリットがある点もしっかり把握しておきましょう。デメリットを知っておくことで、子どもに合った学校選びの失敗を防げます。
- 授業進度が遅くなることがある:
話し合いには時間がかかるため、家庭での基礎学習フォローが必要な場合があります。
- 先生の力量に左右されやすい:
先生に進行スキルがないと、ただのお喋りで終わる「形だけ」の授業になりがちです。
- 負担に感じる子もいる:
一人でじっくり考えたい子には、頻繁な話し合いがストレスになることもあります。
ただし、これらは学校や保護者のフォロー体制が整っていれば解決できる問題でもあります。後ほど解説する「学校の見極め方」で、ここをしっかりチェックしましょう。
わが子に合う? 向き不向きの見分け方

デメリットとして「向き不向きがある」と書きましたが、「うちの子にも向いているの?」と不安に思う保護者は少なくありません。実際、子どもの性格や学習スタイルによって、アクティブラーニングとの相性は変わります。
ここでは、向いている子・向いていない子の特徴を整理しつつ、向いていない子でも力を伸ばす工夫や、家庭でできる具体的なフォロー方法を紹介します。
向いている子の特徴
次のようなタイプの子は、アクティブラーニング型の授業で力を発揮しやすい傾向があります。
- 知的好奇心が強い子:
「なんで?」「どうして?」と疑問をよく口にし、自分で調べたくなるタイプです。
- 自分の意見を話すのが好きな子:
家でも学校での出来事を楽しそうに話してくれるなど、言語化が得意です。
- 失敗をあまり気にしない子:
間違えてもすぐ切り替えられるため、発言することに抵抗がありません。
当てはまる子にとって、自由に意見を交わせる授業は「勉強が楽しい!」と感じられる最高の環境です。アクティブラーニングを積極的に取り入れている学校を進路先として検討する価値ありです。
向いていない子の特徴
次のようなタイプの子は、アクティブラーニングの授業で最初に戸惑うかもしれません。
- 人見知りで慎重な子:
大勢の前で話すのが苦手で、指名されると緊張してしまうタイプです。
- 正解がはっきりしていないと不安になる子:
「答えはこれ!」と決まっている学び方に慣れており、正解のない問いには戸惑いやすくなります。
- 静かな環境を好む子:
ガヤガヤした教室より、一人で本を読んだり黙々と考えたりする時間のほうが落ち着くタイプです。
これらの特徴を持つ子は、話し合いが中心の授業を負担に感じることもあるでしょう。ただし適切な環境づくりがあれば、徐々に参加しやすくなるケースも多くあります。
向いていないと感じる子へのアプローチ
「向いていないから、アクティブラーニング(能動的学修)を掲げる学校はやめたほうがいい」と決めつける必要はありません。内向的な子ほどアクティブラーニングを通して聞く力や調整力が伸びるケースもあります。大切なのは、クラスに心理的安全性があるかどうかです。
心理的安全性とは、「どんな意見を言っても笑われない」「間違えても否定されずに受け止めてもらえる」という安心感のこと。これが備わった環境では、「自分の意見を言っても大丈夫」という安心の下で自信が育ちます。
学校の成績や受験に対するアクティブラーニングの影響

「アクティブラーニングって、学校の成績アップや受験には役立つの?」
結論からいうと、昨今の学校学習や入試傾向にもきちんと役立ちます。
思考力・記述・面接の試験で発揮される2つの力
アクティブラーニングで育つ「考える力」と「説明する力」は、思考力型入試・記述・面接・発表といった表現に焦点を当てる入試で特に効果を発揮します。
アクティブラーニングは授業の中で「なぜそう思うのか?」「根拠は何か?」と問いを重ねるため、資料を読み取り、情報を整理し、自分の考えを論理的に組み立てる力が自然と身についていきます。
さらに日常的に先生や友だちと意見を交わす経験が、面接での落ち着いた受け答えにつながります。視線の合わせ方や相手の意見を尊重する姿勢など、コミュニケーション面の評価が高まりやすい点も特徴です。
発表型の入試では、内容を要点でまとめ、限られた時間で相手に伝える力がそのまま生かされます。思考の深さと表現力の両方を鍛えられる学び方だからこそ、総合的なアウトプット力が求められる入試と非常に相性が良いのです。
アクティブラーニングは学力アップの土台づくり
アクティブラーニングは、成績を一気に伸ばす魔法の授業ではありません。なぜなら、身につく力が「思考力・表現力」といった質的な力であり、テストで問われがちな知識量ではないからです。
授業中に議論や調べ学習の時間が増える分、基礎知識のインプットは家庭学習や通常の授業でしっかり補う必要があります。また、先生の指導力やクラスの雰囲気によって授業の質に差が出るため、効果の現れ方にも個人差があるでしょう。
つまり、アクティブラーニングは「学力の土台をつくる学び」であり、偏差値そのものを直接引き上げるものではない点を理解しておきましょう。
受験にどう生かす? 保護者が押さえるべき点
アクティブラーニングで身につく力を受験に生かすには、「基礎知識の補強」と「思考の言語化」を家庭でバランスよく支えることが大切です。
- 基礎は家庭学習やドリルでしっかり固める。
- 思考の言語化はアクティブラーニングで伸ばす。
思考力が問われる試験では、資料を読む前提として、語彙・漢字・計算などの基礎がしっかりしている必要があります。まずは毎日の家庭学習で、教科書レベルの知識を安定させることが大切です。
さらに、家で「どうしてそう思ったの?」「ほかに理由はある?」と問いかけることで、考えを整理し説明する練習ができます。これは記述・面接・発表のすべてに役立ちます。
アクティブラーニングは、思考力を広げる学び方です。家庭でも基礎学力と考える習慣の両方をフォローすることで、受験で生きる力を養うことができます。
学校によって差が出るアクティブラーニングの質を見極める方法

アクティブラーニングは、学校によって「どれだけ本気で取り組んでいるか」に差があります。同じように「アクティブラーニング実施」と教育方針を掲げていても、実際の授業内容や先生の関わり方は学校ごとに異なるのです。そのため、保護者にとっては「本当に力が伸びる授業なのか?」を見極めることが重要です。
私立校と公立校での違い
私立はカリキュラムの自由度が高く、探究学習やアクティブラーニングを学校の特色として積極的に取り入れているケースが多いのが特徴です。専用の教室や少人数編成を用意し、外部講師を招くなど環境の幅も広がります。
一方、公立は学習指導要領に沿って全校で同じ内容を行うため、学校や担当の先生によって取り組み度合いが大きく異なります。
<私立と公立のアクティブラーニング・大まかな違い>
| 項目 | 私立 | 公立 |
|---|---|---|
| カリキュラムの自由度 | 高い(学校独自の探究・ALが可能) | 低い(指導要領に沿う) |
| アクティブラーニングの実践度 | 学校の特色として積極的に導入しやすい | 学校・先生によって大きく差が出る |
| 設備投資 | ICT・探究室・少人数編成など充実しやすい | 地域や予算による |
| 先生の指導体制 | 研修の機会が多く、専門性を育てやすい | 学校によって差が大きい |
| 授業の柔軟性 | プロジェクト型・外部連携など多様 | 学年・学級単位での共通運用が中心 |
| 保護者が見るべき点 | 取り組みが“本物”かどうか | 先生の姿勢・実践事例の具体性 |
パンフレットでわかる学校の本気度
学校パンフレットは、その学校がアクティブラーニングに「どれだけ本気で取り組んでいるか」を判断する重要な資料です。特に次の点を確認すると実態がつかみやすくなります。
✅授業の具体例が写真つきで載っているか
「対話」「グループ活動」など抽象表現だけでなく、実際の授業風景や活動例があるかをチェックします。
✅年間の学習計画が示されているか
探究・発表・協働などの取り組みが、単発ではなく計画的に組み込まれているかがポイントです。
✅ICTの活用が“目的”とセットで説明されているか
タブレット導入をアピールするだけでなく、「何の力を育てるために使うのか」まで書かれている学校は信頼度が高いです。
パンフレットは学校の姿勢が最も正直に表れる部分。表現の具体性が本気度のバロメーターになります。
学校説明会でわかる学校の実践度
学校説明会は、アクティブラーニングの実践度を直接確認できる絶好の機会です。次のポイントを意識して見ると、本気度がわかりやすくなります。
✅生徒の発言量がどれくらいあるか
先生が一方的に話す時間が長い学校は、実践が表面的な可能性があります。
✅先生の問いかけの質はどうか
「わかる人?」ではなく、「なぜそう思う?」「ほかの考えは?」と深掘りする質問があるかが重要です。
✅生徒同士の対話が成り立っているか
発言が一部の子に偏らず、全体で考え合う雰囲気があるかを確認します。
✅廊下や掲示物に学びの痕跡があるか
探究レポートや発表資料が丁寧に掲示されている学校は、日常的に取り組んでいる証拠です。
学校説明会では言葉よりも、現場の雰囲気を見るほうが参考になります。
家庭で今日からできる!アクティブラーニング

「うちの子がうまく適応できるかちょっと心配…」と感じるなら、家庭でも少しだけ「アクティブラーニング的な会話」を取り入れるのがおすすめです。大切なのは、親がすぐに答えを教えず、子どもに考えるきっかけを与えること。
- 「どう思った?」と問い返す:
「今日学校どうだった?」ではなく、「〇〇君はどう感じた?」と聞くと、思考の整理につながります。
- ニュースを一緒に話題にする:
「もし〇〇ちゃんが総理大臣だったらどうする?」など、答えが一つではない質問が効果的です。
- 正解はないことを伝え安心させる:
自由に意見を言える雰囲気が、表現力を育てます。
こうした会話を日常に取り入れることで、自分の意見を伝える練習になり、学校の話し合いにもスムーズに参加しやすくなります。
アクティブラーニングについてよくある質問

アクティブラーニングが「古い」といわれるのはなぜ?
最近「アクティブラーニングはもう古い」といった声を耳にすることがありますが、アクティブラーニングが不要で時代遅れな学びになった訳ではありません。
現在の学校現場では、アクティブラーニングの思想を土台にした「探究学習」が重視され、2020年度からは全国で必修化されました。さらにICTの活用が進み、調べる・まとめる・発表するといった学びの流れが一体化しています。そのため学校紹介では「探究」「ICT活用」と表現されることが増え、「アクティブラーニング」という言葉が前面に出にくくなっています。
アクティブラーニングの具体例は?
アクティブラーニングの具体例には、話し合い・発表・調べ学習・資料分析・協働作業などがあります。小学校では「学校をもっとよくするには?」など身近なテーマをもとに、意見を出し合い、共通点をまとめて発表する活動がよく行われます。
中学校になると、より高度な「資料読み取り型」の授業が増えます。例えば社会科では、複数の統計資料を見て「この地域の課題は何か」「どう改善できるか」をグループで議論し、スライドにまとめて提案します。
いずれも共通するのは、覚えた知識を使って考え、自分の言葉で説明し、相手と意見を交わしながら理解を深めること。これがアクティブラーニングの核心です。
まとめ アクティブラーニングは“学校選びの判断軸”になる

アクティブラーニングは、単なる流行りの勉強法ではありません。「言われたことをやる子」から「自分で道を切り拓く子」へ変わるための、大切なステップです。
「うちの子は内気だから無理かも」と諦める必要はありません。大切なのは、その学校が「失敗しても大丈夫な安心感」を作れているかどうかです。
今度、学校説明会に行ったら、先生や生徒の表情を見てみましょう。「ここならうちの子も、安心して意見が言えそうだ」。そう直感できる学校は、わが子の思考力をきちんと伸ばしてくれる場所です。
偏差値や進学実績だけでなく、「学びのスタイルが合うか」という新しいモノサシを手に、自信を持って進路・学校選びを進めてください。
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