【2026都立高校入試】ついに当日点勝負の新制度「10:0」が登場!?重要変更点を解説
東京都教育委員会の2026年度(令和8年度)都立高校入試の実施要綱によると、変更点が7つあります。なかでも大きな変更点が2つ。特に、特定の高校で導入される「新しい選抜方法」は、今後の都立入試のあり方を占う非常に興味深い内容となっています。
今回は、廃止される制度と新しく始まる制度、そしてそれが示唆する未来について都立入試指導のエキスパートである現役塾講師の大山先生監修のもとで解説していきます。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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監修者
大山雅司
塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。
目次
2026年度からの都立入試の主な7つの変更点
東京都教育委員会によると、2026年度入学者向けの都立入試では以下の変更点があります。
▼都立入試の主な7つの変更点一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ① 全日制課程の分割募集廃止 | 全日制課程における分割募集は、令和7年度入学者選抜までは都立高校へ入学を希望する生徒に対するセーフティネットとして実施してきたが、近年、第二次募集がその役割を果たしており、分割募集の役割は概ね終えているという実態があることから、令和8年度入学者選抜においては廃止し、第一次募集で選抜する。 なお、定時制課程の高校(昼夜間定時制高校)では、多様な生徒の受検機会を確保する観点から、これまでどおり継続して分割募集を実施する。 |
| ②通信制課程における前期選抜・後期選抜の実施 | 通信制課程の入学者選抜は、令和7年度入学者選抜までは4月上旬に行ってきたが、通信制課程を第一志望とする生徒が増加傾向であることを踏まえ、令和8年度入学者選抜においては、前期選抜と後期選抜の二回に分けて実施する。前期選抜は、第一次募集と同じ時期に、後期選抜はこれまでと同様に4月上旬に実施する。 |
| ③入学者選抜における調査書の取扱い | 困難を抱える生徒の多様なニーズに応えることができるよう、学力検査の得点と調査書点の比率について7:3と10:0の両方の方法で算出しどちらか高い方を本人の得点として選抜する新たな選抜方法を、令和8年度入学者選抜においては、新たな受入環境充実校として改編する深沢高等学校で実施する。 |
| ④定時制課程における選抜に係る志願変更 | 定時制課程では、令和7年度入学者選抜までは第二次募集にのみ志願変更の機会を設けてきたが、近年低迷している応募の状況や、志願変更の実績がほとんどないこと、志願者に対する中学校等における進路指導が十分可能であることから、志願変更は行わないこととする。 |
| ⑤在京外国人生徒等の入学者選抜への対応 | ・学力検査に基づく選抜等において、ルビ付問題の配慮申請をする際に提出する様式については、受検者が日本語指導を必要とすることを前提としていることから、申請理由の記載欄を削除する。 ・在京外国人生徒等対象の選抜では、受検者が日本語指導を必要とすることを前提としていることから、日本語により作文等を実施する場合は、全ての受検者に対してひらがなのルビを振った問題により実施することとし、ルビ付問題の配慮申請を必要としない。 |
| ⑥インターネットを活用した出願 | インターネットを活用した出願は、志願者の利便性向上につながっていることから、国際高等学校における在京外国人生徒等対象4月入学生徒の選抜及び国際バカロレアコースの選抜においても、インターネットを活用した出願とする。 |
| ⑦自己PRカードの取扱い | 自己PRカードは、令和7年度入学者選抜までは推薦選抜など面接を実施する学校に出願する場合は出願時に、面接を実施しない学校に出願する場合は合格後に当該校に提出することとしていたが、中学校から進学先の高校へ提出することとしているキャリアパスポートには自己PRカードに記載される内容が含まれていることから、令和8年度入学者選抜においては、推薦選抜など面接を実施する学校に出願する場合のみ提出することとする。 |
参照元:東京都教育委員会 令和8年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について
上記のなかでも、今後への影響が大きそうな2点をピックアップして解説します。
全日制課程の分割募集(後期分割募集)廃止

まず1点目の変更は、「全日制過程の分割募集(後期分割募集)」の廃止です。
これまで、田園調布高校など一部の高校では、定員の一部をあえて残し、一般入試のあとに「後期募集」として試験を行っていました。これが令和8年度からは全日制普通科において廃止され、すべての定員が前期(一般入試)に回ることになります。
■ 廃止の背景と影響
誤解のないように補足すると、定員割れした場合に行われる「二次募集」はこれまで通り継続されます。今回なくなるのは、あくまで「最初から枠を残していた後期分割募集」です。
廃止の理由はシンプル。
①枠を残す意味が薄れていた: 多くの実施校で、前期募集の時点でも定員に余裕があるケースが多く、あえて後期用に枠を確保する必要性が低くなっていました。
②「受け皿」としての役割の変化: かつては「実力はあるが進路が決まっていない子」を救済することで後の進学実績へと繋げるという意味で実施側(=高校側)にも戦略的なメリットがありましたが、現在は保護者や塾のリテラシー向上により、プランミスで行き場を失うケースが減っています。
この廃止により、前期(一般入試)の募集枠が増えることになるため、倍率面では多少入りやすくなる等のメリットが考えられます。
都立深沢高校で始まる「10:0」の新選抜方式
今回の目玉となるのが、都立深沢高校(世田谷区・第2学区)で導入される新しい選抜方法です。
従来の一般選抜では、当日の学力検査点と調査書点(内申点)の比率は「7:3」が原則でした。しかし、深沢高校では2026年度から以下の方式が採用されます。
■ 深沢高校の新選抜方式
従来の選抜方式: 当日点と内申点を「7:3」で算出
新しい選抜方式: 当日点のみの「10:0」(内申点を含めない)と、「7:3」で算出し、点数が高いほうを採用する
■ シミュレーション:順位はどう変わる?
わかりやすく例を挙げてみましょう(※1000点満点換算)。
受験生Aさん: 当日点250点/内申39(従来型では高得点)
受験生Bさん: 当日点280点/内申24(内申は低いが当日点は高い)

【従来の7:3方式の場合】Aさんのほうが順位が上
Aさん:530点
Bさん:503点
【新方式(高い方を採用)の場合】Bさんのほうが順位が上
Aさん:530点(7:3の方が高いため採用)
Bさん:560点(10:0で換算すると、内申の低さが関係なくなり得点が跳ね上がる)
このように、「内申点は低いが、当日のテストで点数が取れる生徒」が救われる仕組みになります。
■ なぜ深沢高校で実施されるのか?
深沢高校は来年度から「受け入れ環境充実校」としてリニューアルされます。これは、簡単に言えば「不登校経験のある生徒」を主なターゲットとした全日制高校への転換です。

参照元:文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校と生徒指導上の諸課題に関する調査」
※不登校出現率:在籍児童・生徒数(学校基本調査による)に占める不登校児童・生徒数の割合
背景には、小中学校での不登校生徒数の爆発的な増加があります。 これまでも不登校支援を行う「チャレンジスクール」はありましたが、それらは「定時制(三部制など)」でした。深沢高校は「全日制」でありながらチャレンジスクール的な支援を行うという新しい試みです。
特徴としては「柔軟なカリキュラム」や「オンラインでの単位認定」があります。
① 柔軟なカリキュラム: 1・2限や放課後の時間を活用し、登校時間をフレキシブルに選択可能。

参照元:東京都教育委員会「都立高校における新たな受入環境充実校の設置について」
② オンライン単位認定: 文科省の方針を受け、オンデマンド教材等を活用した単位認定を積極的に導入予定。
昨今、不登校支援を行うチャレンジスクール(例:都立立川緑高校)は倍率が2.45と高騰しており、公立の不登校支援校の需要の高さが浮き彫りになりました。今回の新制度は、内申点がつかない事情がある生徒への救済措置として機能することが期待されます。
もし「10:0」の新選抜方式が全校に導入されたらどうなる?(独自検証)
今回の深沢高校の事例は「不登校生徒への配慮」ですが、これは今後の都立入試全体の実験的な側面もあるのではないかと推測されます。
新選抜方式が他高校に広がると決まっているわけではありませんが、もし全校に10:0の新選抜方式が導入されたらどうなるのかー大山先生が実施した「都立合格ラインアンケート」のデータをもとに検証します。
・不登校生徒の数が増えているため様々な事情の生徒を想定した入試設計の変更は起こり得る。
・内申点が入試に用いられることに対する世間の反発は少なからずある。
■ 検証方法
都立合格ドットコム 合格ラインアンケート2025データ一覧を基に「7:3」「10:0」の点数を算出して比較
1. 独自作成校(日比谷・青山など)の場合

結果:ほとんど順位変動は起きない。 上位校の受験生は、そもそも内申点がほぼ満点に近く、かつ入試問題の難易度が高いため当日点で差をつけるのが難しい(これ以上の得点を取るのが難しいという天井が低い)からです。上位層では「当日点勝負」となるほどの変化はなく、効果は限定的であると言えます。
2. 共通問題校(トップクラス校)の場合

結果:ボーダーライン付近での順位変動は起こりうる。三田高校と駒場高校で検証したところ、半分くらいの生徒が10:0のほうが点数が高くなるという結果でした。ボーダー付近で順位変動がおこる可能性が考えられます。
3. 共通問題校(中堅校以下)の場合

結果:壮大なゲームチェンジが起こる。中堅校以下(目黒高校や広尾高校、井草高校、石神井高校など)の共通問題校では、約半数からそれ以上の生徒が「10:0(当日点勝負)」の方が有利になるという結果が出ました。共通問題は難易度が標準的であるため、内申点が低くても当日点で高得点を叩き出すことが可能です。もしこの制度が広がれば、中堅校入試は「内申点関係なしの当日点勝負」になる可能性があります。
まとめ:2026年から先、都立高校入試はどうなる?関心を持ち続けることで次の制度が変わる
検証の結果、上位校では影響が少なく、中堅校では激変することがわかりました。 現時点では深沢高校のような「事情がある生徒への救済」や、「学校の特色、方向性」に合わせる形で、一部の学校で独自に比率を設定できるようにするのが妥当かもしれません。
しかし、ここ数年を振り返るだけでも、都立入試をめぐる環境は激変しています。
・スピーキングテストの導入
・男女合同定員枠への移行
・私立高校の授業料実質無償化
さらに、今後少子化が進む東京において、入試制度も時代に合わせて変わらざるを得ません。「7:3固定」が本当に正しいのか、「技能教科2倍」は妥当なのか。様々な議論がなされている今だからこそ、私たちもこうした制度変更に関心を持ち続ける必要があるでしょう。
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
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塾講師として中学・高校・大学受験指導を行っている。2020年にYou Tubeチャンネル「ひのき三軒茶屋」を開設し、主に高校受験に関する内容を配信中。2024年8月には都立高校の口コミ・データサイト「都立合格.com(ドットコム)」の運用を開始。“受験を少しでも面白く乗り越える”手助けを行うことを目標に動画制作を行っている。

