漢文の書き下し文とは?たった6つのルールでスラスラ作れるようになる!
「書き下し文の意味がわからない……」漢文の勉強を頑張っているけれど、書き下し文が理解できなくて悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
書き下し文とは、漢文を日本語の語順に並べ替え、意味が伝わるように書き改めた文のことです。
本記事は、独自の学習法「お金も時間も節約する自習術」で東大に合格し、現在はカルぺ・ディエムに所属して全国各地で勉強法に関する講演活動を行う教育ライター・布施川天馬さんの監修のもとで作成しています。
豊富な経験と確かな専門性に基づく本解説では、書き下し文の意味・定義や考え方を、基本からわかりやすく解説していきます。
編集部
塾選ジャーナル編集部
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監修者
布施川天馬
1997年生まれ。東京大学文学部卒。世帯年収300万円台の家庭に生まれ、幼少期から貧しい生活を送る。金銭的、地理的な事情から、無理のない進学先が東京大学のみに絞られ、東大進学を志す。 塾に通う金銭的余裕がなく、勉強の傍ら週3日フルタイムのアルバイトで学費を稼ぐ。受験生活を通してオリジナルの「お金も時間も節約する自習術」を編み出し、一浪の末、東大に合格。 在学中から、自身の勉強法や学習法を、執筆活動や、全国の学校での講演を通して広める。著書に『東大式節約勉強法』『東大式時間術』(扶桑社)『東大合格はいくらで買えるか?』(星海社)など。
書き下し文とは?白文や訓読文とはどう違う?

書き下し文とは、漢文を日本語の語順に並べ替え、意味が伝わるように漢字かな交じりで書き改めた文のことです。
漢文はもともと中国語の文法に基づいて書かれているため、語順が日本語とは大きく異なります。そのままでは意味がつかみにくいので、文の中に付けられた「返り点」や「送り仮名」などの目印を頼りに、日本語の順番に直していきます。
こうして語順を整え、日本語の助詞や助動詞を補ったものが書き下し文です。完全な現代語訳ではなく、昔の日本語(古文)に近い形で表した文である点も特徴です。
書き下し文は、漢文(原文)と現代語訳の間にある中間の文。漢文を理解するための大切なステップなのです。
書き下し文をつくる理由
漢文はもともと中国で使われていた文章で、中国語の語順に従って書かれています。ところが、中国語と日本語では語順の並び方が大きく違うため、そのままでは日本語として意味が通じません。
ここで、少しイメージしやすいように、中国語の文を一つ考えてみましょう。例えば「我愛你(ウォー・アイ・ニー)」という文は、「私はあなたを愛している」という意味です。中国語ではこのように、主語 → 動詞 → 目的語の順番で言葉が並びます。
一方、日本語では「私はあなたを愛す」のように、主語 → 目的語 → 動詞の順になります。この語順の違いこそが、漢文をそのまま読むと意味がつかみにくい理由です。
そこで使われるのが、「返り点」や「送り仮名」などの目印です。「レ」「一」「二」などの記号を使って読む順番を示したり、送り仮名をつけて言葉のつながりを明確にしたりすることで、漢文を日本語の語順に整えることができるのです。
こうして返り点を手がかりに漢字の並びを日本語の語順に直すことで、漢文が自然な日本語として読めるようになります。つまり、書き下し文とは、語順を日本語風に整えて読みやすくした漢文なのです。
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東大卒教育ライター・布施川さん「書き下し文は漢文を理解するための第一歩」 漢文と日本語は、もともと大きく異なった言語体系を持っています。だからこそ、語順を日本語に合わせて読みやすくする「書き下し文」という工夫が生まれました。書き下し文は、漢文をわかりやすく訳した現代語訳より、もっと中国語の構造を大切にした、私たちが漢文を理解するための第一歩なのです。 |
白文とは
白文(はくぶん)とは、漢文の原文のことです。もともと中国語の文法で書かれており、日本語の語順や助詞などは一切ついていません。
つまり白文は、「語順を直す前の漢文」です。そのままでは日本語の文として意味が通じにくいため、返り点や送り仮名などの目印をつけて、語順を日本語に合わせて整えたものが「書き下し文」になります。
例えるなら、白文は下書きの状態の文章で、書き下し文は清書して読みやすくした完成版です。
白文の文字自体は同じでも、語順を整えることで初めて自然な日本語として理解できるようになります。
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東大卒教育ライター・布施川さん「白文は漢文の素材そのもの」 白文は漢文の「素材」そのものです。そこに返り点や送り仮名を加えて日本語に近い形で読めるようにしたのが「書き下し文」というわけですね。まずはこの二つの役割を理解し、区別して勉強してみましょう。 |
訓読文とは
訓読文とは、白文(もとの漢文)に返り点・送り仮名・読み仮名などの訓点をつけて、日本語の語順で読めるようにした文のことです。
白文は漢字だけで書かれているため、そのままでは語順も読み方もわかりにくいことがあります。
そこで、レ点や一・二点、送り仮名、ふりがなを補って「どの順に読めばよいか」「どう読めばよいか」を示したものが訓読文です。
訓読文はあくまで“読むための補助”であり、最終的に日本語として整えた文章が「書き下し文」です。
つまり、白文→訓読文(読むために記号をつけた文) → 書き下し文(日本語として整えた文)という順で変換していくと理解するとわかりやすいでしょう。
書き下し文を作るときの6つのルール
書き下し文を正しく作るには、いくつかの決まりごとがあります。ここでは、漢文を日本語の語順に直して書くときに守るべき6つの基本ルールを紹介します。
この順に確認していけば、複雑な漢文でも落ち着いて読み解けるようになります。
ここでは、以下の文を使って解説します。

① 白文と返り点を見て、漢字を読む順番を調べる
まずは、白文を見ながら返り点を確認し、漢字を読む順番を調べましょう。「レ」「一」「二」などの返り点は、漢字を読む順番を示す記号です。この順番に従って漢字を並べ替えることで、日本語として自然な語順になります。
例文「過猶レ及不レ(過ぎたるは猶及ばざるが猶し)」では、最初に「過」を読み、次に1回目の「猶」を読みます。その下を見ると、漢字の右側にレ点(レ)が付いているので、下から上に返っていく必要があります。レ点のついている部分は、及 → 不 → 2回目の「猶」の順に、1字ずつ戻って読み進めましょう。
ここで出てくる「猶」は再読文字と呼ばれる特殊な漢字で、1回目と2回目で読み方や役割が変わる点が特徴です。再読文字については、このあと詳しく解説しますので、まずは「2回読む文字なのだ」と押さえておきましょう。
また、文中にある句読点も、読みの区切りや意味を判断するうえで大切です。句読点も1字として意識し、正しい位置に書き写すようにしましょう。
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東大卒教育ライター・布施川さん「返り点や句読点は大切な手がかり」 返り点は「語順の地図」、句読点は「切れ目の標識」のようなもの。どちらも読み間違いを防ぐ大切な手がかりです。 |
② 送り仮名を歴史的仮名遣いで書く
返り点の順番に従って読んでいくと、送り仮名が付いている漢字に出会うでしょう。送り仮名は漢字とセットで読むものなので、その漢字のすぐ下に書き添えましょう。
教科書や問題集では、送り仮名がカタカナで示されていることがありますが、書き下し文ではひらがなに直して書きます。
例文「過ぎたるは猶及ばざるが猶し」でも、まず動詞の「過」は、古文の活用に合わせて「過ぎたる」のように書き下します(現代の「過ぎた」ではなく古典の形)。
次に再読文字の「猶」です。これは副詞として読む1回目の読みを漢字のまま書き、「猶ほ」と送り仮名「ほ」をつけます。
ここで注意したいのは、「猶お」や「猶う」など、現代語の読み方で送り仮名をつけてはいけないという点です。書き下し文は古文の文法に合わせるため、歴史的仮名遣いで「猶ほ」と書くのが正しい形です。
また、「及ぶ」は動詞なので、「及ば」と送り仮名をつけ、否定の助動詞は古典に合わせて「ざる」と書きます。このように送り仮名を適切に付けることで、書き下し文全体が古文として自然な形に整います。
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東大卒教育ライター・布施川さん「送り仮名はより日本語らしくするための鍵」 送り仮名はより日本語らしくするための鍵です。ひらがなに直して歴史的仮名遣いを守って書き添えることで、文が古典の調子に近づき、より正確に読めるようになります。 |
③ 日本語の助動詞・助詞にあたる文字は、ひらがなに直す
漢文はすべて漢字で書かれているため、日本語の助詞や助動詞にあたる部分ももちろん漢字で表記されています。そのため、書き下し文を作るときには、助詞や助動詞の働きをする漢字をひらがなに直して書きます。
「之(の)」「不(ず)」「也(なり)」などが代表的です。これらの漢字は、文の中で助詞や助動詞の役割を果たしているときに限り、ひらがなに直します。
例文「過ぎたるは猶及ばざるが猶し」を見てみましょう。この中の「不」は否定を表す漢字ですが、日本語の文法では否定の助動詞にあたるため、書き下すときは「及ばざる」のように、ひらがなで表記します。
ただし、同じ漢字でも文脈によっては別の意味で使われることがあります。その場合は無理にひらがなにせず、漢字のままにしておきましょう。助詞や助動詞として働いているときだけ、ひらがなに変えるのが正しい書き方です。
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東大卒教育ライター・布施川さん「助詞助・動詞をひらがなに直すときのコツ」 助詞助・動詞をひらがなに直すとき、「この漢字はどんな働きをしている?」という疑問を持つことが大切です。一字一字を丁寧に読み解く習慣をつけると、漢文の理解力が一気に高まります。 |
④ 再読文字の2回目の読み方は、ひらがなに直す
再読文字(さいどくもじ)とは、一つの漢字を2回読んで意味をつくる特殊な漢字のことです。例えば、「未(いまだ〜ず)」「将(まさに〜んとす)」「猶(なほ〜ごとし)」などが代表的です。
再読文字は、1度目は副詞として、2度目は助詞や助動詞として読むのが特徴です。そのため、書き下し文では2回目の読み方をひらがなに直すのがルールです。
例文「過ぎたるは猶及ばざるが猶し」にも、この再読文字が出てきます。それが 「猶」 です。
「猶」は、1回目は副詞としてなほ(=なお)と読み、文全体の意味を補います。そして2回目は助動詞・助詞的に働くため、ひらがなに直して読むのがルールです。例文では、「猶ほ及ばざるがごとし」という形になり、2回読むことで「依然として〜のようだ」という意味がはっきりします。
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東大卒教育ライター・布施川さん「再読文字は2回目をひらがなに直すことを忘れずに」 再読文字は、一文字で「副詞」と「助詞・助動詞」の二つの働きをする文字です。2回目をひらがなに直すことで、日本語らしく読みやすい文になります。 |
⑤ 置き字は無視する
漢文には、「置き字(おきじ)」と呼ばれる特殊な文字があります。置き字はもともと文の中で語と語の関係を示したり、文をつなげたりする役割を持っていました。
しかし、日本語の文法に直すと、置き字がなくても意味が通じるため、書き下し文ではそのまま書かずに省略します。
つまり、置き字は「読む必要がないけれど、文の形を整えるために存在している文字」です。書き下し文を作るときは、置き字を見つけても無理に読みをつけず、そのまま“無視して”書かないようにしましょう。
主な置き字には、次のようなものがあります。
- 而
- 於
- 矣
- 焉 など
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東大卒教育ライター・布施川さん「置き字はどの部分をつなぐ役割を持っているのかを考えよう」 置き字は書き下し文には入れる必要はありませんが、文の構造やニュアンス、役割を理解するうえ上で重要です。読まない文字としてまるっきり無視するのではなく、どの部分をつなぐ役割を持っているのかを確認するくせをつけておきましょう。 |
⑥ 会話文に注意
書き下し文では、会話文や引用文の扱いにも注意が必要です。
訓読漢文(返り点や送り仮名などの訓点はあるが、書き下されていない漢文)では、引用や会話を表す「」の中に、引用を示す「と」が入っていることがあります。そのまま書き下すと、「〜〜〜。と」のように、句点のあとに「と」が続く形になってしまいます。
しかし、日本語では引用の「と」は「」の外側に書くのが正しい形です。
そのため、書き下し文や現代語訳では、
- 「〜〜〜。」と
- 「〜〜〜」と。
のように直して書きます。
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東大卒教育ライター・布施川さん「書き下し文では自然な形の日本語に整える意識を持とう」 会話や引用の部分は、文の中で少し特別な扱いになります。書き下し文では「日本語の会話表現」として自然な形に整える意識を持ちましょう。 |
書き下し文を作ってみよう!【練習編】

ここまで学んだ6つのルールを思い出しながら、実際に書き下し文を作ってみましょう。
下の白文(返り点・送り仮名付き)をもとに、語順を日本語に直し、助詞や助動詞を補って自然な文に整えてください。
例題① 基本:返り点と送り仮名を使う

學(まな)ビテ而時ニ習レフ之(これ)ヲ、不二亦(また)説(よろこ)バシカラ一乎(や)
例題② 再読文字をふくむ文

未ダ(ル)レ聞二カ好レム学ヲ者一ヲ也。
例題③ 助詞としての置き字と接続詞の違いに注意

蚌(ぼう)正ニ出(い)デテ曝(さら)ス。而(しか)シテ鷸(いつ)啄二(つい)バム其ノ肉一ヲ。
書き下し文を作ってみよう!【解説編】

それでは、練習問題の答え合わせをしてみましょう。
各文の書き下し方とポイントを確認して、正しい語順や助詞の入れ方を整理しましょう。
例題① 基本:返り点と送り仮名を使う
學(まな)ビテ而時ニ習レフ之(これ)ヲ、不二亦(また)説(よろこ)バシカラ一乎(や)
学びて時にこれを習う、また説ばしからずや。(学んでときどき復習するのは、うれしいことではないか。)
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東大卒教育ライター・布施川さん「例題①のポイント」 まずは返り点に注目しましょう。レ点と一二点があるので、そこを間違えないように丁寧に順番を変えてください。そうしたら、ひらがなにすべき漢字を選び、さらにそれぞれの漢字についている送り仮名をつけ加えていきます。 今回は、助詞の「不」と助動詞の「乎」の二つは必ずひらがなにしましょう。ちなみに、副詞である「亦」は漢字のままでもよいですが、多くの教科書ではひらがなに直されているようです。 |
例題② 再読文字をふくむ文
未ダ(ル)レ聞二カ好レム学ヲ者一ヲ也。
未だ学を好む者を聞かざるなり。(まだ学ぶことを好む人を聞かない。)
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東大卒教育ライター・布施川さん「例題②のポイント」 返り点にしたがって順番に漢字を読み進めると、一度目の「未」は一番最初に、二度目は「聞」にかかることがわかります。二度目は「未」はひらがなにして、左下についている送り仮名をつければよいので、「聞かざる」となるのです。 |
例題③ 助詞としての置き字と接続詞の違いに注意
蚌(ぼう)正ニ出(い)デテ曝(さら)ス。而(しか)シテ鷸(いつ)啄二(つい)バム其ノ肉一ヲ。
蚌まさに出でて曝す。而して鷸その肉を啄ばむ。(ハマグリがちょうど泥から出て日に当たっていた。そしてシギがその肉をついばんだ。)
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東大卒教育ライター・布施川さん「例題③のポイント」 引っかけのようですが、今回の「而」は置き字扱いではありません。助詞ではなく、文と文をつなぐ接続詞としての役割を果たしているからです。順接なので、「しかして」と読みます。 |
書き下し文は、正しい語順に並べるだけでなく、言葉の関係や文法の働きを考えながら作ることが大切です。手を動かして作っていくうちに、漢文の「構造を読む力」が自然に身につきます。
まとめ 書き下し文をマスターして漢文を得点源にしよう

書き下し文は、漢文を日本語として理解するための最初のステップです。返り点・送り仮名・再読文字・置き字など、最初は覚えることが多く感じるかもしれません。しかし、ルールに従って一つひとつ確認すれば、だれでも確実に読めるようになります。
書き下し文が読めるようになると、漢文の文法・構造・意味が一気にわかりやすくなります。定期テストや入試問題でも、書き下し文の理解がそのまま得点につながる重要な部分です。
また、書き下し文を作る力は、現代文や英語の読解にも通じる力だといえます。語順を意識して文を組み立てる訓練を通じて、「文の中でどの言葉がどんな働きをしているのか」を考える力が自然と身につきます。
書き下し文をマスターすることは、単に漢文を読めるようになるだけでなく、言語全体への理解を深める学びでもあるのです。
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東大卒教育ライター・布施川さん「漢文は一文字ずつ丁寧に読んでいこう」 漢字がたくさん並んでいるだけで、難しく感じてしまうものですよね。でも、ルールにしたがって一文字ずつ丁寧に読み取っていけば、案外すんなりと理解できます。まずは読むうえ上での基本ルールをしっかり理解して覚えてしまいましょう。そうすれば、徐々に読みやすくなっていくはずです。 |
執筆者プロフィール
塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール
1997年生まれ。東京大学文学部卒。世帯年収300万円台の家庭に生まれ、幼少期から貧しい生活を送る。金銭的、地理的な事情から、無理のない進学先が東京大学のみに絞られ、東大進学を志す。 塾に通う金銭的余裕がなく、勉強の傍ら週3日フルタイムのアルバイトで学費を稼ぐ。受験生活を通してオリジナルの「お金も時間も節約する自習術」を編み出し、一浪の末、東大に合格。 在学中から、自身の勉強法や学習法を、執筆活動や、全国の学校での講演を通して広める。著書に『東大式節約勉強法』『東大式時間術』(扶桑社)『東大合格はいくらで買えるか?』(星海社)など。