総合型選抜とは?学校推薦型選抜との違いや仕組み・流れをわかりやすく解説【2026年度入試】

「総合型選抜って聞いたことはあるけど、どんな入試なの?」「具体的にはいつ・何で評価されるの?」そんな疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。
総合型選抜(旧AO入試)とは、知識・技能、思考力・判断力・表現力から、学びへの意欲や人間性までを総合的に判断して合否を決める大学入試方法の一つです。
総合型選抜は学力だけではない「あなたらしさ」を活かして挑戦できる入試方式といえます。
本記事では、総合型選抜専門塾「洋々」代表・清水信朗先生監修のもと、制度の基本から選考方法、ほかの入試との違い、総合型選抜の対策までをわかりやすく解説します。

編集部
塾選ジャーナル編集部
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監修者
清水信朗
「総合型選抜の個別指導塾 洋々」代表・GM。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。共著書に『採点者の心をつかむ 合格する総合型選抜・学校推薦型選抜』(2023年、洋々 著/かんき出版)。

総合型選抜とは?制度の基本を解説!
総合型選抜とは、大学が定めたアドミッション・ポリシー(求める学生像)に基づき、学力だけではなく、学ぶ意欲や適性、活動実績などを多面的に評価する入試方式です。
一般選抜のような筆記試験よりも、志望理由書・面接・小論文などを通じて、学びへの意欲や思考力、人間性などを重視して選抜されます。
かつて実施されていた「AO入試」を、評価基準や選考方法をより明確にする形で見直し、2021年度から「総合型選抜」として正式に制度化されました。
総合型選抜の基本的な定義と特徴
総合型選抜とは、学力試験の点数だけでなく、受験生の意欲・適性・将来の目標などを多角的に評価する入試方式です。
書類審査、面接、小論文、プレゼンテーションなどを通じて、「この学生が大学の求める人物像に合致しているか」が見られます。受験生と大学のマッチングを重視し、一人ひとりの背景や熱意が評価の軸となることが特徴です。
AO入試から総合型選抜へ、どうして名称が変更された?
大学入試改革にともない、2021年度入試以前の「AO入試」から「総合型選抜」へと名前が変更されました。
総合型選抜とAO入試の主な違いは、学力試験の有無と評価基準の明確化にあります。
AO入試は、学力よりも個性や特長を重視する傾向が強い入試方法でした。 一方、総合型選抜では、小論文や面接に加えて、大学や学部によってはプレゼンテーション、口頭試問、実技試験などが実施されることがあります。選考方法は大学ごとに異なるため、志望校・志望学部に応じた適切な入試対策が求められます。

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2021年度から文部科学省が新たな定義づけをして始まった総合型選抜ですが、実はそのタイミングでそれまでの審査の内容を大きく変更した大学はあまりありませんでした。中にはその後も総合型選抜の位置づけながらAO入試の呼称を使い続けているところもあります。
いずれにしても同じ総合型選抜でも大学学部によってその審査の方法は大きく異なります。一般的な総合型選抜の理解に加えて、自分が受験しようとしている大学学部の審査方法を詳しく知ることが重要になります。
文部科学省が求める「多面的評価」とは?
総合型選抜など大学入学者選抜においては、文部科学省によって「多面的評価」のもとで行われる方針が示されています。
これは、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」の3要素をすべての入試方式でバランスよく、多面的かつ総合的に評価する方針のことを指しています。
そのため総合型選抜では、評定平均や資格・検定試験の成績を通じて基礎学力が確認されることがあるなど、評価される能力の範囲がこれまでよりも広がっています。
実際どれくらいの人が総合型選抜を利用しているの?
実際、どれくらいの人が総合型選抜を利用しているのでしょうか?2023年度の私立大学入試では、総合型選抜と学校推薦型選抜を合わせた割合が過半数を超え、一般選抜を上回る結果となりました。具体的には、総合型選抜が17.33%、学校推薦型選抜が41.36%を占めています。
さらに、文部科学省の調査では、2022年度と2023年度を比較した場合、総合型選抜の割合は19.3%から20.6%に増加しました。国公私立大学の別を問わず、選抜方法における総合型選抜の割合が増加していることがわかります(※1)。
また、総合型選抜での入学者数も年々増加傾向です。令和3年度は77,921人、令和4年度は84,908人、そして令和5年度は92,393人に達しています(※2)。
令和7年度に至っては、総合型選抜での入学者数が98,520人と、入学者数全体の16.1%の人が総合型選抜を利用して入学しています(※3)。
これらのデータからも、総合型選抜は今後さらに重要性を増す入試方式であるといえるでしょう。
※1 出典:「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」(文部科学省)(2025年8月27日閲覧)
※2 出典:「令和5年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」(文部科学省)(2025年8月27日閲覧)
※3 出典:「令和6年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」」(文部科学省)(2025年8月27日閲覧)
評価のポイントは、アドミッション・ポリシーの理解
アドミッション・ポリシーとは、大学や学部・学科が「どのような学生に入学してほしいか」を示す指針のことです。受験生は、アドミッション・ポリシーを理解することで、入試に向けてどのような準備をすればよいのかが明確になります。
特に、総合型選抜や学校推薦型選抜ではアドミッション・ポリシーに合致するかどうかが、志望理由書や面接での選抜基準となります。そのため、志望大学や学部のアドミッション・ポリシーをしっかりと読み解き、理解しておくことが重要です。
大学のホームページやパンフレットにはアドミッション・ポリシーのほかに、「カリキュラム・ポリシー」「ディプロマ・ポリシー」を含む「3つのポリシー」が記載されています。
またアドミッション・ポリシーは、総合型選抜や学校推薦型選抜の志望理由書や面接で活用されるため、入試ガイドや入試要項にも詳しく書かれています。
受験生は、自分の志望する大学や学部・学科のアドミッション・ポリシーを熟読し、それに基づいて準備を進めましょう。

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学ぶ意欲や姿勢は、大学で追求していきたいこと(洋々ではこれを「テーマ」と呼んでいます)を明確にできると伝えやすくなります。自分の「テーマ」を決めて、それに対してこれまでどのように取り組んできて、大学ではどのように取り組もうと思っていて、さらに大学卒業後、その学びをどのように活かしていこうと思っているか、を一貫した形で伝えられると説得力が大いに高まります。
「テーマ」を中心に据えることで志望理由を明示しながら同時に学ぶ意欲や姿勢をアピールしていくことが可能になります。
総合型選抜はほかの入試方式とどう違う?
総合型選抜はほかの入試方式とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは総合型選抜と、ほかの入試方式との違いをみていきましょう。
一般選抜との違い
一般選抜は、主に学力試験(大学入学共通テストや各大学独自の筆記試験)の点数で合否を判断する選抜方法です。
これに対して総合型選抜では、書類・面接・小論文などを通じて、学びに対する意欲や思考力、人柄といった「人物像」を重視した評価が行われます。学力のみでは測れない多面的な力が問われる点が、最大の違いです。
また、総合型選抜では、評定平均や英語の資格など、大学独自の条件が設けられています。募集要項を確認し、自分が要件を満たしているかを早めに把握することが重要です。
加えて、一般選抜が年明けから始まるのに対し、総合型選抜は早ければ9月頃から出願が始まります。大学によっては、11月~12月に合否が決まるため、早めの準備が求められます。
学校推薦型選抜との違い
学校推薦型選抜(旧推薦入試)は、簡単にいえば「高校の校長による推薦書が必要な入試」制度です。この推薦を得るためには、学校側が定めた条件を満たす必要があります。
選抜方法については、総合型選抜と似通っているところがありますが、総合型選抜では基本的に学校長からの推薦は必要ありません。
また、スケジュールにも違いがあります。学校推薦型選抜は11月〜12月にかけて選考が行われ、共通テストを課す大学では1月まで続くことも。一方で、総合型選抜は9月に出願が始まり、選考は9〜10月に実施される大学が多いのが特徴です。
学校推薦型選抜については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
選抜方法の柔軟さが特徴
総合型選抜は、大学ごとに独自の選抜方法を取り入れることが可能で、プレゼンテーションやグループディスカッション、模擬授業参加後のレポート提出なども含まれます。
形式の自由度が高く、学部・学科の特色が色濃く反映される入試方式でもあります。そのため、早期の情報収集と準備が必要不可欠です。
総合型選抜はどんな人が向いている?
総合型選抜に合格しやすい人には共通する特徴があります。例えば、下記の人が該当します。
- 大学のアドミッション・ポリシーにマッチする人
- 学びの探求に取り組んできた人
- 部活や課外活動に取り組んできた人
- 将来やりたいことのために取り組んでいる人
- 自分にしかない強みや自己PRを持っている人
- 深く考え抜く力や問題解決能力に自信がある人
- 筆記試験が得意でない人や、緊張しやすいタイプの人
特に、総合型選抜では、大学が公表している「アドミッション・ポリシー」にマッチするかどうかが重要な評価基準となります。
アドミッション・ポリシーとは、大学や学部・学科が「どのような学生に入学してほしいか」
を示す指針です。合格するためには、単にポリシーに合致する人物であるだけでなく、ポリシーを深く理解することが必要です。
筆記試験が得意でない人や、緊張しやすいタイプの人でも、準備次第で十分に力を発揮できるのが総合型選抜の特徴です。学力以外の側面をアピールできる場があるため、多様なタイプの学生にとってチャンスのある入試方式といえます。
総合型選抜に向いている人については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
総合型選抜のスケジュールは?
総合型選抜のスケジュールはどのように進んでいくのでしょうか。ここでは、総合型選抜のスケジュールを見ていきましょう。
総合型選抜の一般的なスケジュールは以下の通りです。
総合型選抜の一般的なスケジュール
学年と月 | 内容 |
---|---|
高3の6~8月 | 入試要項の発表やエントリー |
高3の9~10月 | 出願・第1次選考 |
高3の10~11月 | 第2次選考 |
高3の11月以降 | 合格発表 |
総合型選抜の入試スケジュールは、一般選抜よりも早く動き出します。多くの大学では6月〜8月にかけて募集要項が公表され、「エントリー受付」が始まります。
この「エントリー」は本出願とは異なり、志望理由の登録やオープンキャンパスへの参加、事前課題の提出などが求められることもあります。大学によっては、WEBエントリーのみで完了する場合もあります。
総合型選抜の出願は、一般に9月から始まります。一部の大学では10月中旬から、遅いところでは11月以降に出願受付をしていることもあります。
総合型選抜の合格発表は、大学や学部によって異なりますが、多くの大学では11月〜12月頃に結果が通知されます。選考の進行が早いため、一般選抜よりも早く進路が確定する受験生も少なくありません。
総合型選抜、何を準備しておくべき?
総合型選抜を突破するには、何を、いつ準備しておくべきなのでしょうか。ここでは、しておきたい準備の内容について解説します。
高2の夏〜秋:情報収集を始める
総合型選抜に対応するには、早期の情報収集が重要です。志望大学のアドミッション・ポリシーや過去の選抜方法、募集要項を確認し、自分に合った入試方式かどうかを見極めましょう。
可能であれば、オープンキャンパスや学校説明会に参加し、大学の雰囲気や求める学生像を直接感じることも大切です。
オープンキャンパスについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
高2の冬〜高3の春:活動の棚卸しと志望理由の明確化
この時期には、自分のこれまでの活動を振り返り、どのような経験をアピールできるかを整理します。
併せて、「なぜその大学で学びたいのか」「将来どのような進路を描いているのか」といった志望動機を深めていく作業も始めましょう。実際の志望理由書や自己推薦書のドラフトを作成するのもおすすめです。
高3の夏前:書類・小論文・面接対策を本格化
選抜方法に応じて、志望理由書や活動報告書などの提出書類を準備しましょう。小論文対策では、時事問題や学部に関する基礎知識の習得とともに、文章構成や論理的な展開の練習を繰り返すことが効果的です。面接練習も並行して行い、自分の考えをわかりやすく伝えるスキルを養いましょう。

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最近はWeb出願と郵送での出願の両方が求められることが多いのでそれぞれの期限を把握し、余裕をもって出願を終えられるようにしましょう。志望理由書もWebで入力する場合と手書きの場合があるのであらかじめ確認し、締め切り直前に焦らずにすむようにしましょう。
総合型選抜が不合格だったら、学校推薦型選抜を受ける、という受験生も少なくありません。その場合、総合型選抜の合格発表から学校推薦型選抜の出願締切まで数日間しかない場合もあるので高校とも事前に話し、結果次第ですぐに次のアクションが取れるように準備しておきましょう。
総合型選抜の合格に向けたポイントと対策は?
ここでは、総合型選抜の合格に向けたポイントと対策を解説します。
アドミッション・ポリシーの理解と一致
大学側が求める人物像を示す「アドミッション・ポリシー」は、総合型選抜における最重要指標です。志望理由書や面接では、その大学の教育理念や方針をどれだけ深く理解しているか、自分の将来像とどれほど一致しているかが問われます。
志望校のアドミッション・ポリシーは、必ず大学公式サイトや募集要項で確認し、それに沿ったエピソードや将来像を明確に準備しましょう。
自己分析と自己PRの精度を高める
自己PRとは、自分の長所や強みを言語化し、「大学が採るべき人物」であることを伝えるものです。
単なる自己紹介ではなく、大学の選考基準に沿って自分の価値を明確に示す役割があります。
自己PRを考えるときのステップとして、以下の4つを心がけておきましょう。
- 自己分析
- 大学・学部のリサーチ
- 自分の長所とアドミッション・ポリシーを結び付ける
- 具体的なエピソードを提示
大学受験で重要な自己PRについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
志望理由書は「読まれること」を意識
総合型選抜において志望理由書は、合格を左右する最も重要な書類です。総合型選抜における志望理由書や自己推薦書は、以下のポイントが押さえられているかどうかに気を付けて書きましょう。
- 大学のアドミッション・ポリシーに一致しているかどうか
- 活動実績と大学で学びたいことが結びつけられているかどうか
- 自分の言葉で説明できていて、一貫性があるかどうか
- 面接で深掘りされた際に、具体的に返答ができることが書いてあるかどうか
志望理由書を書くときは、客観的な視点からの添削も忘れず、学校の先生や予備校の講師に見てもらうことも大切です。
総合型選抜の志望理由書の書き方については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
小論文・プレゼンテーションの対策をしておく
小論文は、思考力・構成力・表現力を見られる場です。テーマに対する論点の整理、適切な結論の導出、具体例の提示など、論理的な文章構成を意識しましょう。
プレゼンテーションが課される場合は、時間内に要点を的確に伝えるスキルも必要です。動画撮影してセルフチェックするのも有効です。
面接・対話型試験への対応力を鍛える
総合型選抜(旧AO入試)の面接や対話型試験では、大学・学部の志望理由、どんなことに興味・関心があるか、自己PRなどが聞かれます。
学びへの意欲や人間性も見られるので、模範解答を丸暗記するのではなく、自分の言葉で話すことが大切です。面接の練習は何度も繰り返して、自信をつけておくことも忘れないようにしましょう。
面接での立ち居振る舞いから、好印象を与える話し方などを学び、何度もくり返し練習して受け答えに慣れていくことがポイントです。
高校の先生や塾の講師に客観的な視点からアドバイスしてもらうと、自分では気づかなかった欠点を改善することもできるでしょう。
英語の外部資格を取得しておく
総合型選抜においては、英検®やTOEICなどの外部検定も出願時のアピール材料として有利に働く場合があります。特に英語資格は出願条件や加点対象になるケースが多いため、高1・高2のうちに段階的に取得しておくのがおすすめです。

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総合型選抜で求められる要件で最も多いのが英語資格です。「英検®2級以上」というように一定の水準が要求される場合もあれば、級やスコアは問わないけれど取得した資格の提出が求められることもあります。
英語資格は英検®だけでなく、TEAP、TOEFL、IELTSといったほかの資格が認められることも多くなっています。資格によっては英検®よりも早く申し込みができて、かつ、結果もすぐに出るものもありますので、出願が迫っている場合は、英検®以外の選択肢を検討してもよいでしょう。
総合型選抜でしておきたい対策については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
総合型選抜は大学によって特徴や対策が異なる
総合型選抜の試験内容や評価基準は、大学・学部ごとに大きく異なります。そのため、志望校ごとの入試情報を正確に把握し、それに合わせた対策が必要です。
大学によって違う総合型選抜
総合型選抜は、どの大学でも同じように実施されているわけではありません。大学や学部ごとに、選抜方法・出願条件・併願の可否などに大きな違いがあるため、事前にしっかり調べておくことが重要です。
以下に、主な違いを紹介します。
- 選抜方法の違い:書類+面接だけの大学もあれば、小論文、プレゼンテーション、模擬授業への参加など、多面的な評価方法を取り入れている大学もあります。
- 出願条件の違い:評定平均の基準や、英語資格の要件、ボランティア活動の実績を求める大学も。
- 併願可否:専願(合格したら必ず入学)としている大学もあれば、併願可能なところもあります。
出願条件や選抜内容は、大学の募集要項や入試ガイド、オープンキャンパスでの説明資料に細かく記載されています。
「何を求められているのか」「自分がどれだけ準備できているか」を見極めたうえで、自分に合った大学選びと対策を進めましょう。
総合型選抜を実施している大学
以下に、総合型選抜を実施している大学の具体例と、対策例を紹介します。
慶應義塾大学(SFC)
- 選抜方法: 書類+面接
- 特徴: 提出書類に対する深い考察力・自己の問題意識が問われる
- 対策ポイント:事前課題のテーマをしっかり理解したうえで、自分の経験や関心とどう結びついているかを明確に示すことが重要。書類は量・質ともに重視される。
早稲田大学(創造理工学部)
- 選抜方法: 書類+面接+実技(例:製図、課題発表)
- 特徴: 複合的な評価。専門知識・論理力・表現力が求められる
- 対策ポイント:書類作成に加えて、専門的なスキルや表現力のトレーニングも重要です。オープンキャンパスや過去の出題傾向を参考にして、早期の準備が効果的です。
国公立大学(例:筑波大学・京都大学一部学部など)
- 選抜方法: 書類+面接+小論文+共通テスト
- 特徴: 学力+個別試験+活動評価を総合的に判断
- 対策ポイント:高校での探究活動や課外活動をどのように学問的関心と結びつけて表現できるかが鍵。共通テストの学力対策も必須。
総合型選抜では、一貫した志望理由と明確なビジョンがあるかどうかが共通して重視されます。
出願前には必ず募集要項や大学のWebサイトを確認し、それぞれの大学に合わせた対策を進めましょう。
総合型選抜を実施している大学については、以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
志望校に合わせたカスタム戦略を立てることが重要
大学の選抜方法はそれぞれの教育方針、アドミッション・ポリシーに直結しています。志望大学が「どんな力を見たいのか」「どのように評価したいのか」を読み解き、それに応じた対策を立てることが合格への近道です。
大学の公式サイトや過去の入試情報、体験談なども参考に、1校1校に合わせた戦略を設計しましょう。
総合型選抜のメリットは?
総合型選抜の仕組みについて見てきましたが、どのような点がメリットなのでしょうか?
総合型選抜のメリットとして、以下のようなポイントが挙げられます。
- 高校からの推薦がなくても受験できる
- 一般選抜よりも倍率が低いところが多い
- 併用受験で合格のチャンスが増える
- 対策を通して将来のビジョンが固まる
- 一般選抜より合格が早く決まる
一番のメリットが、高校からの推薦がなくても受験できる点です。学校推薦入試を受けるためには学校側からの推薦が必要ですが、総合型選抜を利用すれば高校からの推薦がなくても受験のチャンスが得られます。
見逃せないメリットが、総合型選抜の対策をする中で、将来の目標をしっかり考え、ビジョンを固めることができるということです。書類選考や面接対策を通じて、自分の進みたい道や、やりたいことを考える機会が多くなるからです。

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総合型選抜を受験する場合には自身の過去、現在、未来を考えることが必須になるので、これまでやってきたことを振り返り、今これからやろうとすることを考える良い機会になります。
自分がどういう人間で、これからどういう道を進むべきかを真剣に考え、大学に進学することの必要性を実感できると志望校合格への意欲が高まります。総合型選抜の準備をした結果、一般選抜向けの準備のモチベーションが高まった、という声を聞くこともよくあります。
総合型選抜のデメリットは?
総合型選抜には多くのメリットがありますが、注意が必要な点もいくつかあります。
- 他大学と併願できないケースがある
- 一般入試と並行して勉強するのが難しい
- 出願時期が早めで準備期間が短い
特に、出願時期が早めであることに注意が必要です。早ければ6月からエントリーが始まるため、一般入試よりも準備期間が短いです。学力試験とは異なり、書類選考や面接を行うため、しっかりと準備をするためには、早めに対策に着手しなければなりません。
また、総合型選抜では、他大学と併願できないケースがあります。専願の場合、合格すると必ずその大学に入学しなければいけません。
総合型選抜を検討する際には、出願予定の大学の入試要項をしっかり調べ、他大学との併願が可能か確認することが大切です。基本的には、合格したら行きたい大学のみを受験することをおすすめします。
中には、併願が可能な大学もあります。早めに情報を集め、志望校選びや併願する大学についてじっくりと検討しましょう。

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総合型選抜と一般選抜を並行して準備を進めるうえで特に悩ましいのが、夏休みの時間の使い方です。総合型選抜では出願書類の提出が近くなるにつれて、かける時間が長くなりがちです。9月に出願締切があるところが多いため、どうしても夏休みは書類の準備に追われます。
一方で一般選抜の準備においても夏が天王山といわれるように、そこでキャッチアップしたり差をつけたりすることが重要になります。並行して準備を進める場合は、総合型選抜も一般選抜も早め早めに準備を進め、夏休み前にある程度目途をつけておくことが大切といえます。
総合型選抜のよくある質問と注意点
ここでは、総合型選抜でよくある質問と注意点について解説します。
総合型選抜は併願可能ですか?
結論からいえば、他大学との併願を認めている大学もありますが、大学ごとにルールや制限が異なるため、事前の確認が欠かせません。
一部の大学では、総合型選抜において「合格したら必ず入学すること」を出願条件としている場合があります。
特に国公立大学で、この傾向が強いのが特徴です。中には、募集要項に「専願」「併願禁止」などと記載している大学も存在します。
同じ大学で複数の学部を併願したいと考える場合も、注意が必要です。大学によっては、学部間での併願を認めていないことがあります。
総合型選抜の併願を考えている場合は、事前にしっかりと募集要項を確認するようにしましょう。
総合型選抜の併願については、以下の記事をご覧ください。
総合型選抜の面接でよく聞かれる質問は何ですか?
総合型選抜の面接では、自己紹介や志望動機がよく聞かれます。加えて、これまでに取り組んだ活動や、将来の目標もよく聞かれる質問です。面接官は、受験生が自分の考えをしっかりと伝えられるかを見ています。
面接に向けて、自分の考えや具体的な経験をわかりやすく話せるように準備をしておきましょう。
総合型選抜で評定は関係ありますか?
総合型選抜では、評定平均は無視できない評価項目です。しかし、評定平均が高いからといって必ず合格するとは限りません。逆に、評定平均がやや低くても、ほかの要素で補えるケースもあります。
ただし、一定以上の評定平均を満たしていなければ、そもそも出願できない大学も存在します。逆に、高いと、総合型選抜で出願できる大学の選択肢が大きく広がります。総合型選抜で評定を高く維持しておくことは、そのままアドバンテージに直結するのです。
総合型選抜と評定平均の関係については、以下の記事も併せてご覧ください。
総合型選抜で評定のいらない大学一覧を教えてください
例えば、慶應義塾大学の総合政策学部の入試が挙げられます。提出書類には活動報告、志望理由、入学後の学習計画・自己アピール、入学志願票、調査書などがありますが、評定平均については特に記載がありません。
以下の記事では、総合型選抜で評定のいらない大学や、倍率の低い大学を紹介していますので、ぜひご覧ください。
総合型選抜で入学すると、一般入試組と差が出るのは本当ですか?
結論からいえば、入学直後に学力の差を感じるケースはあります。総合型選抜(旧AO入試)は、筆記試験の有無や科目数の少なさから、「偏差値より上の大学に合格できるチャンスがある入試方式」といわれています。
しかし、一般選抜で入学した学生と比べると、学力面でギャップを感じやすいのも事実です。
合格して終わりではなく、「入学後の学びに備える姿勢」が非常に大切です。例えば以下のような準備をしておきましょう。
- 高校範囲の英語・数学・現代文など、基礎科目の復習
- 志望学部の専門分野の入門書にふれておく
「受かったから何もしなくていい」と思うのはNGです。大学入学後にスタートダッシュを切るためにも、学力面の下地を整えておくことが重要です。
総合型選抜で落ちる確率はどれくらいですか?
総合型選抜(旧AO入試)の合格率は大学や学部によって大きく異なるため、一概に「何%」とはいい切れません。
ただし、「推薦なしで出せる=受かりやすい」とは限らないのが現実です。
実際、国公立大学の総合型選抜は、私立大学に比べて合格率が低めとなる傾向があります。難関の国立大学では、数十倍の倍率になることもあり、狭き門となるケースも少なくありません。
一方、私立大学では比較的合格者数が多い大学もありますが、それでも提出書類の完成度や面接での対応力が求められます。
つまり、総合型選抜は「受かりやすい入試」ではなく、しっかりとした対策が必要な選抜方式です。志望理由書や面接、小論文での説得力が合否を左右します。
なお、具体的な大学ごとの合格率や志願者数・倍率については、以下の記事で詳しく解説しています。
総合型選抜は「楽な入試」ではないことに注意!
一般選抜と違って筆記試験が少ないため「楽そう」と思われがちですが、総合型選抜は準備にかける時間が長く、自己分析・書類・面接・小論文と多方面での努力が必要です。
「自分のやりたいこと」を明確にし、自信を持って語れるようにするためには、継続的な準備が欠かせません。

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総合型選抜と一口にいっても、その内容は多種多様で大学・学部によって大きく異なります。評定を重視するところもあればそれほどでもないところもあり、英語の資格が大事なところもあればそうでないところもあります。入試によって出願時期も異なるし、試験の内容も様々です。
総合型選抜受験にあたって、どのような活動をすればよいですか、と聞かれることも多いですが、大学・学部によるとしか答えられません。活動実績がほとんど問われない総合型選抜もあります。自分に合った入試を見つけ、自分の土俵で勝負する、ということが重要になります。
まとめ 総合型選抜とは自分らしさを生かせる入試!
総合型選抜は、学力だけでは測れない「自分らしさ」や「将来への意志」を評価する入試方式です。自分の経験や考えを深く見つめ、それを言葉にして伝える過程は、簡単ではありませんが、自分自身と向き合う貴重な機会でもあります。
受験対策のなかでも、総合型選抜は「やりたいことを言語化できる力」や「志望理由に一貫性があるか」などが問われる入試です。筆記試験が少ない分、自己分析や志望理由書、面接、小論文などでの表現力が合否を大きく左右します。
特別な実績がなくても、「なぜその学びを選ぶのか」「どんな未来を目指しているのか」を、自分の言葉で丁寧に伝えることが最大の武器になります。
総合型選抜の特徴やほかの入試方式との違いをしっかり理解し、自分に合った戦略で受験対策を進めていきましょう。
そのほかの総合型選抜に関する記事については、以下からご覧ください。
執筆者プロフィール

塾選ジャーナル編集部です。『塾選ジャーナル』は、日本最大級の塾検索サイト『塾選(ジュクセン)』が提供する、教育・受験に関する総合メディアです。保護者が知っておきたい受験や進路情報をお届けします。
監修者プロフィール

「総合型選抜の個別指導塾 洋々」代表・GM。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。共著書に『採点者の心をつかむ 合格する総合型選抜・学校推薦型選抜』(2023年、洋々 著/かんき出版)。